Bush大統領が、29日、SCHIP延長法案(S. 2499)に署名し、同法案は成立した(「Topics2007年12月21日(3) SCHIP延長へ」参照)。これから、来年11月の大統領選をはさんで、1年3ヶ月の長い戦いがつづくことになる。
26日、企業が提供する退職者医療保険プランについて、年齢差別禁止法の適用除外規則(所管はEEOC)が発効した。これにより、退職者医療保険プランをMedicareや州政府の医療保障プランと組み合わせ、65歳未満を手厚くする一方、65歳以上の場合には公的医療保障の上乗せとして位置づけるという手法が合法化された。
これまで強く反発してきたAARPの訴えに、連邦最高裁は耳を貸す気はないようである(「Topics2007年9月13日(3) Erie事件は最高裁へ」参照)。 企業側も多くの労働組合も、この内容を歓迎しており、退職者医療保険プランの減少に多少とも歯止めがかかるものと思われる。
それにしても、1998年の告訴から9年が経っており、長い時間をかけての結論であった。
(2008年1月3日追加)
参考までに、EEOCが公表したQ&Aをここに置いておく。
おそらく、当websiteで取り上げるのは、これが最後になると思われるので、これまでのアーカイブをまとめておく。過去のtopicsを振り返ってみると、当初は雇用法制(年齢差別禁止法)の観点から分類していたのに、ある時点から、医療の課題として認識していることがわかった。一つのイシューなのに、自分の中で関心の持ち方が変わっていた。面白い発見である。
- 2002年7月18日 年齢差別禁止法と退職者医療保険
- 『2002年7月18日 年齢差別禁止法と退職者医療保険』(レポート)
- 2003年5月12日(2) 逆年齢差別
- 2003年7月15日(2) 年齢差別禁止法と医療保険
- 2003年7月17日(1) 年齢差別禁止法と医療保険 その2
- 2004年3月5日(1) Erie事件の決着は今年9月
- 2004年5月6日(1) EEOCの決定
- 2005年2月16日 Erie事件は依然未決着
- 2005年2月25日(1) EEOCの反論
- 2005年4月4日(1) AARPの勝訴
- 2005年9月30日(2) 退職者医療に光明か?
- 2007年3月1日(2) EEOCルールが丸2年ストップ
- 2007年6月14日(2) Erie事件ようやく収束か?
- 2007年9月13日(3) Erie事件は最高裁へ
上記sourceによれば、意図の有無、善悪は別にして、MA皆保険法逃れの手法がいくつかあるようだ。もちろん、ほとんどの企業は善意でMA皆保険法に従っており、その結果として、無保険者数も減少している。しかし、4、5は明らかに責任回避を主目的とした手法である。州議員達は『抜け穴は封じてやる』と怒っているそうだが、そうしたところで1〜3を選択するだけであり、本質的な解決にはならない。
手 法 効 果 1 医療保険プランの加入資格を広げる代わりに企業負担割合を削減する ・企業として"Pay"は求められない
・加入資格は広がっても従業員負担が重い、penaltyが軽い、などの理由により加入しない2 週労働時間数の引上げ等により加入資格を厳格化する ・企業として"Pay"は求められない
・従業員が加入資格を失っても低所得であるために州のプランに加入できるようになる
・州のプランに加入する方が従業員の負担も軽減される
・州プランの基金が不足する3 医療保険プランの提供をやめてしまう ・"Pay"しても、医療保険プランの提供コストよりはうんと少額で済む 4 従業員10人以下の企業に分割する ・"Pay or play"の対象とならない 5 従業員を独立した契約社員(自営業者扱い)にしてしまう ・"Pay or play"の対象とならない
今年の紅白歌合戦に、中村中が赤組で出場する。性同一性障害が社会的に認知されたということだろう。論理的な飛躍はあるものの、日本でも同性カップルを巡る議論がやがては出てくることになるのだろう。
さて、上記sourceで示された同性カップルの場合の企業ベネフィットについてまとめておこう。ここで注目しておきたいのは、それぞれの勤務先である企業のベネフィットに関する扱いである。
Kenny Polnasek (♂) Michael Kellison (♂) New Jersey州 勤務先 Johnson & Johnson
33年間勤務後退職Somerset Medical Center
8年間勤務1990年9月 "結婚式"を挙げる 2006年10月 州最高裁が州議会に対し「異性夫妻と同様の権利を同性カップルにも賦与する」よう司法命令を下す 2007年2月 州"Civil Union法"発効。同性カップルにも異性夫妻と同様の権利を賦与。 2007年9月29日 17周年を機に"civil union"式を挙げる 1ヵ月後civil unionとして申請 両社ともcivil unionとしての登録を拒否 2007年12月 Somerset Medical Center
civil unionにも異性夫婦と同様のベネフィットを提供すると決定2008年1月1日 Somerset Medical Centerの決定発効 やはり、医療保険に関しては、ERISAとの相反は大きな課題となっているのである。
- NJ州法上は、civil unionにも異性夫婦と同様の権利を賦与する、といっても、ここで紹介されている企業は、いずれも自己保険プラン(self-insured plan)を採用しており、ERISAの適用を受ける。ERISAの適用を受けている限り、州法の適用は受けない。つまり、civil unionに同等のベネフィットを提供しなくても、法律違反状態にはならないということである。
- それでも、Somerset Medical Centerは、同等のベネフィットを提供することを経営方針として決定し、州法の実効性を担保することとしたのである。
- Johnson & Johnsonは、医療については同等のベネフィットを提供しないままではあるが、年金プランではなんら問題ないとのコメントをしている。年金プランの場合には、従業員本人が亡くなった場合の受取人は任意に指名できるので、事実上、州法の実効性は担保できるということである。
2007年も、いよいよ最後の旬に入りました。
何かとお忙しいこととは思いますが、この年の瀬を元気に乗り切り、よいお年をお迎えください。
さて、今月13、17日に、SEC主催でIFRS採用に関する円卓会議が開催された(「Topics2007年11月16日(1) SEC IFRS採用を決断」参照)。全体の議事の流れからいって、いつの日にかアメリカ市場がIFRSsに全面移行することは確定的である。以下、ポイントをまとめておく。
- 選択制か義務化か
(主な意見)
- 短期的には、IFRSとアメリカ基準の選択制。長期的な目標としては、IFRSへの全面移行。
- 一定の時期に、IFRSへ全面移行すべき。
- 移行の手法も議論すべき。たとえば、大企業から段階的に移行。
- 選択制にした場合の問題点
(主な意見)
- 既に多くの諸国がIFRSに移行しており、アメリカ市場の競争力が削がれる。
- 比較可能性が低下し、余計に複雑化する。
連邦下院のJohn Shadegg (Arizona Republican)議員が、"The Health Care Choice Act"という法案を提出した(Press Release)。法案の主旨は、個人が州を越えて医療保険プランを選択(=購入)できるようにする、というものである。
上記sourceは、この法案を支持する内容となっている。そのポイントは次の通り。面白いのは、Shadegg 議員も上記sourceも、New Jersey州の保険料がかなり高いことを例示として出している点である。Shadegg 議員が引用したNCPAの試算では、健康状態が良好な25歳男性が負担する保険料は、Kentucky州で$960(年)、New Jersey州で$5,880となっているそうだ。
- 医療保険市場は、3つに分かれている。
- 大企業向け:これはERISAの規制に基づくものであり、州の法律には縛られない。
- 小規模グループ(2〜50人)向け:州法により規制されている。
- 個人向け:州法により規制されている。
- 医療保険に関する州法の内容により、医療保険市場は大きく異なってくる。
- また、州法で医療保険プランの内容に盛り込むべき事項も異なるため、保険料も大きく異なる。
Idaho州で規定されている事項は14しかないが、Minnesota州では63項目にものぼる。
- 同法案に対して、州民を保護する規制が徹底しなくなる、との批判がある。
- しかし、大企業の医療保険プランはすでに州法の規制外である。
- 個人市場で保険を購入した場合でも、大抵はポータビリティは確保されており、移動先の州法には縛られない。
- 州を越えて個人が保険を購入できるようにすれば、競争が高まり、個人にとっての選択肢も増す。
少し調べてみると、この法案は、毎年のように提出され、審議未了、廃案となっているようだ。共和党の大好きな、『市場原理による価格抑制⇒無保険者の解消』という論理が貫かれているため、民主党からの支持が得られないらしい。
しかし、ちょっと見方を変えてみると、購入できる保険プランの選択肢を増やすという意味では、Clinton上院議員の「FEHBPへの加入を認める」という提案にも相通ずるものがあるのではないだろうか(「Topics2007年9月18日 Clinton提案」参照)。
19日、SCHIP延長法案が、下院で圧倒的賛成多数により可決された(「Topics2007年12月20日(1) SCHIP延長法案上院通過」参照)。HHSのLeavitt長官は「Bush大統領は署名するだろう」と述べているし、大統領報道官も歓迎のコメントを公表しているようで、成立は間違いないようだ(Kaisernetwork、White House Press Secretary)。
ただ、この報道官のコメントの中で、議会共和党と同様、2009年3月まで延長されたことで、「2008年の大統領選で民主党が政争の具に持ち出すことを回避できた」との理解を示している。これは本当だろうか。まして、レームダックになっているBush政権にそんなことを言えた筋合いではないだろう。おそらく、玉虫色の解決による大統領、共和党の面子の確保、といったところであろう。
それにしても、Pelosi下院議長は、なかなかリーダーシップを発揮させてもらえないようだ。