6月20日 Exchange保険料負担 
Source :HHS Releases New Details About 2014 Marketplace Premiums, Subsidies (Kaiser Health News)
6月18日、HHSは、連邦政府が関与するExchange(36州)における、2014年の保険料に関する統計資料を発表した。ポイントは次の2点。
  1. Bronze、Silverクラスでの実質保険料負担は、月額$70弱となった。
  2. また、実質保険料負担が$50以下となっている加入者が46%を占めている。
PPACAの狙い通り、実質的な負担がかなり軽くなったようだ。なお、注目されている『保険加入手続きを行った者(800万人)の中で最初の保険料を実際に支払った者の割合』は、依然示されていない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

6月19日 スターバックスの学士取得支援策 
Sources : Starbucks offers online college program to workers (The Sacramento Bee)
The Starbucks Solution to Student Debt: Become a Barista, Get Cheap Tuition (Businessweek)
6月16日、Starbucks社は、従業員の学士取得支援策(Starbucks College Achievement Plan)を公表した。その概要は次の通り。
  1. 学位取得のためのコースは、Arizona State Universityの"Undergraduate online college degree"。同コースには1万人が登録している。

  2. 対象となる従業員の要件は次の通り。対象資格者は約13.5万人。
    • 本社及び本社が経営する店舗(約8,200)の従業員(フランチャイズ店(約4,500)の従業員は含まれない)
    • 勤務時間が週20時間以上

  3. Starbucks社の従業員13.5万人のうち、約25%が既に学位を取得している。Arizona State Universityの学長は、約1.5万人の従業員が参加するものと期待している。

  4. 学位取得後の就労継続を義務付けない。

  5. Arizona State UniversityのUndergraduate online college degreeは、年間の学費が約10,000ドル。その費用分担は次の通り。
    • 1〜2年生(総額$20,000)

      • Starbucks社とArizona State University:$6,500

      • Pell grant:$11,460 (=$5,730/Y x 2)

      • 従業員自己負担:$2,040

    • 3〜4年生(総額$20,000)

      • Starbucks社とArizona State University:$6,500

      • Pell grant:$11,460 (=$5,730/Y x 2)

      • 従業員自己負担:$2,040 ⇒ Starbucks社が償還払い

  6. 現行の支援策(2011年〜)では、いくつかの特定の大学に進学した場合に年間$1,000を支給している。新制度発足に伴い、順次廃止していく。これまでの支出総額は$6.5M。
こうした試みは、Starbucks社が初めてではなく、2010年にはWal-Mart社American Public Universityが提携して支援策を開始し、既に400人以上が学位を取得しているという。

このStarbucks社の支援プログラムを見て、感じたことを2点。
  1. 3〜4年生の自己負担がなくなるように支援するというのは、従業員に対して寛容であるとともに、本気で学位の取得を推奨していることが伝わってくる。

  2. 一方で、学位取得後の継続勤務を義務付けない、学科は問わない、など、Starbucks社内で一定の貢献を求める考えはない。
一般的に、同社における就労内容は、大学卒資格を必要としない職種の典型のようなものである(「Topics2014年6月2日 大学は出たけれど」参照)。このように考えてみると、Starbucks社は、『大卒資格取得支援というベネフィットによって、若い社員だけを店舗要員として惹きつけておきたい』という戦略を明確にしようとしているのではないだろうか。

※ 参考テーマ「ベネフィット」、「労働市場」、「教育

6月18日 相続IRAは退職後所得ではない 
Source :Supreme Court holds inherited IRAs are not retirement funds (Journal of Accountancy)
6月12日、連邦最高裁は、全員一致で『相続したIRA資産は、退職後所得に入らない』との判決を下した。

通常、IRAに残されている資産は、退職後所得と見做され、Chapter 7に基づく破産処理の際、清算対象から除外される。しかし、相続したIRAの場合には、次の3つの理由から、退職後所得とは見做されないという判断だ。
  1. 相続したIRAには追加拠出ができない。

  2. 相続人は、年齢に拘らず、相続したIRAから資産を引き出さなければならない。

  3. 相続IRAから資産を引き出してもペナルティを課されない。(通常のIRAであればペナルティがある。)
これらの理由から、相続IRAにある資産は、個人が自由に処分できる資産であり、退職後所得とは見做されないという訳である。

なんだか当たり前の結論のようだが、第5控訴裁判所と第7控訴裁判所の判断が分かれていたため、今回の連邦最高裁の判決(=第7控訴裁判所の判決を支持)となったのである。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制」、「PBGC/Chapter 11

6月17日 ME州:不法移民への福祉給付禁止 
Source :Maine governor blocks aid for illegal immigrants (Washington Post)
Maine州知事は、州政府の福祉財源を不法移民に利用することを禁じた。州財政が厳しい中、福祉財源を高齢者と障害者に集中させるべきだ、との判断からだ。

不法移民への給付を禁じることにより、$1Mの支出減となり、約1,000家族が影響を受けるという。確かに、1,000家族ということで、影響はそれほど大きくないものの、ME州に居住する不法移民にとっては生活の基盤が脅かされる事態になりそうだ。

不法移民にとって、"Emergency Medicaid"は最後の頼みの綱であり、これが利用できなくなれば、医療サービスを受けることはほぼ不可能となる(「Topics2013年2月19日 Emergency Medicaid」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/ME州」、「移民/外国人労働者

6月16日 労働市場の外の人達 
Source :Childcare and Other Costs: Why Workers Stop Working (Businessweek)
恥ずかしながら、労働市場の外にいる人達がどういう人達なのか、それを示す統計があることを知らなかった。
Labor Force Statistics from the Current Population Survey (BLS)
○ A-38. Persons not in the labor force by desire and availability for work, age, and sex
2014年5月時点での数字をまとめてみると、次のようになる。
労働市場の外にいる人達 (2014年5月時点)(単位:千人)
上記sourceは、上図の"Marginally attached"(赤字部分)に焦点を当てたものとなっている。まず、"Marginally attached"の定義は、BLSによれば、次のようになっている。
"Persons "marginally attached to the labor force" are those who want a job, have searched for work during the prior 12 months, and were available to take a job during the reference week, but had not looked for work in the past 4 weeks. "
簡単に括ると、『去年は求職意欲があったんだけど、今年は求職活動をしていない人達』ということになる。

そのうち、約1/3は、"discouraged"、つまり求職活動は成功しないと諦めてしまった人達である。彼らは、求人の条件と合わないことから求職活動を諦めてしまっているのである。念のため、"discouraged"の定義は次の通り。
"Discouraged workers are persons marginally attached to the labor force who did not actively look for work in the prior 4 weeks for reasons such as thinks no work available, could not find work, lacks schooling or training, employer thinks too young or old, and other types of discrimination."
また、別の約1/3は、家庭の事情、就学・職業訓練、健康状態などの理由により、求職活動を止めている人達である。

そして、最後の1/3が、上図の"Other"である。定義は次の通り。
"Includes those who did not actively look for work in the prior 4 weeks for such reasons as child-care and transportation problems, as well as a small number for which reason for nonparticipation was not ascertained."
文字通り、『その他』なのだが、そこには重要なファクターが入っているというのが上記sourceの主張である。

定義にあるように、『働くことに伴って必要となる預かり保育、通勤などの費用と、働くことに入ってくる収入が見合わないと思って求職活動を諦めた人達』ということである。従って、保育サービスをもっと安く提供できるようにしたり、公共交通機関の料金を下げたりすれば、こうした人達は労働市場に参入しようと考えるようになるのである。

同じ"Marginally attached"に分類された人達の中でも、"discouraged"と"Other"は、対策を別物にしなければいけない。上記sourceでは、『財政政策により"Other"に働きかけることはできるが、その財源がなかなか確保できない。アメリカには財政政策はなくなってしまった』と嘆いている。

ところで、上記sourceでは、"Marginally attached"の経年変化を図示している。
それによると、"Marginally attached"全体の人数は徐々に減少しているのだが、"Other"の層の人数がなかなか減らないどころか、昨年から増えているのである。これは、今回の景気後退から回復期を通じて、賃金が抑制されていることを物語っているのかもしれない。不本意ながらパートタイマーで就職したとしても、ベビーシッターにかかる費用と見合わないので仕事を辞めた、求職活動を諦めた。いかにもありそうな話である。

それともう一つ、当websiteで時々紹介している、『実感失業率』の動きとよく似ているのである。
やはり、労働市場で構造変化が起きてしまったのかもしれない。

※ 参考テーマ「労働市場

6月15日 CO-OPsの進出 
Source :State HIX competition grows (Healthcare Payer News)
New Englandで、2015年からCO-OPsの参入が相次ぐ模様である。

また、その他の保険会社もME州、MA州、NH州、CT州で参入を増やしているため、New EnglandのExchange保険市場は競争的になる見通しになってきた。

※ 参考テーマ「CO-OP

6月14日 SHOP:スタートは斑模様 
Source :SHOP flop: Obamacare for small businesses (POLITICO)
2015年は、PPACAの無保険者対策で、"Exchnage"と並ぶもう一つの柱、"SHOP"の本格スタートが課題となっていた(「Topics2014年5月17日 次の課題はSHOP」参照)。

そうした中、6月10日、CMSより、連邦立Exchangeを運営している州のうち、2015年から"SHOP"を稼動させることができる州が公表された。連邦立Exchangeが32州ある中で、2015年からSHOPをスタートさせるのは14州、2016年以降(いつになるかはわからない)が18州となった(CMS)。


HealthPocket
SHOPでは、2通りのメニューが提供される(Health Affairs)。 上の14州は、いずれも後者のタイプ、つまり従業員に選択肢が用意されるメニューを提供するという。

これにより、州立ExchangeでSHOPを先行させていた17州と合わせ、31州が選択制SHOPを提供することになる(「Topics2014年3月19日 州立SHOPは健闘」参照)。しかし、先にも紹介した通り、SHOPでバンバン加入者が増えていくという状況は見通せない。その理由として、上記sourceは次のような点を挙げている。
  1. 中小企業の中で医療保険ベネフィットを提供しようと考えているところは、既に保険プランを契約している。しかも、それがPPACAの下で不適格であってもキャンセルする必要はない、とObama政権が明言している(「Topics2014年3月6日 不適格プラン:2年間再延長」参照)。

  2. 保険会社の方も、既存の小規模グループ保険市場で競争しており、わざわざExchangeのSHOPで競争する必要性を見出せない。
上記sourceが表現している通り、"SHOP"は"Obamacare’s neglected stepchild"という位置付けなのかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

6月13日 3月初旬の新規保険加入者 
Source :Who Are the Newly Insured as of Early March 2014? (Urban Institut)
上記sourceは、3月初旬時点のデータを用いて、2014年に新規保険加入した人達のプロフィールを推計している。ポイントは次の通り。
  1. 新規加入者の約半分が、FPL 138%以下の低所得層である。また、Medicaidへの新規加入者は、Medicaid拡充州とそれ以外の州とに分散している。
  2. 新規加入者の約半分が、18〜34歳の青年層となった。これは既存の加入者の年齢構成よりは高い割合となっている。一方、健康状態については、既加入者よりも優れていない人たちが多い。
    このプロファイルが3月末までの新規加入者全体に適用できるのかどうか確定はできないが、少なくとも年齢構成は、昨年よりも若返ったのではないか。一方で既往症を持っている人達も新規加入してきているわけで、仕上がりとしての保険料はどうなるか。


※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月12日 Chicago市年金改革法案成立 
Source :Gov. Quinn signs partial Chicago pension overhaul (AP)
6月9日、IL州知事は、Chicago市の年金制度改革法案に署名した。同法により、給付の削減と市、市職員の拠出を増やし、$27Bにのぼる積立不足のうち$9.4Bを減らすことができるという。

これにより、現役市職員、退職者合わせて5.7万人が影響を受ける。労組はすぐさま州憲法違反だとして提訴する。

Emanuel市長は『一歩前進』としているが、まだまだ危機の回避というには程遠い(「Topics2012年10月5日 Chicago市長の危機感」参照)。むしろ、市長が検討していた固定資産税の増税について、州知事から回避するよう求められており、代替財源を探らなければならなくなっている。州知事の要望は、固定資産税の引き上げが同市の雇用、住人の喪失につながることを危惧してのことである。

一応、Emanuel市長は州知事の意向を受け容れたようだ。同市長の苦悩はまだまだ続く。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月11日 学生ローン返済負担軽減策 
Source :Grad Students Could Win Big as Obama Slashes Debt Payments (Businessweek)
6月9日、Obama大統領は、連邦政府から提供した学生ローンの返済負担を軽減するとの大統領令を発表した(Factsheet)。ポイントは次の通り。

またしても、大統領令による政策推進である。ただし、今回の大統領令は、次の2点で、借入額の大きな学生、具体的にはビジネススクールやロースクールの卒業生に有利だという。
  1. IBPからPAYEに変更となっても、借入額が少額であれば大きな減額にはならない。借入額が多額であればあるほど、減額幅は大きくなる。

  2. 残高免除となる期間が短くなるため、多額の残高があるほど、免除額が大きくなる。
高い水準の大学を多額の学生ローンで卒業した人の方がメリットが大きい、という訳だ。

※ 参考テーマ「教 育