3月31日(1) 医療保険改革法に署名 
Source :President Obama signed the Health Care and Education Reconciliation Act (The White House)
30日、Obama大統領が医療教育予算法案(H.R. 4872)に署名した。これで医療保険改革に関する法的手続きは完了した。
医療保険改革法案比較表(当website)

Proposed Changes in the Final Health Care Bill (New York Times)

Health ReformSUMMARY OF NEW HEALTH REFORM LAW (Kaiser Family Foundation)
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月31日(2) 保険料高騰は続く 
Sources :Insurance premiums outrun reform (The Indianapolis Star)
Health premiums could rise 17 pct for young adults (The Associated Press)
経済情勢の悪化から、今年も保険料が8〜21%引き上げられる見込みという。これまでも処方薬の高騰、医療技術の向上に対応して医療費が増大し、それに合わせて保険料が上がるというパターンであったが、今年は失業率の上昇から、特に若年層の保険加入が減少し、プールが小さくなっていることが大きい。

一方、医療保険改革により、2014年から個人に保険加入義務が課されることとなっているが、20代、30代の保険料が大幅に上昇するのではないかとみられている。保険加入義務が課されると同時に、次のような保険規制が強化される。 これらの規制により、本来自分自身が受益する保険給付の分の上昇と、病気がちの人や高齢者の給付分まで実質的に負担することになる。こうした影響は、個人市場にとどまらず、企業を対象とした保険プランでも影響が及ぶものとみられている。

今回の医療保険改革では、無保険者割合の引き下げには一定の効果をもたらすものと思われるが、医療費そのものの上昇抑制策にはほとんど手がつけられていない。皆保険が現実になってくる中で、次の課題として浮上してくることになるだろう。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

3月27日 医療保険改革法:企業への影響 
Sources :The Health Reform Bill: What Do Employers Need to Know? (Employer Law Report)
Health Care Reform - What are Key Considerations for Employers? (Littler)
Health Care Reform Legislation: Impact on Employers (McDermott)
Health Care Reform Has Arrived (Proskauer)
企業にとって今回の医療保険改革がどのような影響を及ぼすのか。タイムスケジュールでまとめてみた。

医療保険改革法:企業への影響

2010年1月1日〜税額控除従業員25人以下かつ平均給与$50,000以下の企業が対象。税額控除額は、2010〜2013年は保険料の35%、2014年〜50%を上限とし、従業員数、平均給与が増えるに従って減額する。
2010年6月21日
〜2014年1月1日
再保険制度Medicare加入資格を持たない55〜64歳の退職者に保険プランを提供している企業のために、一時的な再保険制度を設ける。適格医療費の$15,000〜$90,000の80%を償還する。
2011年1月1日〜HSA等対象の制限処方箋なしの医薬品購入を、HRA、HSAの適格支出対象外とする。
2011年1月1日〜HSA等の課税強化HSAsの非適格支出に対する課税率を20%に引き上げる。
・FSAの非課税拠出額に$2,500の上限を設ける。
2013年1月1日〜Medicare保険料引上げ・個人$200,000以上、夫婦$250,000以上の給与分について、従業員負担率を1.45%から2.35%に引き上げる。
・申告所得が個人$200,000以上、夫婦$250,000以上の場合、キャピタル・ゲイン、利子所得に3.8%課税する。
2014年1月1日〜プラン自動加入従業員200人以上の企業で医療保険プランを提供している場合、新規採用者は自動的に加入させなければならない。従業員は、他の保険プランに加入していることを証明できれば、非加入を選択できる。
2014年1月1日〜ペナルティ・従業員50人以上の企業で保険プランを提供していない場合、フルタイム従業員が補助を受け取ると、フルタイム従業員一人当たり$2,000のペナルティ(ただし最初の30人分は免除)が課される。
・保険プランを提供していても、従業員の保険料負担が所得の9.8%以上になっている場合または企業が保険プラン費用の60%未満しか負担していない場合、補助金を受け取ったフルタイム従業員一人当たり$3,000を支払う($750×フルタイム従業員数が上限)。
2014年1月1日〜バウチャーの配布保険プランを提供している企業は、FPL400%未満の従業員に対し、
・その従業員の保険料負担が所得の8〜9.8%の場合、かつ
・"Exchange"で提供されるプランに加入した場合、
バウチャーを給付しなければならない。
バウチャーの給付額は、企業の保険プランに加入していたと仮定した場合の企業負担相当額。
2014年1月1日〜"Exchange"の利用・従業員100人以下の企業は"Exchange"で保険プランを購入できる。ただし、州政府は当初50人以下の企業に限定することができる。
・2017年からは、州政府の決定により、大企業も利用できるようになる。
2018年1月1日〜高額プラン課税高額プランに40%の課税を行う。高額プランは、個人プラン$10,200以上、家族プラン$27,500以上、退職者プラン$11,850以上、危険職種プラン$30,950以上。負担者は保険者。
次の大統領選挙は、2012年11月である。大きな変更は予定されていない。このあたり、企業にとってあまり切実感がないことにつながっているのかもしれない。

(4月1日追加)
企業への影響をコンパクトにまとめた資料があったので、追加で掲載しておきます。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月26日 医療保険改革法の成立 
Source :Final Votes in Congress Cap Battle on Health Care Bill (New York Times)
25日、医療教育予算法案について上院で投票が行われた。修正付で56 vs 43の過半数で可決された(午後2時)。同法案は即時に下院に回付され、賛成多数で可決(午後9時2分)、大統領府に送付された。

もう一度、法案の審議状況を確認しておく。
○下院医療保険改革法案(HR 3962)- 2009年11月7日下院可決
賛 成反 対
民主党21939
共和党1176
合 計220215
○上院医療保険改革法案(HR 3590)- 2009年12月24日上院可決
賛 成反 対
民主党600
共和党039
合 計6039


      ↓

2010年3月21日下院可決

賛 成反 対
民主党21934
共和党0178
合 計219212


      ↓

2010年3月23日 Obama大統領署名
○医療教育予算法案(H.R. 4872)- 2010年3月21日下院可決
賛 成反 対
民主党22033
共和党0178
合 計220211


      ↓

2010年3月25日上院修正付可決

賛 成反 対
民主党563
共和党040
合 計5643


      ↓

2010年3月25日下院可決

賛 成反 対
民主党22032
共和党0175
合 計220207


      ↓

来週(?) Obama大統領署名
これでいよいよ改革が実施に移されるわけだが、医療保険改革法案(上院)の成立直後に行われた世論調査(New York Times)でも、まだまだ反発は強く、国民の理解が深まっているとは言えないようである。いつものPOLLSTER.COMでみると、むしろ医療保険改革への反対が強まり、支持が減っているようである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月25日(1) 労働市場の構造変化 
Source :26th Annual NABE Economic Policy Conference: Labor Markets and Monetary Policy (Federal Reserve Bank of Chicago)
上記sourceは、シカゴ連銀Charles Evans総裁の講演原稿である。

Evans総裁は、3つのグラフを使って労働市場に構造変化が起きたのではないか、と述べている。 雇用を政策目標に含めているFRBとしては、難しい舵取りが求められることになりそうである。

※ 参考テーマ「労働市場

3月25日(2) 公的年金の収支逆転 
Source :Social Security Payout to Exceed Revenue This Year (New York Times)
CBOの推計によれば、今年の公的年金の保険料収入と給付支出の金額が逆転し、年間収支はマイナスになる見込みである。昨年5月のSSAの見通しでは、経済危機の影響で2009年、2010年は収支が逆転し、本格的な収支逆転は2016年〜となっていた(「Topics2009年5月13日(1) 社会保障プログラムの危機 」参照)。

CBOの推計では、今年の収支は逆転し、経済危機の影響がおさまれば、2014、2015年は若干の黒字になり、2016年からは収支逆転が本格化する、となっている。CBOとSSAの推計方法が若干異なることからくる違いはあるにしても、SSAの推計でも、収支逆転の度合いが深まる可能性が高そうである。

このように収支見通しが悪化した理由は、
  1. 労働市場の需給が急激に悪化したために、引退してしまった人が急増した
  2. 公的年金保険料の対象となる給与が減少した
の2点である。

こんなところからも、公的年金改革を急ぐ必要性があるわけだが、果たしてObama政権は真正面から取り組むこととするのかどうか、注目されるところである(「Topics2010年3月23日(2) 次は公的年金改革?」参照)。

※ 参考テーマ「公的年金改革

3月24日 州政府の抵抗 
Source :Republicans mobilize healthcare opposition (Los Angeles Times)
Obama大統領による医療保険改革法案(HR 3590)への署名が終わり、いよいよ上院での修正議論が本格化する。上院共和党はあらゆる手段を講じて法案可決を阻止するとしている。

一方、医療保険改革法案に反対して法廷闘争に持ち込もうという動きが活発化している。共和党が知事職を握っている州を中心に12の州が、医療保険改革法案に盛り込まれている「個人の保険加入義務」は民々契約を強制することになり憲法違反だ、と主張しようとしているそうだ。特に、VA州は、今年に入ってから、「州民は保険加入を義務付けられることはない」との州法を制定したばかりであり、間違いなく連邦裁判所に訴えると見られている。

また、NCSL調査によれば、アイダホ州(ID)もVAと同様の法改正を行なっている。そのほかの州でも、法改正の法案を審議中という。

上記sourceによれば、すぐに連邦裁判所が法廷を開くとは限らない。個人加入義務化とペナルティの施行は2014年からとなっており、実際の損失が認められなければすぐに訴えを受理することはないだろう、との見方である。

しかし、逆に言えば、改革法が本格的に始動してくると、こうした動きが頻発するということにもなる。大改革が定着するには相当の時間がかかりそうである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

3月23日(1) 医療保険改革法案の今後のスケジュール 
Source :Republicans Vow Repeal Effort Against Health Bill (New York Times)
22日深夜の興奮も冷めやらぬまま、23日には医療保険改革法案(上院法案、HR 3590)への大統領署名式が行われる。これで医療保険改革法案は一応成立したことになる。

その直後から、今度は医療教育予算法案(H.R. 4872)の上院での審議が行われる。上院は、今週末から2週間の休会に入るため、今週一杯をリミットとして審議が行われるものと思われる。

日米ともに上院法案(HR 3590)の下院可決、大統領署名に焦点を当てた報道を行なっている。これ自体は画期的な出来事であり、それなりの意義も認められるが、肝心の中身は、医療教育予算法案(H.R. 4872)で修正されている。法案の内容は下院での投票直前に明らかになり、これから上院で審議されるという段階であり、国民への周知もほとんどできていない。たとえば、中絶に関する取り扱いは、予算関連でなければ修正できないため、上院法案のままとなっている。このことを理解している国民がどれだけいるだろうか。

そうした中、セレモニーと反対運動に焦点を当てるのは、まさに政治的なショーアップを意図しているとしか思えない。

なお、これまでの行き掛り上、下院法案、上院法案、修正法案の比較表を作成してみた。こうしてみると、Obama大統領提案は、どういう意味を持ったのであろうか(「Topics2010年2月23日(1) Obama大統領提案」参照)。上院法案をベースにまとめるべきであること、Nebraska条項は外せということ、様々なスケジュールを遅らせるということ、などを言いたいだけならば、大統領の指示として明確に指摘すればすんだのではないだろうか。それと、保険料に対する監督強化の議論はどこに行ったのであろうか(「Topics2010年2月22日(3) Obama大統領も参戦」参照)。あれだけ煽るだけ煽っておいて、何も政策変更なし、ということなのだろうか。

医療保険改革に対する国民の評価はこれからである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月23日(2) 次は公的年金改革? 
Source :Next Big Issue? Social Security Pops Up Again (New York Times)
医療保険改革の最終決着を見ない内に、政権内では、次なる政策課題として公的年金改革が急浮上しているという。主な理由は次の2点。 確かに、Obama大統領は、公的年金改革に前向きである。金融危機、経済危機さえ起こらなければ、とっくに取り組みを開始していたのではないかと思われる。他方、連邦議会議員は、これ以上の社会問題は勘弁してくれ、というところであろう。医療保険改革は、企業提供プランに手を突っ込まない、と宣言すれば、6割近くの国民は静観を決め込んでくれた。しかし、公的年金の問題になれば、給付と負担両面で、全国民の関心が集まる。そんな大問題をこれから中間選挙戦が本格化する中で議論したくない、というのが、議員達の本音であろう。

また、医療保険改革議論の中で、超党派による議論の場が崩れてしまっているのも大きい。

そんな中、Obama大統領が本気で取り組むというのであれば、もしかしたら本当に偉大な大統領になれるチャンスがあるかもしれない。

※ 参考テーマ「公的年金改革

3月22日(1) 医療教育予算法案 
Source :H.R. 4872, THE HEALTH CARE & EDUCATION AFFORDABILITY RECONCILIATION ACT of 2010 (COMMITTEE ON RULES, House of Representatives)
18日、ようやく審議対象となる医療改革法案(H.R. 4872)が公表された。下院議会の文書はここ、CBOの推計はここにある。また、Kaiser Family Foundationが、上記法案の概要について、上院法案からの主な変更点9点を説明している。

そして、21日夜(日本時間で22日午前中)、下院での最終投票に向けての環境が整いつつある。最後まで抵抗していた反中絶派が、法案に賛成票を投じることを約束したのである。現在、日本時間で22日午前9時50分だが、下院本議会で、最終演説が続いている。この後、本投票が行われる予定である。

いよいよ、医療保険改革法案が最終局面を迎えつつある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月22日(2) フレックスワークの選択肢 
Source :Options On The Flex-Work Menu (NPR)
上記sourceは、フレックスワークの選択肢を示し、その採用率を併記している。

ちょっと驚きなのは、カジュアル・ドレス・デイをその選択肢として認識している点である。しかも、その採用率は6割にものぼっている。また、昼休みの調整であれば、日本の企業でもかなり一般的であろう。

在宅勤務は、勤務管理や労災関係などで様々な課題が提示されているが、まずはやってみることが大事なのではないだろうか。やっていく中で労使で課題を解決していく、そうした姿勢でなければ、「働き方」という文化はなかなか変えられない。

※ 参考テーマ「Flexible Work

3月22日(3) ベネフィットの税制優遇規模 
Source :Tax Expenditures and Employee Benefits:Estimates from the FY 2011 Budget (EBRI)
アメリカ予算法では、税制優遇措置に伴う税収減について、リスト化し、その規模を明示しなければならない。既に『透明化』が図られている。上記sourceでは、2011年度予算のうち、Employee Benefitsに関連するものをリストアップしている。

雇用ベネフィットに関連する税制優遇措置は、総額$380.83Bにのぼり、税制優遇措置全体($1,056.71B)の36.0%を占める。>
雇用ベネフィットに関連する税制優遇措置雇用ベネフィット税制優遇措置に占める割合税制優遇措置全体に占める割合
$380.83B100%36.0%
うち医療保険関係 $176.96B51.3%16.7%
退職所得関係 $111.69B32.4%10.6%
これを見ても、アメリカ社会では企業が提供する雇用ベネフィットを重視していることがわかる。

ところで、税制優遇措置には3種類あるという。 最初の典型例は医療保険、二番目の典型例は年金プランである。

※ 参考テーマ「ベネフィット

3月22日(4) 医療保険改革法案成立へ 
アメリカ時間の21日(日)深夜に、医療保険改革法案成立に向けて、最終投票が行われた。

昨年後半からの医療保険改革法案の投票結果をまとめると、次の通り。
○下院医療保険改革法案(HR 3962)- 2009年11月7日下院可決
賛 成反 対
民主党21939
共和党1176
合 計220215
○上院医療保険改革法案(HR 3590)- 2009年12月24日上院可決
賛 成反 対
民主党600
共和党039
合 計6039


      ↓

2010年3月21日下院可決

賛 成反 対
民主党21934
共和党0178
合 計219212


      ↓

大統領府へ送付
○医療教育予算法案(H.R. 4872)- 2010年3月21日下院可決
賛 成反 対
民主党22033
共和党0178
合 計220211


      ↓

上院へ送付 (上院法案との比較はここを参照)
いずれにしても、民主党下院は割れてしまい、内部に爆弾を抱えた状態となっている。今日の投票では、いずれもStupak下院議員は賛成票を投じている。事前の報道通り、賛成票を投じることで調整がついていたのだろう。ということは、今回、反対に回った民主党下院議員の多くは、公的プラン創設を求めていたリベラル派ということになる。これで、リベラル派のObama離れが確定すると、今年の中間選挙で民主党はますます苦しくなる可能性がある。

一方、今回の医療保険改革の実現に対して、中道派の国民がどのように判断を下すかも大きな鍵となる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル