2月28日 政府調達による賃上げ策 
Source :Obama Aims to Use Federal Contracts as a Way to Lift Wages (New York Times)
上記sourceによると、Obama大統領は、連邦政府調達の取引先企業について、報酬が優れている企業を優遇する方針を示そうとしているそうだ。詳細はまだ公表されていないが、賃金、医療保険プラン、年金プランなどの報酬レベルの高い企業を優遇するという。地方自治体ではよく使われている手法ではある(「Topics2002年5月22日 Living Wage Law」参照)。

以下、賛成論と反対論。

大方の見解では、大統領指令により実施できるとみられており、今後の大統領府の動きを見ていく必要がある。

※ 参考テーマ「最低賃金

2月27日 独禁法適用の意味 
Source :What The Antitrust Exemption For Health Insurers Means (NPR)
24日、連邦議会下院は、保険業に独禁法を適用するとの法案(HR 4626)を、圧倒的賛成多数(406 vs 19)により可決した(Kaiser Health News)。下院は、もともと保険業への独禁法適用を医療保険改革法案に盛り込んでいる。また、Obama大統領を中心に、保険料の引き上げ等を牽制する目的で保険業の規制を強化するとの主張を強めていることを支持する意味合いもあろう(「Topics2010年2月22日(3) Obama大統領も参戦」参照)。

しかし、この法案可決は、次のような現実から、あまり意味を持たないという。

  1. 上院法案にも大統領提案にも、独禁法適用は盛り込まれていない。
  2. 連邦独禁法を保険業に適用しても、保険料抑制にはほとんどつながらない。
以下、上記の2.について、上記sourceの概要をまとめておきたい。
  1. 独禁法の不適用とは

    1. 連邦独禁法の適用除外となっている業種は、保険、MLBはじめたくさんある。

    2. 連邦独禁法は、保険業の規制権限を州政府に賦与している。

    3. 同時に、保険業に連邦独禁法の適用除外規定を設けている。例えば、
      • 同業者による会合
      • 情報の共有
      • 保険料の合意
      など。

    4. しかし、ほとんどの州で、こうした業界内の慣行は禁止している。

    5. 一方、連邦独禁法は、保険業について一切連邦政府の規制を禁じているわけではない。商務省、司法省は、M&Aに関する独禁法適用の責任を負っている。

  2. 独禁法不適用の実態

    1. 不動産保険、災害保険などは、業界団体を形成し、保険給付請求に関する情報を共有することが歴史的に認められている。

    2. しかし、医療保険プランの場合は、企業の規模が大きくなる傾向にあるため、こうした情報を相互に共有することはしていない。

    3. 保険会社が1、2社しかない地域もあるが、連邦独禁法の不適用を見直すことで改善できるところはほとんどなく、むしろ連邦政府、州政府のM&A規制によるところが大きいのではないか(「Topics2009年8月20日(1) 保険会社の独占状態」参照)。

    4. また、連邦独禁法違反の事例を摘発することは極めて困難であり、実質的な効果も望めない。

  3. 独禁法適用の効果

    1. CBO分析によれば、独禁法を医療保険に適用できるようにしたとしても、連邦予算または保険料に与える影響はごくわずかである。

    2. 独禁法適用となれば、訴訟リスクが高まることは予想される。

    3. 保険会社の行動も影響を受ける可能性がある。例えば、NY州はで保険会社の間でネットワーク外の料金設定に関する情報共有を行っているが、こうした活動はできなくなる。

    4. また、州政府の規制が緩いところも多いため、連邦独禁法に規制強化を求める意見も強い。

    5. より長期的には、保険会社間の競争を促進する効果はある。
法案の評価が分かれるのも頷ける。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月26日 政治ショ− 
Source :President Urges Focus on Common Ground (New York Times)
25日に開催された医療保険改革サミットは、大方の予想通り、単なるショーにすぎなかったようだ。上記sourceによれば、次のような主張の繰り返しだったようだ。
Obama大統領:対立点ではなく共通点を見つけ出そう。
 ↓
共和党:それなら、最初から議論するために、今の上下両院法案を一旦破棄すべき。
 ↓
民主党:最初からすべてやり直すことはできない。
今後は、この会議の結末を受けて、大統領、民主党がどのような戦法をとってくるかが注目点となる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月25日 MD州で同性婚承認へ 
Source :Maryland to recognize gay marriages from other places (Washington Post)
MD州のDouglas Gansler (D)司法長官が、他州で認可された同性婚を承認する、との声明を発表した。MD州法では、他州が認可した同性婚を認めるのかどうか、明確な規定がなかった。これに対して州議会議員から質問状が出されており、司法長官の声明は、それに対する回答という形をとっている。

声明のポイントは次の2点。
  1. 他州で認可された同性婚を承認する。

  2. 州政府機関においては、速やかに、他州で認められた同性婚職員に、異性婚の職員と同様の扱いをする。
賛成派、反対派とも一斉に動き出している。保守派は早速、州裁判所に提訴するという。事実上は、その司法判断を待つことになりそうである。

複雑なのが、民主党中道派である。中間選挙の年に、この社会問題を争点にはしたくない議員達は、困惑しているようだ。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
Maine○→×
Rhode Island
California○→×
New York
Maryland
New Jersey
Oregon
Wasington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
※ 参考テーマ「同性カップル

2月24日 超党派雇用創出法案? 
Source :In Passage of Jobs Measure, a Glimpse of Bipartisanship (New York Times)
Reid上院院内総務が提案していた「雇用創出法案」が上院で可決された(S. Ammendment 3310 to H.R. 2874)。内容は、以前紹介した通り、幅広く検討されたHIRE法案の中の雇用創出部分だけ抽出したものである(「Topics2010年2月12日 HIRE法案」参照)。内容は既にまとめてあるので、上院可決を巡る政治情勢について、コメントをまとめておきたい。

  1. 上院での投票内容は次の通り。
    賛 成反 対不投票
    合 計62308
    民主党5711
    共和党5297
  2. まず、共和党から賛成5票、不投票7票が入っていることが注目される。Reid院内総務は、『超党派の合意が得られた』と評価(自画自賛?)しているが、それも当然であろう。現在、アメリカ国民にとって最も関心の高い政策課題について、範囲が限定的であるという理由だけで反対はしにくい。

  3. 上記sourceによれば、共和党の賛成5票のなかで、最初に投票したのがScott Brown上院議員(R-MA)であった。あの、MA州上院特別選挙で当選した新人議員である。新人議員として最初の投票が、民主党提案に賛成、というのも勇気のいることだが、上記2.のように、雇用を盾に取られれば、賛成票を投じても選挙民への説明はつくだろう。

  4. 他方、民主党で唯一反対票を投じたのが、あのBen Nelson上院議員である。Neblaska条項で散々な目に会ったことへの意趣返し、というのは穿ちすぎだろうか(「Topics2009年12月20日 上院民主党準備完了」参照)。
Reid院内総務は、連続的に残された雇用関連提案を審議していくとしている。今後、そのスピード感が国民にどう映るかが、Obama政権の支持率を左右することになろう。

※ 参考テーマ「労働市場

2月23日(1) Obama大統領提案 
Source :The President's Proposal (The White House)
22日、公約通り、Obama大統領が独自の医療改革提案を行った。両院法案との比較表を作成してみたものの、要約版ではよくわからないところが多く、まだまだ改善しなければならなくなるだろう。

(参考:Side-by-Side Comparison of Major Health Care Reform Proposals (Kaiser Family Foundation)

この作業を行なっていて、感じたことをいくつか。
  1. 独自の提案とはいっても、ほとんどが上院法案をベースにしていることは明らかだ。

  2. とにかく、提案内容が粗い。いくらサマリーとはいっても、これでは分析が難しい。CBOの分析を受けていないのもこのせいだろう。

  3. 反面、保険料の監督、保険規制強化については、かなりの分量を割いている。

  4. ところが、力が入っているはずの保険料の監督権限については、連邦政府に置くのか、州政府に置くのか、曖昧なままにしている。

  5. 微妙なところは正確には触れていない。例えば、中絶とか不法移民とか。

  6. 上院法案で不公平だと批判されていたところは修正している。Nebraska条項だとか、"Cadillac Plan Tax"における労働組合保険プランの特別扱いとか。

  7. 実施時期を遅らせる提案があるが、2014年から実施というのでは、大統領自身の任期(1期目)が終わってからの話である。これを本当に実行できるという担保はどこにあるのか。
連邦議会の受け止め方も微妙である(New York Times)。当然、共和党は否定的な対応である。やはり大きな政府だ、とか、25日のサミットは何のために開催するのか、とか。

問題は民主党である。一言でいえば、『様子見』である。中低所得者層に対する支援が不足しているのではないか、中絶の扱いが緩すぎるのではないか、公的プランの導入が含まれていないのはどうか……。

25日のサミットで、Obama大統領は独演会を開くつもりなのだろうか。国民をサポーターにすればいい、という心積もりなのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月23日(2) 失業が長期化 
Source :Millions of Unemployed Face Years Without Jobs (New York Times)
実質成長率が3〜4%の勢いが継続すると見られている中、雇用の面では、jobless recoveryの様相を強めている。@景気のピーク時の雇用者数にまで戻るのにかかる月数が長くなっていることと、A長期間失業状態が続いている労働者の数が増えていることが、その要因となっている。

上記sourceによれば、ピーク時の雇用者数にまで戻るのにかかった月数は、1990年以前は平均21ヵ月、1990年からの景気後退では31ヵ月、2001年からの景気後退では46ヵ月となった。このように徐々に伸びてきているのである。

そうした傾向をさらに強める要素として、次のような諸点を挙げている。
  1. 大企業では、機関投資家からの利益獲得要請が強く、雇用を削減してでも利益を上げざるを得なくなっている。

  2. 労働組合の影響力が弱まっているため、雇用をパートや臨時雇いに切り換えている。

  3. 製造業では、安い労働力を求めて製造現場をアジアや南米諸国に移している。

  4. 機械化、効率化投資は、資本集約型への移行を促進している。
これまでの雇用回復には、自動車産業、住宅産業、金融機関が大きく貢献していた。ところが、今回の景気後退、経済危機では、これらの産業での雇用増がなかなか期待しにくいのである。

少し話はそれるが、最後の銀行の問題は、かなり厳しい状況に陥っている。確かにデカイ銀行は、それなりに回復し、利益を生み出したり、巨額のボーナスが復活したりしている。一方、商業不動産の低迷、オフィスビルの空室率は深刻である(Washington Post)。こうした不動産業者に貸し込んでいるのが中堅銀行であり、その経営状況は危機的な状況にあると言われている("Commercial Real Estate Losses and the Risk to Financial Stability" (Congressional Oversight Panel))。今年に入ってからの銀行破綻数も半端ではない。

こうした中堅企業の貸し出しが絞られてくると、これまで雇用増の中心的存在であった中堅・中小企業の活動が大幅に制約されてしまう。当然、ベンチャー企業などリスクの高い事業はなかなか起業できないことになる。こうした面からも、今回の雇用回復は大変厳しいのである。

もう一つの今回の特徴、長期間失業状態が続いている労働者の数が増えている点については、下の図が詳しい。これも、上記sourceに付属していた資料(New York Times)である。



これを見ると、27週間以上失業している労働者の数が急激に増えていることがよくわかる。また、黒人、ラテン系で、労働者の割合に比べて長期失業者の割合が高くなっていることもよくわかる。こうしたところが、Obama政権への不満を高めていることも頷けるところである。

※ 参考テーマ「労働市場

2月22日(1) NY州の経験 
Source :A cautionary tale in healthcare reform (Los Angeles Times)
上記sourceは、現在行われている医療保険改革の議論は、NY州の過去20年間の経験に学ぶべきだ、と述べている。NY州の過去20年間の経験とは、次のようなものとなっている。

  1. 1992年、当時のMario Cuomo NY州知事が、医療保険改革法案に署名した。この法律は、企業から医療保険プランの提供を受けていない個人に、個人保険市場から保険プランを購入するよう義務付ける内容であった。同時に、保険会社が健康状態や病歴などを理由に加入申請を拒否することを認めないこととしていた。

  2. こうした医療保改革は、90年代前半にもてはやされ、NJ州、WA州なども、保険会社の申請拒否を認めないようにした。

  3. さらにNY州は医療保険に関する規制を強めた。まず、州政府で初めて、「純粋な地域保険料」制を導入した。これは加入者の年齢や健康状態によって異なる保険料を適用することを認めないというものであった。また、すべてのHMOに、総合的かつ標準的なプランを提供するよう義務付けた。

  4. こうした規制によって、NY州民は、病気になってから保険を購入し、必要がなくなれば保険から脱退することができるようになった。

  5. しばらくは保険市場が混乱するようなことはなかったが、NY州の個人保険市場は、高齢者や不健康な者の割合が高まっていき、その結果、保険料が跳ね上がっていった。2001年と比較して、NY州の個人保険市場の平均保険料は3倍になり、$9,000/Yに達している。いくつかの郡では、$12,000/Yでも購入できなくなっている。

  6. NY州の保険料は、高いとされているCA州、FL州の2倍以上とも言われている。

  7. NY州と同様の規制を導入したNJ州では、個人保険市場の加入者の減少の半分がこれらの規制によるものとされている。また、同規制の結果、保険料は2〜3倍になったともみられている。

  8. KY州、WA州では、個人保険市場から保険会社の撤退が相次いだため、1990年代に規制を戻さざるを得なくなった。

  9. NY州は、依然として規制を維持しているが、保険料が高騰しているために、実質的な政策効果が薄れてしまっている。
だから、個人加入の義務付けだけでは、ことはうまく運ばない、というわけである。

では、MA州との違いは何か。@保険加入義務付けにペナルティが課されていること(経済的なインセンティブ)と、A安価な個人保険市場("CHIC")の提供、BMedicaidの拡充など、総合的な対策が行われていた点ではないかと思う。

※ 参考テーマ「無保険者対策/NY州」、「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/連邦レベル

2月22日(2) Microsoftのベネフィット戦略 
Source :Microsoft Does a Benefits Tech Makeover (Workforce Management)
かつて、当websiteでは、Microsoft(以下、MS)のストック報酬制度について紹介したことがある(「Topics2003年7月15日(1) マイクロソフトの決断」「Topics2003年8月1日 マイクロソフト(MS)のストック報酬を巡る議論」参照)。ビジネス環境やMSという企業自らの変化に対応した報酬制度を設けようとする強い姿勢が窺われた。

上記sourceでも、その強い意志が示されている。概要をまとめておくと、次のようになる。
  1. 昨年、MS社は初めて5,800人のレイオフを実施した。そのほかにもコスト削減対策を講じている。

  2. そうした中、従業員55,000人、家族を含めると14万人(全米)の医療費用を全額MS社が負担するという方針を堅持しようとしている。

  3. 全額MS社が負担し続けるためには、次のような課題がある。

    1. 医療コストは、毎年10%の伸びを続けている。

    2. 従業員の年齢構成が上がっている。現在、平均年齢は38歳になっている。従業員の年齢が高まれば、家族が増え、医療を利用する頻度が高まる。特に、MS社では毎日8人の赤ちゃんが生まれており、妊娠、出産、乳児医療のコストは、医療費全体の中で、1、2を占めている。

  4. そこで、医療ベネフィット全体のコスト効率化と、従業員のコスト意識を高めることを目的に、様々なルートで提供していた医療ベネフィットを統合することとした。

    1. 医療サービス、健康増進サービス、これまで契約していなかった優良医療機関との連携を統合し、一つのポータルサイトを創設する。

    2. これまで、従業員は、"MyMicrosoftBenefits.com"を通じて、医療保険プランの選択、FSAの参照、請求書の確認、処方薬の価格比較・購入、医療機関の参照、健康管理プログラムの参照、医療情報の取得などを行ってきた。

    3. 一方、MS社では、Health Vaultというソフトを開発、提供している。これは、個人の病歴、予防注射の履歴、個人情報などを記録しておくものである。

    4. また、学費支援などの従業員ベネフィットの管理全体を外部委託することとした。

    5. そして、これらのベネフィットを、"MyMicrosoftBenefits.com"を通じて利用できるようにした。また、従業員の家族も、インターネットを介して、その一部を利用できるようにした。

  5. このような手法により、従業員は、MS社が提供する医療、健康、学費支援などのベネフィットについて、一元的に利用、情報収集ができるようになった。

  6. MS社は、一元的なポータルサイト創設により効率化できた金額は示していないが、従業員のコスト意識、特に、医療費に関するコスト意識と効率化意識を高めることに役立つ、としている。

  7. MS社では、『2010年に、もっと多くのベネフィットに関する情報を、"MyMicrosoftBenefits.com"に集約したい。将来的には、雇用に伴うすべての報酬に関する情報を一元化したい』と考えている。
要するに、総額人件費管理の考え方を、企業と従業員との間で共有しようということである。MS社は、この分野でも先進的な試みを続けているといってよいだろう。

※ 参考テーマ「ベネフィット

2月22日(3) Obama大統領も参戦 
Source :Obama to Urge Oversight of Insurers Rate Increases (New York Times)
上記sourceによれば、Obama大統領が公表する予定の医療保険改革案に、連邦政府に保険料に関する審査、許認可権限を与えるという内容を盛り込まれる見込みである。HHS長官の問題設定に乗った形で、保険会社を血祭りに上げようという政治的意図は明白である(「Topics2010年2月21日(1) HHS長官ヒートアップ」参照)。

Obama大統領にとっては、折角風が吹いてきたのだから利用しない手はない、ということなのだろうが、これには、3つの意味でリスクが伴う。

第1に、上院法案にも下院法案にも盛り込まれていない内容のため、まったく新たな提案ということになる。当然、事前にも相談していない。そのため、民主党の中でも評価がどうなるかわからない。

第2に、共和党から、『上院法案でも下院法案でも、保険料を抑制することはできないという証拠だ』と言われ、民主党議員達は戸惑ってしまいかねない。

第3に、保険の監督は州政府の権限としてきた連邦政府と州政府の関係を変えてしまうことになる。これに州知事や州議会はどう反応するのか。

折しも、全米知事協会(National Governors Association)が大会を開催しており、一部の州知事からは、医療保険改革法案の議論に州知事の意見が反映されるプロセスがない、と不満が出ている。

風に乗りたいのはわかるが、こんな大事な提案を民主党との話し合いもなしに提案して大丈夫なのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月21日(1) HHS長官ヒートアップ 
Source :Insurance Companies Prosper, Families Suffer: Our Broken Health Insurance System (HHS)
保険料引き上げ問題(「Topics2010年2月13日 CA州で保険料急騰のおそれ」参照)で、HHSKathleen Sebelius長官がますますヒートアップしている。上記sourceは、HHSのwebsiteに掲載された公式文書の文章部分だけだが、本文には『保険会社はこんなに儲かっている』のに、『保険料をこんなに上げようとしている』という挿絵まで入れて非難している。

こんな理不尽なことが起きるような医療保険は改革が必要だ、と25日の『医療保険改革サミット』に向けて機運を盛り上げようとしているのである。

確かに、経済情勢が厳しく、失業率が高止まりしている中で、保険料が高騰する事態は誰もがよいとは思わない。しかし、保険会社側にも言い分はある。
  1. 保険料引き上げについては、少なくとも合法的な申請を行なっている。

  2. まさに失業率が高まり、賃金が上がらない中で、保険から脱退する若者が増えている。

  3. 実際に医療費そのものが急騰している。

ちょっとやり過ぎ感があるのではないだろうか。CA州での例を紹介した際、この上昇率は、個人保険の場合ということであった。もちろん、それはそれで大変なことは理解できるが、企業提供保険プランや、連邦政府・州政府が提供している保険プランの保険料率がここまで上昇するわけではない。言うなれば、一部の現象をあたかも全体であるかのように喧伝しているのではないか、との疑念はある。

それはさておき、最後の3点目について、下の図を見てもらいたい。Wall Street Journal紙が掲載した関連記事の中で使っているものである。
確かに、この10年間で、毎年10%前後の伸びを続けており、今後もそのペースが緩むことはないのである。先日、当websiteで紹介したように、専門家はこの点を問題にしているのである。医療費そのものの高騰について対策を打たなければ、問題は解決しない、と(「Topics2010年2月16日 "Cadillac Plans Tax"に暗雲」参照)。

仮想敵を置いて攻撃するのは政治的には楽だが、決して課題の解決にはつながらない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

2月21日(2) Medicaidの危機 
Source :Medicaid enrollment rises nationwide, analysis finds (Washington Post)
2008年7月〜2009年6月までの1年間に、Medicaidの新規加入者は300万人以上にのぼり、その時点でMedicaid加入者は4,680万人と過去最高を記録した。

Medicaid加入者の急増は、州政府の財政を直撃することから、この1、2年、各州政府は、Medicaidに含まれる診療を制約する一方、Medicaid契約をする医療機関を減らしたり、診療報酬を減額したりして、その支出を抑制しようとしている。

連邦政府によるCOBRAへの支援は延長となったものの、失業率は高止まりしている。失業期間が長引けば、COBRA保険料も払えなくなり、やがてはMedicaidに入らざるを得なくなる。Medicaid加入者は今後とも増え続けるものとみられている。土曜日から始まった全米知事協会(National Governors Association)の年次総会では、最も関心の高い政策課題として注目されるであろう。

支出抑制に突っ走る州政府がある一方、何とかMedicaidを拡充しようと努力している州もある。上記sourceによれば、Maryland、Wisconsinなどがその例である。また、新たな財源を確保するため、タバコ税の増税や医療機関への課税なども検討されているようだ(New York Times)。

いずれにしても、Medicaidは最後のセーフティネットといってもよいくらい重要な施策であり、経済危機の中での持続性の確保が大きな課題となっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般