12月9日 Darden社の試み失敗 
Sources :Olive Garden owner Darden Restaurants to hold off on worker changes tied to health care reform (AP)
Red Lobster’s Obamacare fail: Why ditching health benefits is really hard (Washington Post)
Darden Restaurants Inc.は、PPACA対応策として、4つの地域でパートタイマーを増やしてその効果を計測する試みを行なっていた(「Topics2012年10月20日 パートタイマーにシフト」参照)。ところが、12月6日、同社は、今後パートタイマーへのシフトを行わないことを公表した。

パートタイマーへのシフトを強化するという方針が社会的批判に晒され、売り上げ、利益が低下してしまったのである。

上記sourcesでは、医療保険プランをベネフィットとして提供することのメリットとともに、コストカットの先頭に立つことの難しさを述べている。Darden社が降りたことで、今度はWalmart社が先頭に立つことになるだろう(「Topics2012年12月5日 30時間の壁」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

12月8日 NJ州知事:Exchange創設法案を拒否 
Source :Chris Christie Vetoes Bill To Set Up Health Care Insurance Exchange (Reuters)
6日、NJ州知事は、Exchange創設法案に拒否権を発動したことを公表した。州知事は、拒否権発動の理由として、 を挙げている。

これにより、NJ州では、連邦立Exchangeを創設することになる。


※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

12月7日 同性婚への支持広がる 
Source :Religion Big Factor for Americans Against Same-Sex Marriage (Gallup)
同性婚に関する最新の世論調査結果が公表された。ポイントは次の3点。
  1. 同性婚を法的に認めるべきと考えるかどうかについて、53%が認めるべきと回答している。この割合は、調査開始以来最高である。
  2. 認めるべきとする最大の理由は『権利の同等性』、反対する最大の理由は『宗教上の問題/聖書の教え』である。
  3. 若者、民主党支持者、教会に行かない人の間で同性婚支持者が多い。
いよいよ過半数の国民が同性婚を支持するようになり、次第に法制化の動きも強まっていくだろう。当面は、DOMA、CA州のProposition 8に関する連邦最高裁の判断が待たれるところである。

※ 参考テーマ「同性カップル

12月6日 競争市場の効用 
Source :Health Insurance Exchanges May Be Too Small to Succeed (New York Times)
医療保険市場で競争が必要だ、という主張は、共和党の御箱だし、Obama政権・民主党も、Exchangeを通じて競争を高めていく、としている。いわば両党の共通認識である。ところが、上記sourceでは、限定的な試算だとしながらも、競争が保険料の抑制につながっていないのではないか、と疑問を呈している。

主張のポイントは次の通り。

New York Times
  1. 普通の経済学でいえば、Exchange(における競争)が保険料にもたらす影響は、2つの要因に依存する。

    1. 小規模保険会社が乱立しているような市場では、医療機関、製薬会社に対するバーゲニング・パワーが小さくなる。 ⇒ 保険料抑制にはつながらない

    2. Exchangeにおける競争が激しくなれば、大規模保険会社も保険料を抑制しなければならなくなる。 ⇒ 保険料抑制につながる

  2. 2001年から2010年にかけての保険料上昇率と、州内保険会社上位2社のシェアの相関を見てみると、保険会社の市場占有率が、必ずしも保険料を引き上げているとはいえない(右図)。

  3. Hawaii州の場合、上位2社で90%以上のシェアを占めているが、その間の保険料上昇率は72%しかない(全米平均は135%)。

  4. 一方、Virginia州は最も競争的で、上位2社で25%しか占めていないが、保険料上昇率は140%となっている。
アメリカ市場の経験上、競争が必ずしも保険料の抑制にはつながらないと見ておいた方がよさそうである。そうであるならば、今回のPPACA、Exchanges創設は、やはり無保険者対策の第一歩に過ぎず、本命は医療費の抑制、保険料の抑制ということになろう。そうした意味で、今後もMA州、VT州の動向を見守る必要がある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」、「医療保険プラン」、「無保険者対策/MA州」、「無保険者対策/VT州

12月5日 30時間の壁 
Sources :Youngstown State University Limits Part-Time Hours To Avoid Obamacare RuleWalmart's New Health Care Policy Shifts Burden To Medicaid, Obamacare (Huffington Post)
PPACAの本格実施まで1年を切り、雇い主の行動が明確化し始めた。制度の本格施行は2014年1月だが、その前の2013年11月には、"Open Season"が始まる。一例として、今年の連邦政府職員にとっての"Open Season"は、11月12日〜12月10日だ。その間に、保険加入者は、次の年の医療保険プランへの申し込み手続きを行う。従って、来年10月にはすべてが整っていなければならないのだ。

そうした環境下、来年の医療保険プランの形を考える中で、雇い主側は"Full-timer"と"Part-timer"を峻別しようとし始めている。PPACAでは、週平均30時間以上働く従業員を"Full-timer"と定義し、雇い主は彼らに対して保険プラン提供義務を負う(「Topics2012年5月1日 誰が"full-time worker"か」参照)。

これまでも一部レストラン・チェーン等がPart-timerへの移行を模索していることは紹介した(「Topics2012年10月20日 パートタイマーにシフト」参照)が、上記sourceは、"Full-timer"と"Part-timer"を峻別し、Part-timerの労働時間を30時間未満に抑制しようとしている事例を2つ紹介している。 上記sourceでは、Walmartのこれまでの努力を台無しにするものだ、と強く批判している。7年前、『従業員の医療コストを公的プランに押し付けている』との批判を受け、Walmartは従業員への保険プラン提供を拡大する方針に転換した(「Topics2005年10月26日(2) Wal-Martの無保険者対策」参照)。ところが、上記のような方針は、パート従業員への医療保険提供をやめ、"Exchange"を通じた保険加入(保険料の補助金あり)、さらにはMedicaidに回していこうとする意図がはっきりしている。

しかし、昨日記したように、Medicaid加入資格の緩和については、各州政府・議会とも逡巡しているところであり、低所得層の無保険者が取り残されるという懸念が高まっている。そうした中で、Walmartのパート従業員が同社の医療保険プランから押し出されてくることに反発を覚える人は多いだろう。

加えて、やっぱりと言うべきか、Walmartは、パート従業員の労働時間について、『スケジュール管理ソフト』を用いてシフトを組んでいる。今後は、上述のような労働時間管理を徹底するために、『スケジュール管理ソフト』をフル活用するだろう。当方の悪い予感が的中してしまったようである(「Topics2012年11月2日 スケジュール管理ソフト」参照)。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」、「Walmart

12月4日 Medicaid拡充:州政府最大の課題 
Source :State lawmakers gird for battle over Medicaid expansion (Washington Post)
PPACAで、Medicaid拡充策は次のようになっている。
○Medicaid加入資格緩和に消極的な州
  • Arkansas
  • Colorado
  • Florida
  • Idaho
  • Iowa
  • Louisiana
  • Maine
  • Michigan
  • Mississippi
  • New Jersey
  • North Dakota
  • South Carolina
  • South Dakota
  • Tennessee
  • Texas
  • Utah
  • Virginia
  • Wisconsin
連邦最高裁の6月の判決で、加入資格緩和策を採らなかった州政府に対するペナルティは違憲とされた(「Topics2012年6月30日 医療保険改革法に合憲判決」参照)。これにより、加入資格を緩和するかどうかの判断は、州政府に委ねられた形となっている。

ところが、州政府にとっては、裁量権が発生したがために悩みも大きくなっている。その最大の課題は財政負担だ。

今の州政府の感覚は次のようなものである。
  1. そもそもMedicaidに関する負担は重く、できれば加入資格を絞って財政負担を減らしたいところである。

  2. 今回の拡充策も、当初は連邦政府が追加負担分を全額負担してくれるが、やがて徐々に州政府の負担が増えてくる。

  3. "Fiscal Cliff"が議論されている中で、本当に連邦政府が今のスキームで財政負担してくれるかどうか、信用できない。まして、4年後に大統領や連邦議会を共和党が握ったら・・・。
今のところ、各州の方向性は、報道ベースでしかわからないし、州知事の意向だけが伝わっているケースもあるが、一応これまでの情報を右表にまとめておく。いずれは、Exchangeの創設形態と比較できるような一覧表にまとめてみたい。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル

12月2日 退職者用P-Exchange 
Source :Mercer Launches Medicare Retirement Exchange (PLANSPONSOR)
以前、民間企業は退職者医療保険プランをPrivate Exchangeに移行しつつあることを記した(「Topics2012年10月19日 退職者受難の時代」参照)。その中で、敢えてMedicare加入資格を有する65歳以上向けの退職者医療保険プランのP-Exchangeを、Mercer他が設立した。

企業が退職者医療保険プランを切り離しつつある中、当面提供継続を考えている大企業の退職者にターゲットを絞ったもののようである。いわばクリームスキミングをしたうえで、P-Exchangeに参加してもらおうという算段であろう。自由市場は様々な活力を生み出すものである。

※ 参考テーマ「Private "Exchange"

12月1日 AZ州:連邦立Exchangeを選択 
Source :Arizona declines to set up state-based health insurance exchange (Reuters)
Kaiser Health News
11月28日、AZ州知事が、Exchangeの設立は連邦政府に委ねる旨を公表した。理由は、制度設計に不明な点が多いことと、設立・運営コストを州民に賦課する訳にはいかないとの2点である。いずれも、真の理由ではなく、元々Obamacareが気に食わない、ということなのだろう。

これで、正式表明かどうかはともかく、"State-based"が21州、連邦立が20州となっている。これに"Partnership"を加えると、過半の州で連邦政府が何らかの役割を果たさなければならなくなる情勢である。これはやはりObama政権にとっては誤算であろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル