3月10日 各論で分裂か?
Source :In Divide Over Health Care Overhaul, 2 Major Unions Withdraw From a Coalition (New York Times)
"Healthcare Reform Dialogue"という会議体があるそうだ。上記sourceを読むまでその存在を知らなかったのだが、その概要は次の通り。 ところが、上の2つの労組が脱退を表明し、今後は18団体で活動するということである。

その経緯は次の通り。
  1. "Healthcare Reform Dialogue"は、今月後半、医療費抑制策と皆保険達成のための方策について、提言書をまとめる予定であった。

  2. ところが、『新たな公的医療保険プランの創設』または『皆保険のための事業主負担の義務化』について、合意が得られなかった。

  3. 最終案は、参加者全員のコンセンサスが得られる程度の内容に収まりそうである。

  4. 積極的な改革案を求めている労組メンバーは、その内容が不十分であるとの不満を覚え、この会議体を脱退した。
とまあ、こんな感じである。

ここでコンセンサスが得られなかった提案(上記b.)は、"Pay or Play"原則であり、MA皆保険制度の骨格であるとともに、Obama大統領の皆保険提案の骨格でもある。医療保険関係者がこの原則に合意できなかったということになると、Obama提案の前途は厳しいものとなることが予想される。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/MA州」、「2008年大統領選

3月9日 民主党議員に抵抗感 
Source :Key Democrats Oppose Obama's Tax Deduction Plan (New York Times)
Obama大統領が打ち出した「医療改革基金」構想の財源確保策に、民主党議員から疑問が呈されている。寄付と住宅市場に悪影響を及ぼすのではないか、との懸念からである。

上記sourceで名前が出てくる民主党議員は、次の通り。 当然のことながら、共和党議員が反発することは必至である。そうした事態を受けて、Geithner財務長官とWhite Houseは、財源確保策は柔軟に考えるとの姿勢を示しているそうだ。

考えてみれば、無保険者対策という政策実現のために富裕層の所得課税を強化するのか、『寄付』という政府を通さない社会的な所得再分配メカニズムを重視するのか、という、大きな価値判断でもある。

それにしても、上院の重鎮であるBaucus上院議員とObama大統領の間には、あまり意思疎通がなされていないように感じられる。Kennedy上院議員が不調なことが影を落としているような気がする。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月8日 Proposition 8 有効 
Source :California Supreme Court looks unlikely to kill Proposition 8 (Los Angeles Times)
5日、加州最高裁判所はProposition 8が有効であるとの判断に傾いていることが明らかになった(「Topics2008年11月6日 選挙結果(2)-Proposition 8」参照)。ポイントは次の2点。 仮にこの通りに最高裁が最終判断を下すとすれば、後者は各カップルにとっては当たり前だと思うが、社会の法秩序という点から見ると、明らかに矛盾する状況が存続することになる。同姓婚カップルにとっても様々な障害が待ち受けることになると思う。

※ 参考テーマ「同性カップル

3月7日 医療ベネフィットに課税
Source :Democrat looking at taxing health benefit (Reuters)
上院民主党の大御所、Baucus上院議員が、「医療ベネフィットに課税し、無保険者対策の財源にしてはどうか」との考えを持っていることが明らかになった。

現行税制では、企業が提供した医療ベネフィットは課税対象とならない。これが、従業員が真に必要とする水準を超えたベネフィットを提供する誘因になっているのではないか、との指摘である。それならば、適正と思われる水準までを非課税として、それを超えるベネフィットについては課税し、それを無保険者対策の財源にしようというアイディアである。

Baucus上院議員は、昨年の提案では、税制については具体的な提案を述べていなかったため、彼自身としては、事実上、初めての提案となる(「Topics2008年11月16日 Baucus提案」参照)。 企業の医療ベネフィットの非課税に手を入れようというアイディアは、近くでは、昨年の大統領選で共和党のMcCain上院議員が提唱していたことを思い出す(「Topics2008年5月3日 McCainの医療改革提言」参照)。

もう一つ、Baucus上院議員にとって厄介なのは、労組が猛烈に反対することが予想されることである。

Obama大統領の政治ショウは始まった(「Topics2009年3月6日 Healthcare Summit」参照)が、こうした具体的な政策案が浮上してくる中、どのようにコンセンサスを作り上げていくかが今後の課題となる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月6日 Healthcare Summit
Source :President Obama Speaks at Healthcare Summit (Washington Post)
5日、White Houseで"Healthcare Summit"が開催された。大勢の関係者が招かれ、Obama大統領による医療保険改革がスタートを切った。

上記sourceは、大統領のスピーチ原稿だが、特に目新しい提案があったわけではない。国民に向けて、そして議会、関係者に向けて、覚悟を決めるように求めたというわけである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月5日 消去法で単一保険
Source :Nobel Prize-Winning Economist Joseph Stiglitz: Obama Has Confused Saving the Banks with Saving the Bankers (Democracy Now!)
上記sourceは、Obama大統領の両院議会演説(「Topics2009年2月26日(1) 医療改革基金創設」参照)に関するStiglitz教授のコメントが紹介されている。

ほとんどが金融政策絡みだが、一部、社会保障制度についても言及している。

3月4日 医療改革チーム長
Source :Obama Taps Health Aide With Links to Industry (New York Times)
予てからの下馬評通り、White Houseの医療改革チームのヘッドに、Nancy-Ann DeParle氏が就任した。これで、HHS長官候補のKansas州のSebelius知事が上院で承認されれば、Obama政権の医療改革トロイカ体制が整うことになる(「Topics2009年3月1日(1) HHS長官指名」参照)。

ただ、上記sourceでは、DeParle氏が医療関連ビジネスに深く関与してきたことのメリット・デメリットに言及している。木曜日には、医療改革サミットが開催され、Obama大統領による改革の方向性が示されるという。その推進役として機能するのかどうか、注目していきたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月3日 GM年金プランへの疑問
Source :Questions arise from GM's use of pension for buyouts, VEBA trust (Detroit Free Press)
上記sourceでは、GMの年金プランについて、いくつかの疑問が呈示されている。 これらの流用は、「すべて『合法的』だが、『年金プランのために報酬を後払いにする』という労使間の約束事とは整合的ではない」(Olivia Mitchell教授)との批判がなされている。

そうした道義的な問題もさることながら、既にPBGCが指摘している通り、PBGC基準で計測すれば、GMの年金プランは既に積立不足に陥っている(「Topics2009年1月15日(1) Big 3 vs PBGC」参照)。

そんな状態を知りながら年金資産を他の目的に利用していくのは、やはりまずいのではないだろうか。このあたりは、アメリカのERISAで受給権は法定されているものの、その裏付けとなる資産が明確な外部拠出となっていないという問題を、改めて浮き彫りにしている。

※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11

3月2日 Medicare支出のバラつき 
Source :Medicare Spending Has Wide Regional Disparities, Study Finds (BusinessWeek)
まずはこの地図をご覧いただきたい。

これをみれば明らかなように、Medicare一人当たりの支出が、地域によって3倍もの開きがある。上記sourceによれば、医療サービスの供給が豊富なところほど支出が多いとされている。

この結果から見れば、Obama大統領がMedicareの診療報酬にメスを入れようと提案していることは適切であるように思える(「Topics2009年2月27日 大統領予算方針」参照)。

※ 参考テーマ「Medicare

3月1日(1) HHS長官指名 
Source :Obama Picks Kansas Governor Sebelius as Health Secretary (Washington Post)
Obama大統領が、HHS長官として、Kansas州のSebelius知事を指名し、同氏も受諾した。予てから本命視されていた通りである(「Topics2009年2月23日 Sebelius知事」参照)。

本件に関する感想は次の通り。
  1. 州レベルの保険行政に精通していることから、現実的な政策思考ができるのではないかと思われる。

  2. Obama大統領は、Medicareの診療報酬の見直し、効率化を提唱している。このあたりがSebelius氏の同意を得てのことなのであれば、今後、改革は加速化するものと思われる。

  3. 彼女はカソリックでありながら、数次にわたる反中絶法案に拒否権を発動している。政治的なバランス感覚にも優れているのではないかと思われる。このあたりは、2期目の州知事選(2006年)で圧勝していることからも伺われる。

  4. その背景には、一家の政治的背景があるものと思う。実父はOhio州知事(D)であり、義父はKansas州選出の下院議員(R)。加えて、夫は連邦地方裁判所の治安判事である。嫌が上にもバランス感覚を持たざるをえないであろう。
なお、White Houseの医療改革チームのリーダーには、別人を指名する見込みで、候補者として、Nancy-Ann DeParle氏が挙がっている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月1日(2) WARN
Source :Laid-off Workers Want Their Severance (BusinessWeek)
"WARN"とは「警告」という意味だが、ここでは、"Worker Adjustment & Retraining Notification Act"という連邦法(概要版)の略称である。

上記sourceでは、このWARN法違反が横行していることが紹介されている。「解雇自由」といわれるアメリカだが、実際には、関連法制が存在しており、あまり無碍なことをしていると、訴訟の憂き目に会う(拙稿「アメリカ企業の解雇の実態」(2002年10月)参照)。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策