Source : | Job Growth Falters Badly, Clouding Hope for Recovery (New York Times) |
6月の失業率が発表となり、失業率が悪化した。
3ヵ月連続の悪化で、すっかり市場のマインドは冷えてしまい、状況としては昨年末のレベルに戻ってしまった感がある。
しかも、雇用者数は、18,000人増と極めて弱い。連邦政府が14,000人、州政府等自治体が25,000人の減少と、じわじわと雇用を減らしているうえに、民間企業でもようやく57,000人しか増えていない。労働市場が順調に回復していくためには、15万人の雇用増が必要といわれており、ほど遠いお寒い状況と言わざるを得ない。
※ 参考テーマ「労働市場」
Source : | States slow in setting up central piece of Obama healthcare law (The Hill) |
医療保険改革法の重要な柱の一つである、Exchangeの創設について、州政府レベルでの検討のテンポが遅くなっている(「Topics2011年6月7日 2つの黄信号」参照)。上記sourceによれば、今週末にも、HHSより、800ページにも及ぶ規程集が公表されるとの推測が出ている。
州政府の立場に立つと、いろいろと細かなルールが示されたとしても、大きな論点について、各州レベルで政治的折り合いがつかないと、前に進めないということだろう。その大きな論点とは、次の3つとされている。州政府に残されている検討期間は1年半しかない。
- どれだけ強力な権限をExchangeに賦与するのか。
- Exchange運用委員会のメンバー構成はどうすればいいのか。保険会社はどう扱うべきなのか。
- 州政府の機構上、どこに位置付ければいいのか。MA州は独立した州政府機関として位置づけようとしている。一方、WV州は保険委員長室の下部組織として位置づけようとしている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | President Looks for Broader Deal on Deficit Cuts (New York Times) |
連邦政府の債務が上限に到達してしまったため、Obama政権、連邦議会は、その解消策で下交渉を続けている。上記sourceによれば、Obama大統領と下院Boehner議長が密かに会って、解決策を模索しているという。
交渉のポイントは、増税と社会保障削減の組み合せが可能かどうか、である。Obama政権ならびに民主党は富裕層への増税を考えており、社会保障支出の削減は避けたいと思っている。一方の共和党は、増税を回避し、社会保障支出の大胆な削減を実現したいと思っている。
要はその中間点に落とせるかどうか、ということである。
仮に、Medicare、Medicaid、Social Securityに手が着くとなると、民主党にとっては大きな痛手となり、2012年大統領選に影響を及ぼすことになるだろう。
※ 参考テーマ「社会保障全般」
Source : | A Dozen States Slice Medicaid Payments To Doctors, Hospitals (Kaiser Health News) |
連邦政府の特別支援打ち切りにより、州政府がMedicaid支出抑制に走っていることは既に紹介した(「Topics2011年6月19日 Medicaid特別支援停止」参照)。上記sourceは、その続編のような性格である。気付きのポイントは次の2点。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」
- 右表、上記sourceに掲載されていた、各州が打ち出したMedicaid償還額削減率の一覧である。これをみると、各州の間で随分と大きな差があることがわかる。
- Medicaid償還額が削減されると、医療機関はその分をどこかで取り返す、という行動に出る。その結果、一般の民間保険に関する償還額が引き上げられ、やがては民間保険料が上がってしまう。つまり、Medicaid償還額を削減するということは、その分を企業や従業員、個人保険加入者の負担に付け回すということにつながる。
もっとも、税で負担するのも保険料で負担するのも、同じ州民や企業であるということには変わらない。変わるとすれば、保険料負担に伴う雇用への影響ということであろう。
Source : | PBGC Finalizes Rule on Termination of Underfunded Pension Plans in Bankruptcy (Deloitte) |
6月14日、PBGCが、年金プラン終了日の定義付けに関するルールを公表した。施行は、30日後の7月14日となる。
具体的には、というものである。
- 積立不足を抱える年金プランを運営している企業が、
- Chapter 11を申請した場合、
- その申請日をもって年金プランの終了日とする。
Chapter 11申請後も年金プランを運営していると、給付債務が膨らみ続け、結局はPBGCの負担が大きくなる可能性が高い。こうした事態を回避するためのルールである。
このルールは、元々PPA(2006)で法制化されており(「Topics2006年8月9日 Pension Protection Act of 2006 概要」参照)、2008年7月に施行の予定であったが、ようやくこのほど施行の運びとなったものである。
※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「PBGC/Chapter 11」
Source : | Boeing Labor Dispute Is Making New Factory a Political Football (New York Times) |
NLRBがBoeing社を訴えた件で、様々な対立軸を生み出されている(「Topics2011年4月25日 リベラル色を強めるNLRB」参照)。
当初は、『NLRB vs 経済界』であったのが、といった構図が絡まっている。
- 北部 vs 南部
- 民主党 vs 共和党
- 労働組合員 vs 非労働組合員
- 労組の権利 vs 雇用の創出
- Seattle vs Charleston
おまけに、Obama大統領が商務長官に指名したJohn Bryson氏は、先週の上院委員会での証言で、はっきりとNLRBによる訴訟を非難した(Washington Post)。 こうした事態に、Obama大統領は苦しい立場に追い込まれている。6月29日に行われた記者会見で、本件に関して、次のようなやり取りがあった。NLRBは独立機関で、判断は司法に委ねられることになる、と自らの立場を明確にしなかった。形式的には確かにそうだが、議長以外のNLRBメンバーはすべてObama大統領による指名であることは、誰でも知っており、我関せずでは済まされないことは明らかである。Julianna.
Q Thank you, Mr. President. I only have a two-parter. (Laughter.)
THE PRESIDENT: Thanks.
Q ・・・・・・・And also, one of the impediments to job growth that the business community repeatedly cites is the regulatory environment. So do you think that the NLRB complaint against Boeing, that this has created some of the -- is an example of the kinds of regulations that chill job growth, and also that you yourself have called “just plain dumb”?
THE PRESIDENT: ・・・・・・・ Now, one of the things that my administration has talked about is, is there, in fact, a bunch of -- a tangle of regulations out there that are preventing businesses from growing and expanding as quickly as they should. Keep in mind that the business community is always complaining about regulations. When unemployment is at 3 percent and they're making record profits, they're going to still complain about regulations because, frankly, they want to be able to do whatever they think is going to maximize their profits.
I’ve got an obligation to make sure that we’re upholding smart regulations that protect our air and protect our water and protect our food. If you’re flying on a plane, you want to make sure that there are some regulations in place to assure safety in air travel, right? So there are some core regulations that we’ve got to maintain.
But what I have done -- and this is unprecedented, by the way, no administration has done this before -- is I’ve said to each agency, don't just look at current regulations -- or don't just look at future regulations, regulations that we’re proposing, let’s go backwards and look at regulations that are already on the books, and if they don't make sense, let’s get rid of them. And we are in the process of doing that, and we’ve already identified changes that could potentially save billions of dollars for companies over the next several years.
Now, you asked specifically about one decision that was made by the National Labor Relations Board, the NLRB, and this relates to Boeing. Essentially, the NLRB made a finding that Boeing had not followed the law in making a decision to move a plant. And it’s an independent agency. It’s going before a judge. So I don't want to get into the details of the case. I don't know all the facts. That's going to be up to a judge to decide.
What I do know is this -- that as a general proposition, companies need to have the freedom to relocate. They have to follow the law, but that’s part of our system. And if they’re choosing to relocate here in the United States, that’s a good thing. And what it doesn’t make -- what I think defies common sense would be a notion that we would be shutting down a plant or laying off workers because labor and management can’t come to a sensible agreement.
So my hope is, is that even as this thing is working its way through, everybody steps back for a second and says, look, if jobs are being created here in the United States, let’s make sure that we’re encouraging that. And we can’t afford to have labor and management fighting all the time, at a time when we’re competing against Germany and China and other countries that want to sell goods all around the world. And obviously, the airplane industry is an area where we still have a huge advantage, and I want to make sure that we keep it.
※ 参考テーマ「労働組合」
Source : | Appeals Court Upholds Obama’s Health Care Law (New York Times) |
6月29日、控訴裁判所レベルとしては初めて、第6控訴裁判所が『PPACAの保険加入義務規定は合憲』との判決を下した。
判決は2対1で、しかも、共和党系が賛成に回っている。党派色のない判決であったといえる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | After New York, New Look at Defense of Marriage Act (New York Times) |
上記sourceでは、先に紹介したNY州の同性婚認可法案の成立(「Topics2011年6月26日 NY州:同性婚認可へ」参照)が、今後、各州の同性婚認可の動きに与える影響についてレポートしている。これを読んでいて、感じた点を3点。そうした感想を書いているうちに、Rhode Island州議会上院が、同性同士の"civil union"に、異性婚とほぼ同等の権利を賦与するとの法案(H. 6103)を可決したとの報道があった(6月29日)。これは下院が既に可決したものであり、州知事も署名する意向だ(New York Times)。
- "DOMA"は、あくまでも連邦法の効力が及ぶ範囲の問題である。同性婚を認めるかどうかという、州レベルの法制・判断にはほとんど影響力がない。しかし、逆にみれば、『いくら州レベルで同性婚を認めても、"DOMA"がある限り、連邦法が所管する事項については決して異性婚と同じにはならない』ということでもある。
- 州レベルの決定は、州の独自性を尊重するという側面と、連邦として、一つの国としての統一性を求められるという側面を併せ持つ。他州が認めた同性婚を承認するかどうか、というのは、各州にとって、結構重い判断である。特に、同性婚を認めないとしている州にとってはなおさらである。
- アメリカにおける結婚とは、タブーを破ってきた歴史のようである。親の承諾なしに結婚できる年齢、従兄妹同士の結婚、異人種間の結婚、等々。長い歴史の中で見れば、今の同性婚論議は、そうした歴史の一ページにしかすぎないのかもしれない。
収まらないのは同性婚推進派である。折角NY州で同性婚を認可したのに、これでは後退だ、差別の復活だと憤っているそうだ。確かに、RI州は、同性婚認可法案を検討してきたところであり、そうした立法の面からも後退したことは明らかである。しかも、同州議会は、上院、下院とも圧倒的多数で民主党がマジョリティになっている。この環境で同性婚を得られなかったことへの落胆は大きいのであろう。
州 同性婚の法的ステータス 州法 州最高裁判決 他州認可同性婚承認 認可法案審議中 異性婚同等権利賦与 Massachusetts A @ Vermont ○ Connecticut A @ Iowa ○ New Hampshire ○ Washington, D.C. ○ ○ New York ○ ○ California ○→×(→○)* ○ Rhode Island ○ ⇒ ○ Illinois ○ ○ Maryland ○ ○ New Jersey ○ ○ Oregon ○ Washington ○ Nevada ○ Hawaii ○ Wisconsin ○ Delaware ○ Maine ○→× △
* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 第9控訴裁判所で審議中
さらに、同性婚推進派を怒らせているのは、Obama大統領の態度がはっきりしないことである。先週、23日に行った大統領のスピーチで、DOMAに反対するということは明確にしているものの、『同性婚の是非を定めるのは伝統的に州政府であり、NY州政府にがんばってもらいたい』とのスタンスを示した(スピーチ該当箇所:下線部)。同性婚推進派は、『では大統領自身の同性婚に対するスタンスはどうなのかはっきりせよ』と迫っているのだが、それをなかなか明確にしない。
そもそも、Obama大統領は、同性婚に反対していた(New York Times)。推進派からすれば、Obama政権は同性婚を認めるようにちゃんと働いて行くのか、との疑問を持たざるを得ないのである。
※ 参考テーマ「同性カップル」