8月4日 やはりMedicareが争点 
Source :Debt deal raises pressure on Medicare providers (Los Angeles Times)
2日に成立したBudget Control Act of 2011 (S.365)で、最大の争点になりそうなのが、国防費とMedicareの扱いであろう。

上記sourceでは、両院特別委員会で目標通りの財政赤字削減策がまとまらなかった場合、Medicare診療報酬が自動的に2%カットされることによる影響を懸念を説明している。特に、ホームドクターのような役割を果たしている診療所にとっては大きな打撃が予想されるという。

一方、全米医師会(AMA)は、もっと大きな懸念を表明している。

Medicare診療報酬は、"doc fix"という規定により、本来大幅削減となる所を現状維持でつないできている。最後に手当てしたのは昨年末で、Obama大統領と連邦議会の間で、1年間凍結することで合意している(「Topics2010年12月11日 "Doc Fix"凍結法案可決」参照)。

一方、Obama大統領は、こうした難題、混乱が任期中に再発しないよう、今年の予算教書において、"doc fix"の2年延長を提案した。当時、AMAはこれを歓迎、支持していた(「Topics2011年2月17日(1) "Doc Fix" 2年延長提案」参照)。

しかし、今回の財政赤字削減法により、2年延長どころか、"dox fix"すら危うくなっている。AMAは、この点を心配し、『2012年から30%近い削減、2013年からさらに2%の削減』となるのではないかとの懸念を表明している(AMA Wire)。

さらに言えば、医療保険改革法の施行に必要となる財源は本当に確保できるのかどうか、疑わしくなりつつあるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「Medicare

8月3日(1) Budget Control Act of 2011成立 
Source :How the Debt Plan Would Work (New York Times)
2日、Budget Control Act of 2011が上院で可決され、即日、Obama大統領が署名し、成立した。

上院での投票結果は次の通り。
賛成反対無投票
民主党456-
共和党2819-
独 立11-
合 計7426-
上記sourceは、債務上限額の引き上げと財政赤字削減策に関するフローチャートで、ご参考まで。

※ 参考テーマ「社会保障全般

8月3日(2) Domestic PartnerのBenefits 
Source :Employee Benefits in the U.S. - Mar.2011 (BLS)
アメリカ労働統計局が実施する従業員報酬調査であるが、初めて、結婚していないパートナーに関する調査結果が公表された。上記sourceは、その該当部分のみを抜粋したものである。

これを見ていての感想をいくつか。
  1. 年金プランにしても、医療保険プランにしても、同性カップルの方が異性カップルよりもカバーされている割合は高い。別の見方をすれば、異性で結婚していないカップルは、結婚すればいいじゃんと、冷遇されているのかもしれない。

  2. 公立学校の教師の場合、同性でも異性でも、パートナーのカバー率は際立って高くなっている。

  3. フルタイム、自治体職員、労組員の方がカバー率は高い。

  4. 年金プランよりも医療保険プランの方がカバー率は高い。それだけ医療保険プランの方のニーズが高いといえる。
アメリカ社会では、未婚のパートナーに対する認知度はかなり高いといえよう。

※ 参考テーマ「同性カップル

8月2日 Budget Control Act of 2011 
Sources : Impact on the deficit of the Budget Control Act of 2011 (CBO)
House passes historic debt deal on eve of deadline (Washington Post)
House Passes Bill on Debt Ceiling (New York Times)
1日、Budget Control Act of 2011 (S.365)が連邦議会下院で可決された。

投票結果を見ると、両党とも賛成反対に大きく分かれたうえでの可決であったことがわかる。
賛成反対無投票
共和党17466-
民主党95953
合 計2691613
特に、民主党はまったくの真っ二つに分裂している。共和党も4分の3は賛成に回ったものの、Bachmann下院議員のような茶会派を中心に踏み込みが足りないとして反対に回ったようである。

とはいえ、この投票結果から、共和党はObama大統領から大きな譲歩を勝ち取ったとみてよいだろう。

さて、肝心の法案の中身であるが、上記sourcesから、だいたい次のような内容と推察される。
  1. 2021年まで、裁量的支出に上限を設ける

    1. 上限額は、2012年$1,043Bから始まって、2021年は$1,234Bとする。
    2. 2012〜2013年は、安全保障とその他で別々の上限額とする。
    3. 2014年以降は、単一の上限額とする。

  2. プログラムの統合により不適切な給付を削減する

    対象は、Social Security, Medicare, Medicaid, CHIP

  3. Pell Grantなどの学生ローン制度を変更する

  4. 上下両院で財政均衡のための憲法改正決議を採択する

  5. 債務上限額を引き上げる

    • デフォルトを回避するため、最初に$400B引き上げる。
    • 第1段階として、$900Bの引き上げを連邦議会で審議する。
    • 第2段階として、$1.2〜1.5Tの引き上げ(累計$2.1〜2.4T)を連邦議会で審議する。

  6. 財政赤字削減策を検討するため、両院特別委員会を新設する

    2012〜2021年の間に、最低$1.5Tの財政赤字を削減する。

  7. 両院特別委員会で目標削減額を達成できなかった場合、自動歳出削減措置を講じる

    1. 2012年1月15日までに、$1.2Tの財政赤字削減策を作成する。
    2. 赤字削減額が目標に達しない場合、自動的な歳出削減措置により、不足分を補足する。
    3. 自動歳出削減額は、2013〜2021年で均等に配分する。
    4. 自動歳出削減額の半分は防衛費、残り半分は非防衛費から捻出する。
    5. 公的年金、Medicaid等低所得者対策は、自動歳出削減の対象外とする。
    6. 歳出削減割合は、歳出項目を通じて単一の%を適用する。ただし、Medicareについては例外的に2%以内とする。

この法案で、最も怒っているのが、民主党リベラル派である。それは、「増税」がまったく含まれなかったからである。彼らにしてみれば、昨年末のブッシュ減税の継続決定に続き、政治的連敗を喫したということになる(「Topics2010年12月16日 ブッシュ減税延長法案:上院可決」「Topics2010年12月17日 ブッシュ減税延長法案:下院も可決」参照)。

※ 参考テーマ「社会保障全般

8月1日 歳出削減フレームワーク 
Source :Obama and Leaders Reach Debt Deal (New York Times)
アメリカ連邦政府の債務上限額を巡る交渉は、31日夜、ようやく指導者間の合意に達した。上記sourceによれば、Obama大統領、上下両院の両党トップは、
  1. 債務上限額を2段階で引き上げる

    • デフォルトを回避するために、即座に$400B引き上げる。
    • 第1段階として、$900Bの引き上げを審議する。
    • 第2段階として、$1.2〜1.5Tの引き上げを審議する。同時に、新設委員会で、同額の歳出削減策を策定する。

  2. Thanksgivingまでに、10年間で$2.5Tの歳出削減案を策定する。
ということで合意した模様だ。詳細は、8月1日午前中、両院議員に対して説明されるという。

仮に、11月までに議会が歳出削減案を策定できなければ、厳しい歳出削減(cap制)を導入する。その際、社会保障関係については、次のような関係者の発言が引用されている。 最初の点は、間違いなく診療報酬の削減を意味しており、今後の最大の争点となりそうである。

※ 参考テーマ「社会保障全般