White HouseによるBig 3(正確には2)への緊急融資が決まった。Bush大統領は、TARP基金を利用した緊急融資は好ましいとは思っていなかったが、連邦議会が緊急融資を決めず、このまま政府による支援が行なわれなければ、と、様々な理由を並べて、緊急融資に踏み切った。
- 世界経済が危機に陥っている状況でBig 3が破綻すれば大きなダメージを被る。
- 110万人の失業者が発生する。
- 失業保険給付が増大する。給付必要額は$13Bに達する。
管理人コメント⇒州政府の失業保険資金は枯渇しつつあり、ここで大量失業者が発生すれば、間違いなく連邦政府による救済が必要となる州が出てくる(「Topics2008年12月16日(2) 失業保険資金の枯渇」参照)。- 大量の国民が、退職者も含めて医療保険を失い、Medicaidに加入するようになる。これは州政府にとって大変な負担となる。
さて、緊急融資の中身だが、結構、当websiteの関心事項が多いため、丁寧に観察しておきたいと思う。
- 融資目的
- 国内自動車産業の再建
- 経済状況が悪化している中での無秩序な破綻を回避
- 再建可能な企業にのみ融資することで納税者を保護
- 融資総額:$17.4B
- 現大統領に権限を与えられているTARP基金から$13.4B。残り$4Bは、来年2月に連邦議会の承認を得て融資
管理人コメント⇒来年2月は、Obama新大統領、民主党主導の連邦議会での決断となる。次の項目と併せ、これでGMの命運は民主党に握られたことになる。。- GMへの融資(総額$13.4B)は段階的に行なわれる。
2008年12月29日 $4.0B 2009年1月16日 $5.4B 2009年2月17日 $4.0B
最後の$4.0Bは、連邦議会の承認を要する。管理人コメント⇒GMは直接融資として$12Bを要請していた(「Topics2008年12月4日 Big 3の救済要請」参照)。総額としてはこれを上回っているが、分割になっていることが手許流動性に影響しないかどうか。。- Chryslerへの融資(総額$4.0B)は、2008年12月29日。
管理人コメント⇒一方、Chryslerは直接融資として$7Bを要請していた(「Topics2008年12月4日 Big 3の救済要請」参照)。融資額として充分なのかどうか。。- 利子率
max[LIBOR(3ヵ月), 2.00%] + 3.00%(破綻した場合には8.00%)
管理人コメント⇒つまり、充分な再建計画が示されなければ、いつまでも最後の融資分は出さないよ、ということ。次のX-dayは来年2月17日である。。
管理人コメント⇒UAWが最も反発する可能性の高い項目である。この条件を巡って、UAWが譲歩しなかったために、連邦議会での審議が頓挫した経緯がある(「Topics2008年12月15日 Big 3 救済法案不成立」参照)。また、日本のメーカー3社のみが名指しにされているところにも驚く。しかも、たった1年間で同等水準にもっていけ、というのは、これまで以上に厳しい条件が付されたことになると思う。
やはり、再建が可能になるかどうかは、UAWの対応次第ということになりそうだ(「Topics2008年12月8日 鍵を握らされたUAW」参照)。
管理人コメント⇒これは、既にUAWも譲歩の意向を示している(「Topics2008年12月4日 Big 3の救済要請 」参照)。
管理人コメント⇒ここも、UAWにとっては厳しいところである。再建されるかどうか、また、遠い将来にわたっても株価が維持され続けるのか、極めて不安定性の高い財源となってしまう。かといって、本当に破綻となってしまえば、VEBAそのものが成り立たなくなる。厳しい選択を迫られている(「Topics2008年12月9日(1) UAWが半分負担か」参照)。
当websiteでは、良い雇用環境にある職場の代表例として、Best Buyを紹介してきた(「Topics2008年11月13日 Circuit City 破綻」参照)。そのBest Buyも経営が苦しいらしく、本社従業員ほぼ全員(4,000人)を対象に、勧奨退職を募っているという。
その条件は次の通り。なかなかこれだけの条件を出しているところはないだろう。しかも、レイオフではないところがまた受けるのではないか。マイナスのイメージになりがちな雇用調整だが、工夫次第でプラスにも働く、ということではないだろうか。
- 通常のサラリーマン従業員
- 7.5ヵ月分の給与
- 1年間の医療保険、生命保険(全額企業負担)
- 「年齢+勤続年数」が60以上の場合
- 1年分の給与
- 1年間の医療保険、生命保険(全額企業負担)
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」
モトローラ社が報酬削減に入った。具体的には、次の通り。事業会社の金融危機対応が、年金プラン削減に及び始めた(「Topics2006年11月28日(3) DBプラン変更企業」参照)。
- 来年3月1日、米国内の年金プラン(DB)を凍結する。2004年末までに賦与された受給権は保護するが、その後の受給権の賦与は一切行なわない。
- 401(k)プランへの事業主のマッチング拠出を一時停止する。本人拠出は継続してかまわない。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」
Obama新大統領は、SEC長官にMs. Mary Schapiroを指名する予定とのことである。
経歴を見ると、市場監督者としての経験はこれ以上にないというくらい豊富である。今現在、最も注目されている金融市場の建て直しという課題はもちろんだが、当websiteとしての関心事項である、IFRSへの移行にどのような影響をもたらすのか、注目していきたい。
1988年 SEC委員就任(Ronald Reagan大統領) 1989年 SEC委員再任(G. Bush大統領) 1994年 Commodity Futures Trading Commission委員(Clinton大統領) 現 職 CEO, Financial Industry Regulatory Authority
※ 参考テーマ「IFRS」
HHS長官にTom Daschle元上院議員が指名された。加えて、異例なことだと思うが、White Houseの医療改革チームの責任者(White House Office of Health Reform)も兼ねる。このWhite Houseのチームの副官は、Jeanne Lambrew女史が務める(Washington Post)。Daschle新長官とLambrew副官は、旧知の仲だそうだ。こうしてみると、Daschle新長官は、Obama政権の医療改革に関する全権を託されたことになる。
上記sourceによると、Daschle新長官は、独自の改革案を持っている。例えば、など。
- "Federal Health Board"の創設。効率的な診療に関するガイドラインの設定を行なう政府機関で、Medicareなどの公的医療保障プログラムで実践する。
- 全国民に医療保険加入義務を課す。低所得者向けに公的な医療保険プランを創設する。
しかし、Daschle新長官は、医療関係者の納得感も重視するという。Clinton政権時の失敗に対する反省だ。
そして、Daschle新長官が何よりも大切にするであろうものは、Baucus上院議員との連携である。この二人の関係は、"rocky relationship"と評されており、いわば二人三脚の格好で医療改革に取り組むものと思われる。
どうやら、Daschle - Baucus ラインが基軸になりそうである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
PPA修正法案(HR 7327)が連邦議会両院で可決された(「Topics2008年12月9日(2) PPA改正に冷淡」参照)。簡単な解説はここ。
主な改正提案は次の2つ。さて、Bush政権はどう対応するのか。
- DBプランの積立基準を緩和する。具体的には、2008年に生じたプラン資産の損失を、2年間認識しない。
- 401(k)プランまたはIRAについて、70.5歳までに引き出さないと、50%のexcise taxが課税されることになっているが、その課税措置を延期する。
※ 参考テーマ「企業年金関連法制」
Obama新政権の経済対策は$900Bとも$1Tとも言われている。その中には、医療改革ものも含まれるようだ。上記sourceで指摘されている事項は次の通り。こうした流れを受けて、連邦議会民主党も、準備を急いでいる。Baucus上院議員は、『今とても忙しいんだ。来年1月の第1週に法案を提出し、大統領就任日までに間に合わせるつもりだ』と語っている。
- Medicaidの拡充
- 医療情報のIT化
- 医療従事者の訓練(IT関連)
- SCHIPの拡充
- COBRAの拡充
アメリカの医療保険改革は、来年のスタートダッシュで流れが決まるかもしれない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
アメリカの失業保険は、州政府が運営しているが、その資金が枯渇しそうとのことである。≪既に資金が枯渇した州≫上記の3州を含め、全米で30州が失業保険資金不足が懸念されているそうだ。
Indiana 11月に失業保険資金がなくなり、それ以降、2回にわたって連邦政府から借り入れを行っている。来年早々には、新たに$330Mの追加資金が必要となる。 Michigan 既に連邦政府から$508.8Mの融資を受けている。来月には、資金調達を目的に雇用主に新税を課税する予定。
≪資金不足が懸念されている州≫
South Carolina 資金残高は$40Mのみ。毎週$11Mのペースで支出されている。 New York 資金残高は$314M。昨年末には$595Mあった。来年1月には連邦政府からの借り入れが必要になるだろう。 Kentucky 資金残高は$133M。昨年末には$250Mあった。
背景には、急速な雇用情勢の悪化があることはもちろんだが、加えて、これまで州政府の保険料率が低すぎたという事情もあるようだ。各州は、企業誘致のために保険料率を抑える傾向があるという。
失業の急増は、失業保険給付の増加だけでなく、無保険者の増加も意味する。州政府にとっては財政収支の悪化が大きな課題となっている。
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「労働市場」
Big 3 救済法案(HR 7321)が上院で不成立となった。Big 3の経営改善方策、特に報酬の引き下げが十分に行われない恐れが強い、というのが理由らしい。報酬水準引き下げについては、UAWが激しく抵抗した模様だ。やはり3割カットは厳しい(「Topics2008年12月4日 Big 3の救済要請」参照)。UAWが受け入れられないのもわからないではない。
連邦議会の投票結果をみると、次のようになる。下院(12/10)注意を要するのは、ここで示した上院の投票結果は、Big 3 救済法案(HR 7321)ではなく、税制改正法案(HR 7005)であったことである。つまり、上院では、Big 3 救済法案まで議論は到達せず、その手前でストップをかけられたことになる。
賛 成 反 対 保 留 不投票 民主党 205 20 0 11 共和党 32 150 1 15 合 計 237 170 1 26
上院(12/11) - 審議打ち切り動議
賛 成 反 対 保 留 不投票 民主党 42 4 - 4 共和党 10 31 - 8 合 計 52 35 - 12
こうした事態は、かなり深刻と思われる。異なる法案の審議打ち切り動議でさえ、52票しか集まっていない。採決に至るのに必要な60票まであと8票もある。来年になれば、民主党は58議席を持っているので、可決の可能性が高まることは間違いない。しかし、国民の厳しい視線を考えれば、単純に議席数だけで推測することも難しかろう。
さらに、投票結果を詳細に見てみると、UAWがあくまで報酬水準引き下げに抵抗すれば、連邦議会から支援融資の承認が得られないかもしれない。そうなれば、Chapter 11に突入し、結局は同じ様な報酬引き下げに引きずり込まれるかもしれない。
- Obama新大統領は、既に退任して投票権を失っており、投票結果は掲載されていない。一方、新副大統領のBiden上院議員は、不投票である。
- 不投票の民主党議員を見ると、Kennedy、Kerry、Wydenと、大物上院議員が含まれている。また、Baucus議員は反対票を投じている。
- さらに、共和党のEnzi、Grassley、Hatchといった有力者達も反対票を投じている。
- こうした結果を合わせてみると、医療保険の世界で有力な上院議員達が消極的な姿勢を示していることになる(「Topics2008年11月22日 医療保険改革を推進する有力議員達」、「Topics2008年12月1日 Wyden上院議員も」参照)。やはり、今のBig 3の報酬体系、特に、医療保険プランに関する手厚さには、厳しい姿勢で臨んでいるものと思われる。
他方、大幅な賃金水準に同意すれば、組合員からの激しい批判にさらされるだろうし、何のためにObama新大統領誕生に汗をかいてきたのかわからなくなろう。
鍵を握らされたUAWの決断が求められている(「Topics2008年12月8日 鍵を握らされたUAW」参照)。
最後にいつもの株価動向。 ⇒ GM Ford
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「VEBA/Legacy Cost」