Source : | Health and Access to Care and Coverage for Lesbian, Gay, Bisexual, and Transgender Individuals in the U.S. (The Henry J. Kaiser Family Foundation) |
上記sourceは、LGBTの生活環境、所得水準、健康状況、保険プラン加入状況などをまとめるとともに、最近の最高裁判決等のインパクトをまとめたものである。LGBTの置かれている状況を理解するには適切な資料だと思われる。
その中で、ちょっと気になった箇所をいくつかピックアップしておく。いずれにしても、"T"は別扱いにして物事を考えた方がよさそうである。
- Spectrum of Sexual Identity
アメリカ社会で、MaleとFemaleだけでは性別認識が済まなくなっていることを象徴する用語だと思う。
- LGBTの人数規模
National Health Interview Survey (NHIS) によれば、成人(18歳以上)の2.3%、約520万人以上が"LGB"と自認している。
Gallupの調査によれば、成人の3.4〜3.6%、約900万人が"LGBT"と自認している。- "T"の人数規模
全人口の0.3%、約70万人との調査がある。また、貧困率、無保険者割合が高い。
- "LGB"の嗜好
LGBの飲酒率、喫煙率は高く、ストレス障害の頻度も高い。
※ 参考テーマ「LGBT」
Source : | Half Of Nation’s Hospitals Fail Again To Escape Medicare’s Readmission Penalties (Kaiser Health News) |
PPACAで規定されているMedicare Penaltyが4年目を迎える。Medicareでは、5つの疾患(heart attack, heart failure, pneumonia, chronic lung problems, elective hip or knee replacements)で入院した患者が退院後1ヵ月以内に再入院した割合によって、診療報酬が減額されることになっている。
このほど、2015年10月〜2016年9月のMedicare診療報酬が公表された。概要は次の通り。Medicare改革は厳しいpenaltyの中で進められている。
- 減額された金額は全部で$420M。
- Penaltyを受けた病院数は2,592。
- Penaltyを受けた病院の減額率は平均で0.61%。最高の3%減額となった病院は38、1%以上減額は506(3%を含む)となった。
- 州内の3/4以上の病院が減額となった州は、Alabama, Connecticut, Florida, Massachusetts, New Jersey, New York, Rhode Island, South Carolina, Virginia, the District of Columbia。
- 全米での再入院率は低下しているものの、依然として約1/5は1ヵ月以内に再入院している。
※ 参考テーマ「Medicare」
Source : | Business-Labor Coalition Seeks to Repeal ‘Cadillac Tax’ (Society for Human Resource Management) |
7月28日、The Alliance to Fight the 40のキックオフ記者会見が開催された。これは、労使でCadillac Taxを廃止に追い込もうという運動である。
Towers Watsonの調査では約半数が課税対象となり、その後も急速に増えていく見通しとなっている。
そもそもCadillac Taxの概要は次の通り。なお、上記sourceによると、HSA従業員拠出分を含めるかどうかはIRSの裁量によるものであり、今のところ財務省は含めるとの見解を示している。
- 課税対象プラン:個人給付 $10,200、家族給付 $27,500(thresholds)以上のプラン
- 課税下限の給付額(上述)は物価スライド
- 課税方法:(プラン給付−thresholds)×40%
- 給付額の算定:健康管理プログラムを含めたプラン保険料(企業+従業員)+HSA従業員拠出分
PPACAの企業関連規定は、着々とこなされてきて、いよいよ最後のハードルがやって来るという段階である(「Topics2010年3月27日 医療保険改革法:企業への影響」参照)。影響を受ける企業とその労働組合で、何とか課税を回避しようという訳だが、これがうまくいかなければプラン給付の縮小を余儀なくされることになる。
実は、こうした『課税⇒給付縮小』というプロセスが必要だという主張も行われている。上記sourceで紹介されているBrookingsの論文は、『Cadillac Taxが廃止されれば、過剰診療や非効率診療がなくならない。その結果として、医療支出の伸びを抑えることはできなくなる』と、Cadillac Taxの存続を求めている。
これまでの経緯からいって、おそらく民主党政権であればCadillac Taxを廃止することは難しいだろう。今回の労使共闘が来年の大統領選まで念頭において組まれているとは思えない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」
Source : | Competition and Choice in the Health Insurance Marketplace Lowered Premiums in 2015 (HHS Press Release) |
7月30日、HHSは、Exchangeにおける競争度合いと保険料の動向について分析した結果を公表した。分析対象は、2014年、2015年ともHealthCare.govを利用して加入登録手続きを行った35州である。大半が連邦立Exchangeということになる。
結果のポイントは次の通り。まあ、初年度から2015年にかけてはこうだったでしょう、という程度に捉えておいた方がよさそうだ。この傾向が続くのだとすれば、2016年も保険料は大幅に抑制されなければならないことになる。しかし、一般的な見方は大幅に保険料が引き上げられるのではないか、というものであり、方向が真逆になってしまう(「Topics2015年7月7日 保険料大幅引き上げか」参照)。
- 2015年、加入申請者のうち、保険会社の選択肢が3つ以上あった者の割合は86%。2014年の70%から大幅に上昇した。
- 1 countyあたりの保険会社数は、2014年の2.6社から2015年は3.5社に増えた。
- County別にみると、保険会社数が増えたのが59%、減ったのが8%、不変が33%であった。
- Silver Planの下から2番目の保険料を比較すると、保険会社数が増えたところでは保険料が平均2%低下したのに対し、保険会社数が減ったところでは平均12%上昇している。
- 同じくSilver Planの下から2番目の保険料についてみると、保険会社が増えたcountyの保険料は減ったcountyよりも伸び率が8.4ppt低くなる。
また、保険会社が1社増えると、保険料増加率は2.8ppt低下する。
やはり、保険会社数ばかりでなく、Exchangeや州政府の権限の強弱も保険料抑制の大きな要素なのではないだろうか(「Topics2015年7月29日 CA州:2016年保険料4%増」参照)。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル」
7月30日、HHSのOffice of Inspector Generalは、全米23の"Consumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"に関する監査報告書を公表した。上記sourceはその抜粋(管理人による)である。
これをみると、活動初年度である2014年のCO-OPsの成果は惨憺たるものであったことが明らかになる。CO-OPsは連邦政府から設立や運営のための借り入れを行っており、それぞれ5年、15年で返却しなければならない。また、途中で立ち行かなくなった場合でも返済義務は残る。よほど思い切った立て直し策を講じない限り、CO-OPsの将来は暗い。
- 13のCO-OPで、実際の加入者が目標を大きく下回っている。1割にも満たなかったところが5つもあった。(⇒ Table 1)
- 経常黒字となったのはたったの1つだけ(ME州)。IA/NEのCO-OPは、昨年末に破綻が明確となり、2015年3月に解散している(「Topics2015年1月16日 IA州:CO-OP破綻」参照)。(⇒ Table 2)
- 当初目標の5倍もの加入者を得たNY州CO-OPでも、赤字となっている。ほとんどのCO-OPsが『保険料収入<診療報酬支払い』となっており、保険料の見積もりが甘かったことが窺われる。また、管理コストも割高だ。
- 2015年も半数近くの10のCO-OPsが赤字を予測しており、今年も財政的に厳しい状況が続く。(⇒ Table 3)
※ 参考テーマ「CO-OP」
Source : | Law requiring state workers to contribute to pensions is constitutional, Michigan Supreme Court rules (MLive.com) |
7月29日、Michigan州(MI)の最高裁は、2つの判決を下した。州政府を含めた労組にとっては、ダブルパンチを食らった形だ。
- MI州政府職員年金プラン
2011年に制定された州法は合憲である。新制度では、州政府職員にの選択を求めていた。
- DBプランへの加入を継続する代わりに4%の本人拠出を行う
- DCプランに移行する
州職員労組は本人拠出は州人事院で定めることであり、法律で定めるのは州憲法違反だと主張してきたが、この日、州最高裁は合憲であるとの判断を示し、控訴裁判所の判断を覆した。
- Right to Work
2013年1月より施行されたMI州"Right to Work"は、州政府職員にも適用される(「Topics2012年12月13日 MIがRight to Work州に」参照)。
ちなみに、現在のMI州は、州知事、州議会上下両院とも共和党が押さえている。
※ 参考テーマ「地方政府年金」、「労働組合」
Source : | Is the California ACA exchange a model for the nation? (Los Angeles Times) |
上記sourceは、Covered CAが保険料増額の抑制に成功した理由を紹介している(「Topics2015年7月29日 CA州:2016年保険料4%増」参照)。とにかく、Covered CAが(保険プランの)アクティブな買い手として行動していることが、今回の保険料抑制につながったとしている。
- Coverd CAは、そこで販売できる保険プランを選択している。2014〜2015年、Covered CAは、高い保険料、不適切な医療機関ネットワーク、管理能力の低さなどからいくつかの保険プランの受け入れを拒否した。連邦立Exchangeや他州のExchnageは、基本的に申請があれば受け容れている。
- Covered CAは、保険料や医療機関ネットワークを巡って、保険会社と直接交渉を行っている。
- 免責額など保険プランの特徴を決定付けるような指標について、標準設定を行い、加入者の選択を容易かつ安心できるものにしている。
- Covered CAは、保険プランを提供する保険会社に『医療の質の改善』運動に参加するよう求めている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/州レベル全般」
Source : | Companies have found something to give their workers instead of raises (Washington Post) |
リーマンショック後の景気回復過程で、賃上げよりもいわゆるベネフィットの部分の伸びの方が上回っているそうだ。しかも、ベネフィットの中でも医療保険や年金プランを手厚くするのではなく、従業員、特に若い従業員の関心が高いところにつけている。
キーワードは、ということである。事例として、ある企業が売上目標達成を祝して、ボーナスなどの金銭報酬を従業員に配るのではなく、休暇をたくさん賦与することとした。
- Time
- Flexibility
労働市場がタイトになる中で、従業員を引きとめておく方策として『時間』が注目されている。
※ 参考テーマ「ベネフィット」、「Flexible Work」、「労働市場」
Source : | Highway bill gives overfunded DB plans some options (Pensions & Investments) |
7月29日、連邦議会下院は、通称"Highway Bill"(Surface Transportation and Veterans Health Care Choice Improvement Act of 2015, H.R.3236)を圧倒的多数で可決した。その後、7月30日に上院で可決、31日に大統領が署名、成立した(Pension & Investment)。
現行法では、DBプランに超過資産がある場合に、その資金を退職者医療保険プラン、生命保険プランに移管することが可能となっている。この規定は2021年までの時限法だが、今回の法案ではこれを2025年まで延長することが盛り込まれている。"Extends through 2025 the authority for transfers of excess pension assets of a defined benefit plan to a retiree health benefits account."具体的には、IRC §420(b)に基づき、退職者医療保険プランに資産を移すことができる。
- 給付債務額の125%以上の資産を有している場合、
- 年1回に限り、
上院でもおそらく可決されるのであろうが、この移管可能規定は1990年に法制化されたものである。当時はDBプランは真っ盛りで、積立状況も大変良かったが、現在では大手企業平均でようやく8割程度にしかならない(「Topics2015年4月15日 2014年の大企業DBプラン」参照)。しかも、そもそもDBプランを凍結・廃止して行こうという動きが活発化しており、どれだけこの規定延長の恩恵に預かろうとする企業がいるのか、という感じがする(「Topics2015年3月13日 DBプラン売却急増」参照)。
それにしても、DBプラン関係の法制は、すっかり道路整備法制とセットになってしまったようだ(「Topics2012年7月5日 PBGC保険料大幅引上げ」参照)。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「企業年金関連法制」