Source : | Troubled Asset Relief Program: Automaker Pension Funding and Multiple Federal Roles Pose Challenges for the Future (U.S. GAO) |
6日、GAOが新GM、Chryslerの年金プランに関するレポートを公表した。概要は次の通り。PBGCのお世話になるかどうかは、ひとえに両社の今後の業績にかかっている。上記レポートが公表された翌日の7日、新生GMとして初めての決算発表があった。結果は$4.3(6ヵ月)の経常損失であった。この中には、UAW-VEBAへの拠出金$2.6Bも含まれる(Detroit Free Press)。
- 2社の年金プランは、2009年に積立不足に陥った。
- GMの年金プランの資産・債務をみると、2009年、資産が大きく落ち込む一方、負債は急増した。
- Chryslerは、資産の落ち込みが効いている。
- PBGC基準による負債推計は次の通り。PBGCが負担負担しなければならなくなる金額は$14.5Bにのぼる。
- 2社の年金プランの規模は大きい。仮に両社が破綻し、PBGCに給付債務が移管されるとしたら、その影響はかなり大きくなることが容易に想像できる。
経営トップは、2010年は経常利益を出せる体質になる、と説明しているが、これが実現しなければ、PBGCを通じた国民負担はまた大きく増えてしまう。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」
Source : | Minutes of the Federal Open Market Committee (FRB) |
上記sourceは、3月のFOMCの議事概要である。ボードメンバーは、全体として緩やかに回復していると見ているものの、現状認識、将来見通しの中で、懸念材料として述べられているところを列記しておきたい。また、7日に行われたBernanke議長のスピーチでも、企業の雇用意欲が低いこと、失業が長期化しているなど、労働市場に大きな課題が残されている点を強調し、継続的な景気回復への懸念を表明している。
- 消費者のセンティメントは、厳しい労働市場の状況から弱まっている。
- 広範な支出項目で物価の低下が見られており、インフレ率は予想よりも低下している。
- 厳しい労働市場の状況、住宅価格の低迷、金融機関の厳格な貸出態度、所得の伸びの鈍化などから家計支出は抑制される見通し。
- 設備投資の増加は、維持補修と技術改善が主であり、能力増強目的ではない。
- 企業の雇用増意欲は乏しい。
- 継続的な雇用創出がなければ景気回復は継続しない。
雇用情勢の改善は進んでいない、もしかしたら、これからさらに悪化するかもしれない、というメッセージなのではないだろうか。アメリカ経済の70%は消費である。労働市場の動向が気になるところである。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Sebelius Continues Work to Implement Health Reform, Announces First Steps to Establish Temporary High Risk Pool Program (HHS Press Release) |
4月2日、HHSのSebelius長官が、各州政府宛てに書簡を送付した。病歴等により保険加入できない人達のための時限的な保険プールを州毎に設立することを伝えるとともに、各州政府がどのように対応するのかを回答するよう求める、という内容である。
まず、時限的保険プールの概要は次のようになっている。また、現在、州政府で実施しているハイリスク医療保険プール制度の概要は次のようになっている(New York Times)。
- 医療保険改革法(HR 3590)の§1101に基づき、『時限的なハイリスク医療保険プール制度』を創設する。これは既往症や罹病状況によって保険加入できない人達のために設立する制度で、HHSが州政府または非営利組織と契約して実施する。
- 加入資格
- アメリカ国民または法的居住資格を有する
- 加入申請前6ヵ月間に保険加入していない
- 既往症または罹病がある
- 保険給付
- 全医療費の65%以上をカバーする
- 自己負担の上限は、HSAと併用する高免責額医療保険プランの金額($5,950/人)を超えない
- 保険料
- 標準的な個人保険市場の保険料とする
- 年齢による格差を4対1以内とする
- 州政府の選択肢
- 州が実施している現行のハイリスクプール制度を見直す
- (ハイリスクプール制度を持っていない州は)新たな制度を新設する
- ハイリスクの個人を対象とする他の制度と併用する
- 補助金を出すことで、HIPPAに基づく保険会社と契約する
- 何もしない。その場合にはHHSがその州内でプール制度を提供する。
- 制度実施のための連邦政府予算は$5B。州人口と州政府の費用に応じて配分する。
- 施行期間は、2010年7月1日(州政府の新年度)〜2014年1月1日(新法により、病歴等による加入拒否ができなくなる)。
- 今後のスケジュール
- 4月9日:州政府の担当者名をHHSに登録
- 4月半ば:制度全体を説明し、質疑を受け付けるためのフォーラムを開催
- 4月30日:連邦政府と契約を結ぶ意思の有無を連絡
ハイリスクを抱える国民にとって朗報であることは間違いない。また、連邦政府が期限を明示して制度をスタートさせようとしていることは評価されよう。
- 既に35の州でハイリスクプール制度が運営されている。加入者は2008年末で20万人。
- 加入待機期間は3ヵ月〜1年。
- 保険料は、標準的な個人保険プランの125%〜200%。従って、とても個人加入は難しい状況にある。
- 2008年の給付総額は$1.9B。加入者一人当たりは$9,437。給付総額のうち、保険料収入で賄えたのは54%、保険会社からの拠出金が23%。残りの23%は州政府が負担。
そのスケジュールだが、上記の『今後のスケジュール』を見ていると、政治的な意図が含まれているように思われる。当websiteでも紹介したように、医療保険改革を巡って、州政府が連邦政府を訴えるという動きがある(「Topics2010年3月24日 州政府の抵抗」参照)。今回のハイリスクプールの提案は、こうした州政府の抵抗に対するSebelius長官のカウンターではないだろうか。あなた達が抵抗を続けていると、本当に医療を必要とする州民が犠牲になりますよ、と。今月中に意思を示せ、と突き付けているところに怖さを感じる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Signaling Jobs Recovery, Payrolls Surged in March (New York Times) |
アメリカ労働市場に薄日が射してきたという。3月の雇用統計は、という結果であった。
- 非農業部門で雇用が162,000人増加
- 失業率は9.7%で横ばい
アメリカ労働市場では、新規参入者を吸収するだけで10万人の雇用増が必要である。現在、1500万人の失業者がいることから、失業率を低下させるためには相当数の雇用増が続かなければならないことがわかる。
3月の雇用増の内訳を見ると、人材派遣業(40,000人)と医療(27,000人)で雇用が増えている。人材派遣業が増えているということは、企業がフルタイムの雇用を増やす前に、一旦はパートタイムの雇用を増やそうとしていることの現われである。企業活動が回復し始めているのと同時に、企業側の慎重な姿勢も示していることになる。
また、3月は、2010年に行われるセンサス(国勢調査)のためのパートタイム雇用が48,000人増えている。センサスを実施している商務省では、今年60万人のパートタイム雇用を用いる予定(Washington Post)としており、この夏まではセンサス用のパートタイム雇用が増える見込みである。
これにより当座の求職が満たされている部分も大きい。と同時に、センサスが終わればまた失業、という人も出てくるだろう。
このように、本来であればフルタイムでの雇用を求めていながらパートタイムで就職している人たちも多い。また、本当なら働きたいのに、就職が難しいので諦めてしまった人達もいる。以前にも紹介した(「Topics2010年3月6日(3) 真実に近い失業率」参照)が、こうした不本意なパートタイム就労者、不労者も含めた失業率も見ておく必要がある。
上図は通常の失業率の推移だが、これに不本意なパートタイム就労者等を含めた失業率の推移は次のようになる。
上記の失業率を仮に『実感失業率』としてみて併記すると、次のようになる(データ)。
こうしてみると、不本意な就労者・不労者がまだまだ根雪のように存在していることがわかってくる。こうした状況がアメリカ経済のエンジンたる個人消費の足かせになっていることを理解しておく必要があろう。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | Critics Say Firm Weakens Safety Net as It Fights Jobless Claims (New York Times) |
Talx Corporationという会社が有名(notorious)になっているという。失業保険給付にあたって必要となる企業側の業務を代行しているが、不必要な訴訟や虚偽報告が異常に多いそうだ。上記sourceによれば、いくつかの州で同社をターゲットにした法制を導入している。
同社は2002年に業界最大手2社を買収し、その後も5社を買収し、業界最大手として全米で営業している。それまではこの手の業務を行なっておらず、買収による市場参入、急拡大してきた会社である。
2008年には、FTCが内部調査を行なった。その結果は、これら買収により、同社は『価格を一方的に引き上げ』、『サービスの質を下げている』というものであったが、公表はされていない。
また、同社のセールストークは、『一件でも失業保険が給付されれば失業保険料率が上昇する』、『必ず失業給付却下率を上げて見せる』というものであった。同社の訴訟や虚偽報告で、失意行保険給付が遅れたり、申請を諦めたりした人も出ている。
まさか、大手企業が失業保険料率を抑制するために同社に外注しているとは思えないが、意図的に失業給付却下を狙っているとすれば悪質である。買収による急成長といい、弱者を食い物にしようとしている点といい、なんだか昔のグッドウィル・グループを想起させる。
※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」
Source : | State rejects health insurance rate hikes (The Boston Globe) |
1日、MA州の保険監督局(Division of Insurance)は、個人・小規模企業保険市場の保険料引き上げ申請274件のうち、235件を却下した。理由は主に次の3点とのこと。申請された引き上げ幅は、8〜32%と幅は広いが、いずれも医療費上昇率を上回っていた。
- 医療機関への償還額の計算根拠が説明されていない。
- 償還額を再交渉した結果を反映していない。
- 医療費上昇率(推計値4.8%)を大幅に上回っている理由が説明できていない。
今回の申請却下は、2月に緊急導入された州法により定められたプロセスであり、同法の導入を推進したPatrick州知事は、とのコメントを発表している。
- 保険監督局の決定を支持する。
- 小規模企業が復活しようとしているこの時期に大幅な保険料引上げは阻害要因となる。
- 法的措置を採る前に、医療機関も医療費抑制に務めるべきである。
当然のことながら、小企業団体はこの決定を歓迎している。景気回復が本格化していない中での保険料大幅引き上げは、保険プランの放棄につながりかねず、人材獲得にも支障をもたらす。大企業は、「保険料にキャップをかけるだけでは根本的な解決にはならない。医療費の抑制を図らなければならない」としている。
一方、保険会社は不満一杯である。特に、却下理由に数理的な根拠が含まれていないことに強く反発している。保険会社からすれば、償還費用が上昇することが充分予想されていることを反映した引き上げ申請、という考え方であったからだ。今後は、不服申請をし、認められなければ司法手続きに入ることも視野に入れている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」
Source : | Same-sex couples face higher health costs (MarketWatch) |
同性カップルの医療保険に関する負担は、異性カップル(法的婚姻関係)よりも重いという。
州ベースで法的に同性婚が認められても、連邦ベースで認められなければ、税制や差別禁止法で異性婚とは扱いが異なってしまうケースが出てくる。アメリカ社会がどこまでこうした扱いを許容するのか、同性婚の動きとともに注視していく必要がある。
- 同性婚が法的に認められている州においても、企業側はパートナーを加入対象からはずすことができる。
- 仮に加入対象としたとしても、異性婚の場合よりも連邦税の負担は重くなる。異性婚の場合、配偶者のために支払った企業負担は従業員本人の課税所得からは控除されるのに対し、同性婚の場合にはその規定が適用にならないからだ。先の医療保険改革では、当初の下院法案には同性婚のパートナーにもこの優遇税制を適用するとの規定が含まれていたが、最終的な法案からは削除された。
- 事実婚でも異性パートナーの場合には、31%の企業が保険加入対象としているのに対し、同性パートナーの場合には21%しかない同性婚が法的に認められているMA州でさえ、異性パートナーを保険加入対象としている企業が93%あるのに対し、同性パートナーの場合には71%しかない。
- 勤務先で保険加入対象とならない場合には、個人保険市場で保険を購入するしかない。加入対象となっていたとしても、差別を恐れて申請しない場合も多い。
- 同性パートナーはCOBRAの対象とはならない。
- 同性カップルの子供の扱いも定まらない。生物学的に(または養子縁組した)従業員の子供であれば、加入対象となる可能性が高いが、パートナーの子供はどうなるかは企業の判断による。
- 同性カップルの場合、高い保険料を求められるケースもある。
※ 参考テーマ「同性カップル」
Source : | Labor market faces threat of a prolonged jobless recovery (EPI) |
これまた雇用の回復が遅くなっているというプレゼンである。この図を見ると、2年半近くをかけて、ようやく雇用の下げ止まりの目途がつき始めたという印象が強い。2001年の景気後退期のように、だらだらと底ばい状態が続くとすれば、4年や5年では回復できないのではないかと思わせるグラフである。
※ 参考テーマ「労働市場」