Source : | Supreme Court Clears Way for the Sale of Chrysler to Fiat (New York Times) |
9日夜、最高裁はTRFの訴えを受理しないこととした。これで、新生Chrysler誕生への障害はほぼなくなった。としており、GMの場合に同様の訴えが出てきたときにどのように判断するかの予断は与えていない。
最高裁は、
- TRFの訴えの法的正当性について判断したわけではない
- TRFは、下級裁判所の判決に対して最高裁が介入すべき理由を充分に示していない
Source : | Supreme Court Delays Sale of Chrysler to Fiat (New York Times) |
これだから、アメリカの司法プロセスは気が抜けない(「Topics2009年6月8日(2) TRF最後のチャンス」参照)。
TRFなどの訴えを受けた最高裁は、破産裁判所が定めた売却期限を、一旦保留とする判決を下した。その後の方向性は何も示されていないので、次の最高裁のアクションを待つしかない。
依然として、プロの間では、最高裁も最終的には売却を認めるのではないか、との見方が優勢のようだ(BusinessWeek)。
ただ、これまでの司法プロセスでいとも簡単に却下されてきた訴えについて、最高裁で『ちょっと待った』が入ったことへの反響は小さくない。また、待ったをかけた判事は、リベラル派と目されているRuth Bader Ginsburg判事である(「Topics2009年5月2日(1) 最高裁判事が引退か」参照)。これはひょっとするとひょっとするかもしれない、とのTRFの期待感が膨らむのも無理もない。
※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11」、「受託者責任」、「地方政府年金」
Source : | 'Single-Payer' Supporters Challenge Democrats (Washihngton Post) |
タイトルは、単一保険者制度の創設を求める聴衆に対し、Obama大統領が発した言葉の一端である。『ゼロから議論するなら、単一保険制度に向かうことも意味あることだが・・・』という説明である。そもそもObama大統領は、選挙中から単一保険制度の創設は排除していた。
また、Baucus上院議員も、単一保険制度の創設が政策の選択肢に含まれていないことに謝罪はしたものの、『いまさら方向性を変えることはできない』と釈明している。
医療コストを抑制し、皆保険を目指すのであれば、単一保険制度の創設が望ましいとの政策要望は根強い。しかし、現実には6割弱の労働者が企業が提供する保険プランに加入していることに加え、単一保険制度に対する国民の拒否反応もまた強いものがある。
Clinton政権が目指した理想郷よりも、現実に一歩でも改革が進むことを選択するObama政権。アメリカ国民はどちらを選択するであろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Opponents of Chrysler Deal Go to Supreme Court (New York Times) |
5日午後、控訴裁判所は、TRFなどの訴えを退ける判決を下した(「Topics2009年6月3日 年金ファンドは徹底抗戦」参照)。TRFは、土曜日午後、ChryslerのFiatへの売却期限を延期するよう、最高裁判所に訴えた。破産裁判所が設定した売却期限は、8日16時である。
破産裁判所でも、控訴裁判所でも、TRF側の主張を重視しようという流れはまったくといってよいほどなかったようで、あっさりと結論が出されている。この様子では、最高裁が取り上げることすら難しいかもしれない。そうなれば、Fiatへの売却にまつわる障害はなくなる。新生Chryslerの誕生となる。
「最後のチャンス」というよりも、「一縷の望み」ということかもしれない。
※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11」、「受託者責任」、「地方政府年金」
Source : | Fray on Pay (CFO.com) |
金融機関の躓きに伴い、経営者報酬への社会的関心(批判?)が高まっている。上記sourceは、経営者報酬に対して何らかの制限を設けようとする動きが高まるのではないか、と懸念している。
考えられるワースト・シナリオは次の2つだそうだ。また、以前から議論のある、株主総会の議案にする、というのも選択肢の一つとなろう。
- 政府(連銀)が不良債権を購入した金融機関に適用されている報酬制限が、全上場企業に適用される。(TARPに盛り込まれている主な規制は、上記source末尾に列記されている。)
- 税法上の損金算入上限額($1M)を$500,000に引き下げたうえ、業績連動報酬(ストック・オプションなど)も損金算入限度額の範囲に含める。
これに対して、経営者達は、現在の報酬委員会はほとんどの企業で正常に機能しており、これに優るガバナンスはない、と主張している。当分の間、つまり景気が完全に回復するまでは、こうした議論が続くものと思われる。
※ 参考テーマ「経営者報酬」
Source : | Arizona lawmakers move to end domestic partner benefits (Arizona Daily Star) |
Arizona州では、州政府、州立大学職員に支給している同性パートナーへのベネフィットを削減しようとの動きが出ている。理由は次の2点。後者は、Janet Napolitano前知事(D)(現Secretary of Homeland Security)の時代に、行政措置として導入されたことを指している。これを捉えて、州議会が立法措置を講じて、支給を停止しようとしているそうだ。Jan Brewer現知事(R)は、元々同性カップルへの支給に反対の意見を持っており、この議会の動きを支持している。
- 州の財政収支が悪化している。
- 現在の支給は、州の法律で規定されていない。
当websiteでは、New Englandにおける同性婚の風を紹介してきたが、全米を見渡してみれば、州憲法で婚姻の定義(男女間)を定めている州が30州(2008年)、法律で定めている州が40州もあり、同性カップルに対する風当たりはまだまだ強い。
こうなってくると、NEとその他の地域との価値観闘争が持ち上がるかもしれない。
※ 参考テーマ「同性カップル」
Source : | Solis Asks PBGC to Halt New Investment Strategy (PLANSPONSOR) |
さる5月21日、Solis新労働長官は、PBGCの運用方針変更を、当面凍結する旨提案を行った。PBGCのB/Sの極端な悪化と、先のPBGC理事長を巡るスキャンダルを受けてのことと思われる。
既に、商務長官は提案に同意しており、財務長官もその見込みと伝えられている。PBGCのBoardメンバーは、この3人しかおらず、運用方針変更の凍結は、事実上、決定されたものとして考えてよさそうだ。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」
Source : | Obama Urges Quick Action on Insurance (New York Times) President Pivots on Taxing Benefits (Washington Post) |
2日、民主党上院議員達がObama大統領を訪問し、医療保険改革について意見交換を行なった。正式な議事録等があるわけではないが、上記sourcesから、Obama大統領の感触が伝わってくる。タイムラインは区切られた。今後の議会での議論が注目されるところである。
- 医療改革法案を10月までに議会で可決するよう要請する。夏休みまでに両院で可決し、9月に両院協議会で成案、10月に大統領署名、というスケジュールを描いている。
- 公的医療保険プランの創設を強く支持する。これが医療費の抑制に貢献する。ただし、これにより、共和党議員のサポートを失うことを懸念する。
- 医療過誤訴訟について、共和党の主張(損害賠償に上限を設ける)を取り入れてはどうか。
- 無保険者対策の財源として、企業が提供する医療保険プランに関する税制優遇措置を見直すことも一案。
⇒この点については、大統領府スタッフより、『大統領は選挙中の公約や予算教書での増税提案を重視している』との事後レクがあったそうだ。選挙公約では、企業提供医療保険プランへの課税に反対していた(「Topics2008年5月3日 McCainの医療改革提言」参照)。- Medicare診療報酬に関する検討会(Medicare Payment Advisory Commission, MedPAC)の機能強化を図る。
と、折角書き上げたところ、Obama大統領から上院2委員長(Kennedy & Baucus)に宛てたレター(2日付け)が公開された。様々な憶測や不正確な情報が飛び交うことを回避するため、敢えて公開したものと思われる。
繰り返しになる部分もあるが、レターに盛り込まれたObama大統領の意向をまとめると、次のようになる。大統領府スタッフの事後レク通り、Obama大統領の意向は、選挙公約に限りなく近い(「Topics2007年5月30日(1) Obama上院議員の皆保険提案」参照)。つまりは、MA州皆保険制度の考え方(保険プラン斡旋市場の創設、公的医療保険プランの創設、保険加入の義務化、"Pay or Play"原則)に拘っていることがよくわかるのである。ただし、一点だけ異なるのは、選挙公約では子供の加入義務化を提案しており、全国民ではなかったことである。
- 現在加入している保険プランを継続することは認めたうえで、アメリカ国民に、よりよい医療保険プランの選択肢を提供する必要がある。そのためには、保険プランを自由に購入できる仕組み("Exchange")の創設と、公的医療保険プランという選択肢が必要である。
- 全国民が医療保険プランに加入する責任を持つべき。ただし、購入できるだけの所得のない人については免責とする。
- 同様に、企業は従業員の医療保険について責任をもつべき。それができない小規模企業については免責とする。
- 医療保険改革に必要な財源は、次のように確保する。
- 予算教書で示した$635B(10年間)(「Topics2009年5月8日(2) 大統領医療改革提案」参照)
- Medicare、Medicaidの支出合理化で、$200〜300B(10年間)
- MedPACの権限強化は検討に値する。
- 多くの共和党議員が賛同してくれることを望む。
- 10月までに連邦議会における医療改革法案の議論を完了させて欲しい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州」、「Medicare」
Source : | New Hampshire Approves Same-Sex Marriage (New York Times) |
3日、New Hampshire州議会は、同性婚承認法案を可決し、即日、州知事が署名した。これにより、NH州は、6番目の同性婚承認州となる。施行は、来年1月1日である。
New Englandは、確実に塗り替えられていっているのである。※ 参考テーマ「同性カップル」
州 同性婚の法的ステータス 州法 州最高裁判決 他州認可同性婚承認 認可法案審議中 異性婚同等権利賦与 Massachusetts A @ Vermont ○ Connecticut A @ Maine ○ Iowa ○ New Hampshire ○ New York ○ ○ Washington, D.C. ○ ← ← ○ ○ New Jersey ○ ○ Rhode Island ○ California ○→× ○ Oregon ○ Wasington ○
Source : | Chrysler sale heading to U.S. Court of Appeals (Reuters) |
1日、NY破産裁判所は、Chrysler社のFiatへの売却を認める判決を下した。何もなければ、5日には、新生Chrysler社が誕生する予定であった。
これに待ったをかけようとしているのが、年金ファンドである。年金ファンドは、NY破産裁判所の判決を不服とし、連邦控訴裁判所に差し止めを請求する予定である。
元々、年金ファンドは、自分達の投資回収のために、徹底的に戦うことを宣言している。そうした年金ファンドの一つ、Indiana State Teachers' Retirement Fund (TRF)は、5月20日公表したステートメントで、次のように主張している。ここでいう無担保債権者とは、C-VEBA、即ちUAWのことである(「Topics2009年5月2日(3) Chrysler-ベネフィットの行方」参照)。端的に言えば、自動車労組と教職員組合がいがみ合っている、という構図である。
- Chrysler社の再建計画がそのまま認められれば、TRFは$4.6Mの損失を被ることになる。
- 現在の案では、有担保債権者は、債権の29%しか受け取れない。ところが、無担保債権者は、それよりも高い割合で返済を受け取るだけでなく、新会社の55%の株を保有することとなっている。
- 従来の倒産法制の中で、無担保債権者が優先されるなどということは聞いたこともない。
- TRFは、受給者、加入者の最大利益確保のために、あらゆる法的手段を講じる。
年金ファンドとしては、受託者責任を全うするためには、当然の行動である。こうした行動は、GMの場合にも出てくることが考えられる。まだまだ予断を許さない状況にある。
※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11」、「受託者責任」、「地方政府年金」
Source : | GM ANNOUNCES AGREEMENT WITH U.S. TREASURY AND CANADIAN GOVERNMENTS PROVIDING FAST TRACK TO COMPETITIVE FUTURE FOR 'NEW GM' |
6月1日、GMがついにChapter 11を申請した。超大企業だけに、ゆっくりと倒れていった感があるが、ここからはスピードが求められることになる。
今後、GMの再建に関する情報は、ここから発信されることになる。
さて、上記sourceは、GMがChapter 11申請にあたって公表した、財務省との合意内容である。基本的には4月27日公表の再建策(再提案)(「Topics2009年4月29日(3) GM再建策再提案」参照)がベースとなっているそうだが、当websiteの関心事項を改めてまとめておきたい。なお、上記sourceでは言及されていないが、GMが運営しているDBプラン(工場労働者向けとホワイトカラー向け)は、Chapter 11進行中も継続する、との確認が、PBGCから公表されている。
- 60〜90日の間に、新GMの誕生を目指す。
- 北米地域のホワイトカラー従業員を、27,200人程度まで削減する。
- 債務総額は、2009年3月末時点で、$54.4Bあった。さらに、G-VEBA(UAW)に対して、$20Bの負債を抱えていた。
- 新GMの資本構成は次のようになる見通し。
- 債権者構成
アメリカ財務省 $6.7B カナダ政府・オンタリオ州政府 $1.3B 新G-VEBA(債券) $2.5B その他 $6.8B 総 額 $17B - 優先株保有者(年9%配当(四半期毎に現金払い))
アメリカ財務省 $2.1B カナダ政府・オンタリオ州政府 $0.4B 新G-VEBA $6.5B 総 額 $9B - 普通株ならびにワラント(「Topics2009年5月30日(1) GM債権者も合意か?」参照)
アメリカ政府
カナダ政府
オンタリオ州政府債権者グループ G-VEBA(UAW) 普通株 普通株 ワラント 普通株 ワラント 新GM設立時点 72.5%
アメリカ政府 60.8%
カナダ政府・オンタリオ州政府 11.7%10% (15%) 17.5% (2.5%) 時価総額$15B 65% 17.5% (7.5%) 17.5% (2.5%) 時価総額$30B 57.5% 25% - 17.5% (2.5%) 時価総額$75B 55% 25% - 20% -
報道されている通り、波乱要因があるとすれば、債権者グループの中で事前調整に賛成しなかった債権者である。スムーズな調整終了のために必要とされていた債権総額の3分の2には達していない模様なので、この点は押さえておく必要があろう。
また、本当にDBプランが継続されるのかどうか、管理人としては半信半疑である。この点も注目していきたい。
※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11」