3月20日 自治体の年金縮減
Source :Mayor, unions agree to scale back pension plan (The Baltimore Sun)
Baltimore市と警察官、消防士の組合との間で、年金プランの給付削減について合意が成立したという。特に変更が行われたのが、長期勤務者への優遇措置であった。

給付削減は、市の財政を圧迫することから、長い間交渉が続けられてきたのだが、この厳しい不況の中で、さすがに合意に至ったという。

確かに、市の財政は厳しい。しかし、こうしたセキュリティーに従事する職員について、長期勤務者を優遇することは大切なのではないだろうか。普段から特に高給をもらっているわけではない。それでいて、勤務には大変な危険を伴う。そうした勤務者に報いる手法として、『年金』は有効なツールだと思う。

すべてを時価で評価しようとする試みは、こうした有効なツールを次々と圧殺してしまっているのではないだろうか。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月19日 COBRA補助制度の統合
Source :Mass. program augments federal COBRA subsidies (Business Insurance)
MA州にCOBRAへの補助制度があることは、以前紹介した(「Topics2009年1月6日(2) MA州失業者への保険料補助」参照)。これとは別に、先のアメリカ復興再投資法で、COBRAへの連邦からの補助制度が導入された(「Topics2009年2月14日 アメリカ復興再投資法」「Topics2009年2月17日(1) COBRA-65%補助」参照)。

MA州では、この両制度を統合するという。統合のイメージは次の通り。
MACOBRA
つまり、連邦補助制度で自己負担分となった部分に、MA州の補助制度を割り当てる、というものである。これにより、MA州政府の支出はかなり縮減できると言われている。本人負担もわずか7%と抑制できるので、さらに無保険者縮減が進むものと思われる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

3月18日 今度は医療費抑制-MA
Source :Massachusetts Faces Costs of Big Health Care Plan (New York Times)
MA州皆保険制度は、無保険者が2.6%にまで減少し、加入者の増加という意味で第一段階は成功した(「Topics2008年12月30日 MA州無保険者激減」参照)。次の課題は、この皆保険のレベルを維持し、制度の持続性を確保することであり、そのためには、医療費の抑制が必要となる。

ところが、MA州は、構造的に医療費が高い州となっている。
  1. 州民一人当たりの医師数は最大
  2. 最も高額な医学研究センターが存在している
  3. 皆保険法で、処方薬やメンタルヘルスもカバーする総合保険への加入を義務付けている
  4. 最近8年間のうち7年は、MA州民一人当たりの医療費の伸び率が、連邦平均を上回っている。その結果、1980年は州民一人当たり医療費は連邦平均より23%高かったが、現在では3分の1も高くなっている。
従って、MA州は、「皆保険を最も導入しやすい州であったが、医療費抑制については最も難しい州である」と言われている。

元々皆保険法において、医療費抑制策も含まれてはいた。
  1. 小規模グループ用保険市場と個人用保険市場の統合
  2. 診療履歴のデジタル化
  3. 院内感染の抑制
さらに、新しい知事の下で、財源確保策や診療報酬の見直し策も講じてきた。
  1. 保険会社、病院の課税対象の再評価
  2. 企業拠出金の増加
  3. 保険料と窓口負担の引き上げ
  4. 州タバコ税の増税

  5. プライマリーケアへのインセンティブ付与
  6. 診療報酬請求方法の統一
  7. 新規病棟建設の規制強化
  8. 診療報酬体系見直しのための委員会創設
しかしながら、いずれも抜本的な医療費抑制策、財源対策とはなっていない。そこで、州知事と議会で検討されているのが、診療報酬体系の全面見直しである。

上記sourceで、見直しのポイントとして指摘されているのは、次の通り。
  1. 予防と慢性病の効率的な診療に重点を置いた診療報酬
  2. 出来高制を廃止し、包括払いにする
さらに過激な案として、患者一人当たりの医療費を固定化して医師達に支払う、という案も検討されている。これは、イギリスで採用されている考え方であろう。

このような診療報酬の見直しは、連邦政府の承諾が不可欠となる。それは、Medicare、Medicaidに連邦政府から拠出されているからである。 また、保険会社や医療機関からの強い反発も予想される。

いずれにしても、皆保険となった暁には、何らかの医療費抑制策が必要となる。それは、何らかの意味で診療抑制につながらざるを得ない。ようやくアメリカも先進国並みの悩みを持つようになってきたのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

3月15日 同性カップルの医療ベネフィット 
Source :Obama on Spot as Rulings Aid Gay Partners (New York Times)
現時点で、連邦政府職員については、同姓カップルのパートナーへの医療保険プランの提供は認められていない。今年2月には、OPMから、『内縁相手や同姓カップルのパートナーに対しては、それが例え州法で認められていたとしても、医療保険プランは提供できない』とのレターが発出されている。これは、1996年の"Defence of Marriage Act (DOMA)"に基づくものである。

これに対し、カリフォルニアの裁判所判事が「雇い主として」認めるべき、と主張しているし、当然、同姓婚推進団体なども認めるべきとの運動を推進している。

Obama大統領は、かつて上院議員の時代、連邦政府職員の同性カップルにも医療保険を提供すべきとする法案を支持していた経緯がある。加えて、OPM長官には、John Berry氏を指名する意向を表明している。彼は、現在、国立動物園の園長であり、ゲイであることを公表している高官でもある。

それじゃ、Obama大統領は、同姓カップルのパートナーへの医療保険プランの提供を認めるのかというと、そう簡単ではない。当然、共和党は猛烈に反対することは目に見えている。また、世論も簡単に同調してくれるかどうかわからない。あれだけ劣勢と見られていたCA州のProposition 8が悠々と過半数を取ってしまうなど、まだまだ同性婚に対する抵抗感は強い。そうなると、簡単には舵を切れないという面もある。

そもそも、彼自身は同姓婚自体には反対しているものの、同性カップルの権利は同等であるべき、との中途半端な姿勢を取ってきたことが災いしている面も否めない。上記sourceによれば、上院ではLieberman議員(I-CT)、下院ではBaldwin議員(D-WI)が、連邦政府職員の同性カップルのパートナーに医療保険を提供する法案を提出するという。両議会で可決されれば、Obama大統領も態度を明確にせざるを得なくなる。これもまた、彼の大統領選のツケが回ってきた感がある。

※ 参考テーマ「同性カップル

3月14日 上院の役者達 
Source :Bipartisan Senate Group Makes Health-Care Progress (TIME)
医療保険改革の上院の役者達は、かつての7人から9人に増えたようだ(「Topics2008年11月22日 医療保険改革を推進する有力議員達」参照)。
備  考
民 主 党
共 和 党
Chairman of the Finance Committee
Max Baucus
Charles E. Grassley
Chairman of the Finance Committee's Subcommittee on Health Care
John D. Rockefeller IV
Orrin G. Hatch
Chairman of the Health, Education Labor and Pensions Committee
Edward Kennedy
Christopher J. Dodd
Michael B. Enzi
Chairman of the Budget Committee
Kent Conrad
Judd Gregg
新規に加わったのは、表の最後の2人のようだ。ただし、Kennedy上院議員は療養中のため、実質的には彼を除く8人となる(「Topics2008年5月21日 Kennedy上院議員入院」参照)。

下院は民主党が圧倒的多数を占めていることから、民主党主導での法案を出してくると見られる。一方の上院は、民主党が60議席に達していないため、どうしても共和党の協力が必要となる。そうした意味からも、妥協が必要となり、下院案とは異なる内容とならざるを得ない。これは、アメリカ復興再投資法を巡る環境と同じである(「Topics2009年2月14日 アメリカ復興再投資法」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月13日 下院の役者達 
Source :House Committee Chairmen Miller, Waxman, and Rangel Pledge to Move Health Reform Forward
医療保険改革に取り組むことを宣言した下院民主党の役者達は、次の通り。
House CommitteeChairman
Education and LaborGeorge Miller - CA
Energy and CommerceHenry A. Waxman - CA
Ways and MeansCharles B. Rangel - NY
彼らは、夏休み前には法案を本会議にかけたい、との意気込みを示している。今年の議会の夏休みは、8月3日に始まる。3日は月曜日なので、実質的には7月31日が期限となる。

これで、医療保険改革に関する連邦議会の役者が出揃ったことになる(「Topics2008年11月22日 医療保険改革を推進する有力議員達」参照)。気になるのは、Obama大統領の「医療改革基金」構想の財源確保策に抵抗感を持っている議員が2人も含まれていることである。上院ではBaucus上院議員、下院ではRangel下院議員である(「Topics2009年3月9日 民主党議員に抵抗感」参照)。

夏までには一波乱も二波乱もありそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月12日 MD州保険規制強化案
Source :Maryland Lawmakers Consider Legislation That Would Increase Regulation of Health Insurers (Kaisernetwork)
MD州の保険改革が頓挫して久しい。そのせいか、なかなか総合的な改革案を検討しようという雰囲気にはならないようだ。上記sourceでは、州議会で医療保険に関する規制強化を検討していることを報じている。主なポイントは次の2点。
  1. 被保険者の病歴を確認するために遡れる年数を、7年から5年に短縮する。

  2. 保険料収入のうち償還に充てる割合を引き上げる。
    • 個人加入プラン :60% ⇒ 85%
    • 小規模企業加入プラン:75% ⇒ 85%
皆保険を目指すというのには程遠い内容だが、2点目は、Obama大統領も選挙中に提案していた内容(「Topics2007年5月30日(1) Obama上院議員の皆保険提案」参照)であり、今後の連邦レベルでの議論の試金石となる可能性がある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MD州

3月11日 EFCA再提出
Source :Union Legislation Drive Begins in Congress (New York Times)
10日、"Employee Free Choice Act(EFCA)"法案(H.R. 1409)が連邦議会に再提出された。

Obama大統領に対して、「つけの請求書」が次々に回ってくる、という印象だ。同法案は、労組が『一丁目一番地』に据えている法案であり、Obama大統領も支援を約束してきた経緯がある。

同法案は、前の連邦議会で、下院では共和党議員からの賛成票も加わって可決しているため、今回も可決は間違いないだろう。

問題は、上院の動向である。前回は、継続審議のままとなっている。今回は、上院での民主党の議席数が増えているため、filibusterを阻止できる60票を確保できるかどうかが焦点となる。有力支持者であるTom Harkin上院議員も、60票まで確保できるとの確信を持つまでには至っていない。 こうしてみると、60票の確保はかなり厳しい状況にある。まさに、Obama大統領が、大統領選のつけを払う気があるかどうか、その一点にかかってくるのではないか。また、ここでのObama大統領の意思表明が、医療保険改革をはじめとする今後の重要政策課題に超党派で臨むことができるかどうかの鍵を握っているように思う。

※ 参考テーマ「労働組合