8月10日 大統領府:企業向けPPACA情報サイト 
Source :A One-Stop-Shop on the Health Care Law for Businesses Big and Small (The White House)
PPACAに関する情報提供について、ついに大統領府までが乗り出した。8月1日付けで、The White Houseからリンクを張る形で、Business.USA.gov/healthcareというサイトが立ち上げられた。

州ごとにPPACAの状況が異なったり、当初の規定からの変更があったりして、全米中で情報が錯綜しているのだろう。そうした混乱を整理するための情報提供なのだろうが、試しに架空の企業を想定して使ってみたところ、最終場面ではこれらの資料を読め、ということで7つものパワーポイントの資料が提示されり、所在州のExchangeに行け、と出てくるだけで、なるほど、という納得感とは程遠い気がした。本当にこれで企業は情報の整理をつけられるのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月9日 CA州:小規模企業向けプラン保険料 
Source :Health insurance rates for California's small businesses unveiled (Los Angeles Times)
8月1日、CA州のExchange(Covered California)で提供される小規模企業向け保険プランの保険料が公表された。

上記sourceによれば、地域や選択するプランにもよるが、今年と同じ様な内容であれば、来年の保険料はかなり低下するという。上記sourceの例示では、10%台の引き下げとなっている。個人保険料が引き上げになるのとは対照的である(「Topics2013年5月26日 CA州Exchange:保険料提示」参照)。

小規模企業向けの保険料が下がることは結構なことで、CA州の準備が進んでいることを象徴している。

ただし、懸念事項もある。州内で最大のシェアを占めるAnthem Blue Crossが、Exchangeの小規模企業向けプランに参加しないことである。それと、小規模企業の保険提供義務を一年先送りにしたことである。これにより、小規模企業のExchange参加が進まなければ、保険料は下がるどころか、翌年は急上昇ということにもなりかねない。

このように、各州でExchangeプランの保険料が公表されつつあることを踏まえ、Kaiser Health Newsでは、"State Premium Watch : Pricing in the New Insurance Marketplaces"というサイトを設け、各州が公式発表した保険料情報にリンクを張っている。

なお、そのサイトに記載されているのだが、Arkansas, Illinois, Missouri, New Hampshireの4州は、既に申請された保険料を認可しているのだが、10月1日までは公表しないとのことである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/州レベル全般

8月8日 Detroit市再建の争点 
Source :Detroit’s financial woes reveal tension between state pension laws, federal bankruptcy laws (AP)
財政破綻からChapter 9による再建を申請したDetroit市だが、ステークホールダー間の争奪戦はともかく、大きな争点は次の2点だという。
  1. 州政府の年金法は、10th Amendment(=連邦政府に委ねられた権限以外はすべて州政府が保有する)に基づき優先性を持つのか。

  2. Article 6は、連邦法の州法に対する優位を宣言している。州政府が市に対して、連邦破産法に基づくChapter 9申請を認めたことから、その権限を実質的に放棄したと見做せるのか。
まさに連邦制の根幹を問う憲法問題に発展しそうなのである。

上記sourceによると、連邦破産法は、自治体がChapter 9の申請をする際には州政府が許可を与えなければならないと規定している。これに基づき、半分くらいの州は自治体のChapter 9申請を認めているが、その条件は極めて厳しいものとなっている。それだけに、州政府は連邦政府に権限を委ねたと判断できるのではないか、ということである。

年金を守りたいステークホルダーは上記1.を主張するだろうし、その他の債権を守りたいステークホルダーは上記2.を主張していくことになるだろう。

一世帯あたりの年金積立不足額でみれば、Chicago, NY City, San Francisco, Bostonなどの方がDetroitのそれよりもはるかに大きく、このDetroitのケースや、CA州のStocktonのケース(「Topics2013年4月30日 いよいよガチンコ勝負」参照)で少しでも地方政府年金の手直しができるようであれば、全米で財政難に苦しんでいる自治体に、一つの選択肢として認識されるようになるとの見方がある(US News & World Report)。

その一方で、DetroitのようにChapter 9の申請をしなければ再建できないような自治体は、可能性がゼロではないが、少ないのではないか、との見方もある(National Center for Policy Analysis)。 いずれにしても、連邦政府と州政府の権限を巡る論議が、再び連邦最高裁で議論されることになりそうだ。

※ 参考テーマ「地方政府年金」、「司法

8月7日 連邦議会議員の保険プラン(2) 
Sources : Congressional Staff Will Get Help Paying for Obamacare (Government Executive)
In 2014, Congress gets Obamacare. Here’s how they’ll pay for it. (Washington Post)
連邦議会議員及びそのスタッフがExchangeを通じて保険加入する際のガイドライン案が近く示される見通しとのことである(「Topics2013年8月4日 連邦議会議員の保険プラン」参照)。上記sourcesによると、ガイドライン案の主な内容は次の通り。
  1. 事業主としての連邦政府からの保険料への拠出は継続する。

  2. 保険料に対する補助金(tax credits)は一切受け取れない。
加えて、Obama政権は、『大統領、閣僚、The White Houseのスタッフも、連邦議会議員と同様、Exchangeを通じた保険加入とすることを支持する』と述べているそうだ。

ただし、OPM長官の指名承認について、上院本会議で審議することに待ったをかけているTom Coburn上院議員(R-OK)は、『内容を精査してから待ったを解くかどうかを判断する』としており、承認時期は未定である。

(以下、8/8追記)
7日、OPMは上記通りの提案を行ったため、Coburn上院議員は、本会議審議に対する待ったを取り下げた(Government Executive)。ただし、Exchangeへ移行する人の範囲の決定は、連邦議会に委ねるとして、依然として明確になっていない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

8月6日 労働市場の力不足 
7月の失業率は7.4%と、前月に較べて0.2Pも低下した。7.4%という数字は、2008年12月、失業率が急上昇していく中で記録されて以来のものであり、5年近くをかけてようやく7%台前半に戻ってきた数字である。
それでも、エコノミストや報道の評価は、それほど高くない。むしろ、労働市場の力不足を懸念している様子である。その根拠として指摘されているのは、主に次のような諸点。
  1. 連邦政府の強制歳出削減が続いていて、公的部門の雇用が減少している。

  2. 労働市場参加率の低下が長期に続いている。

    Labor Force Statistics from the Current Population Survey

    Series Id:           LNS11300000 - Seasonally Adjusted
    Series title:        (Seas) Labor Force Participation Rate
    Labor force status:  Civilian labor force participation rate
    Type of data:        Percent or rate
    Age:                 16 years and over

    from BLS
  3. 職探しを諦めた人、フルタイムを望んでいながらパートタイムで就職している人の割合がなかなか下がらない。これは、最初の図の緑の線が横ばいになっていることからもわかる。
アメリカ経済は消費に牽引される形で回復しているように見えるが、労働市場の力強さがなければ持続しない。そうしたことが、CPIの弱さに表れているのだろうか。

なお、本日午後、ロイターで「ゼロ金利政策の解除、米労働参加率の低迷で予想より後ずれか」と題する記事が配信されていた。

※ 参考テーマ「労働市場

8月5日 企業提供義務先送りの影響 
Source :Analysis of the Administration’s Announced Delay of Certain Requirements Under the Affordable Care Act (Congressional Budget Office)
7月2日に財務省が公表した企業提供義務の1年先送りの経済的影響について、CBOが推計を公表した(「Topics2013年7月3日 企業ペナルティ:一年先延ばし」参照)。

主な結果は次の通り。
  1. PPACAの施行に伴う連邦政府支出総額(2014〜2023年)は、$1,375Bとなる。(5月の推計値は$1,363B)

  2. 企業提供義務の1年先送りによる連邦政府支出総額の増分は、10年間で$12Bとなる。その内訳は次の通り。
    企業分ペナルティの減少$ 10B
    Exchangeを通じた保険加入に伴う保険料補助金の増加$ 3B
    企業負担の保険料の損金算入額の減少=税収増▲$ 1B
  3. 無保険者の保険加入が100万人減少する。
要するにPPACAの推進派にとってはよろしくない数字が出てきたのである。ちなみに、下院共和党が提出した、企業提供義務を先送りするための法案(H.R. 2667)は、7月17日に下院で可決され、上院に送付されている。もちろん、成立どころか審議の目途すら立っていない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月4日 連邦議会議員の保険プラン 
Source : Health-care issue triggers hold on OPM nominee Katherine Archuleta (Washington Post)
OPM Nominee in Limbo Until Senator Gets Answers on Health Reform (Government Executive)
また一つ、PPACA本格施行の準備不足がクローズアップされている。連邦議会議員とそのスタッフの保険加入問題である。

課題の所在は次の通り。
  1. 連邦議会議員、議員スタッフ、議会スタッフは、現在、連邦政府職員と同じFEHBPに加入している。

  2. そこでは、雇用主負担(連邦政府)が全費用の70%をカバーしている。

  3. 2010年に成立したPPACAでは、連邦議会議員とそのスタッフは、FEHBPを離れて、Exchangeを通じて保険加入することとなっている。

  4. ところが、現時点に至るまで、その移行に関するガイドラインが明示されていない。特に課題となっているのは次の2点。

    • 連邦議会議員とそのスタッフに対して、連邦政府が今まで通りに雇用主負担をするのかどうか。またその権限が連邦政府にあるのかどうか。

    • FEHBPを離脱しなければならないのは、連邦議会議員とその個人的なスタッフだけなのかどうか。議会スタッフはどうなのか。今のところ、Medicare加入者はFEHBP加入を継続できると解釈されているがどうなのか。
連邦議会上院では、OPM長官の指名承認について審議している(PN509-113)。委員会レベルでは既に可決したが、その委員会メンバーの一人(共和党)が、『OPMがこのガイドラインを明示するまで、本委員会にかけることをストップさせる(hold)』との意思表示を行ったのである。

下院民主党の議員も理解を示しており、OPMから早く情報が提供されることを希望する、と述べている。こんな狭い範囲のことすら決められていないなんて、本当に準備が進んでいないんだな、と実感する。

それとも、連邦議会議員達は、条件のいいFEHBPを離れてExchangeを利用するのが嫌なのだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「政治/外交

8月3日 新生NLRB 
Sources : Senate confirms Obama choices for National Labor Relations Board (Los Angeles Times)
Senate confirms all five NLRB members (The Hill)
NLRB崩壊を目前にして、上院両党の合意が成立した(「Topics2012年12月20日 崩壊寸前のNLRB」「Topics2013年3月15日 大統領が最高裁に上告」参照)。両党の譲歩内容は次の通り。 この合意の下、7月30日、NLRBメンバー全員の上院承認が行われた。新生NLRBのメンバー構成は次の通り。
役 職氏 名政 党指名者任 期上院承認
ChairmanMark Gaston PearceDPresident Obama@2010.4.7〜2013.8.27
A2013.8.28〜2018.8.27
A PN266-113
MemberPhilip Andrew MiscimarraRPresident Obama2013.8.28〜2017.12.16PN265-113
MemberKent Yoshiho HirozawaDPresident Obama2013.8.28〜2016.8.27PN679-113
MemberHarry I. Johnson IIIRPresident Obama2013.8.28〜2015.8.27PN264-113
MemberNancy Jean SchifferDPresident Obama2013.8.28〜2014.12.16PN680-113
事務局長Lafe Solomon-President Obama2011.1.27〜×
民主党3、共和党2。退任時期もD→R→D→R→Dの順番と、整然とバランスが取られている。これでようやくNLRBの活動も正常化することだろう。ところで、連邦最高裁の審理はどうなるのだろうか?(「Topics2013年6月26日(2) NLRBの命運」参照)

※ 参考テーマ「労働組合

8月2日 GA州:保険料認可の延期を申請 
Source :Georgia Seeks Delay On Health Insurance Rate Approval (Georgia Health News)
7月30日、Georgia州(GA)の保険委員長が、HHS長官に対し、Exchangeの保険料認可の最終日を30日延期したい、と申し入れた。保険料認可の最終日は7月31日である。

理由は、申請された保険料が余りにも高騰しているので、もっと時間をかけて精査したい、ということである。委員長によると、申請された保険料の概要は次のようになっている。 『これでは、若者はペナルティを支払って保険加入しないだろう』と保険委員長自らコメントしているそうだ。

GA州は、連邦立Exchangeを創設することとなっており、Medicaidは拡充しない(Exchange & Medicaid Expansion)。州知事も保険委員長も共和党である。当然、PPACA違憲訴訟にも加わった(「Topics2011年1月22日 医療保険加入義務反対訴訟 27州に」参照)。

州議会上院の民主党議員は、保険委員長の申請を、『政治的パフォーマンスに過ぎない』と酷評しているのもうなずける(Atranta Journal-Constitution)。また、連邦立Exchangeの出来が悪い、とHHSに突き返しているようにも見える。

おそらく、10月1日の保険加入申請の開始日も影響を受けることになるのではないか。

PPACAやExchangeは、もはや政治的なアピールの道具になり下がっているような気がする。

※ 参考テーマ「無保険者対策/GA州」、「無保険者対策/連邦レベル

8月1日 CA州:失業保険財政の健全化策 
Source :Gov. Brown seeks overhaul of unemployment insurance program (Los Angeles Times)
CA州知事が失業保険財政の健全化に動いている。

CA州政府は、高い失業率のもと、失業給付を手厚くする政策のファイナンスとして、連邦政府から多額の借金をしている。NCSLの資料によれば、今年7月1日時点で、CA州の残高は約86億ドル。全州の借入総額が209億ドルだから、実に41%をCA州ひとりで借り入れているのである。

州知事の財政健全化案は、次の通り。
  1. 失業保険料の適用となる報酬を、年収$7,000から$9,500に引き上げる。

  2. 2016年までに、連邦政府からの借入金を完済する。

  3. 2021年までに、110億ドルの基金を積み上げる。
かなり野心的な案だが、1点目の課税対象報酬の引き上げは、他州の例をみれば、違和感はないし、借入金に頼るくらいなら、むしろ早期に引き上げた方がよさそうである。

ただし、これで企業としての立地環境、雇用環境はまた悪化する。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策