Source : | The State Pensions Funding Gap: Challenges Persist (The Pew) |
2013年時点での州政府年金の積立不足は$968Bと、前年にくらべて$54B拡大した。 もちろん、最近の株式市場の活況が反映されていないため、資産が過小評価となっている可能性はあるものの、一方で州政府の財政難から拠出を一部延期しているところもあり、財政面が厳しい状況にあることは変わりない。
※ 参考テーマ「地方政府年金」
Source : | Report: ACA plans have a third fewer providers than employer-based plans (Washington Post) |
California, Florida, Georgia, North Carolina, Texasの5州で、Exchangeで提供されている保険プランと、その外にある民間保険プランを比較したところ、Exchangeプランが契約している医療機関・医師の方が1/3ほど少ない、という結果になった。これはもちろん、保険料を抑制するために医療機関networkを絞った結果である。
Exchange保険プランが本格施行となる直前や施行後には、提供されているnetworkにかかりつけ医が入っていないなどの不満が渦巻いていた(「Topics2014年7月25日 ネットワーク規制強化」参照)。しかし、絞り込みを止めさせるようなうまい手法がなかなか見つからなかった。
昨年、Kaiser Family Foundationが世論調査を実施したところ、との結果を得ている。
- Exchangeプラン購入者は、一般の保険加入者よりも積極的に『絞り込んだnetwork+低く抑えられた保険料』の組み合わせを選択している。
- 一般的に、高齢者、高所得者は広いnetworkを好む。
- 若者、低所得者の選好は、ほぼ半々。
以前紹介した通り、アメリカ社会でもnetworkは絞り込んだ方がいいんだという意見はある(「Topics2014年3月1日 ネットワーク絞込み有益論」参照)。管理人自身も不精なせいか、この病気ならこの病院、と決められている方が楽だし、医療機関側の成果もはっきりと評価できると思う。
それでも選択肢にこだわるのがアメリカ人なのだろう。
※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Prescription Calls for Consolidation (Workforce.com) |
アメリカ人が市場機能を活用しようとする意欲はすごいと思う。上記sourceを読んで初めて知ったのだが、アメリカには"Pharmacy Benefit Management"という業態があるそうだ。
こうした企業は、雇用主としての企業や保険会社、被保険者の代理人として、などの役割を担っている。
- 処方薬の購入契約
- 価格交渉
- 処方薬の配達
- 処方の適正化
処方薬の価格上昇が著しく、今後の市場規模も2014年の$100Bから2020年には4倍の$400Bにまで拡大するとの見通しが立っている。企業や保険会社とすれば、こうした処方薬コストを抑制するために、処方薬のプロ集団を雇って節約しようという訳だ。
上記のWikipediaの記事によれば、アメリカでは約60社がこの"Pharmacy Benefit Management"業務を行っている。それら企業のリストもちゃんとあるのだが、最近、買収・経営統合が盛んに行われているとのことである。
再びWikipediaの記事によれば、この業界の上位5社は次の通りとなっている。これは2012年時点でのランキングだが、既に買収や経営統合の結果を反映したものとなっている。さらに、上記sourceによれば、当時4位のUnitedHealth社は、5位のCatamaran社を買収する計画を発表し、当局の承認を得たうえで今年後半にも実現したい模様である。この買収が実現すると、年間で3,500万人分、40億件の処方を扱う企業となり、市場の1/5を占有する企業となる。
- Express Scripts (acquired Medco Health Solutions)
- CVS Health (formerly CVS Caremark)
- Prime Therapeutics, a PBM owned by and operated for a collection of state Blue Cross Blue Shield plans
- United Health / OptumRx
- Catamaran Corporation (SXC + Catalyst)
こうした経営統合、寡占が進むと市場競争が減退するのではないかとの懸念が生じて然るべきだが、以下の理由により競争が減退することはないとされている。本当にアメリカの企業、社会はダイナミックだ。
- FTCは、この市場の競争度合いを"vigorous"と評価している。
- 上位2社の市場占有度がダントツに高く、4,5位の経営統合だけでは大きな影響がない。
- 上位各社毎に異なる得意業務分野を持っている。
1.⇒C型肝炎の処方薬を大量に扱っている。
2.⇒処方薬に関する総合的なサービスに強い。
4.⇒データ収集・分析に強い。
5.⇒被保険者に関するデータ分析に強い。- 市場規模が急速に拡大しており、新規参入者、小規模業者の成長余地が大きい。
※ 参考テーマ「医薬品」、「医療保険プラン」
Source : | Remarks by the President at White House Conference on Aging (The White House) |
7月13日に開催された会合で、Obama大統領は、労働省(Department of Labor)に対し、州政府で検討が始まった州立退職貯蓄プラン(「Topics2014年12月13日 萌芽期の州立退職貯蓄プラン」参照)を支援するための方策について年末までにまとめるよう指示した(上記source下線部)。
退職所得プランを持たない労働者に対する支援策として、Obama大統領は、昨年の一般教書演説で"myRA"の創設を訴え、その直後、財務省案も公表された(「Topics2014年2月2日 "MyRA"提案」参照)。しかし、連邦議会での検討は遅々として進まないため、萌芽期ではあるものの、州政府独自のプラン設計が進んでいる州立退職貯蓄プランを連邦政府として支援する方向に転換したということである(Forbes)。
このようにまとめてしまえば、大統領の単純な方針転換、ということに過ぎないが、ここに至るまでには連邦政府内に抵抗があった模様だ。
労働省(DOL)は、加入者保護の観点から、極めてERISAを重視している。企業の拠出、一体運用がある以上、ERISAによる事業主責任、受託者責任を課すことを絶対視していた。一方、州政府側は、州独自の政策として推進しようとしているのに連邦法であるERISAの網がかけられるのは困るし、何よりもERISAに基づく受託者責任を事業主に求めれば大幅なコストアップにつながるため、事業主の参加が得られなくなってしまう(Brookings)。
この対立の構図を解消すべく、Obama大統領は、DOLを押さえ込み、州政府を立てることとした。州政府の取り組みを進めなければ、中小企業の従業員の退職貯蓄プランは普及しないからである。このアプローチは、医療保険におけるPPACAのやり方とは全く逆のアプローチである。
さて、Obama大統領の任期中に何処まで広がることになるのか。
なお、各州における検討状況は、Pension Right Centerがまとめている。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「DB/DCプラン」、「企業年金関連法制」
Source : | Multiemployer funds, PBGC face hurdles with partition (Pensions & Investments) |
財政状況が悪化した複数事業主年金プランへの救済策として、昨年12月、複数事業主プラン給付削減法が成立、発効した(「Topics2014年12月12日(2) 複数事業主プラン給付削減法案(2)」参照)。
その際に紹介したのは給付削減のみだったが、上記sourceによれば、プランにとっての選択肢は2つあるようだ。もちろん、両者の組み合わせも可能とのことだ。上記sourceでは、Partitionの新ルールは次のようになっている。
- Suspension:年金給付の削減
- Partition:経営難の事業主グループから健全経営企業の加入者を分離させる。
Partitionの旧ルールでは、経営難事業主グループの給付債務をPBGCが引き受け、健全事業主グループの給付はそのままとなっていた。新ルールでは、健全グループ加入者の給付水準も保証水準の110%まで引き下げなければならないため、選択に至るまでのハードルは高い。
- 20年以内に基金が枯渇する惧れのあるプランについては、給付債務の一部をPBGCが肩代わりする。
- その際、健全経営企業加入者への給付水準については、PBGC保証水準の110%を維持する。
- 110%への給付引き下げについて、財務省の承認を得なければならない。
さらに、PBGCの複数事業主プランの保証事業の財政状況は極めて厳しい(「Topics2015年3月17日 複数事業主プランの支払い保証機能」参照)。新Partitionルールでは、PBGCの財政状況を悪化させないという条件がついており、PBGCスタッフの計算では、年間$60M、6件くらいしか対応できないと見られている。
財政状況が厳しい中では、PBGCの対応件数も限られる。それでも、20年以内に基金が枯渇する年金プランの加入者150万人のうち、Suspensionだけなら60万人しか救済できないのが、Partitionも組み合わせることで90万人まで救済できると見込まれている。
※ 参考テーマ「PBGC/Chapter 11」、「DB/DCプラン」
Source : | UAW, Detroit Three could revise healthcare packages in talks (Reuters) |
UAWとBig 3の労使交渉が本格化しているそうだ。現在の労使協定の期限は9月14日となっている。
労使交渉のメインテーマは次の2つ。1点目は、大企業の恵まれた保険プランの行き過ぎを抑えようとする政策目的だが、その一番の対象がUAWとなるところが皮肉である。クリントン大統領候補はどのように対応するのか、というのも少し興味のあるところである。
- 医療保険プラン
PPACAの規定に基づき、2018年から"Cadillac tax"が施行される(「Topics2014年10月16日 Cadillac Taxへの備え」参照)。UAWが結んでいる医療保険プランは課税対象となることは確実で、給付内容、労使の負担の見直しなど、交渉の議題は盛り沢山だ。
- 報酬格差の縮小
リーマンショック後の大不況対応で、当時の現役組合員の時間給はおよそ$28となっているのに対し、2011年以降の新規採用者については時間給が$16〜19と低く抑えられている。この二層になっている給与構造の改善が課題となっている。
2点目は、苦境を乗り切るためのやむを得ない措置とはいえ、労働組合としては耐え難い給与構造であろう。上記sourceで紹介されている調査によれば、Big 3の労働コストは各社によってかなり異なっている。そうした経営状況の違いの中で、同じUAW組合員の給与をどのように変えていくのか、UAWとしても難しい選択を迫られる。そうした意味で、『大不況』は今でも影を落としているのである。
- GM:$58/h
- Ford:$57/h
- Fiat:$48/h
※ 参考テーマ「労働組合」、「医療保険プラン」、「ベネフィット」
Source : | Hillary Clinton's big economic speech (Vox) |
7月13日、クリントン氏は大統領候補として、経済政策の基本方針を公表した。以下、ポイントとなりそうなフレーズをまとめておく。全体として思いっ切りリベラルへと舵を切っている。最後の2つは、言うは易しで、本当に実現するためにはどうやってやるのか、関係者の同意も必要となってくる。これまでクリントン氏は金融機関からの寄付を大量に受け容れてきただけに、『制度に落とし込む際に本気度が試される』と既に見透かされている(POLITICO)。
- 懸命に働く国民の所得を引き上げ、中間層としての暮らしができるようにする。これが自分の大統領としての最大のミッションである。
- そのためには、強く(strong)、公平で(fair)、長期の(long-term)成長(growth)を実現しなければならない。それが雇用を生み出す。
- 中小企業を代表する大統領でありたい。中小企業の雇用を増やすため、規制緩和、税制改革を行う。
- アメリカへの投資を喚起する税制改革を行う。
- 移民制度改革を実現する。
- インフラ投資銀行を創設する。
- 再生可能エネルギーの開発を推進する。
- 仕事と子育ての両立ができるよう環境整備を行う。特に、質が高くて購入可能な子育てサービスを充実させる。
- 公平な賃金、公平なシフト、家族ケア休暇、有給病気休暇、子育て休暇を実現させる。
- 最低賃金の引上げ、残業代対象者の拡大(「Topics2015年7月4日 残業代対象者拡大提案」参照)を実現する。
- PPACAを維持する。さらに、自己負担を減らし、処方薬の価格を抑制する。
- 公的年金制度を強化し、将来のための貯蓄を奨励する。
- 企業の従業員への分配(報酬+ベネフィット)を奨励する方策を提案する。
- 勤労世帯の減税、企業経営者の応分の負担、利子課税の見直しなどの所得税改革を行う。
- 労働組合活動へのてこ入れ。
- 雇用の拡大、賃金の上昇、国家安全保障の確保ができない限り、貿易交渉から退出する覚悟が必要。
- 教育への投資が必要。
- 短期的視点の企業経営を長期的視点に改め、成長のための設備投資、人材投資、社会的責任の遂行に資源を振り向けるよう促す。
- 従業員訓練費用について、一人当たり$1,500の税額控除を提案する。
- 雇用増につながる長期的な設備投資を促進するようなキャピタルゲイン税制に改める。
- 金融機関が過度なリスクを抱え込まないように制度改正する。
- 財政の持続可能性を確保するため、医療費の抑制を図る。
また、医療費の抑制や診療時の自己負担など、これまでどれだけ議論してきてもなかなか実現できないテーマである。
まあ、大統領選のまだまだ序盤であり、具体的な政策論争はこれから本格化する。その時を楽しみに待っていよう。
※ 参考テーマ「大統領選(2016年)」