10月29日(2) 457(b)プラン Source : Comparison of 457(b) Plans, 401(k) Plans, 403(b)Plans, and Deemed IRAs

457(b)プランとは、主に地方自治体が提供する確定拠出型プランであり、上記sourceは、他の確定拠出型プランとの比較である。ご参考まで。

10月29日(1) 目標は「相互承認」 Source : Speech by SEC Commissioner Paul S. Atkins

上記sourceは、10月26日、フランスにおいて、Atkins SEC委員が行ったスピーチである。その2ページ目最終段落から3ページ目にかけて、会計基準について触れており、そこには、大変重要なメッセージが込められている。

  1. 今年はじめに示されたロードマップ(「Topics2005年4月22日 努力目標は2009年」参照)に従って米欧が協力すれば、2007-2009年で差異調整表はなくすことができると楽観している。

  2. 文化、法制、債権債務関係などの違いから、真の「同等」を求めるという目標は、幻想にすぎない。我々の最終目標は、「相互承認(mutual recognition)」という形式であろう。

  3. CESRの報告書(「Topics2005年4月29日 会計基準の同等性」参照)は出されているものの、欧州委員会の最終決定が、アメリカ基準に事実上の調整表を求めるようなことにはならないと期待している。
このスピーチを読んでいて、残念な一文があった。それは、次のようなものである。
"We in the U.S. are keenly aware that unnecessary reconciliation only imposes costs on investors on both sides of the Atlantic."
この文章の最後に、"and the Pacific"と入れてもらえないところに、日本の悲しさを感じる。

それはさておき、これで、欧州委員会、アメリカSECとも、会計基準については相互承認(mutual recognition)を目指すことを明確にしたことになる(「Topics2005年4月21日 EU vs. SEC 会計基準の相互承認」参照)。 日本も間違いなく、この方向で進まなければならない(日本の場合は、国際会計基準もアメリカ基準も意識せざるを得ないところに辛さはあるが)。

実は、ちょうど2年前、私が担当して、会計基準に関する意見書(日本語版英語版)を作成、公表したことがある。その際、日本の会計の世界をリードする学者から、「相互承認、mutual recognitionは、コンバージェンスに反対していると見られる」と批判された。この学者は、相互承認とコンバージェンスを対立概念として捉えていたわけだが、実は、相互承認とコンバージェンスは実質的には同義なのである。つまり、コンバージェンスを進めなければ相互承認はあり得ないということなのである。このことを、米欧の証券監督当局はしっかり認識しているからこそ、最終目標を「相互承認」と明言したのだ。

日本のリーダーがそうした判断に至らなかったことは、日本の金融資本市場にとって不幸なことであった。

10月28日(2) Wal-Martのコスト抑制戦略 Source : Wal-Mart Memo Suggests Ways to Cut Employee Benefit Costs (New York Times)

Wal-Martは、せっかく企業イメージを改善しようと、医療保険プランを追加し、無保険従業員を減らすプランを公表したばかりだった(「Topics2005年10月26日(2) Wal-Martの無保険者対策」参照)のに、こんな内部メモが流出してしまった。Wal-Mart側は、隠すつもりはないようだが、いろいろな議論を巻き起こしており、マイナス・イメージは避けられない。

以下、内部メモの概要。
  1. べネフィット・プランの主な課題

    1. コストの趨勢

      Wal-Mart社のベネフィット・コストは、2002〜2005年で急増している。コスト額は、$2.8Bから$4.2B、年率15%の伸びとなっている。また、売上高比率は1.5%から1.9%と上昇している。売上高比率を一定に抑えることが重要である。(←J国の医療費抑制目標と同じ!)

      内訳を見ると、医療費が$1.5B(19%増)、有給休暇が$1.4B(14%増)、401(k)プラン拠出が$740M(13%増)となっている。同期間、雇用の増加は5%、売上高は11%増である。

      医療費が急増している背景には、次のようなWal-Mart従業員の特性があるとみられる。

      1. 従業員の高齢化のスピードが、全国平均よりも速い。Wal-Mart社は0.50歳/年、全国平均は0.12歳/年。
      2. 従業員の罹病率の上昇スピードが速い。特に、肥満に関連する病気(心臓冠動脈疾患、糖尿病等)について、当てはまる。
      3. 救急医療、入院治療の利用が多く、処方薬、外来診療の利用が少ない。特に、低サラリー層にその傾向が強い。ちょうどMedicaidの利用パターンとよく似ている。

      401(k)プラン、有給休暇の拠出金が増えているのは、従業員の勤続年数が上昇傾向にあるためである。勤続年数が賃金やベネフィットに与えるインパクトを前提にすると、勤続7年の従業員に関する雇用コストは、勤続1年の従業員のそれよりも、55%も高くなる。しかし、生産性の面では、ほとんど変わらない(図表2参照)。

    2. 従業員の満足度(略)

      図表3参照。

    3. 社会の評価

      Wal-Mart社に対する評価は、大部分、賃金とベネフィットに関するところで決まっているとみられる。特に、医療保険については、労働組合、非営利団体等が、当社の医療保険にターゲットを絞って、運動を繰り広げている。また、州政府にとって、Medicaidに関する負担が重くなってきており、それに関連する当社への批判も高まっている。

      誤解に基づく批判もあるが、批判されても仕方ない部分があることも事実である。

      1. 従業員は、平均で、所得の8%を医療負担に費やしている。これは、全国平均の約倍である。
      2. そのため、会社が提供する医療保険プランへの加入率が低くなっている。当社では加入率が48%だが、全国平均では68%となっている。
      3. 公的医療保障制度への加入割合が高い。Medicaid加入率が5%(全国平均は4%)、子供の公的医療保障制度への加入率が27%(全国平均は22%)となっている。また、無保険者の割合も高い。(図表5参照)


  2. ベネフィット戦略の改革提案

    1. 9つの改革の方向性(図表6参照)

      これらの改革を進めることで、2011年時点の売上高比率を2.3%から2.0%に引き下げることができるとみている。特に、改革Dは、コスト抑制に大きく貢献するとみられる。

      1. 医療保険プランの加入資格を見直す。例えば、勤続時間1000時間とすると、正規社員は約6ヶ月(現行通り)、パート社員は約1年(現行2年)に相当する。
      2. 配偶者への補助を抑制し、従業員とその子供への医療費を増やす。
      3. より多くの医療情報、医療保険情報を、従業員に提供する。これにより、例えば、救急医療の利用を抑制する。
      4. 会社負担の生命保険給付額を最高$12,000に抑える(現行は、年間給与が上限)。
      5. 店舗あたりの労働時間の抑制、パート社員の増加、従業員一人あたりの労働時間の増加、などの対策により、ベネフィットコストの効率を高める。しかし、パート社員を増やすことは、医療保険加入率を下げることにつながり、社会からの批判を招きやすい。
      6. 診療方法の組み合わせを改善し、コストの抑制につなげる。
      7. パフォーマンスの高い医療機関、医師のネットワークを広げる。
      8. ベネフィットのパッケージ化、カフェテリア化を進めて、従業員の選択肢を拡大し、満足度を高める。
      9. 店舗内に診療所を設ける。救急医療の代替に使える。


    2. 5つの実行策(図表7参照)

      1. 全従業員を、確定拠出型の医療保険プランに移行させる。併せて、HSAsを創設する。
      2. 401(k)プランを見直し、拠出額を賃金の4%から3%に縮減する。
      3. ベネフィット全体の構造を見直し、より健康的で、生産性の高い労働者を惹きつける。例えば、次のような方策を講じる。
        • どの職種にも、肉体労働を含ませる。キャッシャーでもカーとの運搬を行う。
        • 健康的な食品の購入にポイントを付加する。
        • 教育費補助など健康的な従業員に魅力的なベネフィットを提供する。
      4. 医療ベネフィットに対して、戦略的な投資を行う。
      5. 従業員、社会とのコミュニケーションを改善し、企業としての信頼を得る。
このようなメモに対して、やはりというべきか、いろいろな議論が巻き起こっている (Kaisernetwork)。

一番の批判の的は、パート社員を増やすという戦略である。医療費コスト抑制策ではあるが、所得の少ない従業員層が増えるのも確かである。

次に、肥満の応募者は採用しない、とも読めるような採用方針である。これについては、雇用差別禁止に該当するかどうか、両論あり得るだろうが、疑わしい方針はなるべく回避すべきではないだろうか。健康状態と差別禁止の関係については、拙稿「障害者差別禁止法に関する連邦最高裁判所判決について (2002/7/3)」を参照されたい。

もう一つ、キャッシャーにもカート運搬などの肉体労働をさせるべきとの方針にも疑問が呈されている。当然、キャッシャーには女性が多い。性差別はいけないとはいっても、Wal-Martが扱う商品には、女性がなかなか扱えないようなものもたくさんある。

こうしていろいろな議論を巻き起こしている内部メモであるが、私としては、この内部メモから伝わってくる「真剣さ」を評価したい。つまり、経営の継続性と、雇用、ベネフィットの連関を真剣に議論しようという姿勢が伝わってくるのである。

10月28日(1) 再びSECがGMを調査 Source : Inquiry Into G.M. Accounts by S.E.C. (New York Times)

昨年に続き(「Topics2004年10月22日(3) 年金会計疑惑」参照)、再びSECGMの財務報告について、調査に入っているとのことである。

やはり、主たるターゲットは、年金会計のようである。GMの年金給付債務/資産については、GM側は、給付債務$89.4B、年金資産$90.9Bと、$1.5Bの資産超過と公表しているが、これに対して、PBGCは、疑義を呈している(「Topics2005年10月5日 GM vs PBGC」参照)。また、DelphiのChapter 11申請により、年金債務の増加が予想されている(「Topics2005年10月10日 GMの負担増」参照)。

こうした状況の中で、SECが調査に入ったとなると、否応なしに注目せざるを得ない。特に、年金債務については、割引率が0.25%下がるだけで、$2.3Bの増加となる。もし、これが正しければ、割引率の置き方次第で、GM年金プランは、積立超過にも債務超過にも、簡単に振れることになる。SECは、この割引率の置き方が適正であるかどうかに注目しているようで、参考のために、DaimlerChryslerにも調査に入っているとのことである。

ちなみに、27日の株価は、急落した模様である(Yahoo-Finance)。

10月27日(2) 候補者指名返上 Source : Miers Withdraws Nomination (Washington Post)

大変な事態となった。最高裁判事指名候補者のMiers氏が、指名を返上するとの手紙をBush大統領に送り、大統領も承諾したとのことである。

Bush政権にとっては大変な痛手となった。次の候補者の選定は、大変難しいものと思われ、しばらく空席が続くのではないだろうか。また、White Houseと上院共和党との関係も、しばらくギクシャクしたものとなろう。

10月27日(1) アメリカ公的年金の歴史 Source : Social Security: A Program and Policy History (Social Security Bulletin)

上記sourceは、アメリカの公的年金の歴史をコンパクトに記したものである。参考までに掲載しておく。

なお、この記事が掲載された、"Social Security Bulletin"は、社会保障庁(SSA)の定期刊行物である。この機関紙に、近く、日本の企業年金に関する記事が掲載される予定と聞いている。掲載になれば、当websiteでも紹介したい。

10月26日(2) Wal-Martの無保険者対策 Source : Wal-Mart to Expand Health Plan for Workers (New York Times)

Wal-Martといえば、安売り展開をする一方で、従業員に充分な医療保険プランを提供していないということで、『社会的責任を果たしていない』、『Medicaidに負担を押し付けている』、『無保険者増加の一級戦犯』等々、様々な批判を浴びていた(「Topics2005年6月6日 Wal-Mart Taxの広がり」参照)。こんなwebsiteまで作られて、ネガティブ・キャンペーンを展開されている。

そのWal-Martが、遂に重い腰を上げ、従業員の保険プラン加入を促すベネフィットを、2006年から提供することにした。新たなプランの概要は次の通り。
  1. 毎月の保険料が$11と、負担の少ない医療保険プランを提供する。
  2. 併せて、HSA(Health Savings Accounts)の創設、拠出を行う。(「Topics2004年1月7日(1) 医療貯蓄勘定」参照)
  3. 予防治療を推奨する意味もあって、免責額が適用になる前に、従業員は3回まで診療を受けることができる。
  4. 初年度の保険給付は、$25,000を上限とする。2年度以降は、この給付制限は取り外される。
  5. 自己負担は、処方薬の$300から、入院費$1,000までの範囲となる。
このようなプランを導入することにより、現在、半分にも満たない加入率を引き上げようということである。しかし、Wal-Martは、加入率の推計値は公表していない。

これに関する医療保険関係者のコメントは、次の通り。
  1. 保険料が安いことで、多くの従業員が保険プランに加入するとみられる。
  2. 若い従業員には適しているが、年配の従業員にとっては、負担が重くなる可能性が高い。保険免責額が$1,000と高いことによる部分が大きい。
  3. 高額治療が受けられない。特に初年度については、キャップがあるため、受けられない可能性が高くなる。
  4. 免責額を支払う前に3回の診療を認めている点は、評価できる。
  5. 保険給付の範囲が限られるので、複雑、高度な診療は受けられない。
また、医療保険プランを新たに提供するということで、Wal-Martの収益が影響を受けるのではないかと予想され、実際、マーケットの評価は、少し下がっているようだ(Yahoo Finance)。

10月26日(1) Post Greenspan Source : President Appoints Dr. Ben Bernanke for Chairman of the Federal Reserve (The White House)

当websiteでも注目してきた人事なので、関連sourcesを掲載しておく。 当websiteでは、「Topics2004年9月23日 次期FRB議長」で、候補者リストを紹介している。その際、次のようなコメントを残していた。
Greenspan議長は、年金問題にも目配りできる識者である。経済理論一辺倒ではないFRB議長を誰がこなすことになるのか、注目していきたい。
Bernanke氏は、理論派といわれており、年金問題に関心があるのかどうか、不明である。もう少し情報収集が必要かも。

10月24日 PBGCも納得か? Source : United Says Objections to Disclosure are Resolved (Plansponsor)

Chapter 11脱出最後の段階に来て、PBGCほか無担保債権者から大クレームを受けていたUALが、「問題は解決した」とのコメントを公表したそうだ(「Topics2005年10月18日(3) PBGCがUAL再生プランに反発」参照)。PBGCも、取り敢えずは矛先を収めたようだが、まだまだ油断はならないとの姿勢を崩していない。この辺りがアメリカ社会の疲れるところである。