8月30日 Palin副大統領候補(R)の政策 Source : Sarah Palin(Wikipedia)

McCain上院議員は、共和党副大統領候補として、Salah Palin Alaska州知事を選出した。

若さ、女性、Washington Circleの遥か外という意味で、サプライズもあり、戦略も感じられる。Palin知事の政策志向は、保守そのものであり、MaCain上院議員の支持基盤を強化することに貢献するだろう。

例えば、彼女はこの若さで NRAのメンバーである。また、pro-life(「Topics2005年10月19日(2) Pro-Life」参照)であり、same-sex marriageに反対である。

医療保険政策については、McCain上院議員と同じく、市場原理の考え方のようだ。前回の知事選のキャンペーンでは、次のように政策を訴えていた。
HEALTH CARE - Obviously, high medical costs are hurting Alaskans and our Medicaid budget has quadrupled in the past 10 years. Solutions to this problem are complex, and no one person has all the answers. I look forward to working with affected parties to find the necessary solutions that will lead to more affordable health care for Alaskans. I support flexibility in government regulations that allow competition in health care that is needed, and is proven to be good for the consumer, which will drive down health care costs and reduce the need for government subsidies. I also support patients in their rightful demands to have access to full medical billing information.
Obama上院議員、McCain上院議員ともに、自らの弱点を補う副大統領候補指名だったと評価できるだろう(「Topics2008年8月24日 Biden副大統領候補(D)の政策」参照)。いよいよ、本選まであと2ヵ月である。

8月29日 有力労組のスキャンダル Source : Labor Department reportedly joins investigation of SEIU payments (Los Angeles Times)

SEIUのスキャンダルが表面化した。SEIUトップの側近が支部長を務める支部で、支部長の親族が経営する企業などに対し、多額の不正支出が行われているとの疑いで、当局が捜査に入っているらしい。親族の企業への支出だけで、年間総額$1M以上にものぼるそうだ。

SEIUといえば、AFL-CIOから分離独立して新たな組織"Change to Win"を立ち上げたリーダー格の組合である(「Topics2005年6月14日 AFL-CIO分裂か?」参照)。

このスキャンダルが広がりを見せるような事態になれば、アメリカにおける労働組合の存在感、信頼感は、益々下がっていくことになりかねない。

8月28日 IFRS採用へのロードマップ 
Source : SEC Proposes Roadmap Toward Global Accounting Standards to Help Investors Compare Financial Information More Easily (Press Release)

27日、SECは、IFRSのアメリカ企業への適用に関するロードマップについて、原案を固めた。今後、正式に案文が公表され、パブリック・コメントが求められることになっている。

ロードマップの作成は、昨年の円卓会議の結論を受けたものであり、規定路線だ(「Topics2008年2月2日(2) SECの進む道」参照)。主なスケジュールは、上記Press Releaseによれば、 となっている。

このようなSECの動きについて、Paulson財務長官BernankeFRB議長は支持を表明している(BusinessWeek)。

一方、連邦議会では、Jack Reed上院議員Michael Capuano下院議員などが強硬に反対している。その理由の一つが、アメリカ規制当局の政策決定を海外に委ねることになる、というものである。

こうした反対意見に対しては、既にSEC内部で戦略を検討済みであろう(「Topics2007年11月16日(1) SEC IFRS採用を決断」参照)。

また、同じBusinessWeekによれば、こうしたSEC提案について、海外事業を展開している大企業は歓迎するだろうとされている。これはごく自然な反応であろう。日本の企業でも同じ理屈が当てはまることは、既に当websiteでも紹介済みである(「Topics2007年4月26日 アメリカ企業にもIFRS?」参照)。

アメリカはIFRS採用に向かって着々と動いている。

8月27日 無保険者減少 
Source : Income, Poverty, and Health Insurance Coverage in the United States (U.S. Census Bureau)

2007年の無保険者割合が改善した。上記sourceによれば、無保険者関係の主な指標は次の通り。
項  目2006年2007年改善(↑)/悪化(↓)
無保険者割合15.8%15.3%
無保険者数47.0M45.7M
民間保険加入割合67.9%67.5%
企業プラン加入割合59.7%59.3%
公的プラン加入割合27.0%27.8%
Medicare加入割合13.6%13.8%
Medicaid加入割合12.9%13.2%
無保険者割合 18歳未満11.7%11.0%
無保険者割合 18-24歳29.3%28.1%
無保険者割合 25-34歳26.9%25.7%
無保険者割合 白人14.9%14.3%
無保険者割合 黒人20.5%19.5%
無保険者割合 アジア系15.5%16.8%
無保険者割合 ヒスパニック34.1%32.1%
州別無保険者割合04-05平均06-07平均改善幅(%ポイント)
改善幅上位3州West Virginia16.5%13.8%-2.7%
Massachusetts10.3%7.9%-2.4%
Indiana13.7%11.6%-2.1%
改悪幅下位3州Louisiana16.9%20.2%3.3%
Mississippi16.8%19.8%3.0%
New Mexico20.1%22.7%2.6%
これらを受けてのコメントをいくつか。
  1. 民間保険加入割合、企業保険プラン加入割合が微減している一方、公的医療保障プランへの加入率が高まっている。全体の無保険者割合の改善は、公的プランの貢献によるものである。これを良しとするか否かは、評価の分かれるところであろう。

  2. 子供、若年層の無保険者割合が改善しているのも、公的プランによるところが大きいと思われる。

  3. 人種別では、アジア系が悪化している。その他は改善しているものの、ヒスパニック、黒人の無保険者割合は依然として高い。

  4. Massachusetts州の無保険者割合の大幅改善は、やはり皆保険法の施行(2007年10月)が効いている。しかも、これで、無保険者割合が全米一低くなった。立派な成果である。

  5. 無保険者割合の改悪幅上位になったLouisiana州とMississippi州は、2005年8月のHurricane Katrinaの影響と考えられる。

8月26日 水面下のストックオプション Source : Glub, glub, glub : 40% of options are underwater (Financial Week)

Fortune 500のうち、40%の企業のストック・オプションが賦与時の価格を割りこんでいる。また、10%の企業のストック・オプションが賦与時の価格の50%を切っている。

最近の経済環境の悪化を反映して、ストック・オプションの本来の動機付けという役割はほとんど無効になってしまっている。特に、金融、IT関連の業界では、惨憺たる状況のようだ。

では、こうした株価状況になってしまった企業の取るべき手段は何か。
  1. ストック・オプションをやめ、単なる株式賦与とする(「Topics2003年12月15日(1) 行使されないストック・オプション」参照)

  2. ストック・オプションの再価格付け(repricing)を行う。ただし、この手法については不正が多発したため、株主の承認が必要である。
いずれも難しい選択肢である。自社株を使った従業員への動機付け、引き留め策は、このストック・オプション、ESOP、401(k)マッチング拠出などがあるが、いずれも、近年、制度改正により、かつてのような(企業側にとっての)魅力がなくなりつつある。

そろそろ、自社株を利用した報酬制度からの転換を考えざるを得ない時期に来ているのかもしれない。

8月25日 事業主によるモニター Source : Workplace Electronic Monitoring: What's Legal? What's Not? (HR Daily Advisor)

先日、高校時代の友人に偶然会い、従業員のPCの監視がどうなっているか、という話題になった。彼のところには、従業員が例えばゲームソフトをインストールすると、そのログが届くそうである。日本企業でも、事業主によるEメールのチェックや、PCのログの確認といった行為が日常化しつつあると聞く。

上記sourceでは、アメリカ企業における現状が説明されている。
  1. 基本的には、Electronic Communications Privacy Act of 1986 (ECPA) という法律で、電話やEメールのプライバシーは保護されている。

  2. ただし、次のような場合には、事業主によるモニターが可能となる。

    1. モニター対象の機器を事業主が提供している。ただし、第3者を介するEメール(例えばAOLやYahoo)はモニターできない。

    2. 事業主が関係者からモニターの許可を得ている。

    3. モニター自体が通常の業務の一部である。

    4. 個人的な連絡と判明した場合には、即座にモニターを中止する。

    5. 業務通知などにより、モニターすることがあり得ることを従業員に事前に周知している。
上記sourceにある通り、最後の項目が大変重要になってくる。上記のような環境の中でプライバシーが守られる可能性があるとは考えにくい。

8月24日 Biden副大統領候補(D)の政策 Source : Senator Joe Biden on Health IssuesSenator Joe Biden on Standing with America's Workers

Obama上院議員は、副大統領候補としてJoe Biden上院議員を指名した。報道でも示されている通り、豊富な外交経験を買われてのことと思われる。

当websiteとしては、取りあえず、Biden候補の政策をチェックしておきたい。 医療保険では、Medicare PartDについてのスタンスが異なるようだが(「Topics2007年1月17日(1) Obama上院議員の優先政策事項」参照)、制度創設時におそらくBush政権との協力関係にあったものと思われる。超党派で活動することを信条とするBiden上院議員ならではのスタンスであろう。その他はObama上院議員と路線は一致しているようだ(「Topics2007年5月30日(1) Obama上院議員の皆保険提案」参照)。

年金についても、公的年金についてはObama上院議員と意見が一致しているようだが、企業年金については民主党の中でもかなり保守的な思想を持っているものと思われる。

8月22日 まずは保険会社規制(CA州) Source : Bill would Limit Health Plans' Overhead to 15% (AP)

19日、加州下院議会で、保険会社の収入に対する保険償還の割合を85%以上とする法案(SB 1440)が可決された。つまり、管理費、手数料、利益等に充てる割合の上限を15%にせよ、ということである。法案では、2011年からの適用を求めている。

同法案は、元々加州上院の提案であり、下院の修正が再び上院に送られるものの、上院での可決の可能性は高い。

また、シュワ知事は、限定的な改革を推進すると公言している(「Topics2008年8月8日 シュワ知事は断念」参照)ことに加え、もともとの同知事改革案に、同様の提案が含まれていたという経緯もある(「Topics2007年10月11日(1) シュワ知事法案」参照)。

上記sourceによれば、現状では30%程度と見られており、同法案の適用は現実的にはかなり厳しい。加州共和党は、これではカリフォルニアから保険会社が退出してしまう、と反対の姿勢を崩していないが、同法案の成立する環境は整いつつある。