6月30日 同性婚バトル再開 
Source :Both Sides on Same-Sex Marriage Issue Focus on the Next State Battlegrounds (New York Times)
第9控訴裁判所は、Proposition 8を破棄する判決をしながら、連邦最高裁の判決が示されるまで、その執行停止を命令していた。しかし、予想よりも早く、6月28日、連邦最高裁の判決を受けて執行命令の停止措置を解き、即日有効である旨の宣言を公表した。これを受けて、CA州政府は直ちに同姓カップルに対する結婚証明書の発行に踏み切った。CA州における同性婚再開は6月28日となった(Los Angeles Times)。
同性カップルの法的ステータス
MarriageCivil UnionDomestic Partnership他州の法的ステータスの承認
施行日州 法州最高裁判決
Massachusetts2004.5.17A@Same-sex marriage
Connecticut2008.11.10A@Same-sex marriage
Iowa2009.4.24Same-sex marriage
Vermont2009.9.1Same-sex marriage
New Hampshire2010.1.1Same-sex marriage
Washington, D.C.2010.3.3○ (1992.6.11)Same-sex marriage
New York2011.7.24Same-sex marriage
Maine2012.12.29○→×→○**○ (2004.7.30)Same-sex marriage
Maryland2013.1.1Same-sex marriage
Washington2013.6.12009.7.26〜2014.6.30:異性間は62歳以上のみ
2014.7.1〜:同性間、異性間とも62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
Delaware2013.7.1Same-sex marriage
Rhode Island2013.8.1Same-sex marriage
Minnesota2013.8.1Same-sex marriage
California2008.6.17〜11.4,
2013.6.28〜
○→×→○*○ (2005.1.1)
異性間は62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
New Jersey○ (2007.2.19)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
○ (2004.7.10)
同性間、異性間とも62歳以上のみ
同性婚を含めて認知
Illinois○ (2011.6.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚を含めて認知
Hawaii○ (2012.1.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知
Oregon○ (2008.2.4)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
-
Wisconsin○ (2009.8.3)(同性間のみ)認知しない
Nevada○ (2009.10.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○→ 連邦最高裁判所上告棄却、控訴審確定(2013.6.26)→ 執行再開(2013.6.28)
**ME州議会可決(2009.5)○ → 州民投票(2009.11)× → 州民投票(2012.11)○
なお、2000年1月1日以降の同性婚に関する各州の取り扱いが時系列で確認できるページを見つけたので、リンクを張っておく。

そして、早速、同性婚賛成派、反対派ともに、州毎の激しいバトルを再開した。上記New York Times紙は、この争いを、"the costly state-by-state battles"と称している。両派とも、次の戦場について共通認識を持っているという。 だそうだ。

Illinois州は、州政府職員年金の改革を再度議論するため、州知事の要請により、特別会期を開催中である(「Topics2013年6月24日(3) IL州議会:両院協議会を立ち上げ」参照)。連邦最高裁の判決が示された26日、民主党の州知事は、これまでの努力を倍にして、是非同性婚認可法案を可決してもらいたい、との声明を公表した(「Topics2013年6月4日(2) IL州同性婚法案は見送り」参照)。

また、New Jersey州は、2012年に州議会は同性婚認可法案を可決したが、共和党の州知事が拒否権を発動して無効にした。両派とも、州知事への圧力を高めるのは必至だ。

一方、結婚を男女間のものと定義している州は、35州(州憲法29、州法6)もある。これを崩していくのは相当の時間と労力が必要となるだろう。おそらく、次に連邦最高裁が同性婚をアメリカ国民の権利であると認めるまで、このダブルスタンダードの状況は続くのであろう。

※ 参考テーマ「同姓カップル

6月29日 連邦議会上院:移民制度改革法案可決 
Source :Senate, 68 to 32, Passes Overhaul for Immigration (New York Times)
6月27日、移民制度改革法案(S. 744)が連邦議会上院で可決された。採決は、68 v 32 であった。修正法案可決時よりも、賛成票が増えている状況だ(「Topics2013年6月25日 移民法改革法案の経済効果」参照)。

ここまではGang of Eightの功績であり、両党の上院議員達は、思惑は何にせよ、全面改革に向かって協力している。

しかし、下院共和党は、相変わらず、冷ややかな態度をとり続けている。上院法案は審議せず、独自の法案(?)を議論するという姿勢を崩していない。だから、連邦議会への評価は厳しいものになってしまう。


※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

6月28日 企業ベネフィットへの影響 
Source :A Quick Look at the Impact of Windsor on Benefit Plans (GROOM LAW GROUP)
全米中、昨日の連邦最高裁の判決のニュースで盛り上がっているが、企業担当者としては、これから実務的に取り組まなければならない課題が山積している。取り敢えず、同性婚を認可している州で事業活動している企業は、ERISA、IRCに基づき、ベネフィットプランの点検、源泉徴収システムの見直しを進めなければならない。

上記sourceは、連邦最高裁の判決に伴う影響が考えられるベネフィットプランの一覧表を掲載していて、参考にしやすい。

他方、州際問題(「Topics2013年6月27日 連邦最高裁:同性婚を認める判決」参照)や、連邦最高裁判決に伴う制度変更の時期などは、依然として不明であり、今後の連邦政府によるガイダンスを待たざるを得ない状況にある(EpsteinBeckerGreen)。

※ 参考テーマ「同性カップル

6月27日 連邦最高裁:同性婚を認める判決 
Source :Supreme Court Bolsters Gay Marriage With Two Major Rulings (New York Times)
6月26日、遂に、同性婚に関する連邦最高裁の判決が示された。判決のポイントは次の通り。 今回の判決の特徴は、結婚の定義そのものは州の権限であるとして、連邦最高裁としての判断にはまったく踏み込まなかった点にある。こうした技術的な判決により、同性婚を認めた州の中では一つの完結した姿が浮かび上がってくる。

反面、州際の問題は今後の大きな課題として残されてしまう。 また、CA州は、13番目の同性婚認可州として復帰したことになる(CA州同性婚の変遷)。
同性カップルの法的ステータス
MarriageCivil UnionDomestic Partnership他州の法的ステータスの承認
施行日州 法州最高裁判決
Massachusetts2004.5.17A@Same-sex marriage
Connecticut2008.11.10A@Same-sex marriage
Iowa2009.4.24Same-sex marriage
Vermont2009.9.1Same-sex marriage
New Hampshire2010.1.1Same-sex marriage
Washington, D.C.2010.3.3○ (1992.6.11)Same-sex marriage
New York2011.7.24Same-sex marriage
Maine2012.12.29○→×→○**○ (2004.7.30)Same-sex marriage
Maryland2013.1.1Same-sex marriage
Washington2013.6.12009.7.26〜2014.6.30:異性間は62歳以上のみ
2014.7.1〜:同性間、異性間とも62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
Delaware2013.7.1Same-sex marriage
Rhode Island2013.8.1Same-sex marriage
Minnesota2013.8.1Same-sex marriage
California2008.6.17〜11.4,
2013.?〜
○→×→○*○ (2005.1.1)
異性間は62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
New Jersey○ (2007.2.19)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
○ (2004.7.10)
同性間、異性間とも62歳以上のみ
同性婚を含めて認知
Illinois○ (2011.6.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚を含めて認知
Hawaii○ (2012.1.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知
Oregon○ (2008.2.4)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
-
Wisconsin○ (2009.8.3)(同性間のみ)認知しない
Nevada○ (2009.10.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○→ 連邦最高裁判所上告棄却、控訴審確定(2013.6.26)
**ME州議会可決(2009.5)○ → 州民投票(2009.11)× → 州民投票(2012.11)○
今回の判決で連邦における結婚の定義が示されなかったことにより、同性婚を認めるかどうかは、各州の判断に委ねられていくことになる。つまり、推進派、反対派ともに、州ごとのオセロゲームを続けていかざるを得なくなったのである。
State Defense of Marriage Acts and Same-Sex Marriage Laws (NCSL)
同性婚を認めているのが13州(+D.C.)、結婚を男女間のものと定義しているのが35州(州憲法29、州法6)ある。この地図を一つひとつ塗り替えていく運動を続けていかなければならない。

ところで、今回の両判決について、最高裁判事の判断は次のようになっている。

Current Justices of the US Supreme Court (as of June 26, 2013)

Name Born Appt. by First day "DOMA" "Proposition 8"
John G. Roberts
(Chief Justice)
01955-01-27 January 27, 1955 George W. Bush 02005-09-29 September 29, 2005 ×
Antonin Scalia 01936-03-11 March 11, 1936 Ronald Reagan 01986-09-26 September 26, 1986 ×
Anthony Kennedy 01936-07-23 July 23, 1936 Ronald Reagan 01988-02-18 February 18, 1988 ×
Clarence Thomas 01948-06-23 June 23, 1948 George H. W. Bush 01991-10-23 October 23, 1991 × ×
Ruth Bader Ginsburg 01933-03-15 March 15, 1933 Bill Clinton 01993-08-10 August 10, 1993
Stephen Breyer 01938-08-15 August 15, 1938 Bill Clinton 01994-08-03 August 3, 1994
Samuel Alito 01950-04-01 April 1, 1950 George W. Bush 02006-01-31 January 31, 2006 × ×
Sonia Sotomayor 01954-06-25 June 25, 1954 Barack Obama 02009-08-08 August 8, 2009 ×
Elena Kagan 01960-04-28 April 28, 1960 Barack Obama 02010-08-07 August 7, 2010

◎=主文執筆者 ○=賛成 ×=反対
DOMAに関しては、見事に保守とリベラルが分かれ、中道派のKennedy判事がキャスティングボートを投じた形となった。一方のProposition 8では、ばらばらでめずらしい分かれ方("very unusual alignment" by New York Times)となった。

ちょっと面白いのは、CA州Proposition 8に対する判決に関して、専門家の予想、読みはほぼ当たっていたものの、成否の鍵を握ったのは、中道派のKennedy判事ではなく、Roberts長官だったことである(「Topics2012年2月8日 Proposition 8に違憲判決」参照)。

なお、今回の判決に関連したベネフィット関係のコメントは、BenefitsLink.comで検索することができる。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「司法

6月26日(1) DOL抑え込み法案 
Source :Wagner Statement on passage of the Retail Investor Protection Act (Press Release)
6月19日、連邦議会下院の金融サービス委員会(Financial Services Committee)は、44対13の大差で、個人投資家保護法案("Retail Investor Protection Act", HR.2374)を可決した。法案の提出者は、Ann Wagner下院議員(R-MO)である。

同法案のポイントは次の通り。
  1. 受託者責任の拡張するについて、SECが規則を定めてから60日以内は、DOLが新たな規則を定めることを禁じる。

  2. 受託者責任の新たな基準を定めた場合、個人が金融商品や金融サービスを購入しにくくならないか、SECは精査しなければならない。

  3. 受託者責任の拡張により、個人の混乱を減少させることができたかどうか、SECは検証しなければならない。
具体的には、証券会社による投資助言サービスについて、受託者責任を求めるかどうかで、連邦政府内で検討が進められている。SECは、金融サービスに関する規制当局であることから、そのあり方について検討している。一方、DOLは年金プランの運用という加入者保護の観点から、やはり、受託者責任の検討を進めてきている。

同時に二つの官庁が受託者責任に関する規則を検討すると混乱が生じる恐れがあるため、まずはSECで検討を進め、その結論が明確になってから、不足があればDOLが検討すればいい、というのが、上記法案の主旨である。しかも、SECにC/B分析を求めることで、受託者責任の拡張を阻もうともしている。

同法案に対して、DOLは公式なコメントを避けているが、SECの劣後に置かれることに大きな不満を抱いていることは間違いない。加入者保護は後回しでいい、と言われている訳だから。実際、DOLの担当官は、『受託者責任は極めて明快だ。受益者の利益が最優先、ということだ』とコメントしている(InvestmentNews)。

また、年金プラン関係の諸団体は、同法案に反対するよう、連名で連邦議会議員宛に要請書を送付している。

この問題には過去の経緯があるそうだ。DOLは、最初、2010年に受託者責任に関する規則の提案を行っている。その中には、DCプラン加入者に対して金融商品を販売する証券会社に受託者責任を求める項目も入っていた。おそらく、リーマン・ショックの引き金になった複雑な金融商品の販売に対する対抗措置としての位置づけであったと思われる。しかし、金融業界からの強い反対を受け、提案自体を取り下げてしまった(InvestmentNews)。

アメリカの金融危機もようやく収まり、改めて再挑戦しようとしていたところで、法案が提出されてきた。要するに、金融村vs年金村の対決の構図となっているのである。

※ 参考テーマ「受託者責任

6月26日(2) NLRBの命運 
Source :Justices Agree to Hear Case on President’s Recess Appointments (New York Times)
6月24日、連邦最高裁は、大統領のrecess Appointmentsの合憲性について審理することに合意した(「Topics2013年1月28日 NLRB:機能不全の危機」「Topics2013年3月15日 大統領が最高裁に上告」参照)。

いよいよ、NLRBの命運を決する最高裁判決が出されることになる。

※ 参考テーマ「労働組合

6月25日 移民法改革法案の経済効果 
Sources : The Economic Impact of S. 744, the Border Security, Economic Opportunity, and Immigration Modernization Act (CBO)
S. 744, Border Security, Economic Opportunity, and Immigration Modernization Act (CBO)
18日、移民法改革法案(S. 744)の経済効果について、CBOが推計を公表した。ポイントは次の通り。
  1. 労働力、雇用が増加する。これに伴い、実質GDPは押し上げられる。
  2. 平均賃金は2025年までは押し下げられるものの、それ以降は押し上げられる。
  3. 2020年までは失業率が若干押し上げられる。

  4. 2023年までの財政赤字は改善する。
Heritage Foundationが描く将来像とはだいぶ異なっているようだ(「Topics2013年5月13日 移民改革法のコスト」参照)。ただし、CBOの推計は、当面、10〜20年の範囲となっており、改革法案の影響を長期的にすべて反映したものとはなっていないことには気をつけておくべきだろう。

一方、連邦議会上院は、24日、移民改革法案への修正案(S.AMDT.1183)を可決した。票数は、67 v 27で、共和党からも多数の賛成者が出ている。しかも、60を超えており、filibusterを防げる票数を集めていることに注目である(New York Times)。

修正案の内容は、次の通り。
  • 国境警備隊員を21,000人から40,000人に、ほぼ倍増させる。
  • 700マイルの国境フェンスを完成させる。
  • 国境警備費用を総額で$30B増額する。
国境警備により注力することで、不法移民への法的地位の賦与開始後の不法入国者の侵入を防ごう、という主旨である。

超党派の賛成は得られたものの、共和党議員からは『いったいどれだけのコストをかけるつもりなのか』と支出拡大に反対する意見が出る一方、民主党議員からは『法的地位の賦与開始のためのハードルがまた一つ上げられた』との不満が出ている。

相変わらず、下院共和党は、強硬な反対を主張しており、ベイナー下院議長は、『共和党下院議員の賛成が得られない限り、審議に付すことはない』と公言している。

本当は、ここでObama大統領の出番なのだが・・・。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

6月24日(1) PPACA修正法案 
Source :Bipartisan bill would soften ObamaCare mandate (The Hill's Healthwatch)
6月19日、共和党、民主党の上院議員2人が、PPACAに対する修正法案を提出した。修正法案のポイントは次の2点。
  1. 企業の保険プラン提供義務対象を、週30時間から週40時間に引き上げる。

  2. 保険プランを提供しない企業へのペナルティ適用を、2014年から遅らせる。
40時間をフルタイマーと認識するのが通例だという認識に立っている。しかし、労働統計上は、35時間以上をフルタイマーと定義している(「Topics2013年5月24日 パートタイマーの医療保険」参照)。この辺りの定義は、はっきりしていない、というのが現実である。

ところで、この法案に対する共和党、民主党の態度は冷ややかである。共和党は、PPACAを改善することに関心はなく、つぶすことを最優先としている。一方、民主党は、PPACAに少しでも触れることに懸念を抱いている。

そうした中で、2人の上院議員が修正法案を提出した勇気は評価できるものの、法案が成立する見込みは低い。しかも、フルタイマーの定義については、説得力に欠ける。それどころか、中小企業の保険プラン提供義務を緩和することを狙ったパフォーマンスではないか、との疑念も生じる。

PPACAが成立してから3年も経つ中で、まだまだ現実の施策が定まらない状況が続いている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月24日(2) GAOがPPACA準備遅れを指摘 
Source : Status of CMS Efforts to Establish Federally Facilitated Health Insurance Exchanges (GAO)
Status of Federal and State Efforts to Establish Health Insurance Exchanges for Small Businesses (GAO)
GAOが、PPACA本格実施に向けた準備状況を調査し、その結果を公表した。調査対象となったのは、
  • 連邦立Exchange
  • SHOPs
である。

遅れを指摘された事項は次の通り。
  1. 連邦立Exchange
    1. 加入資格審査のプログラム開発
    2. 適格プラン(QHP)審査のプログラム開発
    3. Navigatorのトレーニング等(「Topics2013年5月23日 "Navigator"の課題(2)」参照)

  2. SHOPs
    (上記連邦立Exchangeと同様の指摘に加え)
    1. CMSが当初は5月末までに終了する予定であった事項のうち、44%が間に合わなかった。
連邦の公的機関がPPACA施行準備の遅れを公式に指摘した意味合いは重い。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル

6月24日(3) IL州議会:両院協議会を立ち上げ 
Source :Illinois lawmakers form committee to tackle pension reform (Pensions & Investments)
6月19日、IL州議会は、州知事からの要請に応じ、10名からなる両院協議会を立ち上げた(「Topics2013年6月7日(2) IL州知事:特別会期を要請」参照)。州政府職員年金の改革案を審議するためである。

州知事が設定した最終期日は、7月9日である。基本的には民主党内の主導権争いの感があり、真面目にまとめようとしさえすれば、結論を出すのは早いものと思われる。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月23日 CBプランの隆盛 
Source :Cash Balance Retirement Plan Growth Rate Soars 500% in 10 Years (KRAVITZ)
上記sourceは、アメリカ企業の税務申告書(IRS Form 5500)から、退職給付プランの中のCash Balance Plan(CBプラン)の動向を分析したものである。ポイントは次の通り。
  1. CBプランは、2001〜2012年の間に500%以上の増加率となっている。
  2. CBプランは、2006年以降、急速に普及し始めた。
    これは、2006年に成立したPension Protection Actにより、CBの性格付けと税法上の扱いが明確になったことが大きい(「Topics2006年8月9日 Pension Protection Act of 2006 概要」参照)。

  3. CBプランは単独で運営されることは稀で、ほとんどはDCプランと一緒に併用されている。
  4. 8割近くのCBプランが、利子クレジットの指標として30年国債の利率を利用している。
アメリカ企業のDBプランは、一方で凍結、廃止を進めながら、他方でCBプランを増やしてきている。しかも、DCプランと併用で。労働市場の変化への対応により、退職給付制度も変化を遂げている。

加えて、地方政府年金もCBプランを志向している(「Topics2013年6月14日 地方政府年金はCBへ」参照)。アメリカ社会全体が変わりつつあることを象徴する現象とも言えるのではないだろうか。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン」、「企業年金関連法制

6月22日 CDHPの効果と課題 
Source :Consumer-Directed Health Plans Reduce The Long-Term Use Of Outpatient Physician Visits And Prescription Drugs (Health Affairs)
上記sourceは、2006〜2010年の5年間、2つの大企業の医療費を追跡調査した結果を比較分析したものである。狙いは、CDプラン(Consumer-Directed Health Plans)の効果を調べることにある。片方の企業は2007年にCDプランに移行したが、もう一つの企業は移行しなかった。

主な結果は次の通り。
  1. CDプラン採用企業の医療費は、不採用企業と比較して、加入者一人当たりで、
    • 診療所訪問が0.26回(年)少ない。
    • 処方薬が0.85種類少ない。
    • 救急医療の利用が0.018回多い。

  2. CDプラン以降後、定期的なガン検診の受診が減少したが、その後、肺、子宮頸管、結腸の検診は増えた。

  3. 病院の利用頻度に変化はなかった。
上記2.のような検診は免責対象ではないにもかかわらず減少しているのは、加入者がよく知らなかったためと考えられ、そうした予防診療を受けなかったために救急医療が必要になる頻度が高くなってしまったのではないか、と推論している。

調査結果の結論として、
  • プライマリー・ケア、予防医療へのインセンティブ
  • 給付内容に関する加入者への教育
が重要と指摘している。

※ 参考テーマ「CDプラン

6月21日 ペナルティが低すぎる 
Source :Will New Health Insurance Be Too Expensive for America's Lowest-Paid? (Wall Street Journal)
上記sourceでは、PPACAの本格施行を前に、小規模企業の対応を紹介している。
  1. Stay Green Inc. (Santa Clarita, CA)(造園業)

    • 低賃金で働く230人の従業員に対して医療保険プランを提供することを検討している。

    • しかし、そのほとんどが保険プランへの加入を選択しないとみている。

    • 理由は、低賃金労働者ほど現金での報酬を好むということと、ペナルティが低いからだ。

  2. Campus Cooks (Glenview, IL)(食品業)

    • 従業員に対して医療保険プランを提供することを検討している。

    • 従業員にアンケート調査をしたところ、約半数の従業員しか保険加入に関心を持っていない。

    • 若くて健康で低賃金の従業員が保険加入するのは無理だと考えている。理由はペナルティが低いからだ。
一応、積極的に医療保険プランを提供しようとしている企業ですら、このような厳しい現実に直面している。まして、元々保険提供を提供しない、または提供をやめようとしている企業も多い中で、若者、低所得者の保険加入がどれだけ進むのであろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル