6月20日 出来高払いから抜けられない 
Source :Of ACOs And Proton Beams: Why Hospitals ‘Live In Two Worlds’ (Kaiser Health News)
上記sourceによると、ACOに参加している医療機関(病院)でも、従来型の出来高払い制度(fee-for-service)からは抜け出せない、頼らざるを得ない、といった事情にあるらしい。その理由として、次のような事項を挙げている。 要するに、出来高払いのほうが稼げるということである。これではACOはなかなか普及しない。課題が一つ増えたようだ(「Topics2012年9月3日 ACOは課題山積」参照)。

※ 参考テーマ「ACOs

6月19日 PPACAは認知不足 
Source :The future of health insurance for uninsured Americans (Survey) (InsuranceQuotes)
上記sourceで紹介されている調査によれば、現時点での保険未加入者は、保険加入について態度を決めかねている。調査概要ポイントは次の通り。
  1. 未加入者のうち、PPACAに定められている法定期日(2014.1.1)までに加入する ⇒ 19%

  2. 同じく、未加入のままペナルティを支払う ⇒ 10%

  3. 同じく、保険加入するかどうかわからない ⇒ 64%

  4. 自分が保険料補助を受けられるかどうかわからない ⇒ 58%

  5. PPACAにより、医療コストは上昇する ⇒ 61%
上記sourceは、こうした結果を総括して、『未加入者は保険加入するかどうか、2〜3年は様子見のようである』としているが、要するに、PPACAにより何が変わるのか、どう変わるのか、自分はどうすべきなのか、という情報が届いていないのではないだろうか。それは、上記4.に端的に表れている。

連邦政府、州政府の準備不足で、国民に対する情報提供が充分行なわれていないのだろう。こうした状況を可能な限り改善して10月1日を迎えなければ、大変な混乱が生じることになる。

また、情報提供を充分した後でも保険加入者が増えないようであれば、今度は保険料の上昇を招き、やはり国民の不満が高まるであろう(「Topics2013年5月26日 CA州Exchange:保険料提示」参照)。

情報の周知と法執行の強制度合いが課題となるかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

6月18日 CA州政府に拒否権を 
Source :Backers of rate regulation aren't satisfied with health exchange (Los Angeles Times)
先月、CA州は、Exchangeにおける保険料等を提示した(「Topics2013年5月26日 CA州Exchange:保険料提示」参照)。Obama大統領は、今月7日、わざわざCA州に出向き、『PPACAは成功している。CA州の保険料は大方の予測よりも低い水準で収まった』と称賛した(The White House Blog)。

ところが、CA州のPPACA支持者達は、不満を募らせているそうだ。 CA州の自動車保険料(年間平均)は、1989年の$747.97/Yから、2010年には$745.74/Yに微減している。ところが、全米平均では同じ期間で43%上昇している。これは、CA州が自動車保険料の認可権を保有しているためと言われている。つまり、値上げに対して拒否権を有しているのである。

PPACA支持者達は、この自動車保険の例にならって、CA州保険省に医療保険料の拒否権を賦与するよう、2014年の州民投票の案件にする運動を開始した。

当websiteでは何度か紹介しているように、PPACAとCA州保険料は密接な関係にある。CA州の動向は、やがて連邦法に影響をもたらすことになるかもしれない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州

6月17日 二層式のMedicaid 
Source :Obamacare Creates a Two-Tiered Medicaid System (The Fiscal Times)

RAND Corporation
PPACAは、医療保険の世界で様々な階層を生み出しているらしい(「Topics2013年5月28日 二層式の医療保険制度」参照)。上記sourceでは、全米でみるとMedicaidが二つの階層に分断されてしまうと懸念している。これは、当websiteでお馴染みの、Medicaid拡充オプションの問題である。ポイントは次の通り。

  1. PPACAにより無保険状態から保険加入する人口は、当初のCBO推計では3,400万人と見られていた。

  2. ところが、先月公表されたCBO推計では、その数が900万人減少した。これは、Medicaidを拡充しない州が出てくるためである。

  3. Medicaidを拡充をしない州は、今のところ14州(RAND調査)となりそうである(CBPP調査では13州)。

    RAND Corporation
  4. RANDの推計によると、すべての州がMedicaidを拡充すれば、それにより2,740万人が保険加入することになる。仮に14州がMedicaidを拡充しないとなると、保険加入者は360万人減少する。
このMedicaid拡充問題や個人加入義務の不徹底など、当初PPACAが目指した無保険者対策の効果が薄れつつあるようである。

ところで、6月14日までのところ、Medicaid拡充に向けて動き出したのは、22州+D.C.となったようである。依然として半数以下にとどまっている。
Exchange & Medicaid (2013.6.14.現在)

State Health Insurance Marketplaces (CMS)
Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル

6月16日 労働市場の蔭 
Sources : High Unemployment Caused by Welfare Programs (NCPA)
Young adults missing out on job market's slow gains (Kansas City Star)
毎月の雇用統計に、市場は一喜一憂している。最近は、FRBが一つの目安としている失業率6.5%が射程距離に入りつつあるため、その動向に注目が集まっている。しかし、労働市場の厳しさは、失業率だけでは説明できない。上記sourcesは、特に景気後退期から回復期については、より丁寧な観察が必要になるとしている。
  1. 労働市場の強さは、失業率よりも雇用率の方が適切である。
    Employment-Population Ratio (2000.1-2013.5) from BLS
    こうしてみると、雇用率は、リーマンショック後の落ち込みからほとんど回復していないことがわかる。

  2. 失業率でみるにしても、通常の失業率("U3")に、労働市場から退出してしまった者、不本意ながらパートタイマーになっている者なども含めた失業率("U6")の動きが実感に合っている。下のグラフの公式失業率が"U3"、実感失業率が"U6"である。
  3. 20〜24歳の若者の失業率は、13.2%とこの一年間ほど同水準で推移している。若者の失業率が着実に低下していくためには、今の雇用増加数17.5万人(2013年5月)ではペースが弱すぎ、20万人程度は必要と言われている。
アメリカ経済は、小売統計が順調で消費主導の経済が復活しつつあり、それに伴い、雇用環境も改善しつつあるような感触を持っているが、上記のような状況に加え、歳出強制削減、欧州の失業率の高まり、新興国経済の成長鈍化など、下押しリスク要因が多数存在している。

一つの統計指標に右往左往しているようでは、実態を見誤りかねない。

※ 参考テーマ「労働市場

6月15日 Exchange:公 vs 私 
Source :Are You Ready? Private Health Insurance Exchanges Are Looming (Accenture)
PPACAの本格実施(2014.1)と加入申請(2013.10)が近づくにつれ、Exchangeへの関心が高まっている。州立または連邦立のExchangeが話題にのぼることが多いのは当然のことだが、民間版exchange創設・稼働の動きも活発になっている(「Topics2013年2月16日(2) 民間版Exchange競争激化」参照)。上記sourceによれば、民間版Exchangeへの加入者は、2017年には公的Exchangeへの加入者に追いつき、その後は公的Exchangeを凌ぐとみられている。
このように急速に加入者が増えていくことが見込まれている背景には、企業が民間版Exchangeに魅力を感じていることがある。DC型の拠出でコストの予見可能性が高まることに加え、従業員に多様な選択肢を提供できるというメリットを感じている。

しかし、一般国民にはまだまだ浸透していないそうだ。今後のさらなる加入者の伸びは、民間版Exchangeの認知度にかかっている。

※ 参考テーマ「医療保険プラン

6月14日 地方政府年金はCBへ 
Source :State pension reforms to result in more hybrid pension plans (Pensions & Investments)
厳しい財政状況の中で年金制度の見直しを迫られている地方政府は、これまでの『DBプランかDCプランか』という議論から、CBプラン(Cash Balance)への移行を目指し始めているという。

給付債務の軽減、人材の移動、組織再編という、民間企業と同様の課題を抱えながら、州憲法による保護という枠組みの中で検討せざるを得ないという条件を考えれば、自然な流れだと思う(「Topics2013年6月7日(1) 州政府年金改革の難しさ」参照)。課題は、州議会がそうした変革の必要性を理解し、積極的に推進しようとするかどうか、だ。

※ 参考テーマ「地方政府年金

6月13日 VT州:CO-OPを却下 
Source :Vermont’s decision to deny CO-OP a place on the exchange is likely to stand (HealthLeaders)
PPACAでは、新しいタイプの保険プラン提供主体の創設を規定している。"Consumer-Oriented and -Operated Plan (CO-OP)"といって、非営利の協同組合形式の保険プラン提供者で、設立にあたっては連邦政府からかなりの補助金が出ている。

ところが、VT州政府は、CO-OPが行ったExchange参加申請を却下してしまった。保険料が高い、加入者想定が楽観的過ぎる、経営の持続可能性に疑問がある、コーポレート・ガバナンスに欠陥があるなど、様々な理由づけを示しているそうだ。

ただ、上記sourceによれば、申請却下の本当の理由は、新規の保険プラン提供主体が参入することは好ましくない、と考えているからである。実際、この50年近く、VT州政府は、保険プラン提供主体の新規参入を一件も認めていない。直近の数字をみると、上位2社だけで市場全体の80%近くを占有している(「Topics2012年12月6日 競争市場の効用」参照)。まさに保険市場は寡占状態にある。

VT州は、将来的には単一プランを目指している。州民が62.6万人と圧倒的に少なく、単一プランを実現するためには、『保険プラン提供者は少ない方がやりやすい』との判断があるのではないか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/VT州」、「無保険者対策/連邦レベル

6月12日 選択型SHOPは1年遅れ 
Source :Final SHOP Regulations Delay Employee Choice and Premium Aggregation Features, Shorten Special Enrollment Periods (EBIA)
6月4日、HHSは、SHOPに関する運用規則(Regulations)を公表した。SHOPとは"Small Business Health Options Program"の略で、小規模企業向け保険プランの提供を目的としている。これは、PPACAにより、2014年からExchangeで提供することが定められている。

本来のPPACAの規定は次の通りになっている。 ところが、先に公表された運用規則では、次のように定められている。
  1. 2014年、FF-SHOPs(Federally facilitated SHOPs, 連邦立SHOPs)は、個人選択型を提供しない。州立SHOPsは個人選択型を提供してもよいが、義務付けはしない。

  2. 事業主によるSHOP保険料の一括払いの義務付けも、1年遅らせる。
連邦立Exchangeでは、SHOPでの個人選択型の提供および保険料一括払いは1年遅れることになる。このため、2014年、小規模企業は、Exchangeで提供される保険プランの中から一つだけを指定し、従業員はその保険プランに加入することしかできなくなる。つまり、従業員には選択の余地がなくなるのである。それでも、小規模企業は、SHOPによる保険プランの購入をせざるを得ない。なぜなら、Tax Creditを受けるためには、SHOPを利用するしかないからである(「Topics2010年9月19日 Tax Creditsと"Exchange"」参照)。

明らかに、連邦立Exchangeの制度設計が遅れている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル

6月11日 強制歳出削減が失業保険を直撃 
Source :The Sequester’s Devastating Impact on Families of Unemployed Workers and the Struggling Unemployment Insurance System (National Employment Law Project)
連邦政府の強制歳出削減策が失業保険を直撃しているという。

  1. 強制歳出削減は、2011年予算抑制法に基づく施策で、2012年10月1日から2013年9月30日までの間に、2013年度歳出予算額$3.6Tのうち$85Bを削減することとなっている。

  2. 失業保険を含め連邦政府プログラムは、約5%の自動削減の対象となっている。

  3. CBOの推計では、この強制歳出削減策により、70万人のレイオフが発生すると推計している。

  4. 通常の失業保険給付(ほとんどの州で26週分。現在は約300万人が受給)は強制歳出削減策の影響を受けない(拙著「US Labor Market and Employee Benefit」参照)。また、連邦政府職員の退職者(約5万人)も対象とならない。

  5. 一方、確実に打撃を受けるのは、連邦政府が費用負担しているプログラム(Emergency Unemployment Compensation, EUC)で、受給者は200万人近くにのぼる。

    EUCは、リーマンショック対応で導入された延長失業給付の追加策で、最長99週まで給付を受け取ることができる制度だった(「Topics2010年6月9日(4) 失業給付の構造」参照)。その後、2012年以降、その内容は縮減されている(「Topics2012年2月18日 協議成立」参照)。

  6. 5月3日までで、既に23州が強制歳出削減に伴い、EUC給付を削減している。その他の州ではまだ削減が始まっていないが、給付削減の開始時期が遅れれば遅れるほど、削減割合は大きくなっていく。

  7. 今予算年度内一杯、強制歳出削減が継続すると、一家庭あたり$400以上の給付削減となる。総額では$2.3Bを超える規模となる。

  8. 給付本体ばかりでなく、連邦政府から支払われる給付事業運営費、求職支援プログラム補助金なども強制歳出削減の対象となる。
なお、EUCの削減内容については、各州とも様々な対応を採っているようだ(New York Timesほか)。

同じような問題は、Medicareでも発生している。「強制削減で命の危機」と題するモーサテのレポートをご覧になった方は多いと思う。

社会保障プログラムへの影響が現実のものとなっているにもかかわらず、連邦議会は相互批判を繰り返すばかりで、解決の方向性は見出せないでいる。また、Obama大統領も調整に乗り出す力がないのか、気がないのか、まったく動きが見えない。ちなみに、議会の仕事ぶりに対して評価しているのは12%のみで、2/3がダメだと考えている。連邦議会に対する批判がこんなに高まっているのは異常な状況である。


※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策」、「Medicare