Source : | Senate Votes $26 Billion for States and Schools (New York Times) |
連邦議会上院は、5日、州政府財政危機の影響で教職員がレイオフされる事態を回避するための法案を可決した。Pelosi下院議長は、休会中の議員達を呼び戻して、来週にも同法案を可決したいとしている。
法案の概要は次の通り。アメリカの学校は、9月1日から新学期である。その新学期早々から教員がレイオフされるようでは、社会問題になりかねない。そうした配慮、さらにはそこから中間選挙への好材料を生み出したい、ということなのであろう。
- 財政事情で失職する可能性のある教員その他公務員の職を確保する。財源は$10B。これにより、教員その他学校関係者14万人、警察・消防・看護師その他15万人の職を確保できる。
- 医療費(Medicaid)の増大により財政赤字が拡大している自治体を救済するために、$16Bを用意する。
- 国境警備強化に$600Mを用意する。
- 財源は税制改正、歳出削減により賄うため、財政赤字は拡大しない。
それにしても、国境警備強化まで盛り込まれていることには驚きだ。
※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策」、「移民/外国人労働者」
Source : | What Do We Really Know About Consumer-Driven Health Plans? (EBRI) |
上記sourceでは、Consumer-Driven Health Plans (CDHP) の実態をまとめている。詳細はこちら。※ 参考テーマ「CDプラン」
- CDHPを提供する企業の割合は徐々に高まっている。特に、大企業では大きくなっている。
- プラン加入者は、総計1,910万人。民間保険プラン加入者の11%に相当する。
- 一般的に従業員の保険料負担は、他の保険プランに較べ低いが、伸び率は様々である。
Source : | New Democratic strategy for creating jobs focuses on a boost in manufacturing (Washington Post) |
厳しい財政状況下にある州政府は、レイオフを回避する一歩手前の策として、職員給与の削減を始めている(New York Times)。当面の財政支出削減策であると同時に、退職給付債務を圧縮する効果も期待できる。
ただし、これこそ先に当websiteで指摘した『バランス・シート調整圧力』である(「Topics2010年8月3日(2) 自治体の退職給付債務の実態」参照)。デフレ・リスクの一因となりかねないのである。
このように、公的セクターは厳しい財政状況にあり、金融セクターはといえば、先の金融規制改革法により、Obama政権・民主党自身が縮小路線を敷いてしまった。一方、雇用が改善しないことを背景に、Obama政権の経済政策は不人気で、不支持率がどんどん上昇してしまっている。
そこで、民主党が検討しているのが、『"Make It in America" - アメリカ製造業の復活』である。この戦略は、USWからは絶賛を得ており、Hoyer下院院内総務(D)は、NAM、USCCとも協議しているという。
しかし、である。経済界からの支援は難しく、実現可能性はかなり厳しいとの見立てである。
- かつての工業地帯("Rust Belt")の民主党候補者のための選挙キャンペーンに過ぎない(共和党)
- アメリカ製造業の従業員は、1979年以来減少の一途を辿っている。最近10年間だけでも3分の1が失われている(1999年:17.3M → 2009年:11.7M)
- NAMはFTAの推進を強く要望しており、労組とは対立する
- USCCは、Obama政権の医療保険改革、経済政策に強く反発している(「Topics2010年7月27日 USCCの不満」参照)
- 雇用、生産拠点を海外に移してしまった国際的な企業への課税強化をメインの政策にしようとしている
何だか、日本の金融危機後、小渕首相のもとで設置された「産業競争力会議」に似ているような印象である。ただし、日本は製造業で行きたいというコンセンサスがまだまだあり、実際、製造業のウェイトも比較的高かった。
引っ張ってもらおうと思っても、アメリカの製造業はあまりにも小さくなり過ぎてしまったのではないだろうか。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Law Will Extend Medicare Fund, Report Says (New York Times) |
5日、アメリカ政府は、公的年金及びMedicareに関する財政収支見通しを公表した。これによれば、医療保険改革により、Medicareの持続可能性が改善したとのことである。ただし、この推計には、Medicare償還額の大幅減額が含められた形で行われており、ある意味、画餅に過ぎない面がある。
ポイントは次の通り(A SUMMARY OF THE 2010 ANNUAL REPORTS - Social Security and Medicare Boards of Trustees)。
- Medicare
- Hospital Insurance ("HI")基金は、2029年に枯渇する。これは、昨年の見通しよりも12年延びている(「Topics2009年5月13日(1) 社会保障プログラムの危機」参照)。
- 2029年時点で、予定されていた給付の85%しか支給できない。
- 公的年金
- 経済危機の影響で、保険料収入が減少しており、今年から給付が収入を上回る。これは、昨年の見通しよりも6年早まることになる。
- 2019年に多少収支が改善する。これは、高額プラン課税が2018年から始まり、報酬内容が医療ベネフィットから給与にシフトすることが予想されるためである。
- 2024年からOASDI基金の減少が始まる。
- 2037年に基金は枯渇する。その時点では、予定されている給付の78%しか支給できない。
Source : | Missouri sets up challenge to federal health care law (Kansas City Star) |
3日、ミズーリ州(MO州)で州民投票が行われ、"Proposition C"が圧倒的多数の支持(賛成71%:反対29%)を得た。そのポイントは次の通り。これで同内容の州法案が即日施行されることとなった。
- MO州の権限のもと、州民に連邦政府が規定した保険加入義務を無視する権利を賦与する。
- 同時に規定されているペナルティも無効とする。
当然、本件は法廷闘争に持ち込まれることとなり、その場合の判決は「連邦法を優先すべき」となる可能性が高いようである。
州として個人保険加入義務を無効としたのはMO州が初めてである。同様の州民投票は、11月にOK、AZ、FL各州で予定されている。
AZ州の不法移民対策法と同様、本件についても、『連邦政府と州政府の権限の境界がどこにあるのか』が議論の本質であろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」、「移民/外国人労働者」
Source : | Court Rejects Same-Sex Marriage Ban in California (New York Times) |
4日、SF市の連邦地方裁判所が、『CA州のProposition 8は無効である』との判決を下した。これにより、CA州は再び同性婚を法的に認める州となった。
当然、Proposition 8賛成派は、すぐに上告するとしており、やはり最終的には連邦最高裁判所まで行くしかない。今後の行方としては、
州 同性婚の法的ステータス 州法 州最高裁判決 他州認可同性婚承認 認可法案審議中 異性婚同等権利賦与 Massachusetts A @ Vermont ○ Connecticut A @ Iowa ○ New Hampshire ○ Washington, D.C. ○ ○ ○ California ○→×→○ ○ Rhode Island ○ ○ New York ○ Maryland ○ ○ New Jersey ○ ○ Oregon ○ Wasington ○ Nevada ○ Hawaii ○ Wisconsin ○ Maine ○→× △ との観測が示されている。
- 今回の判決を下した判事が"gay"であるとの報道がなされている。
- 上級連邦裁判所は同性婚推進派に対して同情的ではない。
※ 参考テーマ「同性カップル」
Source : | Desperation Grows as Jobless Benefits Run Out (New York Times) |
"49ers"といえば、NFLの名門チーム、"SF 49ers"のことだが、ここで引用されているのは、最長の失業給付期間(99週間)をも使い切ってしまった人達のことを指している(「Topics2010年6月9日(4) 失業給付の構造」参照)。
確かに、特別失業給付の11月末までの延長は議会で可決され、執行されているが、これは、失業給付期間を延長する訳ではない(「Topics2010年7月24日(2) アメリカ救済法案成立」参照)。
失業給付期間そのものを延長しようという動きがないことはないが、巨額の財政赤字と共和党の反対の前に、ほとんど成立の可能性は立たないという。
99週以上失業中の労働者は、6月に140万人を超え、今後も急速に積みあがっていく可能性が高い。 上図を見ると、男性、黒人、高卒以下、でその割合が高まることがわかる。
やはり、アメリカの労働市場は相当厳しい状況に陥っている。
※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策」
Source : | Unfunded Liabilities of State and Local Government Employee Retirement Benefit Plans (NCPA) |
NCPAが州政府・自治体の退職給付債務の積立不足に関する新たな推計を公表した。州政府の推計は、年初にPewから公表されており、そこでは積立不足は約$1Tとされていた(「Topics2010年2月20日 1兆ドルギャップ」参照)。
しかし、GASBからGAS 27の見直し提案がなされ(「Topics2010年7月13日 GASBの新提案」参照)、債務の割引率の適正性が課題として浮かび上がったことを受け、NCPAは割引率の適正化をした場合を試算している。主な結果は次の通り(いずれも2008年)。もちろん、アメリカにおける退職給付に対する受給権は強固であり、簡単に削減することはできない。一般的には、地方税の投入を増やして財源を手当てせざるを得ない。もし本当にこれだけの積立不足を認識しなければならないとなると、大変なバランス・シート調整圧力となって、アメリカ経済を疲弊させることになる。
- 分析対象は、153の州政府・自治体。これは全退職給付債務の85%に相当する。
- 退職給付債務全体の積立不足は、公表ベースで$1.03T。
- 低い割引率を用いて再計算すると、
- 年金プランに関する積立不足は約$2.5T (←再計算前は$493B)
- 退職者医療保険プランなどその他給付に関する積立不足は$558B (←再計算前は$537B)
- 合計すると、退職給付債務の積立不足は、$3.1T
- 積立不足総額の対GDP比は22% (←再計算前は$7.1%)
州政府の財政はアメリカ経済を左右するリスク要因として充分認識しておくべきであろう。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Employers peg insurance premiums to health (MarketWatch) |
医療コストが高騰する中、健康増進プログラムへの参加と保険料を結び付ける動きが強まっている。上記sourceで紹介されているレポートでは、大企業のうち、およそ半分の企業が、健康増進プログラムに参加しない従業員には金銭的なペナルティを課すことを検討している。ペナルティの種類は、保険料の付加、免責額の引き上げ、自己負担割合の引き上げなどが考えられている。
しかし、さらに過激な手法として、健康に関するアウトカムと保険料を結び付けようという動きもあるそうだ。アウトカムとは、コレステロール値、BMIなどである。こうした数値が改善しなければ保険料を高めに設定するというものである。
企業側がここまで過激な手法を検討する背景には、従業員がこうしたアウトカム連関保険料を支持する傾向にあることがあげられる。例えば、など。
- 喫煙者に対しては高い保険料を設定すべき ⇒ 47%
- 過度なアルコール摂取者に対して高い保険料を設定すべき ⇒ 43%
ただし、太り過ぎの人に対しても同様に高い保険料を設定すべきと考える従業員は26%しかいない。太り過ぎが一般的過ぎてペナルティは難しいと考えているのか、上記のようなアウトカムとの連動はやり過ぎと考えているのか、その辺りの詳細はわからない。
いずれにしても、普段から健康と体重、食生活に気を使っている人からすれば、そうしたコントロールができていない人と同じ保険料を払うのは不公平、という気持ちになることも理解できる。
しかし、アウトカムと健康増進策とが必ず連動するわけではないことも理解しておく必要がある。太り気味の人は、もともとDNA上、そうした傾向を持っているだけかもしれない。血圧だって、先天的な部分はある。
そもそも『保険は排除の論理』であることを充分に認識しておく必要がある。保険の基本は、仲間内では助け合いだが、保険の外の人は助けない、という考え方である。従って、既に仲間内になっている人々にとって有利になる人にしか門戸を開放しないのが原則である。こうした考え方を徹底していくと、予め病気を持っている人達は排除する、ペナルティを課す、という方向に向かってしまう。
話は変わるが、医療保険改革法により、アメリカの医療保険は、上記のような『排除の論理』を一部認めないものとなった。加入申請は必ず受理しなければならなくなったからだ。これで、純粋な保険から一歩も二歩もはずれ、「社会保険」に向けて舵を切ったことになる。
既に大きな変革を内包してしまったのである。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Economic growth slows with 2.4 percent rate in second quarter (Washington Post) With Recovery Slowing, the Jobs Outlook Fades (New York Times) |
第2四半期のGDP成長率が2.4%(年率)と公表され、労働市場の先行きに対する懸念が広がっている。
これから年末に向けて、いろいろな側面で労働市場の下振れリスクが考えられる。失業率のさらなる高まり、労働市場の需給不均衡がしばらく続きそうである。
- 成長率が低下することで、期待成長率も低下し、雇用への需要が低下する。
- 企業の設備投資は伸びているものの、それが雇用に結びつくとは限らない。
- 医療保険に伴うコスト増が懸念される中、雇用への需要は高まらない。
- 失業率が高止まりしている状況では、賃金の伸び悩み、負債の圧力から消費の伸びは低迷する。
- 連邦議会は既に夏休みモード。しかも中間選挙を控え、超党派での取り組みにはほとんど期待できない。
- 州政府が財政支出カットの手段として州政府職員のレイオフを実施する。
- 失業給付の延長(11月以降)は不透明。COBRA保険料補助は打ち切り。どうしても働かざるを得なくなり、労働市場への参入は増加する。
※ 参考テーマ「労働市場」