7月31日 地方政府年金財政の良悪 
Source :Moody's: Wide Variation in Pension Metrics for 50 Largest Local Governments Continues (Moody's Investors Service)
文字通り、地方政府が運営する年金プランの財政状況は、良い所と悪い所が大きくかけ離れている。

上記sourceでは、債務残高の上位50の自治体について、年金プラン積立不足額のプラン収入額に対する割合(Moody's Adjusted Net Pension Liabilities, ANPLs)を使って紹介している。 こうやってみると、いかにChicago市の状況が抜きん出て悪いのかがわかる(「Topics2015年7月28日 Chicago年金改革に違憲判決」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金

7月30日 NJ州:年金拠出先送り 
Source :N.J. Pension Funds Try New Legal Tack in Pension Battle (Bloomberg)
NJ州政府は、さる6月末の支払期限である年金拠出$2.25Bのうち、$1.6Bの拠出を先送りにした。州政府の財政が厳しい中、年金プランへの巨額の拠出はできない、という理由である。

実は、この$1.6B拠出先送りについては、2月に州地方裁で否定されていた(「Topics2015年2月27日 NJ州政府年金ピンチ」参照)。しかし、その後の上告で、6月9日、州最高裁から『拠出の先送りは可能』との判断を得ることができたのである。

今回の拠出先送りで一息ついたのは州政府財政であり、年金プランにとっては積立不足額が大幅に拡大してしまったことになる。やはり、年金プランそのものの見直しが不可欠である。

※ 参考テーマ「地方政府年金

7月29日 CA州:2016年保険料4%増 
Source :Defying predictions of skyrocketing premiums, Obamacare rates in California to rise 4% in 2016 (Los Angeles Times)
CA州のExchangeであるCovered Californiaの2016年保険料は、平均4%増となることが発表された。2016年の保険料は大幅な上昇が予測されている中で、さすがPPACAの優等生CA州は、その伸びの抑制に成功している(「Topics2015年7月7日 保険料大幅引き上げか」参照)。

上記sourceで紹介されているCoverd California関連の数字は次の通り。 このように低い伸び率に抑えられた理由として、次の2点が挙げられている。
  1. 保険会社の再参入が10社、新規参入が2社となり、競争度が高まった(「Topics2013年5月26日 CA州Exchange:保険料提示」参照)。

  2. 標準的な窓口負担額、免責額などを定め、加入者にとって保険プランを選択しやすいように単純化した。これにより、加入保険プランの変更が容易になった。
2016年のExchangeにとって朗報ではあるが、全米でこの流れが広まるかどうか、関心を持って見守りたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

7月28日 Chicago年金改革に違憲判決 
Source :Judge rules Chicago pension reform law is unconstitutional (Reuters)
7月24日、Illinois州地方裁判所(Cook County)は、Chicago市が2014年に決定した年金改革法は州憲法違反であるとの判決を下した(「Topics2014年6月12日 Chicago市年金改革法案成立」参照)。

Chicago市職員年金(4プラン)の積立不足額は$20B、Illinois州(IL州)政府職員年金の積立不足額は$105Bもあり、何回も紹介している通り、全米で最悪の財政状況にある。その年金改革法が頓挫するようでは、将来の見通しは厳しい。Chicago市は、年金改革が行われなければ10〜13年で年金基金は枯渇するとしている。

Chicago市はIL州最高裁に上告するとしているが、その州最高裁は今年5月に全員一致でIL州年金改革法に違憲判決を下しており、今回の判決がひっくり返る可能性は極めて低い(「Topics2015年5月12日 IL州年金改革に違憲判決」参照)。

IL州、Chicago市はどんどん手詰まり状態に追い込まれており、格付け機関の評価も低下の一途を辿っているようだ(「Topics2015年5月27日 IL州は手詰まり」参照)。このままでは、大増税を断行しない限り、州・市ともに年金プランが崩壊していくのを見守ることになってしまう。

※ 参考テーマ「地方政府年金

7月27日 Transgenderの保険プラン 
Source :Despite Obamacare Promise, Transgender People Have Trouble Getting Some Care (Kaiser Health News)
PPACAの最大の特徴の一つに、保険加入前の病歴、健康状態を理由に保険プラン加入を拒否されない、という点がある。しかしながら、"transgender"にとって、この大原則が守られていない、というのが上記sourceの内容である。

そうした現象が起きてしまう一つの理由は、性別を「男」、「女」の2種類のみに分けていることにあるという。我々は単純にどちらかにチェックすることに抵抗はない。ところが、"transgender"にとっては単純な選択はできないのである。

例えば、女性から男性に転換した人の場合、今が「男」だからといって"male"にチェックしてしまうと、保険プラン上は男になってしまい、子宮摘出手術が終わっていないのに といった問題が起きてしまうそうだ。

解決のためには"transgender man"とか"transgender woman"とかいった欄を設けて選択できるようにしなければならないという。

保険プランとしてはこれで解決ということになるのかもしれないが、先に紹介した『職場の性別』では問題が残る(「Topics2015年7月22日 職場の性別」参照)。職場と本人が話し合ったうえで、本人が職場で転換先の性別で働き始めた時が性別の転換のタイミングであるべき、との考え方だった。ところが、上記のような例をみれば、本人が女性として転換した性別で働き始めたとしても、肉体的、医療的には元の性別で見る必要があるということになる。

性転換には相当の時間がかかるということをよく認識しなければ、職場での性別の問題は扱えない。これはまじめに、性別を男女だけでなく、いくつかの類型に分けておかなければいけないのかもしれない。

※ 参考テーマ「LGBT」、「医療保険プラン

7月26日 DCも$15/hに名乗り 
Source :In nation’s capital, $15-hour minimum wage expected to appear on 2016 ballot (Washington Post)
7月22日、Washington D.C.の選挙管理委員会は、2016年11月の住民投票で、最低賃金を$15/hに引き上げるかどうかの住民投票を行うことを発表した。

もしも賛成となった場合、 という形になる。特に、チップ従業員については、大きな構造変革となる。現在の最低賃金はチップを含めて最低賃金を満たせばよくなっているのが、チップを除く本給で最低賃金を満たさなければならなくなるので、インパクトが大きくなることは間違いない(「Topics2015年2月8日 Tipped Minimum Wage」参照)。
一般最低賃金Tipped Minimum WageMaximum Tip Credit備 考
連邦レベル$7.25/h$2.13/h$5.12/h$30/M以上
D.C.(現在)$10.50/h$2.77/h$7.73/h-
D.C.(2025年)$15.00/h$15.00/h--
本給だけで見れば、5倍以上の引き上げが必要になる。

最低賃金$15/hは、いよいよ東海岸に飛び火しそうだ(「Topics2015年5月24日 LAも$15へ」参照)。

※ 参考テーマ「最低賃金

7月22日 職場の性別 
Source :Call Me 'Caitlyn' - Keeping Up with Gender Identity Compliance (HR Daily Advisor)
これまで当たり前のように男女の性別を考えてきたが、どうやらもっと慎重に取り組まないといけないらしい。先に、「次はtransgender」と紹介したが、いよいよ企業として具体的な対応に取り組む必要が出てきている(「Topics2015年6月28日 次はtransgender」参照)。

連邦政府の主な関係機関は、次のようなスタンスを表明している。 こうした連邦政府の動きを踏まえ、企業独自の対応も求められることになる。 これらの中で、最後の点、つまり『性転換の途中』というのは難しい課題を伴う。上述のEEOCの規則で、『医学的な施術を受けたかどうかは関係ない』としている点も同様である。

明らかにtransgenderが終了して肉体的に男性から女性に変わった、女性から男性に変わったということであれば、まだ納得感が得られると思われる。しかし、身体的には男性のままで自らの性別を女性と認識している場合、またはその逆の場合、他の従業員が同じ性別として受容できるのかどうか、懸念が残る。極端な表現をすると、性徴の異なる者が同じトイレを利用することを他の従業員が受け容れられるかどうか、という課題である。EEOCは関係ないとしているが、社会生活上は問題が残るのではないだろうか。

そこで重要となってくるのが、職場において何時の時点でtransgenderが実現したと看做すのか、という課題である。

同じくHR Daily Advisorの記事によれば、特定の決まった時点というものはなく、『本人が転換先の性として働き始めた時』ということだそうだ。逆に言えば、それまでは元来の性としての被用者であり、他の同じ性の従業員と分け隔てしてはならない。

さらに、転換先の性として働き始めるまでの間の過程で、本人、その上司、周囲のほかの従業員との間のコミュニケーションを密にする必要がある。その際、本人のプライバシーや尊厳を尊重しなければならないのは当然としている。

つまり、本人がある日突然、『性転換をしました』とされても対応不可能ということで、むしろ本人から『これから性転換の準備を始めます』と申告してもらえるような環境づくりが必要ということだろう。そうした漸進的な転換こそが実社会では現実的なのであろう。

※ 参考テーマ「LGBT

7月21日 FSA Debit Card 
Source :My Employer Offers Both HSA and FSA. What's the Difference, and Which Should I Use? (Forbes)
上記sourceは、HSAとFSAの比較、選択のポイントを解説したもので、内容的には以前紹介したものとあまり変わらない(「Topics2014年5月22日 医療貯蓄勘定(2)」参照)。

むしろ、驚いたのが、『両勘定とも"debit card"を配布されているのが一般的』という説明である(上記source下線部)。Wikipediaによると、 ということらしい。

いずれの勘定も税制適格支出の範囲が決められており、患者にとっては複雑な判断が必要となる。それを、機関を限定してdebit cardを利用することにより、勘定からの支出、残高の管理を簡単にしようということだと思う。

(9月1日追記)
恥ずかしながら、昔の記述を読んでいたら、しっかりとFSA Debit Cardを紹介したtopicsがあった。しかも、2003年という初期の頃である(「Topics2003年9月4日(1) 気が利く国税庁」参照)。

反省1:トピックスを書く時には、よく昔のトピックスを見直すこと

反省2:記憶力をもっと養うこと(⇒既に手遅れかも・・・)
※ 参考テーマ「HSA