8月19日 償還割合規制の基準決定 
Source :NAIC APPROVES FORM FOR MLR FINANCIAL REPORTING REQUIREMENTS (NAIC)
ようやく、"National Association of Insurance Commissioners (NAIC)"が償還割合規制の基準を決定した。当初予定から2ヶ月半の遅れである(「Topics2010年6月3日 償還割合規制の基準作りに遅れ」参照)。

これに対し、早速保険業界団体である"America's Health Insurance Plans"は、基準が厳し過ぎて大きな副作用をもたらすことになる、と反対意見を表明している。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

8月18日(1) 破産件数の拡大 
Source :Bankruptcy Filings Up 20 Percent in June (US Courts)
アメリカ社会での破産件数が大幅に伸びている。6月30日を末とした1年間の破産申請件数伸び率は、次のようになっている。 水準でみても、いずれも2009年6月までの1年間を上回っている。つまりは、リーマンショックを含む時期よりも破産申請件数は増えているのである。

裏返して言えば、銀行等金融機関の不良債権は増え続けている可能性が高いのである。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

8月18日(2) 失業の恐怖 
Source :U.S. Workers Still on Elevated Alert for Potential Job, Pay Cuts (Gallup)
アメリカの雇用者は、依然として、レイオフ、賃金カット、ベネフィットカットを強く懸念している。しかも、所得の高低にかかわらず、まんべんなく懸念が広がっているところが特徴的である。

上記のように、身の回りで破産のケースが増えているのも、こうした懸念を助長している一因になっていよう(「Topics2010年8月18日(1) 破産件数の拡大」参照)。

こういう状況では、住宅や車など、ローンを利用して購入するような買い物は手控えざるを得ない。また、ローンを提供する金融機関の方も慎重になる。自然と消費は抑制され、低価格品への移行は進む。

※ 参考テーマ「労働市場

8月18日(3) 州政府の権限強化が必要(2) 
Source :$46 Million in Grants to Help States Crack Down on Unreasonable Health Insurance Premium Hikes (HHS)
「保険料の不合理な引き上げ」に対抗するための州政府支援策が公表された(「Topics2010年8月16日 州政府の権限強化が必要」参照)。上記HHSプレスリリースの概要は次の通り。
  1. 医療保険改革法では、「医療保険料監視支援策」として、州政府に対して、5年間で$250Mの供与を準備している。

  2. 今年は、保険料の不合理な引き上げを抑制するための支援策として、各州政府に対して$1Mずつの資金を用意した。

    1. 45の州とD.C.が支援金の申請を行った。従って、今年の供与額は$46Mとなる。

    2. 46州の対応策は、様々な形式を採っている。

      1. 法的権限の強化:保険料率引き上げに対して拒否権を有しているのは、D.C.を含む26州しかない。
      2. 医療保険料監視対象の拡大
      3. 医療保険料監視プロセスの充実
      4. 情報公開の拡充
      5. ITの利用促進

  3. 医療保険改革法に定められた支援策の今後のスケジュールは次の通り。
    • 2011年:HHS長官に対し、不合理な保険料引き上げに関する説明を監視するとともに公表する権限を賦与する。
    • 2011年:保険会社に対して、償還率を80%以上にするなどの規制を適用する。
    • 2014年:不合理な保険料引き上げを行った保険プランを、"Exchange"から排除する権限を州政府に賦与する。

  4. 関連する情報は次の通り。
ところで、野次馬としては、今回申請しなかった5州とはどこなのか、またその理由は何なのかが知りたくなる。5州の特定は、上記情報リンクから判明する。
州知事州司法長官
アラスカ州(AK)共和党共和党
ジョージア州(GA)共和党民主党
アイオア州(IA)民主党民主党
ミネソタ州(MN)共和党民主党
ワイオミング州(WY)民主党民主党
ということで、必ずしも党派色の強い判断でもなさそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月18日(4) 退役軍人のベネフィット 
Source :America's most generous public pension (The Economist)
これまで、当websiteでは、意識して軍人のベネフィットについて触れないようにしてきた。しかし、上記sourceでは、自治体職員の年金プランへの批判は、所詮"class warfare"に過ぎないとしながら、『アメリカで最も気前のいいのは退役軍人のベネフィットだ』と紹介している。

ここで紹介されている退役軍人のベネフィットの特徴について、列記しておく。 確かに"generous"である。しかし、だからといって退役軍人のベネフィットを批判する勢力が出てくるとは思えない。

※ 参考テーマ「地方政府年金

8月17日(1) CA州同性婚はお預け 
Source :California Gay Marriage on Hold as Case Is Appealed (New York Times)
今月4日、連邦地方裁判所が、『CA州のProposition 8は無効である』との判決を下した(「Topics2010年8月5日(2) CA州:同性婚再認」参照)が、その執行開始については、『Proposition 8の合憲性を控訴裁判所で確認する』ために、18日まで待つように指示していた。

16日、第9控訴裁判所は、『Proposition 8の合憲性』を判断するため、12月6日の週に意見陳述の機会を設け、迅速に判決を下すとの決定を行った。これにより、CA州における同性婚認可の手続きは、第9控訴裁判所の判決が出るまでお預けとなった。
同性婚の法的ステータス
州法州最高裁判決他州認可同性婚承認認可法案審議中異性婚同等権利賦与
MassachusettsA@
Vermont
ConnecticutA@
Iowa
New Hampshire
Washington, D.C.
California○→×(→○)*
Rhode Island
New York
Maryland
New Jersey
Oregon
Washington
Nevada
Hawaii
Wisconsin
Maine○→×

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 第9控訴裁判所で審議中
※ 参考テーマ「同性カップル

8月17日(2) Avastinの認可取消 
Source :FDA considers revoking approval of Avastin for advanced breast cancer (Wasington Post)
FDAが、抗がん剤"Avastin"の乳がんへの使用認可の取り消しを検討しているという。

理由は、
  1. 高額であるにもかかわらず、効果が認められない
  2. 副作用が重大
とのこと。

もともと、承認の際にも、効果に疑問が呈されていたが、製薬会社が追跡研究をするとの条件を付して特別ルールにより承認された。しかし、FDAはこうした追跡調査をあまり真剣にやっていないのではないか、との連邦議会からの批判も上がっていた。

今回の認可取消検討について、がんの専門家やがん患者団体は賛意を示しているそうだが、実際に使用している75,000人にものぼる患者にとっては複雑である。FDAが認可を取り消せば、Medicareで償還対象ではなくなり、それは民間保険プランにも波及する。また、医療保険改革の議論の中で、「連邦政府が医療保険を乗っ取ろうとしている」との批判があったが、そうした批判が現実のものとなる可能性もある。

「安全性の確保」と「患者の選択権」は常にトレードオフの関係にある。連邦議会にとっては厳しい現実が待っている。。

※ 参考テーマ「医薬品

8月16日 州政府の権限強化が必要 
Source :Some States Are Lacking in Health Law Authority (New York Times)
医療保険改革法施行のためには、州政府に期待されている役割が大きい。ところが、約半分の州では、新法で期待されている州の役割を執行する権限が明確になっていないという。来年には州議会で立法化するとの見通しが立っている州がある一方、説得、保険会社の良心、一般州法に頼るしかない、という州もある。 こうした状況に鑑み、Obama政権は、州政府が「保険料の不合理な引き上げ」が行われていないかどうかを点検することを支援するため、州政府に$51Mを供与する予定という。

ところが、連邦政府の方も、「保険料の不合理な引き上げ」を規定できていない(「Topics2010年5月18日 ルール作りで攻防」参照)。連邦政府、州政府とも新法の施行の準備が遅れている、といわざるを得ない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月15日 国境警備強化策 
Source :Senate Passes Border Security Bill (Los Angeles Times)
12日、連邦議会上院は国境警備強化策を盛り込んだ法案(H.R. 6080)を「再」可決した。下院は、既に10日に満場一致で可決しており、大統領署名は翌日の13日となった。

強化策の概要は次の通り。
  1. 南東部の国境警備隊を1,000人増強する。

  2. 税関職員を250人増やす。

  3. 麻薬取り締まりのための移民検査官を250人増やす。

  4. 無人偵察機を2台追加する。

  5. 麻薬取り締まりのための司法省職員を増強する。

  6. 追加策の費用は$600M。

  7. 財源は、外国人を雇っている企業が負担するビザ手数料を$320から$2,750に引き上げる。ビザ手数料負担の対象となる企業は、外国人労働者が50人以上または従業員の50%以上を占める場合。
これで不法移民対策に関する連邦議会の対応は一応の決着となる。ヒスパニック系に支持者の多い民主党にとって、大統領選から中間選挙までの間に総合的な改革を進めることができなかったことはマイナス要因となる。

ところで、この強化策法案の審議において、珍しいミスが発生した。国境警備に関する財源措置は下院の先議事項であるにもかかわらず、上院が先に可決してしまった(「Topics2010年8月7日(1) 教職員雇用確保法案」参照)。従って、10日に下院が可決した後、改めて上院が「再」可決したというわけである。

しかも、既に上院が休会期間に入ったことから、全上院議員が合意しているなら投票は必要ない、との特別規定により、たった2人の議員が出席しただけで可決された。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

8月14日 "DROP" Plans 
Source :Deferred Retirement Option Plans (Employee Benefits Legal Resource Site)
"DROP"プランというものがあることを初めて知った。特に、州政府・地方自治体で取り入れられているプランのようである。年齢差別禁止法のある国で、退職年齢を決められないが故に開発されたプランといってもよい。

制度をいちいち説明するよりも、上記sourceに掲載されている例示を示した方がわかりやすい。
(仮定)
従業員X:55歳で勤続年数30年。30年間の平均給与年額は$20,000。この時点でフル年金受給が可能となる。
年金受給額:平均給与年額×2%×勤続年数
55歳〜60歳の平均給与年額は不変とする。

選択肢選択肢 1選択肢 2選択肢 3(=)
退職年齢55歳で完全に退職する60歳まで働いて退職する55歳で退職しながら雇用契約は維持する。ただし、継続年数には上限(例えば5年)あり。
年金受給額$12,000(=$20,000×2%×30年)$14,000(=$20,000×2%×35年)・55歳〜5年間:$12,000×5年、金利、物価調整を別勘定で管理(非課税)。60歳退職時に受け取り。
・その間、通常の給与は受け取る。
・60歳〜:$12,000
この従業員Xの場合、55歳時点で退職するインセンティブが働く。退職しないとすると、55歳〜60歳までは、フルタイムで働いたとしても年額$8,000(=$20,000-$12,000)の差しか生まれない。また、55歳で退職して、民間で職を得たとすると、所得は『年金$12,000+フルタイム給与』となり、有利となる。

こういった早期退職を促すような年金プランは、体力を必要とする警察官・消防士のような職種や、かつて大量の余剰を抱えていた教職員に適用されるケースが多い。しかし、有能な職員を確保できるかどうか、との懸念から、"DROP"プランのような制度が開発された。

こうした主旨から、選択肢1よりは選択肢3の方が有利となるよう設計することは当然で、理屈上は選択肢2と選択肢3は中立になるように設計するのが原則だが、労働組合との交渉等により導入されるケースが多いことから、選択肢3の方が従業員にとって有利になることが多いらしい。もちろん、個々人の従業員にとってみれば、その生存年数により、どちらが最終的に有利になるかは変わってくる。

従って、一般的には"DROP"プランは自治体職員に人気がある。ところが、Philadelphia市の市長は、この"DROP"プランの廃止の方針を打ち出した(Philadelphia Inquirer)。理由は、年間$22.3Mものコスト増になっているとの試算がでてきたからだ。

これに驚いた職員達は、急いで"DROP"プランに加入しようとしているそうだ。おそらく、労組も"DROP"プランに向けて動くのだろう。雇用・ベネフィットを巡る官民格差は、ますます広がる方向にあるようだ。

※ 参考テーマ「地方政府年金

8月13日 連邦政府職員が一番 
Source :Federal workers earning double their private counterparts (USA TODAY)
連邦政府職員の総報酬(給与+ベネフィット)が、民間企業従業員の倍を稼いでいる。しかも、この10年間で官民格差が倍になったという。
Obama大統領は、連邦政府職員の給与アップを2011年は1.4%に抑えるよう提案している。しかし、連邦議会共和党は、凍結を求めており、これが実現すれば、$2.2Bの支出削減につながる。民主党は凍結反対とのことだが、こうした現実を、国民にどのように説明するのだろうか。

※ 参考テーマ「労働市場

8月12日 保険プランの見直し 
Source :Health Care Reform’s Impact on Rewards Strategies - Is it time to change the mix of compensation and benefits? (buckconsultants)
上記sourceでは、医療保険改革法(PPACP)の施行に伴い、企業は医療保険プランの見直しを行うべきと説いている。ポイントは次の通り。
  1. "Exchange"の創設により、低中所得者層にとっては選択肢が広がることになる。

  2. 特に、低所得者層の従業員を数多く抱える企業(つまりは低賃金の企業)は、医療保険プランの提供をまったくやめてしまう可能性がある。従って、企業保険プランの加入者数は、若干減少するものと思われる。

  3. 一方、ほとんどの企業は医療保険プランの提供を継続するものと思われる。その経済的理由は次の3点。

    1. キャディラック保険課税で制約はできるものの、依然として非課税措置が大幅に認められる。
    2. "Exchange"加入資格が発生するには、"Affordability Test"をクリアしなければならない。
    3. 企業保険プランではなく"Exchange"を選択した従業員一人当たり$3,000のペナルティ(損金不算入)が課される。

  4. PPACPでは、企業の保険料負担割合に関する規定がないため、これを利用して、従業員の企業保険プランと"Exchange"の選択を誘導することができる。ここでも。低所得者層は"Exchange"に誘導されることで、企業保険プランの加入者は若干減少すると見込まれる。

  5. そうした状況では、低所得者層は、現物給付よりも現金給付の方を選好することになる。現金給付に置き換えた場合、単身者及び配偶者の勤務先で保険加入できる者が有利となる。一方、被扶養者を多く抱える従業員は不利になる可能性が高い。

  6. 大企業の5分の1は、給与額に応じた保険料負担を求めている。しかし、"Exchange"の参加資格は家計所得で判断されるため、企業保険プランも、給与ではなく家計所得に基づいて設計する事が合理的となる。

  7. しかし、従業員の家計所得を把握することは難しい。CBOやCMSが用いている家計モデルを利用して保険プランを再設計することはできる。
ここから先は、プロのコンサルティング会社を利用しろ、というわけだが、いずれにしても、"Exchange"の出現により、企業保険プランの制度設計及び加入者層は大きく変わりそうである。そうした変化が明らかになった時点で、Obama大統領の『現在加入しているプランの継続は認める』との約束(「Topics2009年6月4日(1) Obama大統領の意向-医療保険改革」参照)を、どのように評価することになるのだろうか。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

8月11日 教職員雇用確保法案成立 
Source :House Passes Bill to Keep 319,000 Teachers, Police, Firefighters & Nurses on the Job (The House Speaker)
10日、教職員雇用確保法案(H.R. 1586)が成立した(「Topics2010年8月7日(1) 教職員雇用確保法案」参照)。これにより、16万人の教職員の職が確保される。Obama大統領はこの点を強調して大いに宣伝している(The White House)。

取りあえずは州政府への支援が行われることになったが、州政府の財政状況をみれば、簡単に状況が改善するわけではない。厳しい状況がしばらく続くことになる。

※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策