10月10日 いよいよ公的資本注入 Source : U.S. Considers Cash Injections Into Banks (New Yort Times)

上記sourceによれば、アメリカ政府は、10日にも、金融機関に対する公的資本注入を実施すると公表する、との観測が出ている。先に法制化された「金融安定化法」のスキームを利用するとのことである。

「不良債権買取制度」が主目的とされていたが、財務省による買取対象資産は、何も住宅ローン債権関連には限定されておらず、金融機関の株式そのものも買い取り対象にできる、との解釈らしい。Washington Postによれば、「無議決権株」を資本の10〜15%程度購入するとみられている。

こうなってくると、当websiteの関心は、経営幹部の報酬制限がどのように実現されるのか、という点に移ってくる。金融安定化法では、財務省が直接資産を購入した場合には、経営者報酬に制限を加えることになっている(「Topics2008年9月30日 金融安定化法案否決」参照)。

具体的な制度設計はどうなるのか、また、経営者側からの反発、訴訟は起こらないのか。興味の尽きないところである。

10月8日 SF市皆保険法にGo Source : ERISA Doesn't Pre-Empt San Francisco Health Mandate, Court Rules (Workforce Management)

先月30日、第9控訴裁判所が、SF市の皆保険法はERISAのpre-emption規定に該当しない、との判断を下した。ここまではある意味、既定路線であり、特に何か進展があったわけではない。この事件は、既に最高裁の場に議論の場を移しているからだ。一応の事実確認のみ。

※ 参考テーマ「無保険者対策:SF市

10月6日 再びEFCAに焦点 Source : Employee Free Choice Act: Labor vs. Business (BusinessWeek)

The Employee Free Choice Act (EFCA)(H.R. 800)については、かつて当websiteで紹介したことがある(「Topics2007年3月3日 The Employee Free Choice Act」参照)。

労働組合結成の手法の一つとして、記名投票によるものがある。記名投票で過半数を獲得すれば、労働組合を結成できるのである。しかし、現行法では、雇用主側にこの手法に対する拒否権が与えられており、実際に発動されることはまずない。

EFCAは、この拒否権を剥奪しようというところがポイントである。当然、企業側は反対、労働組合は賛成、ということだが、ここにきて、EFCAの扱いが注目され始めている。

先述の通り、2007年3月に、連邦議会下院はEFCAを可決したが、上院では審議中断となっている。ところが、Obama上院議員は、もともと同法案の支持者となっており、大統領に当選すれば、同法案を成立させる、と明言しているのである。

大統領選、連邦議会選挙の結果次第では、同法案の成立への動きは早まることになろう。

10月5日 採用面接禁句集 Source : Interview Checklist--The 25 Forbidden Questions (HR Daily Advisor)

幸い(?)、採用面接の試験官をやったことはないが、このチェックリストを見ると、とても自然な質問はできそうもない。ついつい、訊いてしまいそうなフレーズばかりである。

日本企業でも、このような禁句は常識なのでしょうか?それとも、『差別』に敏感なアメリカならではの禁句集なのでしょうか?

10月4日(1) 金融安定化法案可決 Source : House Approves $700B Financial Rescue Package (Washington Post)

注目された金融安定化法案(HR1424)(「Topics2008年9月30日 金融安定化法案否決 」参照)は、上院での修正案(支払保証金額の引き上げ)可決を経て、3日、下院でも可決された。投票結果は、263vs171。党派別は次の通り。

 賛 成反 対無投票
 前 回今 回前 回今 回前 回今 回
民主党1401729563--
共和党65911331081-
合 計2052632281711-
民主党、共和党とも相当数が反対から賛成に回っているが、依然として共和党では反対の方が多い。このあたり、共和党の地盤である南部、中西部からの批判が強いことが表れているものと思われる。

報道によれば、同日午後にもBush大統領は署名すると言われており、これで不良債権買取制度が創設されることになった。また、経営者たちのgolden parachutesもかなり守られる結果となった。

10月4日(2) サラリーマン保険料は上昇 Source : Employer-Based Premiums for Family Health Coverage Rise by 5% to $12,680 in 2008 (Kaisernetwork)

来年の医療保険プランの保険料の動向が明らかになってきた。上記sourcdのポイントは次の通り。
  1. 企業が提供する医療保険プランの2008年保険料は、家族対象の場合、5%上昇して$12,680/M。

  2. そのうち、従業員の保険料負担は、$3,354。大企業(従業員200人以上)平均は$2,982、中小企業平均は$4,101となっている。

  3. 免責額も引き上げ傾向にある。$1,000以上の免責額を設定している企業の従業員の割合は、2007年の12%から2008年18%まで上昇した。

  4. CDHPの加入者割合も、2006年4%、2007年5%から、2008年には8%にまで上昇する。
一方、連邦政府職員が負担する保険料は、約8%上昇する見込みである(Kaisernetwork)。

アメリカのサラリーマン家庭にとっては、来年も医療費負担増が続く。

10月3日 PBGCの財政危機 Source : Pensions Of 5 Cos In Crisis Underfunded By $400 Million (CNN)

アメリカの金融危機に直撃された金融機関の年金プラン積立不足が注目されているそうだ。金融機関5社(Lehman Brothers, Fannie Mae, Freddie Mac, Indymac Bancorp and AIG)の積立不足は、総額$400Mにのぼる。仮に5社とも年金プランを廃止する事態になれば、PBGCはその引き取りにあたり、$100Mの負担を強いられることになる見込みだ。ただし、Fannie Mae, Freddie Mac, AIGの3社は、今のところChapter 11には入っていないので、そこまでの負担を求められることはないかもしれない(「Topics2008年9月13日 GSEの離職手当」参照)。

PBGCの財政危機は、これら支払保証業務によるものだけではなく、運用そのものが打撃を受けたことから来る危機のようである。

PBGCの財政危機については、これまで何度も当websiteで紹介してきた。その対策として、今年2月に保険料の見直し(「Topics2008年2月8日 PBGC保険料改革」参照)を行うとともに、PBGCの資産運用についても見直したそうだ。

具体的には、総資産の45%までを株式等のハイリターン商品に投資できるように規制を緩和した。現時点では、債券投資が70%となっている一方で、$2.8BのCDS(簿価?)を保有しており、これが清算されると$70Mの損失が発生する。また、住宅ローン債権も資産の6%に達しており、損失が発生することは確実だ。

さらに根本的には、DBプランの凍結が進んでおり、保険料収入も枯渇していく。

PBGCは、『財政状況の悪化 ⇒ ハイリスク・ハイリターン商品への投資拡大 ⇒ 損失発生』という典型的な借金地獄に陥ってしまっている。しかも、保険料収入というフローの所得まで減らしつつある。いよいよ末期に近づいたということか。

10月2日 Medical tourismのガイドライン Source : Paying Workers to Go Abroad for Health Care (Wall Street Journal)

ついに、WSJにまで関連記事が掲載されるようになった。Medical tourismに対する企業の関心度はますます高まっていくことであろう。

ところで、この記事を読んでいて、The American Medical Association (AMA)が、6月にmedical tourismに関するガイドラインを公表していることがわかった。その時のプレスリリースガイドラインを置いておく。なお、AMAは決してmedical tourismを推奨しているのではなく、むしろ課題は多いと見ている。しかし、現実にmedical tourismが急増している中、こうしたガイドラインが必要になる、との立場からまとめたようだ。

読んでもらえばわかるように、ガイドラインといっても、とてもシンプルなものである。アメリカにおけるmedical tourismのガイドラインとしては最初のもの、とのことなので、基本的なことしか掲載されないだろうし、当然であろう。

その基本中の基本、先頭に出てくる基準が、「アメリカ国外での診療は、患者の自発的意思に基づくものでなければならない」というものである。

上記sourceで紹介されているように、労働組合は、医療保険プランの中にmedical tourismの選択肢を盛り込むことに反対している。その最大の理由は、「今は自発的としていても、コストカットが実現できるとなれば、やがて強制措置になっていくことは目に見えている」というものである。このような反発を緩和するためにも、AMAガイドラインで強調しておく必要があったと思われる。

こうしたガイドラインが充分認知された上でのmedical tourismの普及を望みたい。