The Gateway to the US Labor Market/Topics/08013   1月30日 一般教書演説 Source : President Bush Delivers State of the Union Address (The White House)

今年の一般教書演説は、当websiteにとっては極めて退屈なものとなった。注意点は次の3点。
  1. "[W]e must be guided by the philosophy that made our nation great. As Americans, we believe in the power of individuals to determine their destiny and shape the course of history."

    個人の力を信じる、という共和党らしい哲学が示されている。

  2. "To build a future of quality health care, we must trust patients and doctors to make medical decisions and empower them with better information and better options. We share a common goal: making health care more affordable and accessible for all Americans. The best way to achieve that goal is by expanding consumer choice, not government control. So I have proposed ending the bias in the tax code against those who do not get their health insurance through their employer. This one reform would put private coverage within reach for millions, and I call on the Congress to pass it this year.

    The Congress must also expand health savings accounts, create Association Health Plans for small businesses, promote health information technology, and confront the epidemic of junk medical lawsuits. With all these steps, we will help ensure that decisions about your medical care are made in the privacy of your doctor's office -- not in the halls of Congress."

    医療をより安く、よりアクセス可能にすることを目的に、個人の選択肢の拡大、税制改正、ITの活用を進めよう、ということで、従来路線の繰り返しのみ。

  3. "There are two other pressing challenges that I've raised repeatedly before this body, and that this body has failed to address: entitlement spending and immigration. Every member in this chamber knows that spending on entitlement programs like Social Security, Medicare, and Medicaid is growing faster than we can afford. We all know the painful choices ahead if America stays on this path: massive tax increases, sudden and drastic cuts in benefits, or crippling deficits. I've laid out proposals to reform these programs. Now I ask members of Congress to offer your proposals and come up with a bipartisan solution to save these vital programs for our children and our grandchildren."

    これまで言ってきたように、年金、高齢者医療保険は、持続可能性に疑問がある。早く改革案を検討しよう。
ということで、おそらく共和党の議員しか拍手しなかっただろうな、と容易に想像できてしまうような内容だった。

1月29日 加州皆保険法案否決 Source : Panel kills Schwarzenegger's health plan (Los Angeles Times)

CA州の皆保険法案(「Topics2008年1月4日 加州皆保険法案のハードル」参照)が、28日、上院委員会で否決された。委員11人のうち、実質一人しか賛成しなかった。

理由は2つ。
@州の財政赤字が拡大しており、そのうえ皆保険法を施行すれば、増税につながる。
A州民に保険加入を義務付けると、高免責制の保険に加入せざるを得なくなり、州民の負担が大きい。

シュワ知事の失望感は大きなものだろう。

これで、大統領選の民主党候補者達の改革案は影響を受けるのだろうか。

1月28日(1) KennedyがObama支持 Source : Kennedy Plans to Back Obama Over Clinton (New York Times)

当websiteではお馴染みのKennedy上院議員が、28日、Obama上院議員への支持を表明するという。Kennedy上院議員は、これまで大統領候補指名争いを静観すると述べていたが、州レベルでの選挙戦が過熱している状況を見て、Obama候補支持を明らかにすることにした、と報じられている。NYT紙は、上院議員の支持表明の中で、最も影響力のあるもの、と評価している。

一方、Washington Post紙のwebsiteに掲載された記事によれば、Kennedy上院議員は、『Clinton上院議員の選挙戦略、特に人種問題を煽っているような言動』に怒っているという。

この事実は、Obama、Clintonどちらが大統領になっても、大きな影響を及ぼすものと思われるので、ここに記しておく。

1月28日(2) FAS158邦訳 Source : 米国の企業年金会計基準(三菱UFJ信託銀行FAS研究会[訳])

2006年9月に発効したアメリカ会計基準『FAS158』(「Topics2006年10月3日 FAS 158」参照)の完全邦訳が上梓された。同書には、87、88、106、132(R)の邦訳がついているほか、訳者解説による「米国の年金会計基準の概要」も付けられている。

現在、アメリカ年金会計の見直しは、フェーズ1を終了し、フェーズ2が進行中である(「Topics2007年6月23日 年金会計 Phase Two (3)」参照)。ただし、フェーズ2は、見直しの範囲が多岐にわたるうえに、IFRSとのコンバージェンス(=IASBとの協議)を前提に議論していくことになるため、かなりの長期間を要すると見られる。

ところで、訳者である三菱UFJ信託銀行FAS研究会は、1997年にもFAS87、88の翻訳を発行しており、その意味で、長年にわたってアメリカの年金会計をウォッチしてきたプロ集団である。

その彼らが「訳者序文」で記している通り、今回のフェーズ1の検討過程を理解することにより、『今後FASBで議論される課題の検討の方向性やヒントを読み取ることができる』のであれば、わが国の年金プラン関係者にとって、同書は極めて貴重な情報源となろう。やがて、日本の年金会計基準にも波及する変化を、予め理解できることになるのだから。

1月27日 レストラン協会は最高裁へ Source : Employer Mandated Health Care (Golden Gate Restaurant Association Press Release)

SF市の無保険者対策は、第9控訴裁判所から執行許可を得た(「Topics2008年1月11日 SF市無保険者対策にゴーサイン」参照)。同対策をERISA違反であると訴えていたGolden Gateレストラン協会(Golden Gate Restaurant Association)は、早々に第9控訴裁判所で争うことを諦め、連邦最高裁に訴える準備を開始した。

もともと第9控訴裁判所は、企業に対して厳しい判断する傾向にある(Benefits Alert 2008年1月22日)。よって、いくら第9控訴裁判所で争ってみても時間の無駄、というわけである。

これで、"Pay or Play"とERISAの判断は、連邦最高裁で争われることになった。

実は、昨年、第4控訴裁判所では、MD州の"Wal-Mart法案"が違法であるとの連邦地方裁判所の判決(「Topics2006年7月20日(3) MD州"Wal-Mart法案"敗訴」参照)を支持している(Benefits Alert 2007年1月22日)。しかも、その判決内容が、SF市の無保険者対策がERISA違反であると判断した連邦地方裁判所の判決とまったく同じという。

つまり、"Pay or Play"を巡って、第4控訴裁判所と第9控訴裁判所が真っ二つに分かれているのである。

今後の州レベルでの無保険者対策、皆保険政策を大きく左右する判断が、いよいよ連邦最高裁で行われることになる。

1月24日 Wal-Mart 50%を上回る Source : 2008 Open Enrollment Data Shows That 92.7 Percent Of Wal-Mart Associates Now Have Health Coverage (Wal-Mart)

清水の舞台から飛び降りたWal-Mart「Topics2007年9月19日(2) Wal-Mart 清水の舞台」参照)に、ようやく結果が出た。従業員の半数以上が、同社の医療保険プランに加入したとのことである。

上記sourceより、結果をまとめてみると、次のようになる。
2008年2007年備  考
加入資格者割合79% 従業員全体(140万人弱)のうちの1,086,881人
Wal-Martプラン加入割合50.2%47%従業員690,970人。その家族も含めると110万人超。
配偶者のプランへの加入割合22.3%  
その他プランへの加入割合20.2%  
保険加入割合(上記3項合計)92.7% 802,091人
無保険者割合7.3%9.6%全米の無保険者割合17.7%
同社によれば、今回のプラン内容変更により、3万人超の従業員が新規加入したそうで、これによる押し上げ効果が大きかったようだ。無保険者が加入しなかった理由を追跡調査することにより、さらに加入率を高めていきたいとしている。

Wal-Mart批判グループは、無保険者の割合が高い、公的医療保障プログラムへの依存度が高い、などの批判を続けているようだが、140万人の従業員を抱えている中で、よくやったと思う。実際、メディアは好意的な文脈で伝えている(Washington Post)。New York Timesなどは、ライバルのTargetでは、従業員の自社プラン加入割合は40%程度しかないことを紹介して、それを大きく超えている、と評価している。

1月23日 第2フェーズの地雷:Volatility Source : New Pension Accounting: Volatility City? (CFO.com)

アメリカ全体で、IFRSへの移行についてコンセンサスが形成されようとしている(「Topics2007年12月21日(1) SEC円卓会議」参照)。そうした大きな流れが見えてくると、各論が気になる人達が蠢きだす。

上記sourceは、企業の財務担当役員の集まりであるCFOのwebsiteに掲載された記事である。年金会計改革フェーズ2(「Topics2007年2月24日(1) 年金会計 Phase Two (1)」参照)で、IASBの主張する時価会計の考え方を、B/SのみならずP/Lにまで持ち込んだ場合、所得の変動幅が極めて大きなものになってしまい、投資家にとっても理解しづらい会計情報になる、との主張である。丁寧に、2002年から2006年にかけて、Dow銘柄企業の財務情報を、IFRSに置きなおして試算してみせている。

実は、この話は、日本の経営者のなかで知らない人はいないといってもよいぐらい、深く認識されている問題である。設立されたばかりのIASBが、日本の大企業を含めて数社選定して、時価会計を当てはめてみるという"Field Test"を実施したところ、本業とは関係のない、この年金債務や為替で利益が乱高下することが確認された。日本の企業社会は狭く、この話は、経営者の間で有名になってしまったのである。国際会計基準に対する一種のアレルギーができてしまった。

FASBでは、これから本格的な議論が始まると思われるが、 Herz議長が「改善版IFRS("improved version of IFRS")」という表現に拘っている(「Topics2007年11月13日 FASBのポジション」参照)ところに、この年金会計の問題も含まれていることを期待したい。

1月22日 E-mailed Pink Slip (2) Source : E-mailed Pink Slips Create 'Walking Negative Ads' (HR Daily)

以前、RadioShackが、Eメールで解雇通知を行ったことを紹介した(「Topics2006年8月31日(2) Emailed Pink Slip」参照)。その際、アメリカではこうした解雇通知が主流になっているのだろうか、との疑問を残していたが、上記sourceによれば、あるアンケート調査結果では、回答者の10%が『自社でEメールによる解雇通知を行っている』そうだ。

その他にも、従業員にとって不快な事項を伝える際に、直接の面会によらず、Eメールを使っている例が17%もあるらしい。

これらの数値を多いと感じるか、まだまだ少ないと感じるか、は、人それぞれだろうが、上記sourceは、厳に戒めている。そうした通知をEメールで受け取った従業員は、「負の広告塔」となってしまうからである。