3月20日 CA州:失業保険で多額の無駄 
Source :Audit blasts California unemployment program's costly gaffe (Los Angeles Times)
州政府における監査の結果、CA州の失業保険で多額の無駄が指摘されたそうだ。CA州の失業保険は、財政的に行き詰まっており、その健全化策が講じられている(「Topics2013年8月1日 CA州:失業保険財政の健全化策」参照)。そうした中で、無駄が指摘されたことにより、州議会、関係者は怒っている。

中でも最も問題だと指摘されているのが、過剰給付を是正し、取り戻すためのプログラムを導入しなかったことだ。これは、連邦政府が支援しているプログラムで、州政府が導入しなかったことで、2011年2月から2014年9月の間に$516Mを取り戻し損ねた、と指摘されている。

プログラムの中には、過剰給付を受けていた個人への連邦政府からの(税)還付を州政府が受け取る("intercept")ことで、過剰給付を是正できるシステムがあるそうだ。連邦と州が共同で運営する失業保険だからこそ、連邦の情報を活用できるのだろう。

こうした給付是正措置が取れるのも、social security numberを利用した税務、社会保険給付が行われているからだ。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

3月19日 州立SHOPは健闘 
Source :17 States and Washington, D.C., Implementing 'SHOP' Health Insurance Marketplaces for Small Businesses; Most Offer Employees Competitive Choice of Plans and Insurers (The Commonwealth Fund)
本格始動と言うには程遠い状態の"SHOP"であるが、州立Exchangeで提供されている"SHOP"は健闘しているようだ。上記sourceから特徴的な分析を紹介してみる。 あと1年で、連邦立Exchangeもここまで選択肢を用意できるだろうか(「Topics2013年11月29日 Online SHOPは1年先送り」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月18日 10代の雇用率低下 
Source :For Job-Hunting Teenagers, the Market Is Brutal (Businessweek)

THE BROOKINGS INSTITUTION
労働市場の回復が進みつつあると認識されている中、都会の10代の雇用率は大幅に低下しているという。 右の図を見ると、かなり絶望的な水準にまで落ち込んでいることがわかる。 上記sourceでは、解決策として、次のような政策を掲げている。 正直に言うと、これらの政策を実施しても難しい気がする。大卒や既卒の若者でもミスマッチによる失業がかなりある時期に、10代の若者に対する雇用需要がそれほど高まるとは思えない。よほど地域での雇用吸収力を高めてやらないといけないのではないだろうか。

※ 参考テーマ「労働市場」、「教育

3月17日 結婚生活の変化 
Source :Trends in Marriage and Work Patterns May Increase Economic Vulnerability for Some Retirees (GAO)
GAOが、結婚、働き方の変化と退職後所得に関するレポートをまとめた。本文はここ

その中で、関心を持った事項は次の通り。
  1. アメリカ社会へのイメージとして『離婚』が多いと思っていたが、実は『非婚』の方がインパクトは大きい。
  2. 働いていた女性の圧倒的多数が、第1子の出産後、半年以内に就職している。
  3. 当然のことだが、夫婦二人で稼いでいる方が、退職後のための貯えは大きい。
  4. 公的年金の仕組みとして、現役時代の世帯所得が同じでも、片働き、両働きで給付内容が変わってくる。
  5. 65歳以上の貧困層の割合は、世帯構成によって大きく異なっている。
公的年金の制度変更も必要だろうが、『非婚』者の生活設計も重要な政策課題のように見えてくる。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「公的年金改革

3月16日 DCプラン戦略 
Sources : The right ways to get workers hooked on a 401(k) (CNBC)
Some employers shift 401(k) matches (Marketplace)
たまたま、401(k)プランに関する経営側の戦略、傾向を紹介する記事が重なったので、まとめておきたい。
  1. DBプランが退潮している中、DCプランを退職後所得のメインに据え、従業員が充分な資金を確保できるようにする必要がある。

  2. 自動加入は必要な手段だが、導入するだけでは従業員がついてこない。従業員とのコミュニケーションの頻度を高め、納得づくで加入してもらうことが重要。

  3. 医療保険プランへの加入と同様、毎年のように従業員が加入できるようにしておく必要がある。

  4. 企業側のマッチング拠出にも工夫が要る。従業員の拠出3%に合わせて単純に3%分(100%)をマッチさせるのではなく、6%に対して50%のマッチング、12%に対して25%のマッチングなど、同じ金額でも長期に高い水準でコミットするようなことも考えられる。

  5. 投資のポートフォリオとして、"target date fund"を用意する(これについては後日触れる予定)。
このように、より長期で、より従業員の立場に寄り添ったプラン運営が、よい人材を長期に確保するために必要となっている。

一方で、企業側の拠出の合理化についても動きがある。医療保険プランにかかるコストがどんどんと高まるにつれ、DCプランに対する企業側の負担を見直す動きが出てくるのは当然、との見方がある。先に紹介した(悪い例だが)AOLの場合も、見直しの切っ掛けは医療保険プランのコスト増であった(「Topics2014年2月13日 AOL:DCプランとPPACA」参照)。

その際、AOLでは頓挫したが、『マッチングを年末にまとめて拠出し、年末に在籍していなければ拠出は行わない』との合理化策は、既にIBMで導入されていると紹介した。上記sourceによれば、まだ数は少ないが、大企業の間ではこうした見直しが進んでいるという。これも、従業員を引き留めておくという意味では、プラスの効果があろう。

かつては、『長期での人材確保のためにはDBプラン』という概念であったが、既にDBプランという選択肢がほぼ消滅しかかっている中で、企業もDCプランの活用策に知恵を絞ってくることであろう。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

3月15日 Vallejo市:再び破綻の危機 
Source :Once bankrupt, Vallejo still can't afford its pricey pensions (CNN Money)
CA州Vallejo市は、2008年5月にChapter 9による再建を申請し、3年後の2011年11月に脱した。ところが、Moody'sは、再び同市がChapter 9に陥る可能性があると指摘している。その要因は、年金コストである。 同市は既に大幅な歳出削減措置を取っており、そのために治安が悪化している。これ以上、他の歳出項目で財源を捻り出すのは難しくなっている。ところが、肝心の市職員の年金プランは、Chapter 9による再建にも拘わらず、ほとんど制度改正ができていないという。消防士は50歳で退職し、現役時代の90%を終身年金で受け取れる。最近5年間で退職した警察官は、平均$101,000/Yの年金給付を受けている。

それもこれも、CalPERSが退職者や現役職員の給付内容の削減を拒んでいるからである。

先に紹介したMoody'sは、Vallejo市とともに、Stockton市San Bernardino市(SB市)についても懸念を示している。いずれも、CalPERSとの間で課題を抱えている自治体である。

自治体職員の年金のために自治体が破綻する。冗談のような事態がアメリカで起きている。

※ 参考テーマ「地方政府年金

3月14日 NH州:Medicaid拡充へ前進 
Source :New Hampshire clears major Medicaid expansion hurdle (Washington Post)
New Hampshire州(NH州)の州議会上院は、3月6日、Medicaid拡充法案を可決した。拡充案の概要は次の通り。
  1. 連邦政府財源を用いてMedicaidを拡充する。対象者は約5万人。

  2. うち1.2万人は、保険料補助金を受けて、企業が提供する保険プランに加入する。

  3. その他は、保険料補助金を受けて、Exchangeを通じて保険加入する。

  4. 拡充期間は、2016年末まで。この時点で、Medicaid拡充に必要な財源の連邦政府負担割合が100%から90%に低下する。
NH州議会上院は、R-13 vs D-11で共和党が多数なのだが、本法案については共和党から7人が賛成に回った。下院は民主党が多数であり、おそらく問題なく可決する見込みである。州知事も署名するとみられる。

同時並行で、NH州は連邦政府のHHSに特例措置の承認を得なければならないが、予備審査では了解が出ている。

これでNH州の拡充が実現すれば、Medicaid拡充を実施した州は28となる。うち、4州(下表黄色。NH州が実現すれば5州)が、民間保険購入のための補助金に連邦財源を利用することになる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル

3月13日 加入者数の増勢つかず 
Source :To Counter Obamacare Slowdown, Obama Tries Comedy (Businessweek)
2月のExchangeを通じた保険加入者数が公表された。
なんと、2月の加入者数は、1月よりも減ってしまったのである。2月は日数が短いので、一日当たりの加入者数で見てみても、
1月:32,745人/D ⇒ 2月:33,673人/D
と、勢いは強くなっていない。

また、18〜34歳の若者が占める割合も26%と、飛躍的な伸びはなかった。
ちなみに、連邦政府は、加入手続きが終了して保険料の支払いも開始した人数(=真の加入者数)は公表していない。 これで、あと残すところ3月のみとなったわけだが、現時点での加入者総数は420万人である。これがCBOの推計値600万人に届くためには、12月と同様の飛躍的な加入者数増加がなければならない(「Topics2014年2月7日 PPACAで労働供給減少」参照)。まして、政府の当初目標である700万人は、かなり遠くなった感がある(「Topics2014年1月15日 Exchange:3ヵ月間の加入実績」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

3月12日 インターン募集が増加 
Source :Internship recruiting signals an economic upturn (Sacramento Bee)
企業からのインターンシップ募集が増えているという。背景には、景気が回復していることに加え、ベビーブーマーが退職していることが挙げられている。

アメリカの大学では、インターンシップフェアのようなイベントが開催され、募集している企業が説明会を開き、学生が情報を得て応募する、ということが頻繁に行われているようだ。ちなみに、上記sourceで例示されている"UC Davis Internship and Career Center"では、インターンシップや求人情報が満載されている。

アメリカの大学生の就活も大変そうだ。

※ 参考テーマ「教育」、「労働市場

3月11日 州立大学財政支援の低下 
Source :How States Are Shifting College Costs to Students (Businessweek)
州政府から州立大学への財政支援が徐々に低下しているという。2000年には州政府の方が学生よりも負担しているという州が圧倒的に多かったが、2012年にはそれがほぼ半数にまで減っている。

Businessweek
州政府側で、@財政状況が厳しい、A他の政策分野の優先順位が高まっている、などの背景があるようだ。しかし、最も大きな要因は、『高等教育への投資は公益を高める』という考え方が後退し、『学生個人の便益になるから個人で負担すべき』との考え方が強まっていることにある。

どの教育レベルにおいても、「負担が少なくて済む公立学校」という選択肢を用意しておくことが、社会の発展、雇用の拡大、階層の固定化防止につながる。

※ 参考テーマ「教 育