Source : | A real Yahoo move (Washington Post) |
日本でも大きく報じられていたのでご存知だと思うが、アメリカのYahooは、今年6月以降、teleworkを禁止し、職場に来て働くように通知を下した。
多くの企業がWLBをさらに推進しようとしている中で、しかもIT企業の代表格であるYahooがこうした方向転換を図ったことに、驚きが広がっている。上記sourceも、『ええ〜、何で?Teleworkで一杯いいことあったのに』という論調で書かれている。
これだけ世間の耳目を集めてまで方針転換した背景には、単純な社風転換、連帯感の醸成ということではなく、もっと社運を左右するような大事な事象があったに違いない。
※ 参考テーマ「Flexible Work」
Source : | Panel on Health Care Work Force, Lacking a Budget, Is Left Waiting (New York Times) |
PPACAにより無保険者対策が講じられることに伴い、医師をはじめとした医療従事者の不足が見込まれている(「Topics2013年2月22日 NP活用の広がり」参照)。この問題に対応するため、PPACAでは、National Health Care Workforce Commissionという委員会を設置することが決まっている。具体的には、GAO長官に、同委員会の委員15人の指名権限を賦与することとしている。
また、同委員会における想定審議事項は次の通り。まさに、PPACAの肝となる医療を提供できるかどうかを検証する役割を担っている。
- 医師はあと何人必要か?
- プライマリーケア医師と専門医師の適正な規模はどの程度か?
- Medicaidに入ってくる大量の新規加入者は誰が診るのか?
- NP等に関する州政府の規制を改正する必要があるか?
- 薬剤師の役割を増やすべきか?
ところが、連邦議会、特に下院民主党が、同委員会開催に要する費用の支出権限を認めないため、PPACAが成立してから3年近くも経つのに、一回も開催されていないとのことである。しかも、15人のメンバー表をよく見ると、スタッガー方式になっており、既に2011年9月、2012年9月に第1期、第2期の就任期間が終了している。上記sourceで触れられていないので、自動的に再任されているのだろうが、今年9月までに委員会開催がないとなると、第3期も含めすべての委員が委員会に一度も出席しないまま再任される、という異常な事態に陥ってしまう。
こんなところでも大統領と議会共和党との間の溝が埋まらないまま、医療保険改革法の本格実施が迫りつつある。本当にこれで、今年10月の医療保険加入時期が迎えられるのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | ObamaCare and the '29ers' (Wall Street Journal) |
PPACAの影響により、雇用には2つの壁が立ちはだかるという。
ペナルティが課されて実際に支払うのは2014年からであるが、フルタイム従業員を定義するための観測期間が12カ月なので、フルタイム従業員と定義されるかどうかの仕分けは既に始まっているのである(「Topics2012年5月1日 誰が"full-time worker"か」参照)。
- 49ers
今年のスーパーボールのファイナリスト、SF 49ersのことではない。一つの企業が雇用する人数が50人になると、雇用面で大きな障害が発生する。"Play or Pay"ルールである。
PPACAでは、2014年1月1日より、医療保険を提供していない企業にはペナルティが課される(「Topics2010年3月27日 医療保険改革法:企業への影響」参照)。従業員50人以上の企業で保険プランを提供していない場合、フルタイム従業員一人当たり$2,000のペナルティ(ただし最初の30人分は免除)が課される。49人の従業員(フルタイム)を雇用している企業で医療保険を提供していないと仮定すると、50人目の雇用には、給与以外に4万ドルという多額の限界費用が発生する。これは、50人という敷居を越えた途端、20人分(=50-30)のペナルティが課されるためである。
現時点で従業員50人未満の企業は、極力雇用を抑制しようとするだろう。
- 29ers
こちらは、既に紹介したことのある、『30時間の壁』である(「Topics2012年12月5日 30時間の壁」参照)。ファスト・フードやレストランチェーンでは、従業員の週労働時間を20時間に抑制して、ペナルティを回避しようとする動きが広がっている。上記sourceによれば、週20時間をマックで働き、余った時間で週20時間バーガーキングで働く、という事例が発生しているそうだ。
こちらでは、従業員50人の企業で医療保険を提供していないと仮定すると、従業員全員が"29ers"であれば、ペナルティは発生しない。ところが、従業員全員があと1時間多く働くと、やはり4万ドルのペナルティが課されることになる。
実は、このタイミングでPPACAの雇用に対する影響が出始めるのは、最悪なのである。当websiteで何度も紹介しているように、アメリカ労働市場では失業率が高止まりしているのみならず、本当はフルタイムで働きたいが仕方なくパートタイマーとして働いている労働者が約800万人もいて、これが根雪のようになかなか融け出さないままなのである。 Obama政権と連邦議会民主党は、こうした事態をどのように捉えているのだろうか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「労働市場」
Source : | Utah Implements ACO Model in Most Populous Medicaid Counties (AISHealth) |
Utah州(UT)は、一部、Medicaid ACOを導入する。これはColorado州に次ぐ措置だそうだ。
UT州は、Medicaid支出の伸びを、税収の伸びより低く抑えることを決めている。その実現のための一つの手法として、今回ACO導入を決めたようである。同様の主旨では、OR州も、"ACO"と明確にはしていないものの、"ACOの機能"を導入することを決めている(「Topics2013年1月21日 Oregon州のMedicaid改革案」参照)。
- 制度開始は来年1月。
- 4つの機関がACOとして参入する。
- 4つのcountyに住むMedicaid加入者を対象とする。UT州Medicaid加入者全体が245,000人で、そのうち180,000人がその対象となる。
- Medicaid加入者は、最低2種類のACOの提示を受け、その中から選択する。
- 将来的にはSCHIPにもACOを導入することを検討する。
※ 参考テーマ「無保険者対策/UT州」、「無保険者対策/州レベル」、「ACO」
Source : | Nurse Practitioners Are In -- and Why You May Be Seeing More of Them (Knowledge@Wharton) |
アメリカの医療提供体制の中で、Nurse Practitioners(NPs)の活用が広がっているという。上記sourceでは、その背景として、次のような諸点を挙げている。こうした流れを受けて、全国知事会(National Governors Association)のシンクタンクは、NPの活用に関連して2つの政策提言を行っている。
- PPACAにより新たな保険加入者が大量に発生する。これに対応する医師不足が指摘されている。ある推計では、2020年時点で9万人の医師不足となる可能性がある。
- 家庭医の不足が予測されている。
- 特定の医療行為について、医師とNPsの成果に差がなくなっている。
- NPsを活用することで、医療コストの抑制ができる。
NPsの活用範囲を規定するのは州法である。全国知事会のレポートによれば、NPsの裁量・独立性を広く認めているのは、全米で16州+D.C.だけである。この州規制を緩和しなければNPsの活用範囲は広がらない。ところが、そこで大きな抵抗を示すのが医師会である。NPsの活動も医師の監督の下に置くべきだ、との基本姿勢をなかなか崩さない。
- 各州におけるNPsに関する法制・規制を緩和する。
- プライマリー・ケアにおけるNPの役割を高めるよう、診療報酬体系を見直す。
職域を巡る議論は、どこの国でも強い抵抗を伴う。
※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」
Source : | Higher Hospital Readmissions Aren't Linked To Fewer Deaths, Study Finds (Kaiser Health News) |
2月12日、アメリカ医師会の機関紙で、『再入院率の高い病院と死亡率の高い病院の間には強い因果関係はない』とする論文が公表された。
再入院率の高いMedicare病院は、PPACAにより診療報酬についてペナルティが課されている(「Topics2012年8月26日 Medicare病院にペナルティ」参照)。全米病院会は強く反対しているものの、こうした論文が医師会から公表されてくると、ペナルティの正当性が強化されることになるだろう。
※ 参考テーマ「Medicare」