7月27日 病気を理由に解雇 Source : Sick & Fired: Is There 'Health Discrimination' in the Workplace? (Consumer Watchdog)

医療費高騰が続くため、病気で一部の仕事ができないとなると解雇される、という例が出てきているようだ。上記sourceで紹介されている事例では、「健康差別」としてEEOCに訴えることを検討しているようだが、勝訴するためには、余程の障害がないといけないようである。

もちろん、アメリカ企業が皆こんな対応を取っているのかというとそうでもなく、ある調査によれば、がんを患った従業員のうち、17%は医療保険を失ったが、76%は会社が充分な対応をしてくれている、と評価している。

すべての病気が一律ではないので、一般論は難しい。病気を理由に業績内容が劣化しているのであれば、減俸、さらには解雇、と進んでしまうのも、一つの理屈である。日本でも、うつ病が増えているそうだが、出社しない社員に給料を払い続けることには議論があるだろう。

他方、病気を理由に解雇するという対応が一般的になってしまえば、企業の医療保険プランは、健康な人達だけが加入している特権プール(健康で収入が高く、保険料がやすい)となってしまう。

医療保険の社会的意義を考えさせられる題材である。

7月26日 私のPerksに手を出すな Source : 'Don't Touch My Perks' : Companies that Eliminate Them Risk Employee Backlash (Knowledge@Wharton)

上記sourceでは、「従業員のベネフィットを削減したり、利用条件を厳しくするには、よほど注意し、説明しなければならない。そうしなければ、忠誠心や生産性に悪影響をもたらす」という説明をしている。

その中で、ちょっと驚きだったのは、Googleの失敗例が紹介されていたことである。Googleは、3年半前、外部に委託する形で第1託児所を開設した。その1年後、Google自身が運営する第2託児所を開設した。この第2託児所の方が施設内用が優れているとのことで、第1託児所を閉鎖して第2託児所を拡充したのである。ところが、第2託児所の方が従業員の負担額が大きいため、従業員の失望を買ったというのである。安く預けられるという選択肢が奪われた、と捉えられたのである。

Googleとしては自社の負担を削減しようとしたわけではないのに、失敗したのである。こんな地合いがアメリカ社会にあるのだとすれば、先のAnheuser-BuschのBlue Ocean計画は、従業員からすれば「とんでもない」ということになるのだろう(「Topics2008年7月2日 買収防衛のためのベネフィット削減」参照)。

7月25日 DB凍結の影響 Source : Plan Freezes Affect Millions of Participants and May Pose Retirement Income Challenges (GAO)

上記sourceは、GAOが公表したDBプランの凍結に関する現状調査とその影響に関するレポートである。

このレポートでは、まず、DBプラン凍結の形態を、次の3つに分類している。
Hard Freeze: 新規加入者は認めない。また、加入者に関する給付の累増は認めない。
Soft Freeze: 少なくとも新規加入者は認めない。加入者の給付額の制限、累増については区々。
Partial Freeze: 新規加入者は認めない。かつ、加入者の給付額に上限を設ける、もしくは累増を制約する。
そのうえで、プラン凍結の状況、影響等について、次のように指摘している。
  1. 約330万人の現役加入者に影響が出ている。これは、単一事業主DBプラン全加入者の21%に相当する。

  2. 従業員100人以上の企業の51%で、一つ以上のDBプランを凍結している。プラン全体の44%が、何らかの形での凍結となっている。

  3. 凍結されたプランのうち、約半分はhard freezeとなっている。ただし、大企業ではhard freezezは多くない。

  4. 大企業でのプラン凍結は、2005年以降に行われている。

  5. PBGCのデータに基づけば、hard freezeとなったプランは、廃止となる傾向がある。

  6. DBプランを凍結した企業の83%は、代替措置を採っている。その多くは、DCへの拠出を増やしている。

  7. ただし、プラン凍結した企業の11%は、何の代替措置も採っていない。

  8. プラン凍結の理由は様々である。最も多いのは、DBプランへの拠出が大きいこと(72%)。また、その拠出額の変動が大きく、予測が難しいことを挙げる企業も多い(69%)。

  9. 他方、企業買収を理由として挙げた企業は12%のみ。

  10. 58%の企業は、プラン凍結時にプラン廃止に必要となる積立額を保有していた、と判断している。

  11. プランを凍結した企業の約3分の1は、最終的にはプランを廃止する考えを持っている。他方、60%の企業は、明確な方針を固めていない。

  12. まとめてみると、プラン凍結は増えているものの、プラン廃止が増えるまでには至っていない。また、プラン凍結の理由は、個別企業によって区々である。

  13. また、PBGCにとって配慮すべき点は次の通り。
    1. プラン凍結は、積立状況にとっては若干のプラス効果をもたらす。

    2. ただし、プラン凍結を行った企業が今後どれだけ積立状況を改善しようとするかは不明である。

    3. プラン凍結は、PBGCの保証対象プランの現象を意味する。
そういわれてみれば、2006年をピークに、DBプランを凍結する企業の数は減少傾向にあるようだ(Pension Rights Center)。

7月23日 MA州拠出増要請 Source : Business balking at health changes(Boston Globe)

Patrick MA州知事が、MA州皆保険制度維持のための財源として、企業、保険会社、医療機関に対して更なる拠出を求める提案を行った。総額は約$100Mと見込まれている。

要請対象要請額要請内容対応振り
企業(従業員10人以上)$33M従来は、2つの免責要件(「Topics2006年9月15日 MA皆保険法:企業の免責基準」参照)が"or"であったが、両基準とも満たすことを求める"and"とし、ペナルティ対象(「Topics2006年7月3日 MA皆保険法の実施案」参照)を増やすことで拠出額を増額する。小売業に対する影響は大きいと見られる。2年前の合意を崩すものとして反発。
保険会社$33M準備金制度の見直しにより捻出インフルエンザの大流行やテロ攻撃に対応するために必要な準備金に手をつけることになる。保険協会は影響を精査するとして今のところ静観。
医療機関$28M現在、無保険者の医療費をカバーするために$160Mを拠出しており、それを増額する。州病院協会は、現在州上院で審議されている「看護士必置基準法」を取り下げることを条件に、賛成。


さらに州知事は、失業者のための"Medical Security Trust Fund"から$35Mの拠出を提案している。

こうした知事案に対して、世論調査では、4分の3が企業拠出増額に賛成、61%が保険会社拠出増額に賛成、との結果が出ている。

まさにガラス細工の上に成り立っているMA皆保険法で、企業、保険会社がどのような対応に出るのか、注目していく必要がある。