8月10日 EDは大忙し Source : Emergency department visits increased by more than 32% from 1996 to 2006, CDC report finds (Kaisernetwork)

アメリカで救急診療(ED)が多忙となっている。上記sourceによる分析は次の通り。
  1. 主な統計データは次の通り。

    1. EDを訪れた患者数は、1996年9,000万人から2006年には1億1,900万人と、36%増加した。

    2. 全米のED数は、1996年約4,000から2006年約3,800に減少した。

    3. ED患者の平均待ち時間は、1997年約38分から2006年56分と伸びた。

    4. ED患者の約13%は入院している。

    5. 年齢別では、幼児の利用率が最も高い。次いで高いのは75歳以上である。

  2. EDが多忙となっている理由は次の通り。

    1. 一次ケアを担う診療所の予約が取りにくくなっている。特に、Medicare、Medicaidの加入者にこの傾向が顕著に見られる。

    2. 病院が入院病床を減らしてきたために、ERに行かざるを得なくなっている。2006年の入院患者の半分以上は、ED経由であり、その数は1996年よりも38%増加している。


  3. 逆に、次の事項は、EDが多忙となっている理由とはなっていない。

    1. 無保険者が急増していること。
      ED患者の40%は民間保険、25%は州政府の保険プログラム、17%はMedicareに加入している。無保険者は17%と、一般の無保険者割合と変わらない。つまり、無保険者がEDに殺到しているわけではない。

    2. 全米の人口が増加していること。
正直に申し上げて、私がアメリカ在住期間中、二人の子供が、Suburban Hospitalという総合病院の救急医療にお世話になったことがある。一人は、アメリカ到着後4日目に、転寝をしていて椅子から転げ落ち、鎖骨を骨折した。

もう一人は、まだ幼児の時に、急な発熱があり、その時、たまたま主治医が休みを取っていて、他の診療所を紹介してくれたのだが、その診療所が電話で容態を聞くだけで、なかなか診療をしてくれなかった。それで、手遅れになってはいけない、とEDに飛び込んだのである。結局、その子は3日ほど入院したのだが、原因はわからなかった。

まさに、上記の指摘にぴったり当てはまる事例となっている。

8月9日 安上がりな従業員引留策 Source : 13 Inexpensive - but Effective - Employee Motivators (HR Daily Advisor)

上記sourceでは、あまりお金がかからない、でも効果的な従業員引き留め策、やる気向上策が示されている。これを読んでの感想をいくつか。
  1. 1点目に挙げられている職場訪問は、日本でもかなり行われていると聞く。しかし、昔の日本の企業では、家族を呼んでの行事(運動会、果物狩り、等々)をよくやっていた。これは4点目にも通じる。上記sourceの主旨からすれば、職場の人達との面識や交流が重要ということなので、充分その役割を果たしていたのだと思う。運動会の復活は最近大企業でよく聞く。やがて日本の企業もそうした家族イベントを再び見直す時期が来るのだろうか。

  2. 2点目のロゴ入りTシャツは、ちょっと恥ずかしい気もするが、よく考えてみると、社会人野球やVリーグなどでは当たり前のように配られている。

  3. アメリカらしく、医療関係の提案が2項目入っている。日本人の感覚では、そうかな、という違和感を覚えるところである。

8月8日 シュワ知事は断念 Source : Health insurance ambition narrows (Los Angeles Times)

今年初め、CA州では皆保険法案が否決され、保険法改革が頓挫してしまった(「Topics2008年1月29日 加州皆保険法案否決」参照)。シュワ知事は「再挑戦する」(「Topics2008年5月1日 "I'll be back"」参照)としていたが、そのメニューは、次の通り、かなり限定的なものとなったようだ。

  1. 個人保険プランからの収益率に上限を設ける。

  2. 保険プランの内容に最低基準を設ける。

  3. 保険プラン加入を拒否できる要件を厳しくする。
いずれも、保険会社に関する規制を強化する形となっている。無保険者対策としては、間接的かつ限定的な効果しか得られないだろう。

8月7日 MA州皆保険法にNO Source : Doctors oppose US health plan (Financial Times)

MA州の医者250人以上が、MA州皆保険法は失敗であったとのレターに署名したとのことである。このレターの主な主張は次の通り。
  1. 保険会社を通じた医療保険プランの提供には限界があり、イギリスのように、公的な単一の保険制度を支持する。

  2. 低所得者層に補助を出しながら皆保険を達成しようとすると、莫大な財政負担を伴う。

  3. 将来の資金調達が容易ではない。
また、"Annals of Internal Medicine"誌による調査では、全米単一医療保険制度の創設を支持する医師が59%に達しており、2002年時点よりも10%ポイントも上昇しているという。

アメリカの医師は、単一医療保険制度のもとで、診療報酬は一律に、しかも現在よりも抑制される可能性が高い、ということを理解しているのだろうか。もし、正しく理解しながら、本当に無保険者をなくすために単一医療保険制度が必要である、という主張なら、それは立派である。その辺りを一度確かめてみたいものである。

8月6日 401(k) Debit Cardsに警告 Source : 401(k) Debit Cards : What You Might Not Know (SEC)

SECが、"401(k) Debit Cards"の利用に関して警告を発している。

そもそも、日本では馴染みがない"401(k) Debit Cards"とは何なのか。401(k)の口座から引き落としができるDebit Cardのようである。

アメリカでは、スーパーで買い物してレジに行き、銀行のキャッシュ・カードを渡すと、"Debit or Credit?"と聞かれる。大抵の銀行キャッシュ・カードには、debit機能とクレジット機能が付いているのである。

つまり、日常の買い物の決済を401(k)口座でしようというもので、401(k)が広く普及しているアメリカならではの仕組みであり、確かにキャッシュ・カード感覚で便利ではある。しかし、SECは、退職後の資金が減りますよ、ちゃんとルール通りに返済しないとペナルティ・タックスが課税されますよ、と警告しているのである。

日本ではまず考えられない仕組みである。そもそも、税の恩典があり、引き出し要件が厳しく制限されているのだから、普段のお買い物の決済に利用するなどとんでもない、ということになろう。彼我の違いを感じさせる事例である。

8月4日 MA州議会可決 Source : Mass. House proposes $89M in health fees (Boston Globe)

7月29日、MA州議会下院が、MA皆保険制度に対する拠出増を求める法案を、大差(135 v 21)で可決した。法案は上院に送付されている。

総額は$89Mで、Patrick知事の要望である$100Mに届かない(「Topics2008年7月23日 MA州拠出増要請」参照)。また、企業に対する拠出増要望も落とされていて、その代わりに州政府の負担増を求める形となっている。

州下院は、企業側の反発に考慮した形だが、Patrick知事は、職権で企業拠出増を求めることもできるとして、諦めていない。また、州民の間でも企業拠出増を認める空気がある。

8月1日 DOLとSECの協力 Source : Memorandum of Understanding Concerning Cooperation between the U.S. Securities and Exchange Commission and the U.S. Department of Labor

労働省(DOL)SECが、協力のための覚書を交わした。年金プランや401(k)を管轄するDOLと、金融市場で投資家保護を担当するSECが、相互の目的のために協力するとのことである(Press Release)。

いくつかの具体的な項目が記されているが、大きく分ければ、両者の人材交流と情報交換である。特に、後者については、公表されていない、職務上入手した非公開情報についても交換するという。

アメリカ金融市場における年金資金の重要性を示す好例である。