Source : | CVS strips Viagra, other top drugs, from insurance coverage (Reuters) |
つい最近覚えたばかりのPBM("Pharmacy Benefit Management")だが、一度知ってしまうとその関連の記事も目に付きやすくなる(「Topics2015年7月18日 Pharmacy Benefit Management」参照)。
そのPBMの上位2社が、2016年の保険対象リストから高額な医薬品を除去するという。
いずれも代表的な処方薬で販売額も巨額だが、近いうちにジェネリックの販売が予定されているようだ。PBM上位企業の保険対象リストからはずされると、これら新薬のメーカーにとっては大打撃だが、PBMはあくまで契約企業、加入者の便益、コストを代表して動くため、このような大胆な切り替えが可能となる。どこかの国の長期収載品のようなものは存続できないのである。これがあるから新薬、ジェネリックともに開発が進むのだ。
PBM 除外医薬品数 除外医薬品(例) Express Scripts 20 Qsymia CVS Health 31 Qsymia, Viagra, Avonex,
Plegridy, Invokana, Bydureon
※ 参考テーマ「医薬品」、「医療保険プラン」
Source : | 6.9 Million Women Would Directly Benefit from Raising the Overtime Salary Threshold to $50,440 (Economic Policy Institute) |
連邦政府が提案している残業代対象者拡大提案により、女性の対象者が大幅に増加する(新規に約700万人)との見通しが示されている(「Topics2015年7月4日 残業代対象者拡大提案」参照)。 現行制度下での対象者が350万人しかいないのに、そのうち女性が280万人を占めているというのも、どこか間違っているような気がするが、いずれにしても女性労働者の対象者が大きく拡大するようだ(「Topics2015年6月15日 残業代対象者が減少」参照)。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Mass. bill seeks to rein in prices of some drugs (Boston Globe) |
MA州議会で、薬価抑制法案が提出された。主な内容は次の通り。当然、製薬会社は、
- 製薬会社に次のコストの開示を求める。
- 研究開発費とそれに対する公的支援受取額
- 製造費
- マーケティング費用
- 他国における価格
- 広く利用されている処方薬のリストを作成し、高価格の処方薬については価格の上限を設ける。
といった理由で反対意見を表明している。
- 研究開発のインセンティブが削がれる
- コスト分析は不可能
- 管理コストが膨大になる
上記sourceによれば、類似の法案はNY, CA, PA, TX, NC, ORなどで提出されているそうだが、その内容は区々だ。実は、MA州は、州の医療費支出の伸び率を州の経済成長率(GSP)以下に抑えなければならないとの州法を制定している(「Topics2012年8月4日 MA州:医療費抑制法案」参照)。今回の処方薬価格の抑制策も、その州法の中で検討するよう規定されていたものである。それだけに、他州との比較では意気込みが異なる。また、他州も法案の行方とその効果について、関心を持って見ているに違いない。
こうやってMA州の医療費抑制策を眺めていると、どんどん日本の皆保険制度+診療報酬・薬価制度に寄って来ているように思える。
※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州」、「医薬品」
Source : | The Paradox of Unlimited Paid Leave (HRE Daily) |
一方、民間企業では、極めて寛容な有給病気休暇の提供が相次いでいる。Facebook、Google、Accenture、Johnson & Johnsonなどでは4〜5か月の有給病気休暇が提供されているが、先頃、Netflixは無制限の有給病気休暇を提供すると発表した。
本人が大病を患った場合に所得補償がされていると考えれば、それはそれでよい制度だが、普通の病気療養休暇、家族のケア休暇でそれだけ使うことはあるまい。
むしろ、アメリカ企業社会では、ボスに対して一所懸命働いていることをアピールするために、なかなか休暇を取らないという傾向がまだまだあるそうだ。上記sourceでは、制度を導入するのはいいが、その制度が有効に働くよう、企業文化を見直す必要があると主張している。
こういうところは、日米とも同じような文化だと感じる。日本企業でも、残業が多い従業員がよく頑張っていると思っている管理職はとても多い。そうした管理職の意識を変えなければ、WLBなど覚束ない。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Obama Drafts Order on Paid Sick Leave for Federal Contractors (New York Times) |
8月5日、有給病気休暇に関する大統領令の案文が、労働省の内部手続きを終えて大統領府に送付されたそうだ。本日、16日現在、大統領府のwebsiteで確認してみても、正式に発出されてはいない。
上記sourceによれば、主な内容は次の通り。大統領令の発令日及び施行日は明らかになっていない。
- 連邦政府と取引のある企業、またはその下請け企業に、有給病気休暇(Paid Sick Leave)を提供するよう求める。
- 有給病気休暇は、最低年56時間。
- 利用されなかった有給病気休暇は、年を越えて繰り越しできるようにする。
大統領令の効果の程だが、上記sourceでは次のような数字が挙げられている。連邦政府との取引のある企業の多くは、既に有給病気休暇を提供している可能性が高く、今回の大統領令によって新たに有給病気休暇を提供することになる企業は限られているようだ。例えば、最低賃金の引き上げに関する大統領令によって影響を受けたのは、約30万社を超える小規模企業であったという(「Topics2014年2月14日 Obama大統領の賃上げ要請」参照)。この30万社は多いと感じるかもしれないが、その従業員数は例えすべての企業が10人雇用していたとしても300万人である。
- 民間企業従業員のうち、39%、4,400万人が有給病気休暇を提供されていない。
- 民間企業従業員のうち、報酬上位10%の86%が有給病気休暇の提供を受けている。
- 報酬下位10%では22%しか提供を受けていない。
- サービス産業の従業員では、39%しか提供を受けていない。
大統領、議会民主党にとっては支持を得やすい政策だが、その効果の程は知れている。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Number of Uninsured Has Declined by 15 Million Since 2013, Administration Says (New York Times) |
8月11日、National Center for Health Statisticsが公表され、2015年1〜3月の無保険者の状況がわかった。PPACAによる無保険者減少効果は確かにあったことが証明されている。※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
- 全米で無保険者は2900万人。2013年の4,480万人、2014年の3,600万人から顕著に減少している。
- これに伴って、無保険者割合は全米、全人口比で9.2%。2013年の14.4%、2014年の11.5%から低下し、一桁台となった。
- 18〜64歳の現役世代でも、無保険者割合は13%と大きく低下した。
- 興味深いのは、州立Exchangeを設けた州の方が無保険者割合が低いことである。
Source : | SEC Adopts Rule for Pay Ratio Disclosure (Securities and Exchange Commission) |
8月5日、ようやくCEOのPay Raio算定に関するルールが決定した。2010年に成立した"Dodd-Frank"法から5年もかけてようやく、である(「Topics2015年4月13日 Pay Gap拡大」参照)。しかも、適用は2017年1月1日以降開始となる決算年からであり、実際に開示された数字が投資家の目に触れるようになるのは、法律制定から8年経ってからとなる。
それでもSECメンバーの意見は賛成3、反対対2で、きわどい採決であったそうだ(Pensions & Investments)。
計算ルールの概要は次の通り。なんともゆるゆるのルールであり、おそらく同業同士でも比較は難しいだろう。まあ、それが企業側の狙いでもあった訳だが・・・。
- Pay Ratio = CEOの全報酬/CEOを除く全従業員の全報酬の中位数
- 従業員の全報酬の中位数を算出する際、企業側に一定のルールのもとでの選択を認める。
大きな報酬体系の変更がない限り、中位数にあたる従業員は3年に1回決めるだけでよい。
- 現行の経営幹部報酬額の算出方法と同じにする
- 報酬支払い記録または税務計算書を利用する、等々
- 全従業員には、国内外のグループ企業、パートタイマーも含まれる。ただし、海外の従業員で報酬データを持ち出せない国で働いている場合には除外できる。
- 算出根拠、計算仮定などは開示しなければならない。
- 小規模企業等は開示義務を負わない。
とはいえ、わかりやすい指標ではあるので、注目を浴びることは必至である。今でも、民間調査会社に寄れば、Pay Ratioの最高値はCVS Health Corpで422、次いでGoodyear 323、Walt Disney 283と続く(Los Angeles Times)。全体で見ても1990年代以降、大幅に上昇しており、アメリカ社会の格差の象徴のように扱われている(「Topics2015年4月13日 Pay Gap拡大」参照)。
本来の法の主旨は、経営のガバナンス、パフォーマンスとのバランスをチェックするための指標であったはずなのだが、まったく異なる政策課題として注目されることになるだろう。
※ 参考テーマ「経営者報酬」
Source : | New York health exchange plans get average 7.1% rate bump (Modern Healthcare) |
New York州(NY)の2016年Exchange保険料(個人プラン)は平均7.1%アップとなることが公表された。先に発表のあったCA州の4%アップを大きく上回ることになった。
NY州のPress Releaseによると、申請ベースでは10.40%アップであったものが認可ベースでは7.09%と、州政府による精査のプロセスで3%ポイント強削減されたようだ。実際、個別保険会社毎に見てみると、2桁アップ申請がかなり抑制されているのがわかる。
また、2016年の特徴として、2015年に保険料を大幅に上げたために加入者を失ったプランが保険料を下げてきている、という点が挙げられる。
州全体としてはこのような形になっているが、New York Cityに限ってみれば、保険料アップ率は2年連続で極めて小さいものに収まっている。現時点でわかっている市の保険料の中でも、アップ率は群を抜いて低い。 注目のCO-OPであるHealth Republicは、20%アップの申請をしてそのまま承認されている。Health Republicは19%のシェアを占めているが、大きな赤字を計上している(「Topics2015年8月5日 CO-OPs初年度は散々」参照)。今回の大幅保険料アップは赤字幅の縮小を目的としている。つまり、最初の2014年の保険料の設定が低すぎたのである。
ただ、保険料を上げれば加入者の減少を招くことになる。そうすると、収入は減るわけで、単純に赤字が減少するとは限らない。さらに、低保険料が魅力であったはずのCO-OPの保険料が大幅に引き上げられれば、その魅力は半減してしまう。いずれに転んでも厳しい状況であることは変わらない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/NY州」、「CO-OP」、「無保険者対策/州レベル全般」