6月9日(1) 同性婚論議は下火に:IA州 
Source :Other Issues Sideline Same-Sex Marriage as No. 1 Issue in Iowa (New York Times)
Iowa州では、昨年4月に州最高裁で同性婚禁止違憲判決が下され、同性婚が合法化された(「Topics2009年4月8日 同性婚は東海岸へ」参照)。それ以降、2020組の同性カップルが婚姻登録をしている。

・憲法改正には州議会での決議が必要なこと
・州知事選で共和党候補者達が同性婚に反対の立場を強調していること
・州最高裁判事3人が、全員11月の信認投票にかかること
などから、政治の世界では同性婚論議は活発に行われてきた。

しかし、ここにきて、経済情勢、特に雇用問題が州民の最大の関心事項となりつつあり、同性婚論議は下火になりつつあるという。同性婚支持側にとっても、州憲法などの法的な安定性は得られていないものの、論議が下火の間に着実に実績を積み上げていくことで定着を図りたいところだろう。

※ 参考テーマ「同性カップル

6月9日(2) D.C./Baltimore地域のベネフィット 
Source :Washington-Baltimore benefits survey: Part-timers getting more perks (Washington Post)
ちょっとノスタルジアを感じつつ、上記sourceで示された同地域のベネフィットの動向について、簡単にまとめておく。
  1. パートタイマーに対するベネフィットを増やすところが多い。例えば、有給休暇など。ただし、フルタイムへのシフトはまだ顕著ではない。

  2. 従業員の保険料負担、自己負担を増やしている。

  3. 高免責額を伴うCDプランが増えている。

  4. DBプランからDCプランへの移行は急速に進んでいる。
※ 参考テーマ「ベネフィット

6月9日(3) Lincoln & Fiorina 
Source :Whitman and Fiorina Win in California (New York Times)
中間選挙に向けた予備選が各地で行われている。8日の投票結果で注目しているところを記載しておく。 ※ 参考テーマ「中間選挙(2010年)」、「HP

6月9日(4) 失業給付の構造 
Source :各州と連邦政府の制度が並存 (ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナル)
当websiteでも失業給付を巡る動きを紹介しているが、全体像をまとめている資料があったので、参考までに掲載しておく。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

6月8日 Medicaidの危機 
Source :Counting on Medicaid Money, States Face Shortfalls (New York Times)
連邦議会の財政健全化への方向転換、州政府の財政均衡策の両面から、Medicaidが危機を迎えつつある。

まず、連邦議会では、中間選挙を控え、保守的な民主党議員、特にBlue Dogsが勢いを増しており、財政赤字拡大を伴う施策には慎重になりつつある。その典型が、先月末に下院が可決した「アメリカ救済法案」である(「Topics2010年5月29日(1) アメリカ救済法案」参照)。COBRA保険料の補助とMedicaidに対する連邦政府特別負担の延長が削除された。上院もこれを支持する見通しである。

一方、州政府は、均衡財政主義の原則から、新年度にあたって大幅な財政赤字削減策を余儀なくされている。上記sourceでは、7月1日に新年度を開始する46州の財政赤字は$89Bにものぼっている。そのため、多くの州は、Medicaidに対する連邦政府特別負担を当てにした財政赤字削減策を検討しており、その規模は赤字幅の4分の1にも達する。それが、下院の法案可決により、当てがはずれてしまったのである。

PA州は、$1.2Bの財政赤字見込みのうち、連邦政府特別負担で$850Mを当てにしていた。これが入ってこなければ、最低でも2万人をレイオフしなければならない。

CA州は、2011年度に$19Bの財政赤字削減を行う必要があると見ており、そのうち$1.5Bは連邦政府特別負担を見込んでいた。

NY州は、4月1日に新年度が始まったが、未だに予算が成立していない。財政赤字削減幅は$9.2Bだが、そのうち連邦政府特別負担を$1.1B見込んでいた。ところが、あてにすべき財源の見通しがたたないため、州議会はNY州の医療予算を$775Mも削減する法案を可決してしまった(New York Times)。そこにはMedicaid関連も含まれており、医療機関に対する支出がかなりの幅で抑制されることになる。こうなると、Medicaidによる診療を止めてしまう医療機関が続出しかねない。

失業率が依然として9%台後半と高水準で推移している中、失業者、低所得者層にとって医療保障の最後の砦となるMedicaidが機能不全に陥りかねない状況にある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「解雇事情/失業対策

6月7日 やはり保険料は高騰 
Source :Council Survey Shows Group Health Rates Rising and Employers Looking for Ways to Cut Costs (The Council of Insurance Agents & Brokers)
今年5月時点の医療保険料が、昨年11月時点からどれだけ変化しているかを調査した結果である。これを見ると、やはり二桁増加が大半を占めており、医療費の増勢は止まっていない。
全 米上昇率6〜10%上昇率10%超
加入者50人未満10%76%
加入者51〜500人25%61%
加入者501人以上35%31%

Northeast上昇率6〜10%上昇率10%超
加入者50人未満9%76%
加入者51〜500人13%72%
加入者501人以上39%39%

Southeast上昇率6〜10%上昇率10%超
加入者50人未満8%75%
加入者51〜500人25%59%
加入者501人以上29%21%

Midwest上昇率6〜10%上昇率10%超
加入者50人未満10%85%
加入者51〜500人30%60%
加入者501人以上35%30%

Pacific NW上昇率6〜10%上昇率10%超
加入者50人未満13%74%
加入者51〜500人40%50%
加入者501人以上58%21%

Southwest上昇率6〜10%上昇率10%超
加入者50人未満7%79%
加入者51〜500人36%57%
加入者501人以上21%36%
以上を受けてコメントを2つ。
  1. 全体を通じて、大口加入者、つまりは大企業が提供する保険プランの保険料上昇率は、他に較べればまだまだ抑制されている、といえる。プールが大きくなれば分散もしやすく、保険料を抑制しやすいのはわかるが、上昇率がこれだけ大きく違うというのは、交渉力(バーゲニング・パワー)によるところなのだろう。アメリカ社会における弱肉強食の一面を垣間見るような気がする。

  2. 州政府と保険会社の間でバトルが続いているMA州は、Northeastに含まれる(「Topics2010年6月5日(1) 保険料の抑制 - MA州」参照)。そこでは個人・小規模企業が加入すると思われるプランの76%が、保険料上昇率で10%を超えている。これでは保険会社大手が平均二桁増を要望してくるのは自然のように思える。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/MA州

6月6日(1) 凍結されたDBプラン 
Source :"Frozen" Defined-benefit Plans (US Bureau of Labor Statistics)
上記sourceでは、凍結されたDBプランに関する統計数字を紹介している。凍結されたDBプランの加入者は、民間企業で2割弱、自治体で1割にものぼっている。

民間企業と自治体で対応が分かれているのが、DBプランを凍結したことに対する代替措置である。民間企業の場合、新たなDCプランの創設、または既存のDCプランの拡充で対応している企業が8割強なのに対し、自治体ではほとんどが新たなDBプランを提供している。

自治体では、あくまでもDBプランによる退職所得保障が重視されているということがよくわかる。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「地方政府年金

6月6日(2) Wal-Martが従業員の学位取得を支援 
Source :Wal-Mart to Offer Workers College Degree Program (New York Times)
Wal-Martが、オンライン授業を提供するAmerican Public Universityと提携して、従業員の大学卒業資格取得を支援する。 Wal-Martは、医療保険でもずいぶんと従業員に優しい政策を打ち出したが、今度は学位取得支援策である。社内で何かが大きく変わってきている。

※ 参考テーマ「教育」、「Wal-Mart

6月5日(1) 保険料の抑制 - MA州 
Source :Mass. health insurers seek double-digit increases again (The Boston Globe)
4月にMA州政府が235プランの保険料引き上げ申請を却下したことを紹介した(「Topics2010年4月4日 保険料引上げ申請を却下:MA州」参照)。これら235プランについては、昨年と同様の保険料を維持することを余儀なくされた。

今また、7月以降の保険料について、引き上げ申請が行われており、州内最大規模の2社から、2桁の引き上げ率(平均)が申請された。州政府は、そんな引き上げは認められないと強硬な姿勢を見せている。保険会社の方も、州内最大4社が$150M以上の赤字を計上していると、まったく引く気はない。

こんな状況を心配しながら見守っているのが医療機関である。州政府が厳しい姿勢を継続するために保険会社が保険料を引き上げられないと、医療機関に対する償還を絞ってくるのではないか、と懸念しているのである。

どこでコストがかかっているのか、コストが上昇しているのかを見極めないと、結局は州民が不利益を被ることになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

6月5日(2) 連邦職員の同性カップルを同等に 
Source :Presidential Memorandum-Extension of Benefits to Same-Sex Domestic Partners of Federal Employees (The White House)
Obama大統領が、連邦職員の同性カップルに対し、異性カップルと同等のベネフィットを提供するよう大統領令を発した。ただし、法改正が必要なもの(例えば公的年金)についてはできないため、改めて連邦議会に対して法改正を求めた。

これは、昨年6月のObama大統領の声明に続くものである(「Topics2009年6月18日 同性婚に向けた第一歩」参照)。

着々と改善を進めている、ともいえるが、肝心な法改正という具体的なアクションに結びついていない点は物足りなさが残るだろう。これを、手形は落ちつつあるとかつてのサポーター達は認識してくれるのであろうか。

※ 参考テーマ「同性カップル

6月4日(1) 小規模企業金融 
Source :Remarks by Ben S. Bernanke (FRB)
FRBのバーナンキ議長が、デトロイトでの講演で次のように述べている。
  1. 健全な小規模企業は、雇用の提供と継続に重要な役割を果たしている。

  2. ところが、小規模企業に対する銀行貸し出しは減少している。2008年第1四半期の貸出残高は約$700Bであったが、2010年第1四半期は$660Bとなっている。

  3. 減少の要因を研究中であり、その成果は今年の夏に公表したい。
雇用の改善がおもわしくない理由の一つが中小企業の雇用が増えてこないことであり、その背景として、中堅・中小銀行の貸し出しが収縮していることが挙げられている。この点は当websiteでも紹介している(「Topics2010年2月23日(2) 失業が長期化」「Topics2010年5月9日 中小企業の雇用回復が弱い」参照)。

労働市場に関して、政府・中央銀行が同じ見解を有することで、新たな施策が検討されることになるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「労働市場

6月4日(2) 無保険の理由はコスト 
Source :Cost Key Reason Workers Give for Being Uninsured (EBRI)
上記sourceを見てわかる通り、現役世代が無保険となっている理由は、@コストが高過ぎる、というのが圧倒的に多く、次いでA職場におけるプラン提供がないこと、となっている。

先の医療保険改革法で、企業のプラン提供義務を課したことは一定の効果が見込めるものの、問題は、医療費コストが本当に抑制されるかどうかである。つまり、上記のようにコストが原因で無保険となっている人達が、これなら加入しようというところまで負担感が軽減されるかどうかである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月3日 償還割合規制の基準作りに遅れ 
Source :Insurance regulators miss early deadline on premium spending rules (Washington Post)
医療保険改革法施行のためのルール作りがもたついている(「Topics2010年5月18日 ルール作りで攻防」参照)。償還割合規制のルール作りを担っている"National Association of Insurance Commissioners (NAIC)"からHHS長官への報告が期限内に行われなかったことが明らかになった。法規定では、2010年中に保険会社から償還割合の実態報告を求め、2011年からの施行となっている。こうしたタイムスケジュールを踏まえ、HHS長官は、NAICに対し、6月1日までに基準案を報告するよう求めていた。

しかし、実際に保険会社を管轄する州政府側は、苦しい立場に追い込まれている。保険会社にとって厳しい基準とすれば、保険会社は提供サービスを絞ってしまうことになる。逆に緩い基準とすれば、償還割合規制そのものが無意味であると看做されてしまう。

連邦政府は理論上のルールは作ったものの、実際にワークするような基準作りは州政府側に丸投げされている状況である。Obama政権とすれば、中間選挙が本格化する前にこうした法施行のための具体的なルール作りを終えておかないと、医療保険改革を実績として喧伝できないことになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

6月2日 医療貯蓄勘定の増勢 
Source :Health Savings Accounts and Health Reimbursement Arrangements: Assets, Account Balances, and Rollovers, 2006–2009 (EBRI)
2009年のCDプランは、総額$7.1Bとなっているそうだが、その財源的裏付けとなっているのが医療貯蓄勘定(HSAs)である。上記sourceでは、その普及状況を紹介している。
 2006年2008年2009年
勘定数120万420万500万
残 高$ 835.4M$ 5.7B$ 7.1B
勘定別平均残高$ 696$ 1,356$ 1,419
最初はなかなか広がらなかったCDプランだが、ようやく市民権を得たようである。

※ 参考テーマ「CDプラン