Source : | Lower Taxes, Lower Premiums (Families USA) |
2014年から始まる個人の保険プラン加入義務を政策面で支援する二つのツールが、Tax Creditsと"Exchange"である(医療保険改革法案比較表)。上記sourceは、その両方を丁寧に説明しているので、大変理解に役立つ。ポイントをまとめておく。※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
- Tax Credits
- 対象者数
2014年時点で約2,860万人。うち、PL200〜399%の層が3分の2を占める。
- 減税総額(含む還付)
2014年時点で約$110.1B。うち、PL200〜399%の層が受け取る総額は、約44%。
- 勤労世帯への支援
対象者のうち95%は勤労世帯となる。失業者は全体の2%を占めるに過ぎない。
- 小規模企業従業員への支援
対象者のうち52.9%は、従業員100人未満の小規模企業に勤める世帯となる。
- 保険加入への支援
対象者のうち無保険者は48%を占める。
- 受給資格
- PL133〜400%の世帯。
- PL133%未満(通常はMedicaid)でMedicaidの受給資格のない世帯。合法移民だが入国後5年未満の者など。
- 不法移民には受給資格はない。
- 雇い主から医療保険プランの提供を受けている者のうち、次のような条件を満たす者。
- 保険料負担が家計収入の8%以上となる世帯は、"Exchange"で保険プランを購入する権利を有すると同時に、tax creditsの受給資格を有する。
- PL400%以下の世帯。
- 上記Cの場合の受給方法は次の2通り。
- 保険料負担が家計収入の8〜9.8%の場合:雇い主の保険料負担分を"free choice voucher"として受け取り、"Exchange"で保険プランを購入することができる。この場合、雇い主は医療保険プランの提供義務を果たしたものとみなされ、ペナルティを負担する必要はない。
(管理人注:この場合、『tax creditsを受け取らないが、"Exchange"でより安い保険プランを購入することができるようになるので、本人の保険料負担は実質的に軽減されることになる』という意味だと思われる。)
- 保険料負担が家計収入の9.8%超の場合 または 雇い主の負担が保険給付の60%未満の場合:Tax creditsを受け取る。大企業の場合には、それに対してペナルティが課される。
- Tax creditsの特徴
- 受給資格を持つ者が加入した保険者に直接支払われる。
- 納税申告書の提出や還付を待つ必要がなく加入時に利用できる。
- 還付つき税額控除制度であり、納税がない、または少なくても受け取ることができる。
- 減税額の計算方法
- 家計の所得に応じた『保険料負担の上限額』を算出する。所得が低い方が『保険料負担の上限額』の所得に対する割合も低くなるように規定されている。
- 居住地域の"Exchange"で、"silver plan"(後述)の保険料を確認する。
- 税額控除額="silver plan"保険料−『保険料負担の上限額』
- "Exchange"
- 個人や小規模企業従業員が、一定の選択肢の中から医療保険プランを選択・購入できるよう、"Exchange"を創設する。
- "Exchange"で保険プランを提供する保険者は、既往症で保険加入を拒否することはできない。また、保険料の上乗せをすることも認められない。
- 保険プランは定められた最低給付内容を含めなければいけない。
- 加入希望者に、民間プラン、公的保証プランの紹介、tax creditsの算出などのサービスを提供する。
- "Exchange"では、地域毎(zip code毎らしい)に4つのタイプのプランを提供する。
Plan 保険給付割合 Platinum 90% Gold 80% Silver 70% Bronze 60%
Source : | Income, Poverty and Health Insurance Coverage in the United States: 2009 (Census Bureau) |
2009年のセンサスの一部が公表された。貧困層の大半は、Medicaidなどの公的医療保障プログラムに加入できる。無保険者が増えているのは、失業により医療保険プランを失った人々が多かったためと思われる。それでも、COBRA、HIPAA、Medicaidで救われた人達は多いと思う。
- 貧困層
貧困層の人口は4,360万人、全人口に占める割合は14.3%と、いずれも前年に較べて悪化した。また、貧困層の人口数は、統計史上最悪の数字となった(Washington Post)。- 無保険者
無保険者数は5,070万人、全人口に占める割合は16.7%と、これも前年よりも悪化した。
それよりも、この貧困層を公的保証プログラムで抱え続けることによる財政支出の膨張の方が気になる。ただでさえMedicaid支出は州財政を圧迫している。それに加えて、2014年からは低中所得者層向けのTax Creditsも開始され(これについては後日まとめる予定)、ますます膨張圧力は高まっていくことになる。
※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Pension Freezes Continue Among Fortune 1000 Companies in 2010 (Towers Watson) |
Fortune 1000のうち、DBプランを運営している企業が減っているうえに、凍結されたDBプランがどんどん増えている。Figure 1. DB sponsorship among Fortune 1000, 2004-2010これを業種別にみると、業界内でDBプランを運営している企業の割合と、凍結されたDBプランを有する企業の割合が、ほぼ反比例の関係にある。DBプランに愛着を持つ業界は、凍結しないように頑張っているという姿が浮かび上がる。
Fortune 1000 list year
Number of DB plan sponsors
Sponsors of actively accruing DB plans with no frozen plans
Sponsors of one or more frozen DB plans
2010
586
378
208
2009
607
417
190
2008
624
455
169
2007
638
500
138
2006
627
514
113
2005
627
556
71
2004
633
588
45
Source: Towers Watson.
Figure 5. DB sponsorship in the 2010 Fortune 1000 by industryこれを見ていると、金融業界で、凍結されたDBプランを有する企業の割合が半分を超えているところに、興味を覚える。ちなみに、最近DBプランを変更した企業のリストはこうなっている(⇒Pension Right Center)
Industry (sorted by % of DB sponsors)Firms in Fortune 1000
Number of DB plan sponsors
Firms with no pension freezes
Firms that have frozen one or more DB plans
% of firms that are DB plan sponsors
% of firms with no pension freezes
% of firms with one or more frozen DB plans
Aerospace and defense
7
7
6
1
100.0%
85.7%
14.3%
Utilities
63
59
53
6
93.7%
89.8%
10.2%
Food and beverage
32
29
23
6
90.6%
79.3%
18.8%
Manufacturing
155
128
88
40
82.6%
68.8%
31.3%
Automobiles and transportation equipment
21
17
10
7
81.0%
58.8%
41.2%
Natural resources
64
48
35
13
75.0%
72.9%
27.1%
Energy
34
22
16
6
64.7%
72.7%
27.3%
Wholesale
39
25
12
13
64.1%
48.0%
52.0%
Insurance
64
40
32
8
62.5 %
80.0%
20.0%
Financial services
66
40
19
21
60.6%
47.5%
52.5%
Transportation
32
19
11
8
59.4%
57.9%
42.1%
Communications
53
29
13
16
54.7%
44.8%
55.2%
Pharmaceuticals
22
9
6
3
40.9%
66.7%
33.3%
Professional and business services
65
26
13
13
40.0%
50.0%
50.0%
High technology
78
29
12
17
37.2%
41.4%
58.6%
Retail
113
37
17
20
32.7%
45.9%
54.1%
Health care
50
14
10
4
28.0%
71.4%
28.6%
Property and construction
22
5
2
3
22.7%
40.0%
60.0%
Tourism and leisure
17
3
0
3
11.8%
n/a
100%
Education
3
0
0
0
0.0%
n/a
n/a
Source: Towers Watson.
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」
Source : | Union Battle in California Threatens S.E.I.U. (New York Times) |
Kaiser Permanenteの従業員43,000人の代表権を巡って、同じ労組であるSEIUとNUHWが争っている。しかも、NUHWの代表者は、かつてSEIUの有力幹部で、スキャンダルで解任された人間である(「Topics2009年2月28日 "Change to Win"の内紛」参照)。
要するに、労組リーダー間の権力闘争である。従業員の投票は、今月13日から来月4日まで、郵便で行われる。
中間選挙を控え、民主党支持基盤である労組が激しい内紛を繰り広げているようでは、民主党候補者達も気が気ではあるまい。
※ 参考テーマ「労働組合」、「中間選挙(2010年)」
Source : | Cuts in Social Security (Wall Street Journal) |
今年2月のObama大統領の指示により、財政健全化プランを検討する超党派の委員会が設置されている。名前は、National Commission on Fiscal Responsibility and Reform。今年12月1日までに報告書を提出することとなっており、既にあと3回の会合が予定されている。その最終回は、まさに12月1日となっている。
同委員会は、中長期的な財政健全化策の検討を行うこととなっている。その検討課題の中にはSocial Securityも含まれており、そのための分科会も設けられている。
上記sourceでは、そのSocial Security改革の選択肢が紹介されている。もちろん、この委員会報告書は、他の政策課題も議論しているので、Social Security改革だけで判断する訳にはいかない。それでも、共同議長2人(民主+共和)、民主党議員6人、共和党議員6人、民間委員4人という構成の中で、結論を出すのは至難の業である。規定により、報告書は14人以上の賛成を得なければならないからだ。
- 受給開始年齢の引き上げ
- 富裕層の年金額の削減
- COLA適用の制限(富裕層のみか)
- Social Security Taxの課税対象金額($106,000)の引き上げ
- 税率そのものの引き上げ
また、報告書に賛成が集まって公表されたとしても、実際に連邦議会で検討が始まれば、大変な国民的な議論となろう。もう一度医療保険改革を議論しようということに等しい。
それだけの政治力が、White Houseと連邦議会民主党に残されているかどうか。すべては中間選挙結果次第である。
※ 参考テーマ「公的年金改革」
Source : | Immigration overhaul could leave gay couples out (Washington Post) |
同性婚を州として認めているのは、5つの州とD.C.だけである(「Topics2010年8月17日(1) CA州同性婚はお預け」参照)。それらの州では、婚姻証明書が発行され、異性婚と同様の権利が賦与される。しかし、それは州レベルに限っての話であり、連邦レベルでは認められない。例えば、Social Securityは、同等の扱いにはならない。
上記sourceでは、その一例として、移民法を挙げている。
同性婚を認められたカップルのうち、どちらかが外国人であるケースが24,000組あるとみられている。通常であれば、配偶者の一方がアメリカ国籍を有していれば、他方にも市民権が与えられるはずである。しかし、同性婚は連邦レベルでは認められないため、外国人の配偶者にはアメリカの市民権が賦与されない。極端な場合には、不法移民として認定されてしまうかもしれない。
同性婚推進派は、これは不公平であるとして、移民法改革の課題に同性婚も含めるよう求めている。しかし、移民法改革推進派は、こうした要求に冷淡だそうだ。ただでさえ、Obama政権下でなかなか移民法改革が進まないのに、これに同性婚というもう一つ大きな文化摩擦を持ち込めば、ほとんど改革は不可能となってしまう。
また、ラテン系のキリスト教団体は、移民法改革の最大のスポンサーであると同時に、同性婚反対の立場を鮮明にしている。多様性を認めようとするアメリカ社会は、複雑な歴史文化の対立を解決する知恵を求められている。
※ 参考テーマ「同性カップル」、「移民/外国人労働者」
Source : | National Health Spending Projections: The Estimated Impact Of Reform Through 2019 (Health Affairs) |
今回の医療保険改革法を考慮した2019年までの医療費推計が公表された。そのポイントは次の通り。医療費の伸び率はやはり抑えられないようである。上のグラフをみてもわかる通り、現行法下では2014年に大きく伸びることになっている。これは、この年に"Exchange"が創設され、低所得者層を中心に無保険者が大量に保険に加入することが想定されているためである。当然、公的支出もそれに伴って大きく伸びることになるだろう。
- 医療保険改革法以前の推計と比較すると、医療費伸び率が0.2%ポイント上昇する。
- 2019年における医療費支出のGDPに占める割合は、0.3%ポイント上昇する。
- 医療費支出の毎年の伸び率は、次のグラフの通り。
もう一つ要注意なのは、以前の推計では2010年、今回の現行法下での推計では2011年に、医療費支出の伸びががくんと低下しているところがある。これは、例のMedicare償還額の大幅引き下げを反映したものである。しかし、実際に今年起きたように、連邦議会はこれを先延ばしする傾向にある。その意味で、今回の推計も、過少推計になっている可能性がある。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | With Eye on Redistricting, G.O.P. Primed for Statehouse Gains (New York Times) |
雇用統計でもお馴染みの通り、今年アメリカは、10年に一度のセンサス(国勢調査)を実施している。『民主主義の国』アメリカでは、このセンサスを基に、連邦議会下院の選挙区割の見直しを行う。これを"Redistricting"と呼ぶ。センサスが10年に一度ということは、この選挙区割り見直しも10年に一度ということになり、今後10年間の国政を左右する重要な作業となる。
では、この選挙区割りの作業は誰が行うのかというと、当然、州によって異なるが、概ね、州議会が担当し、州知事の承認を得るというのが一般的のようである。そこで、ちょっと面倒ではあったが、現時点の州知事、州議会の党派勢力、選挙区割りの体制について、比較表を作成してみた。
これを見ると、現段階では、民主党が州議会をコントロールしているのが27州。そのうち知事も民主党が占めているのは16州ある。一方の共和党は、州議会では14州をコントロールしている。うち知事も共和党が占めているのは8州のみである。
これらの中で、知事・州議会が選挙区割りに大きな影響力を及ぼし得る、つまり「ゲリマンダー(Gerrymandering)」が可能な州は、民主党が14州、共和党はたった4州しかない。
ところが、上記sourceでは、中間選挙で州レベルでも共和党が勢力を伸ばし、選挙区割りに影響力を持つのではないか、と見ている。また、過去の中間選挙で、大統領の党派が州議会で議席を伸ばした例は、たった2回しかないそうだ。 中間選挙が終わった時点で、上述の比較表を改定してみたいと思う。
さて、当websiteでも、ゲリマンダーを紹介したことがある(「Topics2002年9月12日 Maryland州第8選挙区」、「Topics2002年11月6日(1) 中間選挙結果」参照)。もうすぐ10年一サイクルを迎える、ということにもなる。
※ 参考テーマ「中間選挙(2010年)」