11月9日 IFRS採用への懸念 Source : If IFRS Offer the Answer, They Sure Raise a Lot of Questions (Financial Executive)

上記sourceは、FEIが発行している"Financial Executive"の11月号からの抜き刷りである。

財務諸表を準備する側のCFOsにとっては、理想に飛びつくわけにはいかず、実務的な観点から、IFRS採用には様々な懸念、解決すべき課題が山のようにあることを語っている。

中でも、George Washington UniversityCunningham教授の引用は、かなりの説得力を持つ。
“A false sense of global comparability under a veneer of nominal uniformity. Uniformity in written standards could disguise considerable diversity in actual practice.”

Cunningham noted cases of EU members ignoring EU directives, Italy and France exercising national sovereignty to resist corporate takeovers and various countries establishing their own national version of IFRS.

“It is naive to believe that any uniform global accounting standards will be applied uniformly in all these places,” Cunningham wrote, “whatever securities regulators may agree to.”
形式的に会計基準を統一しても、その運用が本当に統一されるのか、という本質的な疑問である。

そうしたCFOや学者の懸念が渦巻く中、SECは、外国企業によるIFRS利用を認めるかどうか、今月15日に討議する予定である。

11月8日 カナダ人の倫理観 Source : Is Canada's health system a cure for U.S.? (Dallas Morning News)

上記sourceは、 という議論を紹介している。特に目新しい話があるわけではない。

管理人は、次のフレーズに惹かれたのである。

Many Canadian physicians and hospital administrators have worked or trained in the United States, where they marvel at the advanced technology and research but shudder over the plight of the uninsured.

"I have family in Houston. I've walked past the blocks of elite hospitals for heart patients, cancer research, and I've thought, 'This would be so wonderful to work here,' " said Michele Lahey, chief operating officer of Capital Health, the nonprofit medical care provider for Edmonton and northern Alberta. "But then I think, ethically, why would I want to? We don't accept that health care is a market issue, and in the U.S., you do."

これだけアメリカの医療ビジネスに触れていながら、倫理観として市場に任せてはいけないと思える強さは、どこから来るのだろうか。当websiteでは、過去にも、同様の問題意識を披瀝したことがある(「Topics2006年1月11日(2) カナダの会計基準」参照)。

同じような経験は、他の日本人からも聞いたことがある。この不思議感を何とか解消したいものである。

11月7日(1) 加州議会の譲歩 Source : California Democrats Announce New Health Care Proposal That Includes Coverage Mandate (Kaisernetwork)

加州議会民主党が、譲歩案を提示した。シュワ知事の譲歩案を受けての提案である(「Topics2007年10月11日(1) シュワ知事法案」参照)。法案の詳細はまだ明らかになっていないそうだが、上記sourceで報じられている概要は、次の通り。
  1. 保険加入義務

    1. 州民に保険加入義務を課す。

    2. ただし、保険料、窓口負担、免責額などすべてを合計した医療費が、家計所得の6.5%を上回る場合には、加入義務を免除する。

  2. 低所得者層への支援

    1. FPL300%未満の家計に対しては、公的医療保障プログラムを拡充する。

    2. FPL300〜450%の者に対しては、税制上の優遇措置を講じる。

    3. FPL150〜300%の者に対しては、保険料及び免責額の支払いを免じる。

    4. FPL450%未満の家計に対しては、保険料負担のうち家計所得の5%を超えた分については、税額控除する。

  3. 財源確保

    1. 事業主負担
      給与水準に応じて、最低、給与総額の2〜6.5%を医療保険に拠出する。

    2. 州たばこ税
      1パック¢87から$2.87に引き上げる。この引き上げにより、$2Bの増収が見込まれる。

    3. 診療機関からの拠出金
シュワ知事と州議会民主党との間で残されていた2つの争点のうち、
@加入義務については、低所得者層を除くという条件付ではあるが、議会民主党が完全に譲歩した。
A企業拠出については、シュワ知事の主張との中間点を狙った感じではあるが、歩み寄っていることには違いない。

おまけに、シュワ知事の当初提案には含まれていて、一旦は診療機関側も合意していながら、シュワ知事法案(10月)では落ちていた「診療機関からの拠出金」が復活している(「Topics2007年1月9日 シュワ知事の提案」「Topics2007年9月12日 CA州医療改革は延長戦へ」参照)。

ここまでの情報を見る限り、加州議会民主党は、法案成立を期して譲歩案を提示してきたように思える。実際、上記sourceによれば、州知事報道官は「前向きな動き」として評価しているし、加州医師会も「事態の打開につながる」と論評している。

加州が皆保険に向かって第一歩を踏み出せるかどうか、いよいよ正念場にさしかかったようだ。

11月7日(2) Fordも仮妥結 Source : Union and Ford Reach Tentative Deal (New York Times)

3日未明、FordUAWの労使協定が仮妥結に至った。他の2社とは異なり、ストライキ突入はなかった。

詳細は明らかになっていないが、報道ベース(The Detroit News)で当方の関心事項は次の2点。
  1. 退職者医療については、他の2社と同様、VEBAを設立する。現金による拠出割合は40%となっており、GM(54%)、Chrysler(59%)にくらべてかなりの低水準となっている。(ということは、将来の株価反転を見込んでの転換社債中心か)

  2. ジョブ・バンクに登録できるのは、1年間に限定される(「Topics2006年1月25日 Fordのレイオフ対策」参照)。
最後にいつもの株価動向。 ⇒ GM  Ford

Fordの株価は、あまり好反応を示していないのである。内容が期待はずれであったということか。

11月5日 シュワ知事一笑に付す Source : Schwarzenegger not interested in run for Senate (The Sacramento Bee)

2日、San Joseで開かれた会合でのスピーチで、シュワ知事は、「上院議員も、LA市長も関心ない」と明言した。

当websiteでは、開設以来、政治家シュワちゃんにスポットを当ててきた。 この他にも、医療関係で数多く話題を取り上げてきた。CA州知事に立ったのも、再選に臨んだのも、いずれは上院議員に立つことを念頭に置いての政治活動だばかり思い込んできた。

ところで、妻マリアの涙の話は、シュワちゃんの人柄が偲ばれる。この記事を読んだCA州民の間では、「やはり、シュワ知事は妻思いの優しい男性だ。上院選挙にも出ないのだろう」となり、さらにシュワ知事人気が高まることだろう。

映画スターならここでお終いだが、シュワちゃんは、今現在、政治家なのである。上院議員選挙に出ないと宣言することは、現職の民主党Barbara Boxer上院議員の議席を脅かさない、と宣言するようなものである。つまり、今議会との間でスタックしている医療保険改革について、政治的妥協を求めている、とも読めるのである。

さらにしたたかな政治家であれば、ディールを成立させた上で、2010年になったら、状況が変化した、とかいって、ちゃっかり上院議員選挙に出馬する、という可能性すらある。

ここまでやったら、シュワちゃん人気がもつかどうかはわからないが、政治家なら、それくらいのしたたかさと計算高さを持っていても非難されることはないだろう。

(11月7日追加)
シュワ知事のスピーチを読むと、何と、「マリアは大統領候補にどうか」との質問から、一連のシュワ知事の発言が始まっている。ちょっと下品な質問だったようだ。これではシュワ知事も、いろいろな意味でむくれるかもしれない。売り言葉に買い言葉的に、弾みで発言してしまったような気がする。

11月2日 SCHIP拡充修正法案を上院可決 Source : Expecting Presidential Veto, Senate Passes Child Health Measure (New York Times)

1日、下院SCHIP拡充修正法案(HR 3963)(「Topics2007年10月26日 下院SCHIP拡充修正法案可決」参照)を、上院が可決した。投票結果は64 v 30であった。

下   院
上   院
SCHIP拡充法案
HR 976
第1回(9/25)賛成反対棄権 第1回(9/27)賛成反対棄権
民主党22084 民主党4902
共和党451515 共和党18292
合 計2651599 合 計67294
第2回(10/18)賛成反対棄権
民主党22922
共和党441542
合 計2731564
SCHIP拡充修正法案
HR 3963
第3回(10/25)賛成反対棄権 第2回(11/1)賛成反対棄権
民主党222110 民主党4704
共和党4314116 共和党17302
合 計26514226 合 計64306
今回の上院の投票結果を見ると、賛成が64しかなく、下院と同様、大統領拒否権を覆すことはできない状況に陥った。

個別の議員の動向を見ると、上院共和党の実力者、Mitch McConnellTrent Lottの二人が、前回、今回とも反対している。また、民主党の社会保障の権威、Edward Kennedy は、前回、今回とも賛成である。ちなみに、Clinton上院議員は、第1回賛成、第2回棄権、となっている。

上記sourceにより、投票までの経緯を見てみると、民主党も共和党も、相手の非協力的対応を非難するばかりで、成立にむけての努力など、中身についての議論はほとんどなされていないようだ。

このままWhite Houseに送られれば、Bush大統領が拒否権を発動することは確実であり、今の状況では、上院下院とも、大統領拒否権を覆すことができない可能性が高い。

その場合、民主党は、来年の大統領選、議会選の直前に、議会で法案を審議し、大統領府に送付することを考えているようだ。

ただし、州政府からは、今の状況では、財源不足から、来年秋まで制度を継続することは難しい、との悲鳴があがっている(CA、NJ)。このあたりも、今後の波乱要因となるかもしれない。

11月1日 New Mexico州知事の皆保険提案 Source : Health Solutions New Mexico (Governor Bill Richardson)

先月25日、New Mexico州Richardson知事が、皆保険法案の骨子を公表した。ポイントは次の通り。
  1. Health Coverage Authority (HCA) の創設=医療保険政策、執行機関の一元化

    理事会の構成は次の通り。

    1. 4名:州知事の指名、上院による承認
    2. 4名:議会(両院2名ずつ)による推薦、州知事による指名
    3. Secretary of the Department of Health またはその指名した者
    4. Secretary of the Human Services Department またはその指名した者
    5. Chair or the New Mexico Public Regulation Commission (NMPRC) またはその指名した者

  2. 保険市場改革

    1. 保険料収入の85%以上を償還にまわす。
    2. 2009年1月1日より、病歴による加入拒否を禁止する。
    3. 健康状態または過去の保険利用状況に伴う保険料の加減幅を、5年かけて縮小する。
      • 現在:上下20%
      • 2009年度:18%
      • 2010年度:16%
      • 2011年度:14%
      • 2012年度:12%
      • 2013年度:10%

  3. 皆保険への仕組み

    1. 加入義務の段階的導入
      • 2010年1月1日:公的保障プログラムまたは民間保険への加入、もしくは医療費を負担できる財政力があることの証明を、州民に義務付ける。
      • 2010年度:運転免許証の新規交付・更新、学校への入学、納税申告、企業採用などの際に、保険加入を確認する。
      • 2011年度:FPL400%以上の個人、FPL300%未満の家庭の子供について、保険加入の証明を求める。
      • FPL300%未満の個人については、企業が提供していない、または公的保障プログラムに加入できない場合には、加入を義務付けない。

    2. Pay or Play
      1. 2009年度より、従業員規模6人以上の企業には、従業員が非課税で選択加入できる保険プランの提供を義務付ける。
      2. 医療保険を提供しない場合は、"Healthy New Mexico Workforce"に、従業員の人数に応じた拠出を義務付ける。
      3. 小規模企業の従業員について、非課税で保険加入できるよう検討をすすめる。
      4. 保険プランを提供しているにもかかわらず、保険に加入していない従業員の情報を収集する。
      5. 少数民族、先住民族が経営する企業については、拠出ルールを適用しない。
      6. "Healthy New Mexico Workforce"への拠出金は、保険のない企業の従業員対策、公的保障プログラムの拡充に利用する。

    3. New Mexico Medical Insurance Pool (NMMIP) の拡充、その他公的リスクプールの統合
Richardson知事は民主党ではあるが、州レベルでまじめに皆保険を目指すのであれば、個人の加入義務は避けて通れないであろう。まさにMA州がそうであったように。シュワ知事のCA州は、民主党議会が加入義務に反対しているが、これはちょっと珍しいのではないだろうか(「Topics2007年10月11日(1) シュワ知事法案」参照)。