Source : | Sen. Arlen Specter loses Pennsylvania primary (Washington Post) |
昨日も紹介したが、今週は中間選挙に向けた予備選や補選が各地で行われた。当websiteとして関心を持った結果をまとめておく。Spector上院議員の敗戦も含め、Obama大統領の支援が効いていないのは明らかである。さらに、Lincoln上院議員の場合は、労組が強く推す政策に消極的であったというのが直接の要因だが、さらに詰めて考えれば、@公的プランを導入できなかった、AEFCAの成立に積極的に動いていない、という理由で、Obama大統領に反旗を翻しているともいえる。
- Sen. Blanche Lincoln (D-AR)
医療保険改革(「Topics2009年10月8日 財政委員会採決の行方」参照)、EFCA(「Topics2009年3月11日 EFCA再提出」参照)で消極的な態度を取り続けたため、労組が徹底的に相手候補を支援した。その結果、Obama大統領が支援しているにも拘らず、再投票(6月8日予定)に追い込まれた。
- Rep. Mark Critz (D-PA) 民主党下院議員の死去に伴う補選で、民主党候補者が勝利した。彼は、選挙キャンペーンで、@医療保険改革法に強く反対、A中絶反対、B銃保有権利の擁護、とバリバリ保守の主張を展開して当選した。
Obama大統領は、今年も暑い夏を迎えることになりそうである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「労働組合」、「中間選挙(2010年)」、「政治/外交」
Source : | Specter Defeat Signals a Wave Against Incumbents (New York Times) |
18日、PA州選挙区における連邦議会上院議員選挙の民主党候補者予備選が行われ、Joe Sestak(D-Pa.)下院議員が現職のSpecter上院議員(D-Pa.)を、54 vs 46で破った。高齢であることを考えると、Specter上院議員の政治生命はこれで終わったといってよいだろう。
昨年9月には、Obama大統領をゲストに招いての豪華な政治パーティを開催していたのに、あっさりと新人に逆転されてしまった。しかも、Obama大統領は、最後まで応援に訪れなかった。ダメージ・コントロールのためには仕方ないこととはいえ、Specter議員にとっては随分と冷たい仕打ちである。
今回の医療保険改革論議では、大事な役割を果たした政治家である。当websiteにおける紹介記事は次の通り。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「中間選挙(2010年)」、「政治/外交」
Source : | Health Insurers Try to Shape Rules Under New Law (New York Times) |
医療保険改革法成立後、保険会社は、施行に当たってのルール作り、法解釈を巡って連邦・州政府に攻勢をかけている。大きな争点は次の2点。こんな大事なことを決めずに法律が可決されてしまうというのは、アメリカらしいといえばらしいが、施行までの混乱がつきものとなる。実際のところがどうなるのかが、ビジネスにとっては重要であり、ルールの決め方如何では重大な副作用が生じることもある。民主党政権にとってはしばらく綱渡りが続きそうである。
- 保険料の"Unreasonable rise"とは何か。(「Topics2010年4月14日(1) 保険料の歯止めはどこに?」参照)
- "Loss Premium"の定義は何か。(「Topics2010年4月29日 償還割合規制は不発か?」参照)
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Business Group Joins Suit on Health Law (New York Times) |
医療保険改革法への違憲訴訟に、新たな原告が加わった。これまでは20州の司法長官達が訴訟に加わっており、多分に政党色の強い動きであったが、このような動きが広がることで、かなり異なった様相を呈することになる。特に、最後の個人の『医療費は自己負担で賄いたい』という主張は、保険加入義務化に真っ向から反対するものである。『医療費は(自分で)負担する』としている人たちへの説得は難しいだろう。
- National Federation of Independent Business (NFIB)
- 自動車修理工場経営者(個人)(FL州)
- 個人(WA州):医療費は自己負担で賄いたい(=医療保険加入は嫌)
社会保険とは何なのか、という議論が深く行われることを期待したい。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Arizona and New Mexico, Divided Over Immigration (New York Times) |
不法移民対策で全米の注目を浴びているArizona州だが、隣のNew Mexico州は移民を温かく受け入れ、権利も保障しているという。どちらもメキシコと国境を接し、一時はメキシコの領土であったところまで同じなのに、どうしてこのような違いが生じているのか。
上記sourceは、ヒスパニックの人口比率が主因としている。しかし、本当にそれだけだろうか。もう少し比較を見てみよう。
Arizona州 New Mexico州 ヒスパニック人口割合 30% 45% 州議会におけるヒスパニック人割合 16% 44% ヒスパニック系州知事(歴代) 1人 5人 経済規模も人口規模もArizona州の方が圧倒的に大きいが、州民1人当たりの豊かさはどちらも低水準である。要するに、どちらも所得は低いが、NM州の方が断然田舎なのである。
Arizona州 New Mexico州 人 口 650万人 200万人 GSP (2008) $247B
(全米17位)$76B (2008)
(全米37位)一人当たりGSP $32,953
(全米42位)$32,091
(全米44位)不法移民数 46万人 5.5万人 不法移民割合 7.9%
(全米2位)-
さらに、メキシコとの国境を接する距離も全然違う。AZ州の方がかなり長い。
つまり、両州が置かれている立場が全くことなるのである。実際、NM州でも、不法移民による犯罪が増えているし、AZ州から実質追い出された不法移民が大量に流入してくる可能性も言われている。そうした環境の悪化に、どこまでNM州民が耐えられるのか、という問題であろう。
ちなみに、最近実施された世論調査は、6割以上のアメリカ国民がAZ州法を支持しているそうだ(Sacramento Bee)。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Experts Split on State Lawsuits Over Health Care Law (New York Times) |
20州が医療保険改革法は憲法違反であると訴えている(「Topics2010年4月17日 連邦政府 vs 州政府」参照)。憲法違反を訴える側の主張のポイントは次の3点である。いずれも、連邦政府の権限はどこまでなのか、州政府との役割分担はどこまでなのか、という深い議論が前提となる。
- Medicaidの大幅拡充は、州の権限を侵害している。
- 無保険者への課税ペナルティは、財サービスへの付加税とは異なり、違法な間接税である。
- 保険加入の義務化は、国民の選択権の侵害になる。
専門家の意見は、必ずしも明確ではないようだ。それは、これまで最高裁が『連邦政府の権限の拡大を容認してきたが、そこには一定の限界がある』という立場を取ってきていることに起因する。こうした抽象的なスタンスは読み取れるものの、具体的な判断基準を示した判例がないのだ。
本件に関する決着は、長引きそうである。
少し話がそれてしまうが、上記sourceで知ったサイド情報を2つ。※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
- そもそもこの20州が一致して行動しようと動き出した切っ掛けは、例の"Nebraska条項"だったそうだ(「Topics2009年12月24日 上院法案可決」、「Topics2010年3月22日(1) 医療教育予算法案」参照)。この"Nebraska条項"を提案した、Reid院内総務とNelson上院議員は、政権にとって随分と余計なことをしてくれたものである。
- 20州は、違憲訴訟のための外部カウンセラーとして、Baker Hostetler法律事務所のDavid B. Rivkin Jr.とLee A. Caseyの二人と契約している。この二人は、1990年代前半から、『個人の保険加入の義務化は、存在するという理由だけでアメリカ人を規制する権限を連邦議会が持つことに等しい』と主張していた。20州のリーダー格として動いているフロリダ州のBill McCollumは、2001年に下院議員を辞めてから、彼らと同じBaker Hostetler法律事務所に所属していた。
ただし、その当時はお互いに面識はある、という程度の知り合いであったが、昨年9月、Wall Street Journalに掲載された二人のcolumnを読んで、保険加入義務化の違憲性に気付いたという。人のつながりとは不思議なものである。
Source : | Rules Eased for Union Organizing at Airlines (New York Times) |
10日、National Mediation Boardが、航空会社、鉄道会社の労組結成に関する規制緩和を決定した。内容は、労組結成に必要な賛成得票数を、『従業員全体の過半数』から『投票者数の過半数』に変更するという簡単なもので、一般的な労組結成の得票要件と同じになっただけである。
しかし、航空会社と鉄道会社という許認可権限に守られている業種における規制緩和ということで、抵抗は根強い。そもそも、上述のNational Mediation Boardの3人のメンバーのうち、委員長が強く反対している。また、業界団体であるThe Air Transport Associationは、訴訟を起こす構えである。
国民からも相当の批判が寄せられるであろう。何せ、航空会社は、2000年代、経営難と労組との交渉が行き詰まり、次々とChapter 11入りしたうえに、年金プランはPBGCに押しつけて、国民負担を求めてきたのだから。
Obama政権としては、EFCAの議会審議がなかなか進まない中、中間選挙の前に一部でも手形を落としておきたい、という意思表明なのであろう。
※ 参考テーマ「労働組合」、「PBGC/Chapter 11」