9月19日 Tax Creditsと"Exchange" 
Source :Lower Taxes, Lower Premiums (Families USA)
2014年から始まる個人の保険プラン加入義務を政策面で支援する二つのツールが、Tax Creditsと"Exchange"である(医療保険改革法案比較表)。上記sourceは、その両方を丁寧に説明しているので、大変理解に役立つ。ポイントをまとめておく。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月18日 7人に1人が貧困層 
Source :Income, Poverty and Health Insurance Coverage in the United States: 2009 (Census Bureau)
2009年のセンサスの一部が公表された。 貧困層の大半は、Medicaidなどの公的医療保障プログラムに加入できる。無保険者が増えているのは、失業により医療保険プランを失った人々が多かったためと思われる。それでも、COBRA、HIPAA、Medicaidで救われた人達は多いと思う。

それよりも、この貧困層を公的保証プログラムで抱え続けることによる財政支出の膨張の方が気になる。ただでさえMedicaid支出は州財政を圧迫している。それに加えて、2014年からは低中所得者層向けのTax Creditsも開始され(これについては後日まとめる予定)、ますます膨張圧力は高まっていくことになる。

※ 参考テーマ「人口/結婚/家庭/生活」、「無保険者対策/連邦レベル

9月17日 DB凍結が止まらない 
Source :Pension Freezes Continue Among Fortune 1000 Companies in 2010 (Towers Watson)
Fortune 1000のうち、DBプランを運営している企業が減っているうえに、凍結されたDBプランがどんどん増えている。
Figure 1. DB sponsorship among Fortune 1000, 2004-2010

Fortune 1000 list year

Number of DB plan sponsors

Sponsors of actively accruing DB plans with no  frozen plans

Sponsors of one or more frozen DB plans

2010

586

378

208

2009

607

417

190

2008

624

455

169

2007

638

500

138

2006

627

514

113

2005

627

556

71

2004

633

588

45

Source: Towers Watson.

これを業種別にみると、業界内でDBプランを運営している企業の割合と、凍結されたDBプランを有する企業の割合が、ほぼ反比例の関係にある。DBプランに愛着を持つ業界は、凍結しないように頑張っているという姿が浮かび上がる。
Figure 5. DB sponsorship in the 2010 Fortune 1000 by industry                              


Industry (sorted by % of DB sponsors)

Firms in Fortune 1000

Number of DB plan sponsors

Firms with no pension freezes

Firms that have frozen one or more DB plans

% of firms that are DB plan sponsors

% of firms with no pension freezes

% of firms with one  or more frozen DB plans

Aerospace and defense

7

7

6

1

100.0%

85.7%

14.3%

Utilities

63

59

53

6

93.7%

89.8%

10.2%

Food and beverage

32

29

23

6

90.6%

79.3%

18.8%

Manufacturing

155

128

88

40

82.6%

68.8%

31.3%

Automobiles and transportation equipment

21

17

10

7

81.0%

58.8%

41.2%

Natural resources

64

48

35

13

75.0%

72.9%

27.1%

Energy

34

22

16

6

64.7%

72.7%

27.3%

Wholesale

39

25

12

13

64.1%

48.0%

52.0%

Insurance

64

40

32

8

62.5 %

80.0%

20.0%

Financial services

66

40

19

21

60.6%

47.5%

52.5%

Transportation

32

19

11

8

59.4%

57.9%

42.1%

Communications

53

29

13

16

54.7%

44.8%

55.2%

Pharmaceuticals

22

9

6

3

40.9%

66.7%

33.3%

Professional and business services

65

26

13

13

40.0%

50.0%

50.0%

High technology

78

29

12

17

37.2%

41.4%

58.6%

Retail

113

37

17

20

32.7%

45.9%

54.1%

Health care

50

14

10

4

28.0%

71.4%

28.6%

Property and construction

22

5

2

3

22.7%

40.0%

60.0%

Tourism and leisure

17

3

0

3

11.8%

n/a

100%

Education

3

0

0

0

0.0%

n/a

n/a

Source: Towers Watson.

これを見ていると、金融業界で、凍結されたDBプランを有する企業の割合が半分を超えているところに、興味を覚える。ちなみに、最近DBプランを変更した企業のリストはこうなっている(⇒Pension Right Center

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

9月16日 戦後最大の労組対決 
Source :Union Battle in California Threatens S.E.I.U. (New York Times)
Kaiser Permanenteの従業員43,000人の代表権を巡って、同じ労組であるSEIUNUHWが争っている。しかも、NUHWの代表者は、かつてSEIUの有力幹部で、スキャンダルで解任された人間である(「Topics2009年2月28日 "Change to Win"の内紛」参照)。

要するに、労組リーダー間の権力闘争である。従業員の投票は、今月13日から来月4日まで、郵便で行われる。

中間選挙を控え、民主党支持基盤である労組が激しい内紛を繰り広げているようでは、民主党候補者達も気が気ではあるまい。

※ 参考テーマ「労働組合」、「中間選挙(2010年)

9月15日 受給開始年齢引き上げを検討 
Source :Cuts in Social Security (Wall Street Journal)
今年2月のObama大統領の指示により、財政健全化プランを検討する超党派の委員会が設置されている。名前は、National Commission on Fiscal Responsibility and Reform。今年12月1日までに報告書を提出することとなっており、既にあと3回の会合が予定されている。その最終回は、まさに12月1日となっている。

同委員会は、中長期的な財政健全化策の検討を行うこととなっている。その検討課題の中にはSocial Securityも含まれており、そのための分科会も設けられている。

上記sourceでは、そのSocial Security改革の選択肢が紹介されている。 もちろん、この委員会報告書は、他の政策課題も議論しているので、Social Security改革だけで判断する訳にはいかない。それでも、共同議長2人(民主+共和)、民主党議員6人、共和党議員6人、民間委員4人という構成の中で、結論を出すのは至難の業である。規定により、報告書は14人以上の賛成を得なければならないからだ。

また、報告書に賛成が集まって公表されたとしても、実際に連邦議会で検討が始まれば、大変な国民的な議論となろう。もう一度医療保険改革を議論しようということに等しい。

それだけの政治力が、White Houseと連邦議会民主党に残されているかどうか。すべては中間選挙結果次第である。

※ 参考テーマ「公的年金改革

9月14日 移民法と同性婚 
Source :Immigration overhaul could leave gay couples out (Washington Post)
同性婚を州として認めているのは、5つの州とD.C.だけである(「Topics2010年8月17日(1) CA州同性婚はお預け」参照)。それらの州では、婚姻証明書が発行され、異性婚と同様の権利が賦与される。しかし、それは州レベルに限っての話であり、連邦レベルでは認められない。例えば、Social Securityは、同等の扱いにはならない。

上記sourceでは、その一例として、移民法を挙げている。

同性婚を認められたカップルのうち、どちらかが外国人であるケースが24,000組あるとみられている。通常であれば、配偶者の一方がアメリカ国籍を有していれば、他方にも市民権が与えられるはずである。しかし、同性婚は連邦レベルでは認められないため、外国人の配偶者にはアメリカの市民権が賦与されない。極端な場合には、不法移民として認定されてしまうかもしれない。

同性婚推進派は、これは不公平であるとして、移民法改革の課題に同性婚も含めるよう求めている。しかし、移民法改革推進派は、こうした要求に冷淡だそうだ。ただでさえ、Obama政権下でなかなか移民法改革が進まないのに、これに同性婚というもう一つ大きな文化摩擦を持ち込めば、ほとんど改革は不可能となってしまう。

また、ラテン系のキリスト教団体は、移民法改革の最大のスポンサーであると同時に、同性婚反対の立場を鮮明にしている。多様性を認めようとするアメリカ社会は、複雑な歴史文化の対立を解決する知恵を求められている。

※ 参考テーマ「同性カップル」、「移民/外国人労働者

9月12日 今後10年の医療費推計 
Source :National Health Spending Projections: The Estimated Impact Of Reform Through 2019 (Health Affairs)
今回の医療保険改革法を考慮した2019年までの医療費推計が公表された。そのポイントは次の通り。
  1. 医療保険改革法以前の推計と比較すると、医療費伸び率が0.2%ポイント上昇する。

  2. 2019年における医療費支出のGDPに占める割合は、0.3%ポイント上昇する。

  3. 医療費支出の毎年の伸び率は、次のグラフの通り。
医療費の伸び率はやはり抑えられないようである。上のグラフをみてもわかる通り、現行法下では2014年に大きく伸びることになっている。これは、この年に"Exchange"が創設され、低所得者層を中心に無保険者が大量に保険に加入することが想定されているためである。当然、公的支出もそれに伴って大きく伸びることになるだろう。

もう一つ要注意なのは、以前の推計では2010年、今回の現行法下での推計では2011年に、医療費支出の伸びががくんと低下しているところがある。これは、例のMedicare償還額の大幅引き下げを反映したものである。しかし、実際に今年起きたように、連邦議会はこれを先延ばしする傾向にある。その意味で、今回の推計も、過少推計になっている可能性がある。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

9月11日 州議会の戦い 
Source :With Eye on Redistricting, G.O.P. Primed for Statehouse Gains (New York Times)
雇用統計でもお馴染みの通り、今年アメリカは、10年に一度のセンサス(国勢調査)を実施している。『民主主義の国』アメリカでは、このセンサスを基に、連邦議会下院の選挙区割の見直しを行う。これを"Redistricting"と呼ぶ。センサスが10年に一度ということは、この選挙区割り見直しも10年に一度ということになり、今後10年間の国政を左右する重要な作業となる。

では、この選挙区割りの作業は誰が行うのかというと、当然、州によって異なるが、概ね、州議会が担当し、州知事の承認を得るというのが一般的のようである。そこで、ちょっと面倒ではあったが、現時点の州知事、州議会の党派勢力、選挙区割りの体制について、比較表を作成してみた。

これを見ると、現段階では、民主党が州議会をコントロールしているのが27州。そのうち知事も民主党が占めているのは16州ある。一方の共和党は、州議会では14州をコントロールしている。うち知事も共和党が占めているのは8州のみである。

これらの中で、知事・州議会が選挙区割りに大きな影響力を及ぼし得る、つまり「ゲリマンダー(Gerrymandering)」が可能な州は、民主党が14州、共和党はたった4州しかない。

ところが、上記sourceでは、中間選挙で州レベルでも共和党が勢力を伸ばし、選挙区割りに影響力を持つのではないか、と見ている。また、過去の中間選挙で、大統領の党派が州議会で議席を伸ばした例は、たった2回しかないそうだ。
中間選挙が終わった時点で、上述の比較表を改定してみたいと思う。

さて、当websiteでも、ゲリマンダーを紹介したことがある(「Topics2002年9月12日 Maryland州第8選挙区」「Topics2002年11月6日(1) 中間選挙結果」参照)。もうすぐ10年一サイクルを迎える、ということにもなる。

※ 参考テーマ「中間選挙(2010年)