Source : | ObamaCare Discriminates against People without Bank Accounts (National Center for Policy Analysis) |
上記sourceでは、来年1月から始まるExchangeにおける保険料の支払い方法についてルールが確立しておらず、銀行口座を保有していない国民が差別される可能性がある、と指摘している。その主張のポイントは、次の通り。一方、銀行口座を持たない従業員に対する給与支払いでは、デビットカードの利用が普及している(「Topics2010年12月1日 "Paycards"」参照)。それで保険料を支払えないのでは困ってしまう。特に、こうした事情を抱えている従業員は、低所得層の場合が多いと思われる。そのような人々がExchangeで保険加入しようとしても支払い方法のところで撥ねられるようでは途方に暮れてしまうだろう。その上、保険加入を撥ねられれば、保険未加入というペナルティも課されてしまう。
- 通常、保険料の支払い方法は、加入最初の月分がクレジットカード、その後は毎月、チェックによる支払いか当座預金からの自動引き落としとなっている。
- しかし、アメリカの成人の5人に1人(約5,100万人)は、伝統的な銀行口座を常時保有しているわけではない。
- PPACAでは、すべての保険会社に対してクレジットカードまたはデビットカードによる支払いの受け入れを義務付ける規定はない。
- HHSは、4月に『差別的扱いを回避するため、連邦立Exchangeではすべての支払い方法を受け入れる』よう通達を発している。しかし、受け入れるべき支払い方法の定義は明示されていない。
- 保険会社の立場からみると、クレジットカードやデビットカードは手数料が高く、これらの支払いを受け入れるとコストが高くなる。実際、MA州のExchange("Connector")では、クレジットカードによる保険料支払いは禁止されている。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Wal-Mart Workers Plan a Fresh Protest, This Time in Bentonville (Businessweek) |
昨年のThanksgivingの翌日に、Wal-Martでストが行われたことは、日本でも報道された。同じ従業員グループが、今度はWal-Martの株主総会(6月7日)にあわせて、集会を開く予定にしているそうだ。
争点はシフトの在り方である。従業員グループは、などの要望を示している。
- フルタイマーを増やす
- シフトと賃金を予見可能なものにする
- 最低年収として$25,000を保証する
Wal-Mart社は、1962年の創業以来、労働組合の結成に反対しているそうで、今回も、各店舗におけるシフトをすべて公開し、従業員がコマを選択して申請できるよう、プログラムを変更することで対応しようとしている。既に新規プログラムは、Memorial Dayに全店導入済みという。
あくまでもpart-timerを活用するという方針は変えず、従業員に選択肢を予め見せることで納得を得ようということだ。
シフトのプログラムがかなり高度化しつつあることは既に紹介した(「Topics2012年11月2日 スケジュール管理ソフト」参照)。PPACAの本格施行を控え、今回のWal-Martのような事例を踏まえながら、シフト・プログラムの高度化はさらに進むものとみられる。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」、「Flexible Work」、「無保険者対策/連邦レベル」、「Wal-Mart」
Source : | California state worker moonlighting bill held up in committee (Sacramento Bee) |
CA州では、州政府職員が同じ職場内で副業に就き、報酬を得ていることが問題視されている(「Topics2013年1月31日 CA州職員の副業」参照)。州議会下院では、共和党議員が、同じ職場内で複数の業務に就くことを禁じる法案(AB 208)を提出し、委員会で審議していたが、24日、委員会投票を行わないまま審議を終了し、事実上廃案となった。
ただし、ちゃんと州知事・議会民主党との話はできていて、州知事が行政命令により、同じ職場内の業務に"新たに"就くことを禁止した。つまり、今後は就任させない、既に就いているものまでは禁止せずに現状は認めるということである。かなりグレーな決着である。
※ 参考テーマ「人事政策/労働法制」
Source : | Coming Soon To America: A Two-Tiered, Canadian-Style Health Care System (Forbes) |
上記sourceの筆者は、PPACAにより医療で需要超過が顕著となり、医療にすぐにアクセスできる人とできない人が二層化する、と主張している。ポイントは次の通り。もし、本当にこのような事態が全米で見られるようになったら、Obama政権も民主党議員も立っていられないだろう。
- PPACAでは、大量の無保険者が保険加入してくる。加えて、保険プランの内容も大幅に充実することが義務付けられている。 ⇒ 大量の需要が発生
- 一方、医師不足対策は何ら講じられていない(「Topics2012年8月1日 深刻な医者不足」参照)。
- 通常の市場であれば、需要超過に伴い価格が上昇する。しかし、Obama政権は保険料の引き上げに対して厳しく対応するため、需給調整のための価格上昇は限定的となる。
- そのような状況下では、診療側による選別が行われる。診療報酬の高い顧客が優先され、診療報酬が抑制されているMedicare、Medicaid、Exchangeによる加入者などは、順番待ちの長い列に並ばされることになる。
ところで、悪い医療保険制度の例示として、アメリカ人はすぐにカナダの医療保険制度を指摘するが、これは保守系と呼ばれる人たちの口癖のようなものである(「Topics2007年12月10日 カナダから学ぶものは?」参照)。もう少し冷静な議論が必要だと思う。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「カナダ事情」
Source : | Low interest rates are the final straw for many company pensions (Washington Post) |
上記sourceは、小さいながらも頑張ってDBプランを継続してきた企業が、ついに耐えかねて凍結を決定した、というストーリーを紹介している。最後に引き鉄を引いたのは「超低金利」であった。その圧力は、好調な株式上昇をも上回るものであったとされている。 上図は紹介されている企業のDBプランの割引率、給付債務/資産の推移を示したものであるが、『超低金利 ⇒ 割引率低下 ⇒ 給付債務急増』という流れが明らかになっている。
現在、アメリカではFRBの出口戦略が取り沙汰されているが、金利が再び上昇しても一度凍結されたDBプランは戻ってこないのである。
ところで、上記sourceのタイトルに含まれている"final straw"とは、"Straw that broke the camel's back"に由来する言い回しである。最近知った格言だったので、ちょっと嬉しかった。
※ 参考テーマ「DB/DCプラン」
Source : |
New California health insurance rates unveiled (Los Angeles Times) California health exchange reveals premium costs, insurers (Sacramento Bee) |
California州(CA)のExchange、"Coverd California"は、23日、初年度となる2014年に参加する保険会社13社と、各社が提示する保険料(Silver Plan)の概要を公表した。
PPACAの本格実施となる2014年と2013年の保険料を単純比較することは難しいが、Blue Shield of Californiaは、個人保険プランの保険料は、平均13%程度上昇するという。それでも、当初の予想よりも若干上昇幅を抑制できたようで、関係者はほっとしているそうだ(「Topics2013年4月6日 CA州の個人プラン保険料」参照)。
従来よりも保険料が上昇する主な理由は、既往症等による加入拒否が禁止されたことである。つまり、ハイリスクの加入者が増えるということである。
逆にいえば、若くて健康な個人、家庭がExchangeを通じて保険加入しなかった場合、保険料はさらに上昇する可能性が出てくる。特に、中所得層で連邦政府からの補助がない層からは、保険加入しないことを選択する人たちが出てくるかもしれない。
CA州は、PPACA本格実施の準備が順調に進んでいる方である。また、MA州とは異なり、初めてExchangeを開始するところでもある。順調な滑り出しができるかどうか、注目しておいてよい州であろう。
※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | The Telework Generation Gap (Government Executive) |
OPMのレポートによると、連邦政府職員200万人のテレワークの実態は次の通り。大まかにいって、1.→2.で1/4、2.→3.でまた1/4に縮小してしまっている。つまり、テレワークを行うことができると思われるポジションの中でも、実際にそれをフルに活用しているのは、1/16にしかならない、ということである。
- テレワークが可能なポジションの職員数:684,589人
- テレワーク・プログラムに参加した職員数:168,558人
- 週3〜4回のテレワークを行う職員数:46,000人
実際にテレワークの活用が広まらない理由の一つとして、ここではテレワークに対する理解が世代間で異なることを指摘している。管理職クラスは、まだまだテレワークの生産性について疑問に思っているようである。
アメリカでもこのような状況では、日本の政府ではもっと理解されないだろう。
話がそれるが、e-mailが普及し始めた頃、「e-mailなんて使わない」、「e-mailは読むけど出さない」という管理職が結構いたことを思い出す。役所の人でもメールでどんどん意見交換が進む人と、電話、もっとひどいと会いに行かないと話もしない、という人もいた。
新技術の普及は、世代交代が進むまで待つしかないのかもしれない。
※ 参考テーマ「Flexible Work」
Source : | Trends in Health Coverage for Part-Time Workers (EBRI) |
PPACAがパートタイマーの雇用、医療保険ベネフィットに影響を与えかねないとの懸念は既に何度が紹介している(「Topics2013年2月26日 49ers & 29ers」参照)。上記sourceは、その懸念のバックグランドを数字で示したものである。ポイントは次の通り。となると、やはりExchangeが担う役割は重要である。
- パートタイマーの割合は増えている。特に、前回の景気後退期以降、その傾向は顕著である。
- 職場を通じて医療保険プランに加入している割合は、フルタイマーの方が圧倒的に高い。また、フルタイマー、パートタイマーともに加入割合は低下しているが、パートタイマーの低下の方が大きい。
- しかも、小規模企業(従業員100人未満)におけるパートタイマーの加入率はさらに低く、しかも年々低下している。
- PPACAのもとでは、個人のためのExchangeが用意され、従業員50人以上の企業ではフルタイマーへの給付提供が義務付けられる。従って、企業としては、フルタイマーを減らしてパートタイマーをさらに増やし、パートタイマーには医療保険プランを提供しない、という流れが加速するものとみられる。小規模企業においてその傾向はより顕著に現れる。
なお、BLSの定義によれば、フルタイマーは週35時間以上働く従業員、パートタイマーは週35時間未満働く従業員となっている。一方、PPACAでは、フルタイマーを30時間以上と定義している(「Topics2012年5月1日 誰が"full-time worker"か」参照)。この微妙なズレは何を意味するのだろうか。今頃気付いたのだが、大統領・民主党はフルタイマーの敷居を下げることで、企業医療保険プランがカバーする割合を上げようとしていたのだろうか。もしそうだとすると、その思惑ははずれることになりそうだ。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン」、「労働市場」
Sources : |
Role of Health-Law 'Navigators' Under Fire (Wall Street Journal) House Lawmakers Grill CMS Over Health Exchange Navigators (HealthLeaders Media) |
2014年の医療保険プラン加入受け付けは、今年10月1日開始となる。それまであと4ヵ月余りとなったところで、"Navigator"の準備が進んでいないことに、連邦議会議員達(民主党・共和党とも)が懸念を露わにしている(「Topics2013年2月9日 "Navigator"の課題」参照)。上記sourcesで紹介されている懸念事項は、次のようにまとめられる。最後の点は、Navigatorの活動と直接関連するわけではなく、かつての議論の蒸し返し(「Topics2012年9月13日 IRSは関与せず」参照)なのだが、IRSの直近のスキャンダルと絡めてObama政権批判の材料に使っているわけである。
- Navigatorは、加入者のSSNや所得情報などの個人情報に触れたり、低所得層への対応のために補助金や税制、Medicaidの知識を持ちながら業務にあたるため、一定の資格や訓練が必要。ところが、そのような事項に関するガイドラインがまったく示されていない。
- Navigatorのために確保されている財源は$54Mしかない。しかも、これを、州立Exchangeを設けない34州に分配しなければならない。これら34州にいる無保険者は、約2,800万人にのぼる。
- この財源不足を補うため、HHS長官が保険会社、医療機関、製薬会社などに支援を求めた。連邦政府の施策に曖昧な形で負担を求めているのではないか。
- PPACA施行にあたってのIRSの役割が見えてこない。
Exchangeは、オンラインでワンストップとは言うものの、利用者は、小規模企業従業員、個人で、低所得層が多くなる。上述したように、所得が低い場合には、Medicaidの選択、保険プランの選択、保険料補助など、かなりたくさんの選択と手続きが必要となろう。間違いなく申請書3ページでは済まない(「Topics2013年5月3日 Exchange申込用紙の簡素化」参照)。"Navigator"の機能は不可欠なのである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル」
Sources : |
Tech Industry Pushes to Amend Immigration Bill (New York Times) Larger Union That Enforces Immigration Opposes Bill (New York Times) |
移民制度改革法案の議論が盛んになっている(「Topics2013年4月21日 超党派移民改革法案」参照)。そうした中、二つの勢力が、上院で審議されている法案に反対の意向を示している。
執行機関の労組から公然と反旗が翻されるという事態は、大統領・民主党とも想定していなかったであろう。喜んでいるのが共和党保守派である。何せ、現場が反対というのだから、これを利用しない手はない。
- ハイテク業界
今回の法案で恩恵を蒙る所が大きい業界だが、さらにより確実に利点を得たいとの目的でロビー活動している。反対している箇所は次の諸点。
- H1-Bビザによる外国人労働者に、アメリカ人よりも高い最低賃金を設定する。
- アメリカ人労働者がいるのに海外から外国人労働者を呼び寄せて採用することを禁止する。
- 外国人労働者を採用する前に、同等の技術を有するアメリカ人がいないことを企業に証明するよう義務付けるとともに、労働省がこれを規制する。
- 外国人労働者を採用する前の90日間に、アメリカ人従業員を解雇していないことを証明するよう義務付ける。
こうしたハイテク企業の動きに対し、「改革法案全体が崩れてしまう」、「アメリカ人従業員を外国人労働者に置き換えるつもりか」などの批判があがっている。
- 移民法執行機関の労働組合
不法移民の強制送還を行う機関の労働組合(National Imigration and Customs Enforcement Council)と移民に関する公式文書を発行する機関の労働組合(National Citizenship and Immigration Services Council)が、公式に法案に反対している。法案が実現すれば、法の執行が追い付かず、治安が揺らぐ、との主張である。
話がそれるが、以前に紹介した、移民改革法に伴う社会的コストの試算(Heritage Foundation)は、酷評を受けているそうだ(「Topics2013年5月13日 移民改革法のコスト」参照)。その責任者は、以前「移民は学力が低い」と記述したことを批判され、退任した。
「コストが膨大」との反対論拠が崩れた今、「現場が反対している」事実は、共和党保守派にとって誠に好都合な反論材料である。
と、ここまで用意していたところで、上院司法委員会で法案が可決された、とのニュースが入ってきた(ロイター)。骨格はほとんど手つかず、ということらしい。上院共和党の院内総務は、本会議での審議を阻まない、としている。
共和党内部も、保守派の強硬路線と、ヒスパニックを取り込みたいという柔軟路線が入り混じっているのだろう。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Feds Make It Easier For States To Enroll Poor Under Health Law (Kaiser Health News) |
17日、HHSは、Medicaidへの加入手続きの簡素化を認める方針を示した。そのポイントは次の5点。上記sourceによると、最後の5.は大きな変更だという。Medicaid加入が認められたのちに所得の変化があったとしても、12ヵ月間は加入継続できるということである。これは、確かに手続きの簡素化ではあるが、実質的な適用拡大である。
- 修正所得基準(Modified Adjusted Gross Income)の早期適用
- Medicaid加入継続申請時期の延長
- フードスタンプ申請資格に基づくMedicaid加入
- 子供向けMedicaid加入資格に基づく親のMedicaid加入
- 成人のMedicaid加入継続期間を12カ月間とする。
そうまでして、Obama政権はMedicaid拡充に誘導したい、または今の拡充方針を変更させないようにしたい、ということなのだろう。
一方、Medicaid拡充が州政府ベースで進まないことで、医療格差が拡大する、との論調も見られる(Los Angeles Times)。そこで指摘されているのは、次の2点。上記 i.の点は、反論もあるので、それほど簡単に判断はできない(「Topics2013年5月4日 Medicaid拡充は効果薄」参照)。
- Medicaid拡充に反対している州と賛成している州で比較してみると、結腸癌による死亡者数は反対している州の方が16%高い。また、肺がんも反対している州の方が8%高い。
- 賛成している州はもともと無保険者割合が低く、反対している州はそれが高い。Medicaid拡充の有無で、無保険者割合の差が広がるのではないか。
A.の方は、ちょっと検証しみよう。いつもの"Exchange & Medicaid"の表に、各州の無保険者割合(0〜64歳)を付け加え、無保険者割合の低い方から高い方に並べてみた結果が、この表である。これをみると、少なくとも現時点では次のようなことがいえる。そうしてみると、上位4州と最下位TX州の間では、無保険者割合の格差は拡大するだろうが、その間のほとんどの州では、無保険者割合がどのような結果になるかは不明である。そうした因果関係の有無については、PPACA本格実施から数年後に検証が行われるまで待つしかなさそうである。
- 確かに、上位4州は、民主党知事のもと、州立Exchangeを創設し、Medicaidを拡充しようとしている。従って、これら4州の無保険者割合はさらに下がるだろう。
- また、最下位のTX州は、共和党知事のもと、連邦立Exchangeに振ってしまい、Medicaid拡充も目指していない。
- しかし、その間にあるほとんどの州について、Exchangeの設立形態、Medicaid拡充と無保険者割合の関係はバラバラにしか見えない。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル」