2月28日 "Change to Win"の内紛
Source :Labor's time has come, but trouble stirs within (Los Angeles Times)
"Change to Win"は、労組連合の巨人"AFL-CIO"を割って設立された新興労組連合である(「Topics2005年9月16日(1) 4つ目の離反」参照)。

ところが、その労組連合の内部で、訴訟にまで発展するほどの泥仕合を演じているという。
Unite Here(laundry, garment)Unite Here(hotel)
SEIU
United Healthcare Workers - West
National Union of Healthcare Workers
おまけに、SEIU内部では、資金の不正使用を巡るスキャンダルが表面化している(「Topics2008年8月29日 有力労組のスキャンダル」参照)。

折角、悲願である"EFCA"を支持している大統領が誕生し(「Topics2008年11月7日 労組の意気込み」参照)、労働組合シンパの労働長官が誕生した(「Topics2009年2月26日(2) 労働長官承認」参照)のに、肝心のお膝元が内紛に明け暮れているのでは、連邦議会や国民の支持が得られなくなってしまうのではないだろうか。

※ 参考テーマ「労働組合

2月27日 大統領予算方針
Source :Jumpstarting the Economy and Investing for the Future (OMB)
26日、例年の予算教書にあたる「大統領予算方針(2010)」が公表された。昨日紹介したとおり、医療改革基金の創設が謳われている(「Topics2009年2月26日(1) 医療改革基金創設」参照)。それも含め、当websiteとしての関心分野で、予算方針に盛り込まれた事項を列記しておく。
  1. 医療保険改革

    1. COBRAを利用した失業者の保険加入促進(手当済み)

    2. SCHIPの拡充(手当済み)

    3. 5年以内にすべてのアメリカ国民の医療情報を電子化する。

    4. 診療効果の比較研究($1.1B)(手当済み)

    5. 10年間で$633.8Bの『医療改革基金』を創設する。財源確保手段は次の通り。

      1. 保険会社が提供する"Medicare Advantage"の契約について、競争プロセスを導入する。 ⇒ $175B/10Y

      2. ジェネリックの使用を促進する。
        @ブランド品とジェネリックの密約を禁止する(「Topics2007年1月18日(2) Genericsを巡る密約」参照)。
        AMedicaid処方薬(ブランド品)の割引率を15.1%から22.1%に引き上げる。

      3. Medicare、Medicaidにおける過払い、不正の是正。

      4. Medicare加入者の入院について、最初の入院+退院後30日間の診療報酬を包括化する。退院後30日以内に再入院した場合には、診療報酬を引き下げる。 ⇒ $26B/10Y

      5. Medicareの診療報酬に成果連動の要素を盛り込む。 ⇒ $12B/10Y

      6. 家計所得$250,000超の申告所得控除を縮小する。申告所得控除を適用できる税率を28%までに制限する。 ⇒ $318B/10Y

  2. 新年金プランの研究

    1. 将来、新年金プラン制度を創設するための基礎研究を行う。

    2. 新年金プランは、就職と同時に自動的に加入するプランで、公的年金(Social Security)に上乗せするもの。

    3. 個人には、一定条件のもと、非加入の選択を認める。

  3. 教 育

    1. 2010-11年のPell Grant限度額$5,550を維持する。

    2. 実質価値を維持するため、CPI+1%のインデックスを適用する。

    3. 学費ローンを提供する金融機関への優遇策を廃止し、競争的な民間プロバイダーを利用した制度に改める。


Obama大統領もしぶとい。連邦議会長老達に差し止められた公的年金改革について、基礎研究を行うと言っている。上記のアイディアは、伝統的な民主党案の流れを汲むもので、既存の公的年金の外に個人勘定を設ける形が想起される。

※ 参考テーマ「一般教書演説」、「無保険者対策/連邦レベル」、「医薬品」、「Medicare」、「公的年金改革」、「教育

2月26日(1) 医療改革基金創設
Source :Obama Budget Would Create $634 Billion Health-Care Fund (Washington Post)
24日、例年の一般教書演説にあたる『両院議会演説』が行なわれた。ここでは、改革の三つの柱の一つとして、「歴史的な総合医療改革」に取り組むとの決意表明がなされた。

その翌25日、「26日の予算教書で『$634Bの医療改革基金の創設』を提案する」と、マスコミが一斉に報じている。上記sourceもその一つであり、概要は次の通り。
  1. 今後10年間をかけて、総合的な医療改革を推進するにあたり、10年で$634Bの基金を創設する。

  2. その財源は、次の手法から捻出する。

    1. 高額所得者($250,000超)への課税強化 ⇒ $318B/10Y

    2. 保険会社が提供する"Medicare Advantage"の契約について、競争プロセスを導入する。 ⇒ $175B/10Y

    3. Medicaid加入者が処方薬を購入する場合の割引率を15%から21%に引き上げる。

    4. Medicare加入者の入院について、最初の入院+退院後30日間の診療報酬を包括化する。
高額所得者、保険会社、製薬会社、診療機関など、これまでの前Bush政権下で、医療保険改革に抵抗してきた層を狙い撃ちにしていることは明らかだ。

Obama大統領は、連邦議会長老達のご意向通り、公的年金改革は先送りし、医療改革への取り組みに注力することを表明した(「Topics2009年2月25日 公的年金改革は先送り?」参照)。しかし、そのための財源として、長老達に反対された「高額所得者への課税強化」を持ち出している。

医療改革のためなら、所得再分配の強化は認められるのかどうなのか。国民の選択がどう出るか、注目していきたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「一般教書演説

2月26日(2) 労働長官承認
Source :Senate Confirms Solis as Labor Secretary - The Caucus Blog (New York Times)
Hilda L. Solis下院議員の労働長官就任が承認された。これは、EFCAを巡る論争の始まりでもある(「Topics2008年11月7日 労組の意気込み」参照)。

※ 参考テーマ「政治/外交」、「労働組合

2月26日(3) Delphiに認可
Source :Court OKs Delphi Retiree Benefits Cutback (PLANSPONSOR)
New York破産裁判所は、Delphiの退職者医療プランの削減について、認める判断を下した(「Topics2009年2月24日 Delphi-退職者医療を整理」参照)。

退職者は、「DIPが退職者のベネフィットを変更することは制約されている」と主張してきたが、Delphi側は、「これらのベネフィットは、企業側の自由意思("at will")で提供しているものであり、制約されない」と反論し、破産裁判所はこれを認めたものと思われる。

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost

2月25日 公的年金改革は先送り? 
Source :Remarks by the President and the Vice President at Opening of Fiscal Responsibility Summit (White House)
23日、Obama大統領は、カッコ良く、 と謳い上げ、今回の景気対策のツケを将来世代には付け回さない、と宣言した。

ところが、この演説の直前まで、公的年金改革にも着手したいObama大統領と、そうはさせじと押し止めた連邦議会長老達の駆け引きがあったそうだ。New York Timesによると、概ね次のような構図となっていたようだ。 こうやって、長期的課題である公的年金改革は、いつでも先送りされていくのである。

※ 参考テーマ「公的年金改革

2月24日 Delphi-退職者医療を整理
Source :Delphi Salaried Retiree Health Care Benefits (New York Times)
Delphiは、その一部がGMに吸収合併される見通しである(「Topics2009年2月18日(1) GM再建計画 」参照)。おそらくそのためであろう、事務職を対象とした退職者医療保険プランについて、整理したいと破産裁判所に申し出ている。

現在、15,000人が退職者医療保険プランに加入しているが、次のような方策を採ることにより、年間$70M以上の経費削減効果が見込まれる。また、$1.1B以上の債務が帳消しにできる。
対 象 者現 行 制 度制度変更案
1993年以前に採用された現役従業員、退職者Medicare加入資格が生まれる65歳まで、退職者医療保険に加入できる。
65歳以降については、退職者医療保険勘定により、補完的な保険プランを購入できる。
両制度とも廃止
1993〜2000年に採用された従業員退職者医療保険への加入はできない。
代わりに、事業主が給与の1%を貯蓄勘定に拠出し、退職者はこれを使って医療保険を購入できる。
事業主拠出を廃止
2000年以降に採用された従業員退職者医療保険に関するベネフィットは一切ない。
ただし、全額自己負担で、会社を通じて保険を購入できる。
現行制度維持
おそらく、GMの事務職についても、同様の見直しが行なわれているものと思われる(「Topics2006年2月9日(2) 自動車ビッグ2のベネフィット削減策」参照)。

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost

2月23日 Sebelius知事
Source :Sebelius' Handling of Health Care in Kansas Budget Crisis May Serve as Test (CQ Today Online News)
Kansas州のSebelius知事は、現在、HHS長官候補の筆頭にあがっている(「Topics2009年2月12日(2) HHS長官候補」参照)。連邦政府での経験はないものの、KS州政府レベルでは、医療保険行政に多年携わってきたそうだ。上記sourceでは、その彼女に関するいくつかのエピソードが紹介されている。
  1. KS州政府の赤字に直面し、歳出をカットしたが、医療関係は削らなかった。

  2. Medicaidにおける医師への償還額を増額した。

  3. 非営利団体であったKS州のBlue Cross Blue Shieldを営利の保険会社が買収しようとした際、それを阻止した。
これらの業績に対する評価はいろいろと分かれているようだが、ここで注目しておきたいのは、彼女の政治スタンスである。

第1は、超党派アプローチを尊重していることである。第2に、皆保険を目標に掲げていることである。

2つの点とも、Obama大統領のアプローチと合致している。しかも、州政府で実務を仕切ってきている。確かに有力候補の一人であることは間違いない。