2月8日 Edwards効果 Source : The Edwards Effect (New York Times)
Edwards元上院議員が候補者指名争いから降りた。上記sourceは、Edwards上院議員の功績を称えている。
- 2007年初め、民主党の候補者達は、「単一保険者制度」の悪夢から抜け切れず、具体的な皆保険提案を躊躇していた。
- ところが、2007年2月、Edwards候補が、今の保険加入の維持を前提とした皆保険提案を行った(「Topics2007年2月7日 Edwardsの皆保険提案」参照)ことで、民主党内は皆保険を目指すことで固まった。
- 現在の有力候補、Clinton、Obama両上院議員の皆保険提案は、Edwards提案の延長線上のものに過ぎない。
- むしろ、両者がEdwards提案に乗ってしまったがために、Edwards提案が目立たなくなってしまった。Edwardsは、(政策)論議では勝利したが、政治では敗退した。
- 大統領選で、民主党が共和党に差をつけられるとすれば、この医療保険改革である。民主党はEdwardsに感謝しなければならない。
とにかく、政策面では高く評価しているのである。
当websiteでも、Edwards元上院議員への見方を変えなければならない、としていたところ(「Topics2008年1月7日(1) Edwardsの公約」参照)であり、残念な気持ちである。今回のEdwardsは、大統領になりたかったのではなく、国民のための政策を実現したかったのではないだろうか。
さようなら、Edwards、お疲れ様でした。
2月7日 Obama案では皆保険にならない Source : Clinton, Obama, Insurance (New York Times)
上記sourceは、NYT紙に掲載された、ポール・クルーグマンの意見記事である。彼の主張のポイントは次の通り。
- クリントン案とオバマ案はよく似ているが、保険への加入義務を課すかどうかで、大きな違いがある。
- オバマ案は、保険料が安くなれば皆加入するだろう、ということだが、実際にはそうはいかない。
- 加入義務を課さないことで、健康な人が保険に入らず、国民一人あたりのコストアップが起きる。
こうした主張の根拠になっているのが、MITのJonathan Gruber教授の推計である。
| 無保険者のカバー数 | 公的負担増額 | 新規加入者一人当たりコスト |
Obama案 | 2,300万人 | $102B | $4,400 |
Clinton案 | 4,500万人 | $124B | $2,700 |
2003年のRobert Wood Johnson Foundationの研究でも、加入義務付けが皆保険に大きな効果を持つ、との結論が導かれているという。
だから、Obama上院議員が仮に大統領となったとしても、無保険者問題は解決できませんよ、という訳である。まさにClinton上院議員への援護射撃となっている。
しかし、大統領選は、医療保険だけをテーマにしているわけではない。実際、候補者指名争いは、混戦模様となっている。
2月6日 社内恋愛対策 Source : "Workplace Romances" & "Love Contracts" (HR Daily Advisor)
バレンタイン・デーは、経営者にとっては頭の痛い催しでもある。毎年、この時期になると、社内恋愛に関する対処方針が話題になる。
上記sourceのポイントは次の通り。
- 社内恋愛が発生するのは、ごく当たり前のことである。
- しかし、社内恋愛が結婚にまで辿りつくのは、全体の1/5でしかない。あとの4/5は破局を迎える。その後にやってくるのは、訴訟である。
- 社内恋愛絡みの訴訟には、3つのパターンがある。
- (破局後)当事者によるセクハラまたは報復の訴え
- 第3者によるエコヒイキの訴え
- 拒絶された側によるセクハラまたは報復の訴え
- 訴訟を回避するための7つの方策
- 社内恋愛に関する現実的な規則作りとその公平な適用
- 定期的な講習会の開催
- 企業としての関与の範囲は職場への影響に限定
- 上司と部下の間の恋愛を禁止
- すべてのやり取り(メール、電話等)を監視
- 相談窓口の設置
- 対策のすべてを文書化
- それでもどうしても恋愛が止められない場合には、当事者に文書に署名(Love Contracts)させることにより、恋愛に伴う訴訟リスクを回避する(「Topics2007年2月14日(2) Love Contract」参照)。
ここまで味気ない文書攻勢に、気分が萎えるということはないのだろうか。いや、ロマンティックなアメリカ人は、むしろ燃え上がってしまうのかも。
2月5日 加入義務の手法 Source : In Health Debate, Clinton Remains Vague on Penalties (New York Times)
民主党の大統領選候補者指名争いで、Edwards元上院議員が戦線を離脱した。これでClinton上院議員とObama上院議員の一騎討ちになった。
舌戦は激しくなる一方だが、両者の国内政策に関する提案はよく似ていると言われている。そうした中で、数少ない違いの一つが、無保険者対策で保険加入を義務付けるかどうかだ。Clinton上院議員は、全国民に保険加入を義務付ける、としているが、Obama上院議員は、子供の保険加入義務にとどめている(「Topics2007年9月18日 Clinton提案」参照)。
上記sourceによると、そこで、Obama上院議員は攻勢に出ているそうだ。『どうやって加入義務を履行させるのか。Clinton上院議員は、購入できるかどうかにかかわらず義務化しようとしている。そして加入しなければペナルティを課そうとしている』と。
一方のClinton議員は、具体的な説明をしないまま、『Obama上院議員の提案では本当の意味での皆保険にならない』と主張し続けている。
これに対して、Kennedy議員が、『国民皆保険は私のライフワークである。Obama上院議員の提案が皆保険を目指していないのなら、私がObama上院議員を支持するはずがない』と、力強くObama上院議員をサポートしている(Kaisernetwork)。
加州皆保険法が頓挫して、明らかに潮目が変わった感じがする(「Topics2008年2月2日(1) 加州失敗後の流れ」参照)。加州で保険加入義務付けに対する抵抗感が強かったことが、大統領選にも具体的に影響してきたようだ。
2月2日(1) 加州失敗後の流れ Source : Health-Care Reform to Shift Focus (Washington Post)
加州皆保険法が議会上院で否決され、頓挫した(「Topics2008年1月29日 加州皆保険法案否決」参照)。注目されていただけに、その影響は大きい。今後の無保険者対策の流れについて、専門家の間で意見が分かれているようだ。
- 連邦政府による対策に焦点を当てざるを得ない。
加州の失敗の背景には、州財政の悪化がある。経済状況が厳しくなりつつある中で、予算の制約を負った州による努力には限界がある。また、州レベルで保険加入を義務付けるのも難しい。
- これまで通り、各州独自の対策を進めざるを得ない。
医療は生活に密着した分野であり、従来通り、州がイニシアティブを持って動かなければ、改善は進まない。
前者は少し安易に過ぎないか。経済状況が悪化すれば、連邦予算でも悪化が見込まれるし、連邦レベルで保険加入を義務付けるのは、さらに困難が伴う。実際、民主党候補者でも、クリントン上院議員は義務付けを主張しているが、オバマ上院議員は子供のみの義務付けにとどめている(「Topics2007年9月18日 Clinton提案」参照)。大きな人口を擁する加州において義務付けに失敗したとなれば、なおさらである。
やはり、ERISAによる制約をできる限り回避しながら、州レベルでの地道な努力を続けるしかないように思う。
2月2日(2) SECの進む道 Source : Corporation Finance in 2008 — A Focus on Financial Reporting (SEC)
上記sourceは、SECのJohn White部長の講演録である。このなかで、IFRS関連と経営者報酬に関する今年の課題についてふれている。以下、概要。
- IFRS関連
- 昨年12月に、IFRSに関する円卓会議を開催した(「Topics2007年12月21日(1) SEC円卓会議」参照)。様々な議論があったが、概ね次の3点については関係者の合意が形成されている。
- 我々の最終目標は、"a single set of high-quality, globally accepted accounting standards"である。
- 世界の他の諸国では、既にその方向に向かっており、その向かっている先は、米国基準ではなく、IFRSである。
- 米国企業にとっては、IFRSへの移行は複雑であり、総合的なプランをたてておく必要がある。
- 今後の進め方として、参加者から次のような提案がなされた。
- SECが今後の進め方について、road mapを提示する。
- 一定の期間、米国企業に任意でIFRSの利用を認める。その間は、IFRSと米国基準が並存することになる。
- 将来のIFRS(強制)適用時期を規定する。
- 数年間は、コンバージェンスの進捗状況、IFRSへの理解の浸透を見守る。
- 上記の組み合わせを考える。
- 経営者報酬
経営者報酬の決定に関する、"how and why"の説明が決定的に不足している(「Topics2007年10月10日 SECと企業の対話」参照)。投資家にとっての理解が進むよう、MD&Aと同様の努力をすべきである。
IFRSに関する部分は、ちょうど1週間前のロンドンでの同氏の講演でも、同様の説明をしている。アメリカ内外で、SECは、IFRS適用への意志を明確にしたわけである。