5月19日 "EFCA"ピンチ 
Source :Labor unions find themselves card-checkmated (Los Angeles Times)
"Employee Free Choice Act(EFCA)"法案(H.R. 1409)の可決の見込みが立たなくなってきたようだ。上記sourceによれば、2007年の投票で賛成していた民主党議員のうち、少なくとも6人は反対または態度保留に回っている。また、先ごろ民主党に鞍替えしたSpecter上院議員(「Topics2009年4月29日(2) Filibuster回避」参照)も、明確に反対の意思表明を行った。これで、filibusterを中断させるために必要となる60票の目途が立たなくなってしまった。

前回も紹介した通り、経営者サイドの統率の取れたロビー活動が功を奏したようだ(「Topics2009年3月11日 EFCA再提出」参照)。一方の労働組合は、仲間割れをおこして分裂状態になっている。

ここから生じる意味合いは大きい。
  1. 労働組合にとって、特にナショナル・センターにとって最優先課題であったEFCAが成立しないということになると、労働組合の政治的パワーは大きなダメージを受ける。また、労働組合活動の活性化も手段を失うことになる。

  2. Obama大統領にとっても、大統領選挙中から強力に支持してきただけに、ダメージは大きい。

  3. VEBAを巡る大統領府、連邦議会の強硬姿勢も加わり、労働組合と民主党との距離が広がるかもしれない。

  4. 民主党の中でも亀裂が生じる可能性がある。
※ 参考テーマ「労働組合」、「VEBA/Legacy Cost

5月18日 PBGCに疑惑 
Source :Ex-Pension Chief in Contracts Prob (BusinessWeek)
Millard前PBGC長官に疑惑が持ち上がっている。PBGCの資産運用の受託機関選考に関し、必要以上に関与し、退官後の就職活動で支援を受けたという。

しかし、疑惑の発端は、そもそもPBGCの資産運用方針である。運用方針を積極姿勢に転じて、ハイリターンを獲得しようとしていたが、そうした運用方針転換に、当時の議会民主党は怒っていた(「Topics2008年10月24日 PBGCの損失拡大」参照)。

運用方針を変更し、その運用先の選考に関与し、見返りを受けていた、という構図が本当だとしたら、大変なスキャンダルになる。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

5月17日 HSA加入者増加 
Source :Census Shows 8 Million Peaple Covered by HSA/High-Deductible Health Plans (America's Health Insurance Plans/Center for Policy and Research)
HSAの加入者が確実に増加している。上記sourceによると、2009年調査では、全米で800万人にまで増えた。
FIG1
現在、民主党で検討されている公的プログラム(「Topics2009年5月5日 公的プログラムの是非」参照)が創設された場合、こうして市場で成長してきたHSAなどは、どのような影響を受けるのだろうか。

※ 参考テーマ「HSA

5月15日 G-VEBAはさらに苦境へ 
Source :GM Nears Crucial Deal With UAW (The Wall Street Journal)
FordVEBAが現金拠出を受ける予定なのに対し、GMのVEBAは、一層厳しい状況に追い込まれそうだ。

上記sourceによると、来週にもGMとUAWの新たな合意が成立しそうとのことである。ポイントは次の3点。
  1. 工場従業員の人件費を年間$1B以上削減する。
  2. レイオフを新たに2万人追加する。
  3. G-VEBAへの拠出金のうち株式の割合を50%とする。
ほぼ、GMの第2次再建案の通りである(「Topics2009年4月29日(3) GM再建策再提案」参照)。 これで、G-VEBAの資産構成は次のようになる。
給付債務$35B既存資産
現  金
新GM株
$15B
$10B
$10B
C-VEBAに較べれば(「Topics2009年5月2日(3) Chrysler-ベネフィットの行方」参照)、現金割合が多くまだまし、とも言えるが、新GM株は流動性がなく、実際の価値がいくらになるのか、不透明な部分が大きい。加入者の縮小、保険対象の削減を余儀なくされる可能性が高い。

このようなG-VEBAを組合員は承認するだろうか。

株価動向 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost

5月14日 F-VEBAへ現金拠出
Source :FORD MOTOR COMPANY ANNOUNCES PUBLIC OFFERING OF 300 MILLION SHARES OF COMMON STOCK (Press Release)
公的融資を受け取らないために、登場回数が減っているFordだが、11日、普通株300万株を売却し、その一部をVEBAに拠出する旨発表した。11日の終値が$6.08であったことから、300万株を売却すれば、$1.8Bに達する。

Fordは、今年末までに、F-VEBAに対して、$1.85Bを拠出する必要がある(Detroit Free Press)。

一方、3月のUAWとの協定見直しでは、F-VEBAへの拠出の半分までは自社株で行なうことが認められている(Medical News Today)。

つまり、今回の拠出は、認められている自社株を利用せず、現金のみで行なうこととしている訳である。F-VEBAにとっては朗報である。これは、GM、Chryslerの窮状に較べ、早期にリストラを進めてきたFordの株価が好調に推移していることの裏返しでもある。

最後にいつもの株価動向。 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost

5月13日(1) 社会保障プログラムの危機
Source :A Message to the Public by the Trustees
毎年、公的年金、高齢者医療等の社会保障プログラムに関する財政状況並びに見通しが公表される。上記sourceは、そのレポートと、Trusteesの国民に対するメッセージである。

メッセージのポイントは次の通り。

  1. 公的年金、Medicareの財政状況は大変厳しい。

  2. 公的年金

    1. 経済危機の影響で、2009-2010年の収支は赤字で推移する。
    2. ベビーブーマーの引退に伴い、2016年からはOASDI基金の減少が始まる。
    3. 2037年に基金は枯渇する。その時点では、予定されている給付の76%しか支給できない。

  3. Medicare

    1. 既に2008年から、Hospital Insurance ("HI")の収支は赤字になっている。
    2. 2017年にはHI基金が枯渇する。
    3. 2017年時点で、予定されていた給付の81%、2035年で50%、2080年で30%しか支給できない。
最後に、紹介しておきたいことは、社会保障プログラムのTrusteesの構成である。
Managing TrusteeSecretary of Treasury
TrusteesSecretary of Labor
Secretary of Health and Human Services
Commissioner of Social Security
Public Representatives (2)
Public Representativesの2人は、大統領の指名、上院の承認を経て就任することになっているが、現時点では、空席である。この構成をみてもわかる通り、関係する閣僚が関与していること、しかも、財務長官が中心的存在であることが特徴である。こうしたガバナンスは、参考になるのではないかと思う。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare

5月13日(2) DC世代
Source :Majority of Fortune 100 Companies Offer Only Defined Contribution Plans to New Salaried Employees, Watson Wyatt Analysis Finds (Watson Wyatt Press Releases)
2009年、新規採用者に提供する年金プランはDCプランのみという企業が、Fortune 100のマジョリティとなった。上記sourceでは、DBプラン、CBプラン、DCプランの1985年からのトレンドを紹介しているが、DB↓、DC↑という傾向がはっきりと表れている。

これからは、DCプランしか加入していないという従業員がどんどん増えていくことになる。企業の報酬政策も変わっていくことになろう。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

5月12日 医療費増加率抑制提案
Source :Letter to the President by health group
11日、医療関係6団体がObama大統領と面会し、大統領の医療改革に向けた活動を支持するとともに、今後10年間にわたり、医療費の増加スピードを抑制することを約束した。上記sourceは、その6団体が大統領に充てたレターである。

医療関係6団体は、次の通り。 上から、医者、病院、製薬、医療技術、保険、と来て、最後は労働組合である。ちょっと違和感があるが、傘下に看護士の組合を抱えている、と考えれば合点がいく(「Topics2009年2月28日 "Change to Win"の内紛」参照)。つまりは、医療提供サイドの集まりなのである。

また、レターのポイントは次の通り。
  1. 大統領とともに、医療改革に取り組みたい。

  2. 医療費の増加率の抑制に努めたい。
    • 現在の予測では、
      ・今後10年間で、医療費の増加率は6.2%
      ・GDPに占める医療費の割合は、現在の17.6%から20.3%に上昇

    • 増加率を1.5%抑制することにより、$2T以上のコスト削減につながる(4人家族にとっては、5年後に医療費支出を$2,500減少させることを意味する(Washington Post))。

  3. そのために、次のような課題に取り組むこととする。

    1. 事業管理の単純化、標準化、透明化に集中する。
    2. 過剰診療、過少診療を防ぐ。
    3. 医療機関同士の連携を高めるとともに、evidence-basedの診療を促進する。
    4. 診療方法、IT、規制緩和などにより、効率化を図る。
当然、Obama大統領は大歓迎である。確かに美しい話ではあるが、いつものことながら、穿った見方はいくらでもできる。
  1. 増加率を抑制するだけであり、純減を約束しているわけではない。逆に言えば、4.7%の伸び率は欲しいと言っているのである。この厳しい経済状況下で、今後10年間で4.7%の成長を保つことがどんなに大変なことか。負担する国民の方もついていけないのではないか。

  2. 課題は挙げているものの、具体的な方策や政策は提示されていない。どこまで守るつもりのある約束なのか、疑問符がつく。

  3. 6団体が共通して心配しているのは、公的プログラムが創設され、そこが価格コントロール力を持つことで、民間セクターの利益が圧迫されることである(「Topics2009年5月5日 公的プログラムの是非」参照)。

こうしてみると、どこまで本気で国民の不安感や負担感に応えようとしているのか、疑問に思えてくる。今回の提案は、『懐へ飛び込み作戦』と呼んでおきたい。Clinton大統領時代の『正面対決路線』とは対照的だから。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

5月11日 連邦議会で公的年金改革の動き 
Source :Hoyer Delivers Keynote Address on Entitlement and Health Care Reform
下院民主党のMajority LeaderであるHoyer下院議員が、公的年金改革に着手すべきとの講演を行った。医療保険改革が優先課題であることは認めつつも、連邦政府の財政赤字急増と合わせて、財政破綻が予想されている公的年金改革についても、責任を持って取り組むべきである、との主張である。

ここで注視しておくべきことは、次の2点の提案である。
  1. 超党派での取り組みが必要である。
  2. 議論の場を、連邦議会委員会に拘らず、むしろ議会の外に、"Fiscal Future Commission"を設け、そこに議員も参加する。
しかも、この講演は、以前にも当websiteで紹介したことがある、"Bipartisan Policy Center"で行なわれた(「Topics2009年4月6日 上院議員OB達も参戦」参照)。これも何かを暗示しているような気もする。

Obama大統領が、公的年金改革に執着していることにも対応しているものと思われる(「Topics2009年2月27日 大統領予算方針」参照)。

こうしたHoyer下院議員の提案に呼応している議員は、次の通り(Washington Post)。
民主党共和党
上 院Richard DurbinLindsey Graham
下 院Jim CooperFrank Wolf
※ 参考テーマ「公的年金改革