2月20日(1) D.C. vs N.Y.
Source :While New York Bleeds, Washington Thrives (BusinessWeek)
Washington, D.C.で勉強していた者にとっては、ちょっと嬉しい記事である。New Yorkが大変な事態(出血)に陥っている一方で、DCは成長を続けているという。
Washington, D.C.New York
地域経済2008年央〜2010年央で2.5%成長4.2%縮小
リーディング産業の構成比・専門サービス、ビジネスサービス:21%
・政府部門:20%
・ハイテク、高学歴人材の仕事が多い
・金融部門:32%
NY市は、金融部門だけで65,000人の雇用が失われると見ており、次のような対策を講じている。 NYの雇用が簡単に回復する見込みは薄いが、それでもNYは、『アメリカ中、世界中の24歳の若者は、皆NYに来たがる』と自信を持っているそうだ。

ただ、実感を申し上げると、NY-マンハッタンの生活は、東京と同じくらい異常だ(「Topics2007年9月22日 D.C.も大都市の仲間入り?」参照)。DCに職があるなら、環境面でも暮らしぶりでも、DC周辺に暮らす方がうんと魅力的である。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活

2月20日(2) CA州議会で予算可決
Source :With budget stalemate over, next move is up to California voters (Los Angeles Times)
19日、CA州議会で予算が可決され、20日にもシュワ知事は署名するとみられている。予算が成立しなければ州政府職員1万人がレイオフされる、と言われていたが、当面、最悪の事態は回避されたようだ(「Topics2009年2月18日(2) CA州政府レイオフ」参照)。

最終的には、5月19日に行われる特別州民投票により、信認される必要があるそうだ。それまでは、州知事、政府、議会民主党が賛成キャンペーン、議会共和党が反対キャンペーンを繰り広げることになる。

2月19日 FDA長官候補
Source :Healthy Competition for the Top FDA Post (Washington Post)
FDA長官候補が2人に絞られたそうだ。
Joshua SharfsteinFormer health policy adviser to Rep. Henry A. Waxman (D-Calif.)
Current Baltimore health commissioner
Focusing on things like safe medicines for kids
Margaret HamburgFormer Assistant Secretary of Health and Human Services for policy and evaluation in the Clinton administration
Before that was New York City Health Commissioner.
FDA長官といえば、食の安全と医薬品行政を司る。国民には身近な政策を担当することになる。

また、Obama大統領は、選挙公約で、@処方薬の再輸入認可、Aジェネリックの使用促進を掲げている(「Topics2007年5月30日(1) Obama上院議員の皆保険提案」参照)。特に、前者については、Bush政権に相当なバトルを演じているため、注目される政策課題である。

※ 参考テーマ「処方薬再輸入」、「大統領選(2008年)

2月18日(1) GM再建計画
Source : GM Presents U.S. Government Updated Plan for a Viable, Sustainable Company (GM)
2009-2014 Restructuring Plan (GM)
Chrysler LLC Viability Plan Submitted Today to The U.S. Treasury Department (Chrysler)
GM Raises Loan Request by $12 Billion (New York Times)
17日、GMChrylerは、再建計画を提出した。

ただし、これまで注目されてきたUAW/VEBAへの株式拠出と、債権者との株式/債務交換については、結論が出せていない。その一方で、両社とも融資要請額が大きく膨らんだという新たな課題も浮上した。

要するに、両社の再建計画のdeadlineが2月17日から3月31日に先送りされ、残された課題について、新たなタスクフォース(「Topics2009年2月16日(1) 再建計画はチームで検討」参照)、両社とそのステークホルダー達の間でさらに議論が行なわれるということである。

ところで、GMの再建計画書というのは117ページもあるのだが、当websiteにとっては、お馴染みのテーマが盛り沢山で、読みどころ満載なのである。以下、同社プレスリリースの内容に沿って、ポイントをまとめておく。
  1. 労働コスト削減

    GMとUAWの間で、次の合意に達した。
    1. 自発的な工場労働者の縮減
    2. Job Bankの一時停止
    3. 報酬体系の変更に関する暫定合意

    また、従業員削減のための離職手当のプランは次のようになっている。

    SEVERANCE

  2. 株式化

    1. 約$27Bの無担保債務のうち、$18B以上を株式等に転換することで、債務を3分の1以下にする。
    2. VEBAに対する拠出の半分以上を株式で拠出する。
    3. ただし、上記2つは深い相関関係にあり、債権者、UAWとの間の暫定合意に過ぎない(「Topics2009年2月13日 UAW vs 債権者(2)」参照)。
    4. UAWは、正式に合意する前に、連邦政府との会合を持ちたいとの意向を有している。

  3. 融資額

    1. GMの融資要請額等は、次のように膨らみ続けている。
      2008年12月のGM要請額 : $18B (=直接融資$12B + 融資可能枠$6B)
        (「Topics2008年12月4日 Big 3の救済要請」参照)
       ↓
      2008年12月の連邦政府決定額 : $13.4B
        (「Topics2008年12月20日 Big 3 への緊急融資」参照)
       ↓
      2009年2月のGM再建計画
      2009年$18B当初要求通り
      2011年$4.5B ← 債務の借換が滞った場合
      2011年$9.5B← 需要予測を下回った場合
      合 計$30B
    2. さらに、GMの場合、年金プランが積立不足に陥っている(後述)ため、2013-14年に積立拠出が必要となった場合には、さらなる政府融資が必要となる。

    3. Chryslerの要求額も、同様に増えている。
      2008年12月のChrysler要請額 : $7B
        (「Topics2008年12月4日 Big 3の救済要請」参照)
       ↓
      2008年12月の連邦政府決定額 : $4B
        (「Topics2008年12月20日 Big 3 への緊急融資」参照)
       ↓
      2009年2月のChrysler再建計画 : $9B
  4. Chapter 11

    Chapter 11を申請した場合も推測しているが、その場合、車の売れ行きが大幅に悪化し、収入に与える影響が甚大であるため、コストは膨大になる。

  5. 年金プラン積立不足

    2008年で$12.7Bの積立不足が発生しており、積立比率は87%と大きく落ち込んでいる。上述のように、よほどの経済の改善がない限り、年金プランへの拠出は必至ではないかと思われる。

    TABLE13

  6. Delphi

    GMは、Delphiの一部を吸収合併する計画でいる(「Topics2009年2月11日 Delphiを吸収か」参照)。現在有効となっているGMとDelphiの取り決めでは、工場労働者を対象とした年金プランを吸収することとなっている。事務労働者を対象とした年金プランに関しては、吸収義務を負っていない。

    しかし、今回の再建計画では、Delphiの両方の年金プランについて、GMへの移管は検討していない。Delphiは、両プランを継続する体力はなく、プランを廃止することになればPBGCへの影響が出てくる。
それにしても不可解なことがある。17日に、Obama大統領はアメリカ復興再投資法に署名した。目的は「350万人の雇用維持・創出」であったはずである。一方で、Big 2には、政府融資の条件とはいえ、大幅な雇用削減、報酬削減を求めている。Bush前大統領が仕掛けたトラップなのかもしれないが、この経済危機の中で、『まずは雇用が大事』と、前政権のしがらみを打ち破ることが、Obama大統領の役割なのではないだろうか。

GM、Fordの株価動向 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11

2月18日(2) CA州政府レイオフ
Source :Legislature adjourns with no budget; governor prepares to lay off 10,000 (Los Angeles Times)
カリフォルニア州議会が予算法案を成立させずに散会となってしまったため、州政府は、資金手当ができず、仕掛りの公共事業を中心に事業を中止せざるを得なくなった。また、これに伴い、1万人をレイオフするという。

増税を好まないシュワ知事と、その意向を受けた共和党議員が増税反対に拘った結果といえる。
UNEMPMAP
上図のように、CA州の失業率は9.3%(2008年12月)と、全米(同7.2%)でみると失業率の高い方から4番目の州である。ただでさえ、公共事業による雇用、需要創出が求められているのだが、政治は失業者を生み出すように動いている。経済の現状には関心を向けてくれないようだ。

2月17日(1) COBRA-65%補助
Source :Summary of Key COBRA Provisions (American Benefits Counsil)
Immediate Action Needed to Implement Stimulus Act Changes to COBRA Coverage (Butzel Long)
COBRAへの補助率は65%であった(「Topics2009年2月14日 アメリカ復興再投資法」参照)。補助率は下院案にし、補助対象期間を短縮した、ということである。COBRA加入者本人は、保険料の35%を負担し、残りの保険料負担は、一旦、企業側(前の雇い主)が負担し、その分を所得税の源泉徴収から差し引く、という形になる。

65%という補助率は高いと思うが、問題と思われる点が2つある。一つは、補助期間が9ヵ月間しかないということである。不況が長引くおそれがある中、たった9ヵ月で次の職、しかも医療保険プラン付の職を見つけられるかどうか。MA州の保険料補助が80%、失業給付期間中続くことを考えると、十分とは言えない気がする(「Topics2009年1月6日(2) MA州失業者への保険料補助 」参照)。

もう一つは、企業の事務負担である。これまで、COBRA保険料は、全額本人負担であったものが、最終的には精算されるものの、企業が一旦は負担することとなり、そのための新たな事務も発生する。レイオフを行なうような企業は体力が弱っているところであり、そこまでの負担が実務的に可能なのかどうか、見極めが必要となろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州

2月17日(2) 診療効果の比較
Source :U.S., as Part of Stimulus Bill, Will Compare Effectiveness of Medical Treatments (New York Times)
これまた経済対策法関係(「Topics2009年2月14日 アメリカ復興再投資法」参照)だが、$1.1Bを投じて、医薬、医療器具、手術、その他診療行為について、疾病ごとにその効果を比較するという研究が行なわれる。当然、医療情報のIT化が前提となる。

このようなアイディアは、クリントン現国務長官、Daschle元上院議員などが提案しており、ここに来てようやく実を結んだということになる。クリントン提案については、「Topics2007年9月18日 Clinton提案」source 詳細版(P.6)を参照。

こうした研究を通じて、医療行為の標準化、包括払い化が可能となっていく。また、患者側にとっても、標準の医療とその効果が予見できるようになる。

しかし、このような研究が進む結果、医療保険の硬直化が進むとの意見もある。特に、共和党保守派の中に、こうした考え方が根強い。一旦、標準化が進んでしまうと、個人の特殊性が無視されたり、新たな治療方法がなかなか受け容れられなかったりするからである。また、民主党は、Medicareの処方薬価格を政府が交渉できるようにしようという考え方を持っているため、やがては単一の保険制度に誘導しようとしているのではないか、との懸念が共和党内に強くあるのだろう。この辺りは、日本の統一診療報酬制度のもとではよく理解できるところである。

おそらくは、両方の側面が大事で、新たな治療方法や個性への対処については柔軟でなくてはならないが、一方で、効率性の高い治療法の検証も常に必要なのである。いずれにしても、日本からは遠い世界の話である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare

2月16日(1) 再建計画はチームで検討
Source :To Fix Detroit, Obama Is Said to Drop Plan for 'Car Czar' (New York Times)
明日17日は、「アメリカ復興再投資法」の署名式が行なわれる(「Topics2009年2月14日 アメリカ復興再投資法」参照)と同時に、Big 2の再建計画提出期限の日でもある。アメリカ経済復活のスタートとなるのか、奈落への落下口となるのか、誠に注目すべき一日である。

これに関連し、13日、『Big 2の再建計画をレビューする"President's Designee"が指名されていない』ことを紹介した(「Topics2009年2月13日 UAW vs 債権者(2)」参照)。しかし、上記sourceによると、Obama大統領は、単独のレビュアーの指名をやめ、親しいメンバーによるチーム("Presidential Task Force on Autos")でレビューすることにしたとのことである。

報じられている構成は次の通り。 Bloom氏というのは、企業再建の専門家で、USWのアドバイザーを務めているらしい。つまりは、債権者と労組の両方に顔が利く、ということのようだ。

Obama大統領としては、このタスク・フォースで、1〜2週間ほどかけて、提出されてくるであろう再建計画をレビューする考えのようだ。その際、政府が管理する破綻処理も視野に入っているらしい。

独立した監督官に任せて破綻に突き進むよりも、顔馴染みのチームで少し時間稼ぎをしながら処理を考えようということなのかもしれない。

GM、Fordの株価動向 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11

2月16日(2) Wal-Mart改善
Source :Wal-Mart Becomes an Innovator in Employee Health Coverage (Washington Post)
医療保険の世界では悪玉に仕立て上げられていたWal-Martだが、無保険者に関しては大幅に改善している。2007年9月時点では、従業員の無保険者が10%を占めていたのに対し、現時点では5.5%となった。2008年プランに導入された改善策が効を奏したと言えよう(「Topics2007年9月19日(2) Wal-Mart 清水の舞台」参照)。

ただし、相変わらず、自社の保険プランに加入している従業員の割合は52%しかなく、大きな改善は見られていない。

注目すべきは、"WebMD"を利用して、保険プラン加入の手続きを簡素化したり、診療記録のICT化を図っている点である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MD州

2月15日 Domestic Medical Tourism
Source :Medical Tourism Closer to Home (Human Resource Executive Online)
アメリカで盛んになりつつある"Medical Tourism"だが、何も国外にいかなくても、アメリカ国内で空きベット、空き手術室があれば、格安で手術が受けられる、という、いわば国内版"Medical Tourism"も注目されているという。

また、世界同時不況の煽りをうけて、シンガポールでは"Medical Tourist"が10%減少するとみられているが、そのお隣のマレーシアでは、増勢を保っているという。

市場に何でも任せればいいというわけではないが、市場に任せることによって、市場自体の境界線も拡大していく。そんな情景を見ているような気がする。

※ 参考テーマ「Medical Tourism

2月14日 アメリカ復興再投資法
Source :Summary of Health and Income Support Provisions in Conference Agreement
予想に反して、総額$787Bの景気対策法案(American Recovery and Reinvestment Act, (H.R. 1))の両院協議は簡単に決着がついてしまった(「Topics2009年2月10日 COBRA両院改正案比較(2)」参照)。上記sourceでは、医療、失業者対策のポイントが列記されている。

失業給付の拡充、COBRAへの補助、医療情報のIT化などが柱となっている。COBRAの補助率は60%、補助期間は9ヶ月、所得制限ありということで、補助率こそ上下両院の間を取ったものの、当初案より規模が縮小された。

また、Medicare、Medicaidを中心に医療情報のIT化に$19Bも投じるという。これで、医療産業の彼我の差が大きく広がることになろう。

詳細はまた別途ということで、今回は、この合意に至るプロセスについての感想をまとめておきたい。

  1. まず、簡単に決着がついてしまった背景に、上院民主党の強引とも言えるとりまとめがあった。Pelosi下院議長などは、下院の主要メンバーと協議している最中に、上院民主党のリード議員が「暫定合意」と公表してしまったため、プレスの前にさえ姿を現わさなかった。おそらく、憤懣やるかたない、といったところであろう。

  2. また、報道を見ていると、White Houseが両院協議に深く関与していたとされている。特に、エマニュエル補佐官の存在が大きかったようだ。これはObama大統領がとにかく早急にまとめたい、との意向を強く持っていたことによるものと思われる。実際、Obama大統領は、「完全なものではなくていい」と明言していた。

  3. New York Timesによれば、上院史上最長の投票時間だった。投票開始から5時間17分もかかったそうだ。17時30分に投票が始まり、19時07分には"59 vs 38"となったが、これでは60票まで1票足りない。Sen. Sherrod Brown (D-OH)が、地元で行われていた母親の葬式から戻ってくるまで待たなくてはならなかった。そのBrown上院議員が賛成票を投じたのが22時47分だった。Kennedy上院議員が投票に参加できなかったのも大きい。

  4. 完全に党派ラインができてしまった。上院、下院での最終法案に対する投票結果は次のようになった。
    下   院
    上   院
    2/14賛成反対棄権 2/14賛成反対棄権
    民主党24672 民主党5701
    共和党01762 共和党3380
    合 計2461834 合 計60381
    上院共和党の賛成票を投じた3人は、議事進行動議に賛成した3人と同じである(「Topics2009年2月10日 COBRA両院改正案比較(2)」参照)。ちゃんと義理は果たしたのである。

    その一方で、民主党下院では造反が7人も出ている。共和党は、「両院協議からはずされた」と怒っている。その結果、Gregg上院議員は、商務長官の指名を辞退するに至った。上院民主党とすれば、上院共和党の3議員をつなぎとめ、しかもObama大統領からの「早く」という要請を達成するため、強引に合意に持っていったということだろう。

    しかし、これで新SCHIP拡充法に続き(「Topics2009年2月5日 新SCHIP拡充法案成立」参照)、大事な法案が党派ラインで可決されることになり、Obama大統領が目指した「アメリカは一つ」という標語が早くも色褪せ始めた。

  5. 最後に、下院共和党リーダーの一人であるJohn A. Boehner下院議員(R-OH)の次の言葉は、この景気対策法案の性格の変遷を如実に語っていると思う。

    "The president made clear when we started this process that this was about jobs," Mr. Boehner said after the vote. "Jobs. Jobs. Jobs. And what it's turned into is nothing more than spending, spending and more spending. American families, small businesses deserve better."

※ 参考テーマ「政治/外交

2月13日 UAW vs 債権者(2)
Source :Winning Over Bondholders: Key to GM's Survival (BusinessWeek)
いよいよ再建計画の提出期限(2月17日)が迫ってきた。上記sourceでは、GMが再建計画を提出できるかどうかは、債権者の意向にかかってきたとの見通しが示されている。

今のところ、GMの債務圧縮に向けた最大の交渉相手は、UAWと債権者である(「Topics2009年1月6日(1) UAW vs 債権者」参照)。UAWについては、VEBAへの拠出債務の半分をGM株で拠出することで、話が進んでいる。つまり、1ドルの債務当たり50¢の値段がついている。ところが、債権者に対しては、GMの債務の70%を株式と交換するとの提案を出している。つまり、1ドルの債務当たり30¢の値段しかつけていない、ということである。

これに、債権者は反発をしており、UAWがもっと譲歩しなければ納得できない、と主張している。それは、GMが復活して株価が回復する見込みが小さいからだ。ドイツ銀行の担当者は、GMの株価はゼロ、と公言している。また、債権の優先順位が低いことも背景にある(拙稿「アメリカ倒産手続きにおける労働債権の取り扱い〜Enron倒産事件を例証に〜(2002/9/4) 」参照)。

ただし、債権者の中も一枚岩ではないらしい。
  1. 破産裁判所の再建計画の方が厳しく、債権回収割合が高まる。
  2. 破綻すれば、CDSにより、元本が保証される。
  3. 現在の提示価額よりも安い価格で債権を購入した。
a.の債権者は必死になってUAWからもっと取って来い、というだろうが、b., c.の債権者は、ある意味傍観者でいられる。

もう一つ、上記sourceが懸念していることがある。Big 2が提出した再建計画をレビュー、評価する"President’s Designee"が指名されていないことである(「Topics2008年12月20日 Big 3 への緊急融資」参照)。

これは、大統領府、政府の責任であり、評価、追加融資の体制ができていないことになる。景気対策でドタバタしているのでそこまで手が回らない、ということなのだろうが、これは、Bush政権時代から決まっていたことであり、Obama新政権でも当初からわかっていたことである。

そこまで仕込みができていないということになると、Obama政権の取り回しはかなり危ういということになるのではないだろうか。

GM、Fordの株価動向 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「VEBA/Legacy Cost」、「PBGC/Chapter 11

2月12日(1) SCHIP拡充法の収支
Source :H.R. 2 Cost Estimate (CBO)
4日に成立した新SCHIP拡充法の、コスト分析が公表された。計数を見ればわかるように、大幅増税により収支トントン、というよりも収支改善となっている。

これは、タバコ税の増税によるところがほとんどである。一応、最初の歳出拡大策は、"Pay-Go"を保った形になったようだ。

※ 参考テーマ「SCHIP

2月12日(2) HHS長官候補
Source :Two Additional Candidates Emerge for HHS Secretary, White House Office of Health Reform Director (Kaisernetwork)
HHS長官、White Houseの医療改革チームリーダーの候補として、さらに2名(リストの斜字)が浮上しているそうだ(「Topics2009年2月7日 Daschleの後釜」参照)。今のところの候補者リストは次の通り。 やはり、先頭に掲載されている、Kansas Gov. Kathleen SebeliusがHHS長官候補の最右翼とみられているようだ。

2月11日 Delphiを吸収か
Source :GM in Talks to Reacquire Part of Delphi (Reuters)
Chapter 11からの再建が困難視されていたDelphiについて、GMがその一部を吸収する、との観測が示されている。今月17日に提出期限が来る、GMの再建計画に絡んでいることらしい。

Delphiは、元々GMの一部門であったのが独立したもので、元々親和性は高い。加えて、独立した条件となっていたレガシーコストの引き受けも、GMは履行するとしていた。

従って、今回の吸収合併が実現したとしても、GMの実質的なレガシーコストは大きく変わるわけではないと思われるのだが、正式な再建計画を見てからでないと断言はできない。

GM、Fordの株価動向 ⇒ GM  Ford

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「VEBA/Legacy Cost