Source : | New York Leads States in Extra Medicare Payments (New York Times) |
医療保険改革法では、Medicareの効率化に努めている病院に対し、特別報奨金を支払うことにしている。具体的な要件は次の通り。上記sourceによると、対象となったのは273countyの415病院であった。その内訳を見ると、予想とは異なり、NY州の病院は全体の12%近くを受け取ることになったといって驚いているのである。ということは、逆にもらえると思っていたのにもらえなかった、少なかったという州もあるということである。実際には、主にMidwest、Northwestの選出議員が『不公平だ』と騒いでいるそうだ。
- 報奨金の支払い対象期間は、2011年度、2012年度の2年間で、総額$400M。
- 対象はcountyで、Medicare加入者一人当たりの平均支出額(年齢、性別、人種で調整)が、全米で少ない方から4分の1のcounty。
医療保険改革法は成立したけれども、細部はこれから、というところが多く、前途多難という印象がますます強くなっている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」
Source : | American Workers, State, and Business Relief Act of 2010 (H.R. 4213)(Committee on Ways and Means, The House of Representatives) |
28日、下院で上記法案が可決された。下院では"The American Jobs and Closing Tax Loopholes Act of 2010"と呼んでいるため紛らわしいが、上記法案名が正式のようである。当websiteとしての関心項目について、簡単にポイントを整理しておく。これに関するコメントは次の通り。
- 年金プラン(DB)
- 積立不足の償却期間を、原則7年から原則15年に延長する。
- 最低拠出金額の算定基準を緩和する。
- Summer Jobs
失業率の高い15〜24歳の就職を促すため、35万人の雇用を生み出すプログラムを推進する。必要額は$1B/10Y。
- Community College等への支援強化
- 特別失業給付の期限延長(2010年5月末→2010年11月末)
- Emergency Unemployment Compensation (EUC):州の失業率によって、最長53週まで失業給付ができる。
- Extended Benefits (EB):州の失業率によって、全額連邦政府負担により、失業給付を13週または20週延長できる。
- Federal Additional Compensation (FAC):連邦政府による付加給付($25/W)
- Medicare償還額
- 2010年:6〜12月の間は、Medicare償還額を2%引き上げる。
- 2011年:さらに1%引き上げる。
- 2012年〜:本来の規定通りに戻す。
- 今後10年間で$22.9Bが必要となる。
- 財政赤字拡大幅:$54B
※ 参考テーマ「Medicare」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」、「解雇事情/失業対策」、「企業年金関連法制」
- これまで法案に盛り込まれていた、「COBRA保険料補助」と「Medicaid連邦政府特別負担」の延長が削除されている(「Topics2010年5月27日(2) 医療関連予算の時限爆弾(2)」参照)。この2つの項目を削除するだけで、財政赤字拡大幅が$30.9Bも圧縮できる。どちらも失業者、低所得者という弱者の医療を保証する目的であるが、膨大な財政赤字の前には致し方ない、ということなのだろう。
- 失業給付の延長は盛り込まれたものの、既に上院が休会に入ってしまったため、いったん、延長措置は途切れることになる。上下両院の民主党幹部の間で意思疎通ができていないのではないかと思わせるところである。
- 実はこの法案は、2回に分けて投票が行われている。@Medicare償還額の条項を除いた全体(Roll Call 324)と、AMedicare償還額の条項(Roll Call 325)である。@は民主党から34もの反対票が入り、215 vs 204と、ぎりぎりの可決であった。ところが、Aは民主党からの反対票15と、共和党からの賛成票15が相打ちとなり、245 vs 171の大差での可決となった。こうしてみると、Medicare償還額の削減は大変なハードルであることがわかる(「Topics2010年4月25日 やはり医療費増大」参照)。医療保険改革法の財源確保も至難の業、ということになる。
Source : | White House Used Bill Clinton to Ask Sestak to Drop Out of Race (New York Times) |
Specter上院議員(D-Pa.)は、PA州上院議員選挙の予備選で敗れ、同氏の政治生命は終わったと紹介した(「Topics2010年5月19日 "裏切り者"の末路」参照)。もう当websiteで登場することはないだろうと思っていたが、その呪いがかかっているとしか思えないスキャンダルが発覚した。
予備選でSpecter上院議員に勝ったJoe Sestak(D-Pa.)下院議員に対し、White Houseが、大統領顧問の職を提供する代わりに予備選から退くよう説得していたというのだ。ワシントンではよくある取引ではないかと思われるが、共和党は違法行為であると騒いでおり、マスコミも一斉に報道している。
これがどういう展開を見せることになるのかわからないが、Obama大統領、White Houseは、そこまでしてSpecter上院議員に勝たせたかったのか、と驚いている。そこまで肩入れしながら勝たせることができなかったことの意味は重いのではないだろうか。
※ 参考テーマ「中間選挙(2010年)」、「政治/外交」
Source : | Immigration Overhaul Advocates Question Troops (New York Times) |
国境警備兵の増強という政府決定が、リベラル派の反感を呼んでいる(「Topics2010年5月26日 メキシコ国境警備兵を増強」参照)。
もともと、移民制度の抜本改革は、@国境警備の強化と、A不法移民への法的地位の賦与、という二本柱で議論されている。
ところが、不法移民による事件を切っ掛けに、AZ州政府は、連邦政府の議論を待っていられないとばかりに、治安強化のための州法を制定してしまった。現場を預かる州政府としては理解できるところではあるが、連邦政府としては面白くない。本来、移民制度改革に意欲を持っているObama大統領は、すぐさま不快感を表明した(「Topics2010年4月28日 アリゾナ州の不法移民対策」参照)。
一方、連邦議会では、AZ州選出議員達(民主、共和両党とも)が中間選挙に向けて地元にアピールする必要があることから、治安強化策を求めるパフォーマンスを強めた結果、Obama大統領も治安強化策としての国境警備兵増強という決断をしなければならなくなった。
それでも、Obama大統領は、抜本改革が必要との主張を崩さず、共和党の協力を求めている。
こうした状況に、不法移民への法的地位の賦与を求めているリベラル派は、危機感を募らせている。Obama大統領は「共和党の協力を得るためにも増兵が必要」と述べているものの、『増兵したら抜本改革の議論をするとの約束を取り付けているのか。大統領が本質議論を先送りするための戦略ではないのか』と疑っているのである。
そもそも、医療保険改革で党派間の溝を深めてしまっているところで、国民の安全と権利そのものに関わるような課題で簡単に野党の協力を取り付けることができるのか、という状況も、リベラル派の危機感を高めている。
Obama大統領は、移民法改革という手形を落としたいにもかかわらず、落とせないんじゃないの、と不信感を持たれてしまっているのである。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | California pension politics heating up (Reuters) States face hurdles in cutting worker benefits (Reuters) Factbox: States take steps to rein in pensions (Reuters) |
各州政府は、財政収支の悪化を踏まえ、新年度の財政支出策を検討している。中でも、全州合計1兆ドルとも言われている年金プランの積立不足解消は、最大の課題の一つとなっている。しかし、そこにはだかるのが労組である。行政サービスをなるべく維持しようと思えば、職員の報酬・ベネフィットを削減しなければならない。逆に州職員の報酬を維持しようとすれば、行政サービスは大幅に縮小しなければならない。
ここで、州政府に圧力をかけているのが、労組である。労組としては、組合員の報酬が減る、負担が増えるということには基本的に反対する。しかし、あまりにもそこに固執すると、州政府が大規模なレイオフに出てくるのではないか、との怖れも抱いている。
新年度予算編成に向けて、州政府労使の虚々実々の駆け引きが続きそうである。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働組合」
Source : | “The American Jobs and Closing Tax Loopholes Act of 2010”(H.R. 4213) as of May 26, 2010 (Committee on Ways and Means, The House of Representatives) |
税制改正法案の最新版を確認したところ、次のようになっていた(「Topics2010年5月23日 医療関連予算の時限爆弾」参照)。注目のMedicare償還額の大幅カットは、2012年まで先延ばしする、という提案である。それでも$23Bが必要となる。
- Medicare償還額
- 2010年:6〜12月の間は、Medicare償還額を2%引き上げる。
- 2011年:さらに1%引き上げる。
- 2012〜:本来の規定通りに戻す。
今後10年間で$22.9Bが必要となる。
- COBRA保険料補助
65%の保険料補助を11月30日まで延期する。要する費用は$6.8B。
- Medicaid財源
Medicaidの連邦政府負担割合の引き上げを2011年6月30日(46州の次年度予算年末)まで延長する。必要額は$24.1B。
※ 参考テーマ「Medicare」、「州レベル全般」、「解雇事情/失業対策」
Source : | National Guard to Help Secure Southwest Border (New York Times) |
Obama政権は、メキシコ国境警備兵の1200人増強を決めたようだ。
Obama大統領は、AZ州の不法移民対策強化に対し不快感を示していたが、中間選挙を意識した連邦議会両党の議員と世論に後押しをされる形で、国境警備の強化策を打ち出すことになった。
一方で、国境警備強化だけでは不法移民を減らすことはできず、移民法の抜本改革に向けて共和党のさらなる協力が必要であるとの主張を繰り返している。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Recouping executive pay: the rise in popularity of clawbacks (Hay Group) |
「掴んで取り戻す」ということだが、ここでは「報酬返還請求」という意味である。上記sourceのポイントは次の通り。※ 参考テーマ「経営者報酬」、「SOX法」
- 歴史
最初に注目を浴びたのは、SOX法である(「Topics2002年7月25日(1) 企業不正防止法」参照)。しかし、不法行為があった場合など、適用範囲が限られていたため、こうした規定は稀であった。ところが、金融危機対応で、TARPが発効した際、経営幹部の報酬公開が義務付けられるとともに、TARP資金を返還するまでは、clawbackが適用されることとなった(「Topics2008年10月15日(1) 9行の経営者報酬」参照)。
- 普及度合い
近年、clawback規定を盛り込む公開会社が急速に増えている。Fortune 100の企業でみると、2006年の18%から2009年には73%となっている。
- 返還請求理由
財務報告の修正、倫理規定違反などが最も多く、次いで非競争契約(non-competition clause)違反となっている。
- 返還請求対象となる報酬
当初は現金報酬・賞与が中心であったが、近年では株式による報酬(受給権賦与の有無に関わらず)も対象に含まれるようになっている。
- 返還請求可能期間
SOX法制定当初は12ヵ月が一般的であったが、最近では24ヵ月から36ヵ月となっている。ただし、余り長くすると、経営者が「リスクが高すぎる」と感じる可能性がある。
- 州法との関係
州法では従業員の権利を保護する法制を定めている。全国展開している場合、各州の州法との整合性を確認しておく必要がある。
- 今後の方向性
法制、株主議決権の関係から、さらに広がっていく方向であるが、一方で、経営者の採用、引き留めとのバランスに留意する必要がある。
Source : | New Proposals for Pension Books (Governing) |
CalPERSに対するCA州政府の拠出金は、7月1日から始まる新年度に$3.9Bが必要となる。これは現行年度の$3.3Bを$600M上回ることになる。そのCA州は$19Bの財政赤字を抱えている(Bloomberg)。
一方、NY州では、40代後半で退職しながら10万ドル以上の年金を得ている警察官、消防官が100人以上もいるということで話題になっている(New York Times)。
いずれも、金融危機、経済危機に伴って、州政府が大規模な財政赤字を抱えている中で、政策課題になっている問題である。IL州では、年金積立不足は$78Bに達し、2011年度の拠出必要額は$4B以上となる。一方で州政府の財政赤字は$17Bと見込まれている(Financial Times)。学者の中には、新規採用者の加入を認めず、民間企業と同様、公的年金と個人年金の組み合わせに移行すべき、と主張している人もいる。
そうした中、州政府年金に関する会計基準を見直す動きが出ている。GASBの仮決定("tentative decisions")のポイントは次の通り。現在利用されている予想収益率はおよそ8%であるが、提案されている高格付けの免税債の利子率は約5%である。これだけで給付債務は30〜33%増えることになる。また、償却期間の短期化により、年間拠出額は150〜200%増加することになる。
- 資産に関する見通しについては、従来通り、予想収益率を利用する。
- 給付債務の計算については、従来は予想収益率を利用していたが、これを改め、高格付けの免税債の利子率を利用する。
- 勤務債務の償却期間は、従来、30年程度としていたが、これを平均残存勤務期間(12〜15年)とする。
ただでさえ厳しい財政事情の中で、会計基準の変更により、巨大な支出圧力が加わることになる。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | How The Tax Bill Would Affect Medicare, Medicaid And COBRA Subsidies (Kaiser Health News) |
医療関連予算に関して、決断をしなければならないタイミングが刻一刻と迫っている(「Topics2010年4月23日 Medicare償還額削減問題」、「Topics2009年1月30日 Medicaid支援必要性」参照)。これらを一気に解決するため、連邦議会で税制改革法案(H.R. 4213)が議論される予定となっている。そこで検討されている諸案は次の通り。
- Medicare償還額削減措置の停止:5月31日まで
- COBRA保険料補助の延長:5月31日まで
- 46州の新年度予算開始(含むMedicaid財源):7月1日から
見てもわかる通り、いずれも巨額の歳出が伴う。財政健全化が大きな課題となっている中で、これらの歳出をどのように扱うのか。Obama政権、連邦議会にとっては厳しい選択を迫られている。
- Medicare償還額
次の4つの選択肢が検討されている。仮にMedicare償還額を永久に固定することとなれば、2020年までで$276Bが必要となる。
- 現在のMedicare償還額を3年間固定する。加えて、次のような増額策を講じる。必要額はCBOが試算中。
- 2011年:償還額を増額する。
- 2012〜2013年:Medicare支出の自然増を認めることに加え、プライマリー・ケアの支払いを増額する。
- 現在のMedicare償還額を5年間固定する。総額$88.5Bが必要。
- 規定されている21.3%削減を年末まで延期する。
- 規定されている21.3%削減を6月末まで延期する。
- COBRA保険料補助
65%の保険料補助を年末まで延期する。要する費用は$7.8B。
- Medicaid財源
もともとMedicaidの連邦政府負担は、州民一人当たり所得に応じて、50〜76%と規定されている。これを、2009年2月の経済危機対策で、61〜84%に引き上げた。この引き上げ規定は2010年末までが期限となっているが、これを2011年6月30日(46州の次年度予算年末)まで延長する。必要額は$24B。
※ 参考テーマ「Medicare」、「州レベル全般」、「解雇事情/失業対策」
Source : | Medicare and the New Independent Payment Advisory Board (Kaiser Family Foundation) |
医療保険改革法実施のための財源のうち、大きな役割を果たすのが、Medicare支出額の抑制であった。同法では、独立した諮問委員会「Independent Payment Advisory Board、以下『IPAB』」の設置を規定している。その役割、ならびに今後予定されているスケジュールは、次の表の通りである。専門家の目から見ると、次のような特徴があるそうだ(Kaiser Health News)。
2012年
- Medicare独立支払い諮問委員会(Independent Payment Advisory Board、以下『IPAB』)の運営費は年間$15M。以降、物価スライド適用。
- 委員15人(全員常勤)が大統領により指名、上院で承認。任期は6年。
- 下部組織として、10名で構成する消費者助言委員会を設置。
2013年 4月30日
- CMSの主席数理人より、
@一人当たりMedicare支出伸び率が目標伸び率を上回っていないか
A2015年までの予測
を報告する。
- 目標伸び率:
- 2017年まで:
CPI-U(都市部消費者物価)とCPI-M(医療費物価)の平均の今後5年間の予測平均伸び率- 2018年以降:
一人当たり名目GDPの今後5年間の平均伸び率+1.0%ポイント- 今後5年間のMedicare支出平均伸び率が目標伸び率を上回った場合、IPABは次の2つの金額のうち、少ない方の削減額を実行するよう提言する。
- 一人当たりMedicare支出額が目標額を上回った分
- 予測Medicare支出額の0.5%(2015年)、1.0%(2016年)、1.25%(2017年)、1.5%(2018年以降)の合計額
9月1日 2014年 1月15日
- CMSが
@Medicare支出額の伸び率を目標の範囲内に収める、または
A医療物価上昇率("CPI-M")都市部の物価上昇率("CPI-U")以下に収める
との決定を行なわなかった場合、
IPABがMedicare支出額の削減額を大統領に提案する。1月17日
- 大統領がIPAB提案を議会に送付する。
1月25日
- 仮にIPABが提案を提出できなかった場合、HHS長官が必要削減額を達成するための政策提案を行う。
4月1日
- IPAB提案に対する連邦議会委員会の対応報告の期限
7月1日
- Medicare全般に関するIPAB報告書の提出
8月15日
- 連邦議会がIPAB提案を満たすような法的措置を講じない場合、HHS長官がIPAB提案を原案通り実施する。
2015年 1月15日
- IPABが、Medicareその他連邦政府プログラムを除く国民医療費の伸びを抑制する方策を提案する。これは2年に1度、連邦議会と大統領に対して行われるものだが、拘束力は持たない。
2017年 2〜8月
- IPABの解散、活動停止を決定するためには、上下両院とも60%以上の賛成を必要とする。
2018年
以 降
- 一人当たりMedicare支出の目標伸び率は、[一人当たり名目GDPの今後5年間の平均伸び率+1.0%ポイント]とする。
2019年
以 降
- 次の2つの条件が満たされた場合、HHS長官はIPABの提言を実施することができない。
- 前年に、IPABが議会に対して提言を提出するよう求められた。
- 数理人室が、一人当たり国民医療費の5年間の平均伸び率が、一人当たりMedicare支出の5年間の平均伸び率を上回ったと判断した。
確かに、医療費抑制のためには診療報酬をコントロールするのが早道である。しかし、それによる副作用も大きい。だからこそ、その権限をなかなか充分には発揮できないのである。
- IPABの提言内容は厳しく制限されている。それは、Medicare償還額の削減である。
- そこには、立法者(民主党議員)の意思が込められている。それは、コスト抑制のためには、償還額をコントロールするしかない、という考え方である。
Medicare歳出抑制策については、予てからルールを決めていながら、なかなか守ることができないままである。今回の仕組みが本当にワークするかどうかは、今後の政権、連邦議会の意志にかかっている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「Medicare」