1月20日 IFRS採用に待った?
Source :SEC Chairman-designate is cautious about IFRSs (IAS PLUS)
規定路線となっていたIFRS採用に、待ったがかけられそうである。待ったをかけようとしているように見えるのは、SEC委員長に就任する予定になっているMs. Mary Schapiroである(「Topics2008年12月18日 SEC委員長」参照)。

上記sourceによれば、上院での公聴会において、同氏は、IFRSに関して次のように所見を述べた。
  1. そもそもIFRS自体に若干の懸念を抱いている。
    1. プリンシプル・ベースであり、多様な解釈が可能である。
    2. 世界各国における実効性を担保できるのか。

  2. 多額のコストがかかる。アメリカ企業1社あたり、$30Mとの推計もある。それだけのコストをかける意味があるのか。

  3. IASBの独立性とガバナンスに疑問がある。

  4. 既に公表されているIFRS採用に向けたロードマップに縛られることなく、見直してみるべきである。
政権が交代するというのは、こういうことなのだろう。プリンシプル・ベースであることは、前のSECの時代には、国際競争上、是とされてきたことである。また、IASBに対する疑問は、そのままFASBの優位性、米国による覇権につながるもの、と認識されていたはずである。

※ 参考テーマ「IFRS

1月19日(1) 下院民主党の景気対策−医療関係 
Source :House Democrats Announce $825B Economic Stimulus Package With $157B for Health Care (Kaisernetwork)
1月15日、下院民主党が、経済復興案を公表した。2年間で総額$825Bとなっている。その中で、主な医療関係提案は次の通り。
  1. Medicaidに対する連邦一時支援金:$87B

  2. 失業者で医療保険に加入していない者には、2010年までMedicaidへの加入を認める。

  3. 2008年9月1日以降、失業した者に対して、COBRA保険料の3分の2を補助する:$39B

  4. 55歳以上の失業者については、COBRA適用期間を延長する。

  5. 医療記録のIT化:$20B

  6. 診療成果比較の研究:$1.1B
今後、下院では1月28日に採決する見込みとのこと。また、上院民主党では、別途、提案を検討しており、どこかの時点で、調整が行われることになる。ここでも再び、下院Pelosi議長と上院ベテラン議員の駆け引きが見られることになろう。

最終的にObama新大統領が署名して景気対策が成立するのは、2月中旬になるとみられる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

1月19日(2) Circuit City清算へ 
Source :Circuit City
昨年11月にChapter 11を申請したCircuit Cityが、16日、清算を発表した(「Topics2008年11月13日 Circuit City 破綻」参照)。この経済情勢で、再建は不可能と判断されたようだ。これにより、34,000人が失業することになる。

従業員を大切にしなかった企業は、こうして崩壊していくことになる。

※ 参考テーマ「人事政策/労働法制

1月18日 SustiNet for CT
Source :SustiNet : Health Care We Can Count On (Universal Health Care Foundation of Connecticut)
CT州の保険加入状況(2006-2007年)を見ると、 といった特徴がある。

そうした中で、 CT州の財団"The Universal Health Care Foundation of Connecticut"が、CT州皆保険提案(SustiNet program)を公表した。そのポイントは次の通り。
  1. 現在加入している保険プランに満足している州民は、その加入を継続することができる。

  2. 3つの公的医療保障プランを統合し、独立した保険プラン"SustiNet"を創設する。
    1. 州政府職員・退職者医療保険プラン
    2. HUSKY (Healthcare for UninSured Kids and Youth)
    3. SAGA (State-Administered General Assistance, 低所得者向け医療扶助)

  3. 上記3プラン加入者のほか、次のような人々の加入を認める。
    1. 個人事業主、個人地主を含め、企業保険プランが提供されていない人
    2. 企業保険プランは提供されていても、保険料を負担できない人
    3. 小規模企業、公益法人、地方自治体の従業員

  4. 既往症に関係なく、すべての申請者の加入を認める。

  5. HUSKYで設けられている所得制限を緩和する。

  6. 企業保険プランに不満がある場合には、SustiNetに加入できる。

  7. 所得に応じて、保険料負担、自己負担に対して補助する。

  8. 医療情報をデジタル化し、医療情報センターを通じて医療のコスト、質に関する情報を公開する。

  9. 改革は2011年から2016年の5年間とする。2014年には98%の加入率となる。
無保険者割合が2%となれば、2008年のMA州並みの低さとなる(「Topics2008年12月30日 MA州無保険者激減」参照)。創設が提唱されている"SustiNet"は、MA州でいえば、"Connector"に相当するものであろう(「Topics2006年4月10日 Massachusetts州の皆保険法案」参照)。

こうして蒔かれた種をどうやって大切に育てるかが勝負である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CT州」、「無保険者対策/MA州

1月17日 ABCの医療改革提案
Source :Condition Critical : Ten Prescriptions for Reforming Health Care Quality, Cost and Coverage (American Benefits Council)
American Benefits Council (ABC)が、医療改革提案を公表した。ポイントは、次の10点としている。
  1. 企業の任意提供による医療保険プランをベースにする。

  2. 連邦ベースの規制を優先すべきであり、ERISAは堅持。

  3. 医療情報ネットワークの構築

  4. 診療費と治療効果に関する情報の開示

  5. 個人に保険加入義務を課す。低所得者層には保険料を補助

  6. 医療保険プランの最低基準を連邦レベルで制定

  7. 企業プランに加入できない個人には、個人保険市場の基準プランへの加入義務を課す。

  8. 州運営の医療保障プランを拡充する。また、企業プラン、Medicaid、SCHIPとも、保険料補助制度も必要。

  9. 保険コストのうち企業負担分の損金算入維持。個人で保険プランに加入する場合の税制優遇を拡充。

  10. 退職者医療保険プランの保険料も非課税とすべき。また、退職後のための医療貯蓄についても促進。
ABCは、大企業の利益代表団体である。第1項を最重要視しているのは当然である。また、税制についても譲れないところであろう。さらに、保険者として医療情報を集積して、医療の効率化を図りたいという意図もよくわかる。ただ、見れば見るほど、MA州改革に近いことがわかる。

これから、新政権発足後、こうしたアプローチがさらに活発化することが予想される。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/MA州

1月16日 DB積立状況の急落
Source :Quarterly Pensions Update (Mercer)
上記sourceによれば、S&P1500社の年金プランの財政状況は大変なことになっている。
  1. 2008年12月31日における積立比率は75%。これは$409Bの積立不足に相当する。2007年12月31日の104%($60Bの積立超過)、2008年9月30日の97%($35Bの積立不足)からは、様変わりである。

  2. 積立不足の原因として、株価の下落だけではなく、社債利回りの大幅低下が挙げられる。

  3. このような積立不足により、年金関係の費用は急増する。2007年$35B、2008年$10Bに対し、2009年には約$70Bが見込まれる。
このように、大変なインパクトとなることは間違いない。DBプランへの見直しが一層進む可能性が高い。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

1月15日(1) Big 3 vs PBGC
Source :Agency Raises Concerns About Car Makers' Pensions (Wall Street Journal)
Big 3に対するPBGCの懸念が強まっているようだ(「Topics2008年11月20日 Big 3を巡る攻防」参照)。上記sourceで示されている具体的な懸念は次の通り。
  1. Big 3が破綻した場合、130万人の受給者が年金を減額されることになる。

  2. 米国会計基準で計測した場合には年金プランはいずれも積立超過となっている。

  3. しかし、Big 3が破綻し、年金プランを廃止する場合には、PBGC基準で計測して、最大$41Bの積立不足となる見込みである。

  4. PBGC基準の積立不足額もしくは積立比率の推計は次の通り。
     積立不足額($B)積立比率(%)
    Big 34176%
    G M2080%
    Chrysler934%
    Ford12 - %
  5. $41Bの積立不足のうち、わずか$13BのみがPBGCの保証範囲となる。

  6. また3社とも年金プランを廃止した場合、PBGCの債務超過は倍増する。
つまり、Big 3が破綻し、年金プランが廃止となれば、従業員の年金は大幅に縮減されるし、PBGCも財政危機に見舞われる。PBGCとしては、やきもきせざるを得ない状況にある。

VEBAの存続も危ぶまれており、Big 3の退職者、従業員は、まさに老後のnesteggを失うかどうかの瀬戸際に立たされている。

GM、Fordの株価チャートは次の通り。 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「VEBA/Legacy Cost

1月15日(2) 医療改革提案の比較サイト
Source :COMPARE (RAND Corporation)
医療保険改革が重要な政策課題となることを見越して、新しいサイトが公開された。RAND Corporationというシンクタンクが運営するもので、主な医療保険改革提案の要素、分析等が一覧性をもって比較できるようになっている。

1月14日 失業者への保険料補助
Source :COBRA Coverage Too Costly for Many Unemployed, Analysis Finds (Kaisernetwork)
Congress Pondering Federal COBRA Subisdy (PLANSPONSOR)
Families USAの調査によれば、COBRAの保険料は大変重い負担感がある。 これでは、失業⇒無保険者となるのは当然であろう。

当websiteでは、MA州が行っている失業者のCOBRA保険料への補助が、無保険者対策の有力な手段となっていることを紹介した(「Topics2009年1月6日(2) MA州失業者への保険料補助」参照)。その際、Obama新政権が検討しているという失業者対策の中で、COBRAに関する企業負担への補助はおかしいのではないか、と指摘していたが、ワシントンDCの中でも、同様の意見が強まっているようだ。

改めて、MA州の先見性を評価したい。こうした事実に基づいた実効ある施策が求められている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

1月11日 SCHIP-民主党反撃開始
Source :House Democrats Plan To Vote on Stand-Alone SCHIP Reauthorization Bill (Kaisernetwork)
連邦議会民主党の反撃がいよいよ開始される。SCHIP拡充法案(HR 2)を、来週半ばまでには下院で、その後上院で採決を行なう予定にしている。

SCHIP拡充法案を巡っては、中間選挙で多数を握った民主党が重点を置いて立法化を推進していたが、Bush大統領の拒否権発動により、Pelosi下院議長が涙を飲んだ経緯がある。

長年の懸案であったSCHIP拡充法案により、連邦議会民主党の反撃が開始される。

※ 参考テーマ「SCHIP