18日、SCHIP延長法案(S. 2499)が満場一致で上院を通過し、即日、下院に送付された。ポイントは次の通り。2.のMedicare償還額の件は、Bush改革により、来年1月から10%削減が予定されていた。民主党としては、一応大幅削減を食い止めた形になった。
- SCHIPの現行制度を、2009年3月31日まで延長する。現在の給付水準を維持するために必要な州への補助金も確保する(「Topics2007年11月2日 SCHIP拡充修正法案を上院可決」参照)。
- Medicareの医療機関への償還額を、(2008年1月1日から)6ヵ月間、0.5%引き上げる(「Topics2007年7月25日 CHIP+Medicare」参照)。
上記sourceは、各州政府の職員に関する年金、退職者医療等の給付債務と積立状況をまとめたものである。ポイントは次の3つのグラフに集約される。
年金と退職者医療等の積立不足額は、ほぼ同規模と考えてよさそうである。
ただし、年金の方はかなりの水準で積み立てられているのに対して、退職者医療等は、軒並み0%が並んでいる。ちなみに、当websiteで紹介したTX州、CT州も、退職者医療等についてはまったく積んでいない(「Topics2007年12月4日 TX州の孤独な闘い」参照)。GAS45が嫌なわけである。
その一方で、WI州などは、孤独に、地道に積み立てていて、年金100%、退職者医療等99%と、ほぼ完璧な状態となっている。ドイツ系が約半数(42.6%)を占めるという、WI州ならではの気質が幸いしているのかもしれない。
17日、加州下院で、皆保険法案(ABX1 1)が可決された(「Topics2007年12月17日(2) 加州皆保険制度合意」参照)。報道によれば、上院での議決は、年を越す予定のようだ。
報道ベースでの法案内容を改めてまとめてみる。
ABX1 1 新法案内容(報道ベース) 無保険者の解消 無保険者の3分の2が保険に加入すると推計 ・510万人の無保険者のうち、370万人(うち子どもは80万人)が保険に加入する見込み。
・100万人の非合法移民は対象外
・公的保障プログラムへの加入を拒否している、または合法的な居住者であることを証明できない50万人も、無保険者のままとなる。保険加入義務
- 全州民に保険加入義務を課す。
- ただし、保険料、窓口負担、免責額などすべてを合計した医療費総額が家計所得の6.5%を上回る場合には、加入義務を免除する。
ほぼすべての加州民が保険加入義務を負う。 個人事業主の扱い 同様の保険加入義務を課す 事業主負担 "Pay or play"原則。給与水準に応じて、最低、給与総額の2〜6.5%を医療保険に拠出する。医療保険を提供しない場合には、基金(後述)に拠出する。 医療保険を提供しない場合には、給与総額に応じて保険購入基金に拠出する。
- 給与総額$25万以下:給与総額の1%
- $25万〜$1M:給与総額の4%
- $1M〜$15M:給与総額の6%
- $15M超:給与総額の6.5%
診療機関からの拠出金 診療報酬の4%相当を拠出する $2.3Bの拠出(診療報酬の4%相当)。これにより、連邦政府からも新たに$2.3Bの拠出を得られる。(診療機関は合意している。) Medi-Calの償還額 Medi-Calの償還額を、Medicareの償還額の80%に引き上げる 低所得者層を対象とした
公的保証プログラムの拡充
- Healthy Familiesの対象を、FPL133〜300%の家庭の子供に拡張する。その際、移民の法的資格は問わない。
- Healthy Familiesの対象を、FPL133〜300%の家庭の親に拡張する。
- Medi-Calの対象を、FPL250%以下の単身成人に拡充する。
- Medi-Calの対象を、FPL250%未満の19、20歳に拡充する。
- 新たに、FPL100%以下で子供のいない成人を対象とする新プログラムを創設する。
- FPL250〜450%の個人を対象に、税制上の支援策を検討する。
- FPL150%以下の家庭には、保険料及び自己負担の全額を補助する。
- FPL151〜300%の家庭には、所得の5%を上回る保険料負担を補助する。
- 100万人の非合法移民は対象外
- 合法的な居住者であることを証明できない者も、無保険者のまま。
- FPL250%未満:保険料に対する補助金を支給する。
- FPL250%以上400%未満:所得の5.5%を上回る保険料負担について、税額控除を認める。
- FPL700%未満:所得の10%を上回る保険料負担について、税額控除を認める。
- 65歳未満でMedicare対象とならない退職者:貯蓄の10%を上回る保険料負担について、税額控除を認める。
- FPL300%未満の家庭の子どもは保険加入できるようにする。
州所得税 FPL250〜450%で、公的保証プログラムへの加入資格を持たない個人については、還付付きの税額控除制度を検討する。 保険市場改革
- 2010年までに、全ての保険プランは、深刻な病状がない限り、申請者の加入を保証し、個人市場における地域保険料(年齢、地域によるもので、健康状態によるものではない)を適用しなければならない。
- 加入手続きを簡素化する。
- 保険プランの内容として、5つのレベルの選択肢を用意しなければならない。
- 現行の小グループ市場の規制を、中規模企業(従業員51〜100人)を対象とした保険プランに適用する。
- 保険料収入の85%以上を、償還に充てなければならない。
- CA Cooperative Health Insurance Purchasing Program (Cal-CHIPP)を創設し、加入者のための医療保険の交渉、購入を行う。
- FPL300%未満の家庭については、保険料負担が家計所得の5%を超えてはならない。Cal-CHIPPはそうなるように保険料を設定する。
(多くの保険会社は合意しているものの、加州最大のBlue Cross of Californiaは、州民投票で反対を呼びかける予定である。)
- 病状、年齢によって保険加入拒否はできないようにする。
- 保険料収入の85%以上を、償還に充てなければならない。
州たばこ税 1パック¢87から$2.87に引き上げる。この引き上げにより、$2Bの増収が見込まれる。 1パック$1.5の引き上げ幅で充分かどうかを検討する。$2の引き上げ幅が必要となると、たばこメーカーは反対する見込みである。 無保険者の自動加入 無保険者は自動的にCal-CHIPPに加入できるよう、制度を検討する。 施行スケジュール
- 2009年1月:Cal-CHIPP創設
- 2009年7月:保険会社に85%ルールを適用
- 2010年1月:加入保証ルールを適用
- 2010年7月:Meci-Cal、Healthy Familiesの適用拡大
当websiteで紹介している通り、個人に医療保険プランへの加入を義務付けることで無保険者を解消しようという流れが強くなっている。
しかし、そうした政策提案に対する疑問が投げかけられている。まずは、New York Timesに寄せられた意見。次に、Health Affairsに掲載されたブログ記事。
- ニクソン大統領以来、たくさんの加入義務政策が採られてきたが、実際には無保険者の増加を止められていない。
- それは、医療費の抑制ができないからだ。医療費の抑制ができなければ民間保険の保険料はどんどん高まってしまう。
- 国による単一保険プランしか、解決方法はあり得ない。
両者に共通しているのは、医療費抑制のメカニズムが必要という点。この点、日本やカナダのように、診療報酬が公定価格になっていれば、簡単に引き上げられない。90年代前半のヒラリーの悪夢を恐れるばかりに、単一保険のメリットが充分に検証されていないのかもしれない。
- 個人への加入義務が効果をあげるためには、次の3つの条件が満たされていなければいけない。
- 保険市場改革と補助金により、医療保険を購入可能な価格に抑えておく。
- 保険加入の有無を確実に判別するインフラを整備する。
- 保険に加入しない個人にとって本当に痛みとなるペナルティを課す。
他方、MA州の皆保険制度は、上記3つの条件を満たしているように思う。その意味で、MA州の制度への評価は、今すぐにではなく、もう少し時間をおいてから行った方がよいと思う(「Topics2007年11月27日 MAが試金石?」参照)。
先週12日、Bush大統領は、下院のSCHIP拡充修正法案(HR 3963)に拒否権を発動した(「Topics2007年11月2日 SCHIP拡充修正法案を上院可決」参照)。理由は、次の一文で言い尽くしている。"Ultimately, our Nation's goal should be to move children who have no health insurance to private coverage --not to move children who already have private health insurance to government coverage."これに対して、下院は、大統領拒否権を覆す投票を、来年1月23日に行うことで議決した。
いよいよ、SCHIP拡充については、2008年の選挙に向かって議論が行われることが確定的となった。
上記sourceによれば、シュワ知事とNuñez下院議長の間で、合意が成立し、今週にも下院議会に法案が提出され、議論が開始されるそうだ。上院のDon Perata議長も基本的には合意しているようだが、さらに法案の詳細を見てから上院で議論するとのことである。
シュワ知事と加州議会民主党は、本案をもって、来年11月の州民投票にかける意向である。
詳細はまだ明らかになっていないようだが、既に加州議会民主党が提出した法案(ABX1 1)と上記sourceの内容を比較した形でまとめると、次のようになる(「Topics2007年11月20日(1) 加州議会民主党法案」参照)。
ABX1 1 今回の合意内容(報道ベース) 無保険者の解消 無保険者の3分の2が保険に加入すると推計 ・80万人が新たに保険加入可能となる。
・100万人の非合法移民は対象外
・公的保障プログラムへの加入を拒否している、または合法的な居住者であることを証明できない50万人も、無保険者のままとなる。保険加入義務
- 全州民に保険加入義務を課す。
- ただし、保険料、窓口負担、免責額などすべてを合計した医療費総額が家計所得の6.5%を上回る場合には、加入義務を免除する。
ほぼすべての加州民が保険加入義務を負う。 個人事業主の扱い 同様の保険加入義務を課す 事業主負担 "Pay or play"原則。給与水準に応じて、最低、給与総額の2〜6.5%を医療保険に拠出する。医療保険を提供しない場合には、基金(後述)に拠出する。 診療機関からの拠出金 診療報酬の4%相当を拠出する $2.3Bの拠出。これにより、連邦政府からも新たに$2.3Bの拠出を得られる。(診療機関は合意している。) Medi-Calの償還額 Medi-Calの償還額を、Medicareの償還額の80%に引き上げる 低所得者層を対象とした
公的保証プログラムの拡充
- Healthy Familiesの対象を、FPL133〜300%の家庭の子供に拡張する。その際、移民の法的資格は問わない。
- Healthy Familiesの対象を、FPL133〜300%の家庭の親に拡張する。
- Medi-Calの対象を、FPL250%以下の単身成人に拡充する。
- Medi-Calの対象を、FPL250%未満の19、20歳に拡充する。
- 新たに、FPL100%以下で子供のいない成人を対象とする新プログラムを創設する。
- FPL250〜450%の個人を対象に、税制上の支援策を検討する。
- FPL150%以下の家庭には、保険料及び自己負担の全額を補助する。
- FPL151〜300%の家庭には、所得の5%を上回る保険料負担を補助する。
- 100万人の非合法移民は対象外
- 合法的な居住者であることを証明できない者も、無保険者のまま。
- FPL250%未満:保険料に対する補助金を支給する。
- FPL250%以上400%未満:所得の5.5%を上回る保険料負担について、税額控除を認める。
- 65歳未満でMedicare対象とならない退職者:貯蓄の10%を上回る保険料負担について、税額控除を認める。
州所得税 FPL250〜450%で、公的保証プログラムへの加入資格を持たない個人については、還付付きの税額控除制度を検討する。 保険市場改革
- 2010年までに、全ての保険プランは、深刻な病状がない限り、申請者の加入を保証し、個人市場における地域保険料(年齢、地域によるもので、健康状態によるものではない)を適用しなければならない。
- 加入手続きを簡素化する。
- 保険プランの内容として、5つのレベルの選択肢を用意しなければならない。
- 現行の小グループ市場の規制を、中規模企業(従業員51〜100人)を対象とした保険プランに適用する。
- 保険料収入の85%以上を、償還に充てなければならない。
- CA Cooperative Health Insurance Purchasing Program (Cal-CHIPP)を創設し、加入者のための医療保険の交渉、購入を行う。
- FPL300%未満の家庭については、保険料負担が家計所得の5%を超えてはならない。Cal-CHIPPはそうなるように保険料を設定する。
(多くの保険会社は合意しているものの、加州最大のBlue Cross of Californiaは、州民投票で反対を呼びかける予定である。)
- 病状によって保険加入拒否はできないようにする。
- 保険料収入の85%以上を、償還に充てなければならない。
州たばこ税 1パック¢87から$2.87に引き上げる。この引き上げにより、$2Bの増収が見込まれる。 1パック$1.5の引き上げ幅で充分かどうかを検討する。$2の引き上げ幅が必要となると、たばこメーカーは反対する見込みである。 無保険者の自動加入 無保険者は自動的にCal-CHIPPに加入できるよう、制度を検討する。 施行スケジュール
- 2009年1月:Cal-CHIPP創設
- 2009年7月:保険会社に85%ルールを適用
- 2010年1月:加入保証ルールを適用
- 2010年7月:Meci-Cal、Healthy Familiesの適用拡大
全体を通してみると、@非合法移民を皆保険の対象としない、Aたばこ税の引き上げ幅について考慮する、といったところが、共和党への配慮と見られる。
アメリカでも、事実を積み重ねたレポートよりも、ジャーナリスティックなレポートの方が読まれる。その意味でも、EBRIのレポートは重要である。
上記sourceは、企業が提供する医療保険プランの現状と将来についてまとめたレポートである。ポイントは次の通り。こうしてみると、やはり最後の7点目は、気になるところである。アメリカ企業も、労働市場で有能な人材を確保しなければいけないので、横並びを気にするのは当然だろう。かなりのコスト増が予想される医療保険プランは、労働者から嫌われない限り、落としてしまいたいと考えていても自然の流れである。何かのきっかけで優良企業が医療保険プランの提供をやめれば、いい切っ掛けとなるのは間違いない。
- データからみて、企業が提供する医療保険プランが目立って減少しているわけではない。
- 医療保険プランに加入できる従業員の割合も大きく変わっているわけではない。
- むしろ、加入資格があるのに企業の医療保険プランに加入していない従業員割合が増えている。ただし、その中で無保険者になっている割合は5%にも満たない。
- こうした結果、企業が提供する医療保険プランでカバーされている割合は、若干低下している。
- 多くの企業経営者は、企業の医療保険プランの現状は変革する必要はあると考えている。また、企業が医療保険プランを提供する理屈もあるし、改善のための投資もしたいと考えている。
- 医療保険プランの提供者として企業が相応しいのかどうか、という点では、経営者の間でも意見が分かれている。
- 多くの経営者は、有名大企業が医療保険プランの提供をやめれば、他の企業も追随するだろうとみている。ERISAのpre-emption規定が緩まれば、医療保険プランを提供する企業はなくなるだろうともみている。
企業年金の場合、そのきっかけはPPAであった(「Topics2006年8月18日(1) PPAへの評価」参照)。医療保険プランの場合はどうだろうか。少なくともGMの退職者医療プランのVEBAへの移行は、その切っ掛けにはなっていないようである(「Topics2007年9月27日 VEBA設立へ」参照)。
PA州Rendell知事は、今年1月、無保険者対策として、"Cover All Pennsylvainans - CAP"計画を公表した(「Topics2007年1月19日(2) PA州知事も皆保険提案」参照)。その時点では、他州と同様、"Pay or Play"ルールを導入することを提案していた。
Rendell州知事自身による上記Press Releaseによれば、その際、この"Pay or Play"ルールだけが批判された、との認識に立ち、このほど、別の財源による手当を提案した。別の財源とは、次の通り。
○Health Care Provider Retention Accountの余剰金を活用する既に関連法案(S 1137)は州議会で審議されている。下院では、今月17日にも投票が行われる見込みとのことである(Kaisernetwork)。
- Health Care Provider Retention Account
- 2003年、Health Care Provider Retention Actに基づき設立
- 医療過誤補償のうち、基礎的な補償額を超える部分の支払いを行うMcareの財源とする。これにより、医療機関の医療過誤保険料負担を軽減する。
- たばこ一箱あたり25セントを賦課する。
- その後、医療過誤を巡る環境が大きく改善し、この5年間の医療過誤訴訟と補償額が激減したため、Mcareへの支払いが不要となった。
- そのため、Health Care Provider Retention Accountには、現在$400Mの積立金がある。
- その他の財源やたばこ税増税も、CAPに充てる。
州レベルで"Pay or Play"ルールに頼らず皆保険を目指すことになれば、新たなモデルとなる。ただし、残念なことは、余剰財源を見つけてくるというのは、普遍的な手段ではないことである。
上記sourceによれば、テレワークは、従業員にとっても企業にとってもメリットがあるとのことである。しかも、20年間の実証研究から得られた結論だという。一点だけ、テレワークの欠点が指摘されている。それは、週のうち3日以上テレワークをやっていると、同僚との関係が悪化するというものである。
- テレワークの定義
- 中心となる働き場所とは異なる場所で働く。
- 一定期間の間のある割合は、その異なる場所で働く。
- 社内外の相手と電子メディアを利用してやり取りする。
- 従業員にとってのメリット
- 仕事のやり方をコントロールできる。
- 仕事の満足度が高まる。
- ストレスが低下する。
- 仕事と家庭の両立が図れる。
- 特に、女性にとってのメリットが大きい。
- 企業にとってのメリット
- 転職率が低下する。
- 業績が改善する。
そもそも、この調査は、IT部門と販売・マーケティング部門に限定したものである。そのうえに、アメリカ人の職場の環境を思い浮かべてもらいたい。管理職になれば個室は当たり前、スタッフレベルでもブースに区切ったりして、職場でも孤立化している状況である。職場に出ていても、同僚や上司とのコミュニケーションは、会議とメールだけ、という世界も珍しくない。
そうした中でのテレワークであり、上述のような結果が出てくるのも当然だろう。日本では、熱を出して休んでいても、追っかけてくるようなチームワークが基本にあり、職場を3日も離れて仕事をするなんて、ほとんど想像できない。
日本でもテレワークが必要になってきているが、仕事のやり方や業務分担からきちんと見直さなければ定着しないだろう。