10月10日 GMの負担増 Source : Delphi Corporation Files Voluntary Chapter 11 Business Reorganization Cases to Execute Transformation Plan And Address Legacy Issues and High-Cost Structure in the U.S. (Delphi Press Release)

『倒産→PBGC送り』というパターンが、自動車産業にも広がり始めた。10月8日、Delphiという自動車部品メーカーが、Chapter 11を申請した。Delphiでは、確定給付プラン、医療保険プラン、生命保険などのベネフィットが提供されているが、Delphiは、医療保険、生命保険などを12月には終了することになると発表している。

そして、これらベネフィットの大半を、元の親会社であるGMが負担することとなっている。医療保険、生命保険などは、提供を停止すればそれで終わりだが、年金はそうはいかない。しかも、Delphiの年金プランには積立不足が発生している。Delphiは、継続基準で$4Bの積立不足と発表しているが、PBGCの独自計算によれば、(おそらく解散基準で)$11Bの積立不足となるそうだ(New York Times)。

GMは自社の年金プランは積立不足とはなっていないと主張している(「Topics2005年10月5日 GM vs PBGC」参照)が、DelphiのChapter 11申請により、確実に積立不足に陥ったことになる。GMのC/Fは問題ないといわれているものの、実際にlegacy costが目に見え始め、投資格付けはさらに急降下しかねない。そうなると、最終的には、Delphiの年金プランも含め、GMの年金プランは、PBGCへ移管されることになるだろう。

鉄鋼、航空会社とメジャー産業で続発したPBGCへの移管が、ついに自動車産業にも波及しつつある。

10月7日(2) Medicaid改革提案と無保険児童 Source : Study Questions National Governors Association Proposal for Medicaid (Kaisernetwork)

さる8月、National Governors Association (NGA)が、Medicaid改革提案書をまとめた。内容は、2月のNGA Winter Meetingで示されたものである(「Topics2005年3月3日 Bush vs. Governors」参照)。

これに関して、PICOという非営利団体が検証したところ、無保険児童が50〜150万人万人増加するとの結論を得たとのことである。また、当然のことながら、連邦政府がMedicaid関連支出を減額することには反対とも述べている。

民間医療保険プランが自己責任、負担増を求めている中、Medicaidに関しても同様の方向で制度変更するのか、それとも、もともとの制度主旨から変えないことで頑張るのか、はたまた無保険者対策としての是非はどうなのか。論点の尽きないところである。

しかし、今はっきり言えるのは、公的年金、Medicaidを大きく変革しようという、Bush大統領の熱意が消えつつあるということである。ハリケーン、イラク問題など、アメリカ国民にもっと身近で切実な問題が横たわっている中、これらの大きな改革に手をつける余裕はない。また、そういう社会問題がある中で、社会保障制度改革への支持は得にくい。制度改革もタイミングが重要なのである。

10月7日(1) 右派の苛立ち Source : New Questions From the Right on Court Pick (New York Times)

最高裁判事候補の指名に、共和党右派ならびに右派団体が苛立っている。上記source以外にも、Washington PostLos Angeles Timesなども、同様の報道を行っている。

なぜ、右派が苛立つのか。それは、候補者Harriet Miers女史の信条が明確な記録として残っているものがないからである(「Topics2005年10月3日 最高裁判事の指名」参照)。単にBush大統領のインナー・サークルというだけで指名に賛成すると、禍根を残しかねないというわけである。また、そのパーソナリティも広く知られているわけではない。右派にしてみれば、危なっかしくて、こんな候補に俄かに賛成することはできないということなのだろう。おそらく、苛立ちの裏側には、『一気に若い右派勢力を送り込むことで、最高裁判事内の右派グループ優勢を磐石にしたい』という目論見が崩れそうだという危機感があると思われる。

しかし、ここで最高裁長官に続いて、バリバリの右派を指名すれば、大統領としての見識が問われるだろうし、民主党は猛烈に反発するだろう。おそらく、Roberts長官の承認がスムーズに行われたのは、次の最高裁判事候補には穏健派を持ってきてくれとの民主党側の暗黙のメッセージがあったのではないだろうか。

実際、上記の記事を見ても、共和党全体が怒りに揺れているわけでもない。Miers女史と面会して好感を持った上院議員もいるようである。司法判断記録がなければ、せめて個人情報を、ということで、これまでの職歴、家族構成、友人の証言など、異例なほど詳しく紹介された記事もあった(Los Angeles Times)。

上院での公聴会は、11月初めとのことである。それまでに、どのような地合いが生まれてくるか、Miers女史のこれからの面接活動にかかっている。

10月5日 GM vs PBGC Source : G.M. and a U.S. Agency See Pensions in Different Lights (New York Times)

GMの年金財政状況について、GMとPBGCの見解が異なっているとのことだ。 どうしてこのような差が出るか。GMは継続基準で計算、PBGCは解散基準で計算しているためだ。通常は、継続基準で公表しているが、各社はPBGCに対して解散基準も報告している。この解散基準数値は、対外秘となっているが、情報公開請求に基づいて、PBGCが公表したそうだ。

解散基準数値が必要となるのは、@買収されるときと、APBGCに移行するときである。

@に対応して、会計基準を解散基準に変更しようとする動きが強まっている(「Topics2005年6月21日(1) SECの会計基準改善提案」参照)。また、Aに対応して、年金改革法案で開示方法を変えようという提案が出ている(「Topics2005年6月28日(1) 企業年金改革法案」、(「Topics2005年7月29日 NESTEG Act of 2005の概要」参照))。

特に、NESTEGの場合、プランスポンサーの財務健全性が悪化すると、解散基準による積立不足を開示しなければならないとしている。タイミングの悪いことに、9月26日、Fitch Ratingsが、GMの格付けをBB+からBBに下げ、さらに引き下げの可能性も示した(Reuters)。なんと今年に入って、これで3度目の引き下げである。もしNESTEGの提案内容が立法化されると、GMは解散基準で開示しなければならなくなる。

どちらの面からも、GMにとっては不利な状況に追い込まれそうである。ちなみに、GMの株価は、この1年半あまり、低落傾向が続いている(Yahoo)。また、折角の富士重工株のトヨタへの売却(Market Watch)も、市場ではあまり評価されていないようだ。

10月3日 最高裁判事の指名 Source : President Nominates Harriet Miers as Supreme Court Justice (The White House)

9月30日の最高裁長官の就任(「Topics2005年9月30日(1) 若き最高裁長官誕生」参照)に続き、残る一人の最高裁判事について、Bush大統領が指名を行った。指名されたのは、White Houseで法律顧問を務めるHarriet Miers女史で、司法長官となったAl Gonzares(「Topics2005年2月4日(1) ゴンザレス司法長官承認」参照)の後任者であった。彼女もBush大統領のTexas人脈である。

彼女の政治信条は、おそらく保守派であろうと思われるが、これまで判事に就任したことがないため、司法判断上、保守派としての判断を下すかどうかは定かではない。こんなことは上院で質問されないだろうが、彼女が独身で子供がいないことは、リベラル的判断を下す可能性をもたらすとも考えられる。むしろ、今後の指名委員会での質疑で、彼女の信条が明らかになってくるのだろう。

各マスコミの第一報は、次の通り(Washington PostCNNNew York Times)。