8月31日 共和党は面舵いっぱい 
Source :G.O.P. Platform 2012 (Republican Party)
28日、共和党は、秋の選挙に向けて、政策綱領をまとめた。Running MateにPaul Ryan氏を指名したことから始まり、選挙が近づくにつれ、共和党は『面舵いっぱい』の姿勢を示している。

政策綱領の中で、当websiteの関心事項についての記述は、次の通りとなっている。 これだけ価値観をむき出しにした政策綱領は、最近のアメリカ選挙の要である『中道派』の人々にはどのように見えるのだろうか。

それにしても、あらゆる政策面で、州政府の権限強化がベースとなっているような印象である。連邦政府と州政府の関係について、共和党は昔から州政府に軸足を置いていたのだろうか。ちょっと違和感を感じるところである。

ところで、まったく文脈は異なるのだが、金融政策の中に、次のようなフレーズが挿入されている。
"Determined to crush the double-digit inflation that was part of the Carter Administration’s economic legacy, President Reagan, shortly after his inauguration, established a commission to consider the feasibility of a metallic basis for U.S. currency. The commission advised against such a move. Now, three decades later, as we face the task of cleaning up the wreckage of the current Administration’s policies, we propose a similar commission to investigate possible ways to set a fixed value for the dollar."(⇒本文
「金本位制」、「固定相場制」を想起させるような表現である。一体何を考え、目指しているのだろうか。

※ 参考テーマ「大統領選(2012年)

8月30日 Directorの報酬 
Source :Hay Group's Director of Compensation & Benefits survey reveals a more standard pay rate for large US company directors (Hay Group)
上記sourceは、アメリカ企業300社のDirectorの報酬を調査した結果である。ポイントは次の2点。
  1. 売り上げ規模に伴う報酬の違いは21%に過ぎない。このレベルでの市場機能は働いているようである。
    2010年2011年
    全体の中位数$ 213,774$ 227,250
    売上げ$40B超$ 238,100$ 252,500
    売上げ$10B未満$ 200,000$ 209,000
  2. ストック・オプションを提供している企業の割合が減少している。従来よりも長期的な視点で働くことを求められている。
    2010年2011年
    Stock option23%17%
    Restricted stock71%73%
※ 参考テーマ「経営者報酬」、「ストック・オプション

8月29日 保険料14%引き上げ申請:CT州 
Source :Three major insurers seek up to 14 percent rate hike for small business coverage (Connecticut Mirror)
CT州の小規模企業向けの保険プランについて、主要3社が14%前後の保険料引き上げを申請している。
保険会社申請引き上げ率認可引き上げ率
Aetna Health Inc.14%12.6%
Anthem13.8%not yet
ConnectiCare Inc.13.5%not yet
このような大幅引き上げを申請している背景を見ておこう。
  1. まず、保険会社側の言い分としては、PPACAで給付を義務付けられた女性向け予防診療などのコストが加わるため、としている。

  2. 15%以上の引き上げ申請の場合には、当局による公開ヒアリングが必要となる。州議会では10%以上の場合に公開ヒアリングを義務付ける法案が可決していたが、州知事が拒否権を発動した経緯がある。

  3. 10%以上の引き上げの場合、連邦政府(HHS)が審査をしてくる可能性があるが、連邦政府はCT州において適切な監督が行われていないとは認識していない(「Topics2011年5月25日 10%の壁」「Topics2012年3月26日 HHSの保険料審査」参照)。

  4. CT州の小規模企業向け保険プラン市場は、かなり寡占気味であり、上記大手3社のシェアは80〜90%あるものとみられる(「Topics2011年10月15日 州保険市場の自由度」参照)。
上記の2.〜4.をみていると、当局から大きな問題とされずに認められる水準の高目ぎりぎりを狙って申請してきているように思われる。実際、既にAetnaは10%を超える水準で認可されている。HHSは保険料引き上げを抑え込む、としていたが、結局は州政府の権限内でしか抑制はできないのではないだろうか。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CT州」、「無保険者対策/連邦レベル」、「医療保険プラン

8月28日 退去猶予者への免許付与 
Source :California poised to grant driver's licenses to young illegal immigrants (Sacramento Bee)
先日、『Obama政権が講じた2年間の国外退去延期措置が認められれば、・・・運転免許が取得できる』と書いてしまったが、現実はそう甘くなかったようだ(「Topics2012年8月16日 国外退去延期手続き開始」参照)。

CA州では、元々、交通安全確保のために、不法移民にも運転免許を発行すべきだ、との主張の下、何度も法制化が試みられてきた経緯がある。そこに、今回のObama政権の国外退去延期措置が採られたことから、法制化の必要性もなくなる可能性もある。

ところが、CA州の車両局は、一点、明確にすべき事項があると指摘しているそうだ。それは、州法では、免許証発行のためには、何らかの連邦政府発行の移民証が必要とされていることである。これをクリアにするためには、2つの手法がある。
  1. Obama政権の国外退去延期措置が認められた場合、連邦政府が新たな、もしくはこれまでとは異なる移民証を発行する。

  2. 連邦政府発行の移民証を必要としない旨、州法で新たに規定する。
1.については、そのような新たな移民証が発行されるのかどうか、現時点で管理人は把握していない。が、上記sourceでは、"If President Obama's Deferred Action program provides participants with new or different immigration documents,"と記しているくらいだから、その発行予定はないのだろう。

2.については、州議会(いずれも民主党が多数)で法案を通すのは簡単だが、肝心の州知事が法律変更に反対している。

そうなると、車両局が必要としている要件は満たされず、退去猶予が認められても免許を取得することはできなくなる。

実際、AZ州知事は、今月になって、州政府当局に対し、退去猶予者に対して運転免許を発行してはならない旨、行政命令を下しているそうだ。

ここでも、連邦政府の政策意図が州政府の権限によって執行できない、という事態が発生している。

ところで、この国外退去延期措置に関して最初から疑問に思っていることがある。それは、不法移民が申請して2年間の国外退去延期措置が認められたとして、もしもその後大統領令が廃止された場合、退去猶予者リストは即座に国外退去対象者リストに変わるのではないか、という点である。この疑問に答えてくれているレポートは、残念ながら未だ見かけていない。それとも大統領令というものは、安定性があるもの、と認識されているのだろうか?

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

8月27日 リーマンショックの爪痕 
Source :US Labor Department sues to restore more than $34 million to 2 worker pension funds of Michigan-based vehicle parts manufacturer (EBSA)
労働省(DOL)が、ミシガンにある車部品メーカーが、年金プラン資産を不正利用した(ERISA違反)として、その返還を求めて提訴した。不正利用の内容は、 などが挙げられている。

労働省は、これらの不正利用の総額は$34Mになると推計している。現時点で年金プランは$36Mの資産を有していると報告されている。不正な融資や設備購入が資産として計上されているのであれば、プラン資産のほとんどが不正利用されていたことになるし、もしも資産に計上していないのであれば、本来あるべき資産の半分を不正利用していたことになる。

いずれにしても大規模な不正利用となる訳だが、この不正利用が始まったのが2009年2月からとされている。まさに、リーマンショックでアメリカ金融市場が大混乱に陥っていた時期に重なる。おそらく資金繰りがつかずにこうした不正利用が始まったのではないだろうか。こんなところにもリーマンショックの爪痕が残されているのである。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制

8月26日 Medicare病院にペナルティ 
Source :Medicare To Penalize 2,211 Hospitals For Excess Readmissions (Kaiser Health News)
医療保険改革法(PPACA)では、Medicare制度改革も盛り込まれている(「Topics2010年3月31日(1) 医療保険改革法に署名」参照)。その中に、『過剰な再入院に対してMedicare診療報酬の一定割合を削減する』という項目がある。
"Reduce Medicare payments that would otherwise be made to hospitals by specified percentages to account for excess (preventable) hospital readmissions. (Effective October 1, 2012)"

SUMMARY OF NEW HEALTH REFORM LAW - Kaiser Family Foundation
PPACAの規定に従って、CMSでは、Medicare診療報酬のペナルティ・ルールを定めた。そのポイントは次の通り。
  1. 2008年から2011年の3年間で、Medicare加入者の心臓病、肺炎患者の30日以内の再入院頻度を計測する。

  2. 頻度が平均よりも高い場合には、患者の健康状態を考慮する。

  3. 再入院頻度が高い病院については、2011年10月から、Medicare診療報酬を最高1%カットする。

  4. 2013年10月からは最高2%、2014年10月からは最高3%カットする。
このペナルティ施行初年度について、上記sourceは次のように伝えている。 これらのペナルティについては、粛々と課されることになるが、課題も残されている。
  1. 最高の1%ペナルティを課された病院の中には、トップクラスと評価されている病院もある。中にはMassachusetts General Hospitalのように、ベスト病院と評価されているものまである。

  2. やはり最高の1%ペナルティを課された病院の中には、死亡率が低いところがある。これは適切に処理して早く退院させることを繰り返しているだけ、ということも言える。

  3. アフリカ系アメリカ人や、低所得層の再入院割合が高くなっているが、再入院頻度を計測する際、こうした地域の特性や、病院が追求している社会的使命は考慮されていない。

  4. 再入院をさせないようにするためには、退院直前の指導や、退院後の診察、地域の診療所との連携、訪問看護など手厚いケアが必要となる。これは人手(=コストと時間)のかかる作業となる。
最高ペナルティが引き上げられていく2年間に、これらの課題は解決できるだろうか。

※ 参考テーマ「Medicare

8月25日 不法移民子弟に割引授業料 
Source :A College Lifts a Hurdle for Illegal Immigrants (New York Times)
不法移民子弟に州内授業料を提供することを法定
州 名法定年備 考
Texas2001
California2001-2
Utah2001-2
New York2001-2
Washington2003
Oklahoma20032008年に廃止
Illinois2003
Kansas2004
New Mexico2005
Nebraska2006
Wisconsin2009
Maryland2011
Connecticut2011

高等教育委員会の決定により不法移民子弟に州内授業料を提供することが可能
州 名法定年備 考
Rhode Island2011

不法移民子弟に州内授業料を提供することを法定で禁止
州 名法定年備 考
Arizona2006
Colorado2006
Georgia2008
South Carolina2008
Indiana2011
CO州のMetropolitan State University of Denverは、今月20日から新学年が始まっている。その新学年から、同大学では、不法移民の子弟(新入生)に対し、割引授業料の適用を開始した。

その授業料は年間$7,157.04で、州内授業料(州内からの学生に適用)よりは$3,000近く高く、州外授業料(州外からの学生に適用)よりは約$8,000安くなっている。

この割引授業料は、同大学が単独で決めて提供しているようで、州内では批判が集まっているそうだ。 CO州は、州知事は民主党、司法長官は共和党、州議会上院は民主党、下院は共和党と、複雑なねじれ関係に陥っており、今後、司法判断も含め、紆余曲折が予想される。

そもそも、上記sourceによれば、同大学の理事会は、Obama政権が6月に発表した若者の国外退去手続きの延期に感銘を受け、少しでもその政策のサポートができれば、というのも一つの動機だったらしい(「Topics2012年6月17日 若い不法移民を保護」参照)。また、理事会メンバーの一人は、州議会下院議長まで勤めた民主党元議院である。こういうことを聞くと、多分に政治的なアピールを狙っていると疑われても仕方あるまい。

当然、保守勢力は数ヶ月以内に提訴すると息巻いている。結果がどちらになるにしろ、結論が出るまで、当該の不法移民学生は、不安定な立場におかれてしまう。

さて、不法移民子弟に対する州内授業料を提供するかどうかは、最近ではMD州やIN州で動きがあった。これまでの流れも含め、一度一覧表にしてまとめておきたい。情報源は、NCSLの"In-State Tuition and Unauthorized Immigrant Students"である。

CO州では州内授業料を不法移民子弟に提供することは法律で禁じられているため、同大学は、州内授業料と州外授業料の間をとって(ただし、中間よりは州内授業料に近く)、割引授業料としているのだろう。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

8月24日 退職者医療給付に上限 
Source :Court Rules in Favor of County on Retiree Medical Benefits (Voice of Orange County)
CA州のOrange Countyは、2006年、職員組合(Orange County Employees Association, OCEA)との合意により、County職員の退職者医療給付について、上限を設けることとした。これにより、約$1Bが節減できる見込みである。

ところが、この上限設定に対して、退職職員協会(Retired Employees Association of Orange County, REAOC)が約束違反であるとして、連邦地方裁判所に提訴していた。

8月16日、連邦地方裁は、Countyの主張を認め、上限を設けることは可能、との判決を下した。OCEAもこの判決を支持している。REAOCが上告するかどうかは、上記sourceでは触れられていない。

このように、退職者医療給付について制限を設けるような制度変更は、極めて難しい。退職者からの反発はもちろんだが、職員組合が強く抵抗するのが一般的だからだ。ところが、今回は、職員組合は一貫して上限設定を支持している。

その背景には、やはり財政赤字の問題が存在する。CA州内の482市のうち、今年既に3市が破産申請(Chapter 9)し、1割以上の市が緊急事態宣言をしている。こうした状況を受け、Moody'sは、他にも破産申請をする可能性があると見ている(AP)。

しかも、当該のOrange Countyは、1994年に破産申請をしている。当時としては最大の自治体破綻であった。その時の苦しみを、当局も職員組合も記憶しているのだろう。破綻するよりは上限設定でも持続可能な方がまし、ということなのだろう。

同様の決断が、CA州の他の自治体にできるかどうか、今後もよく見ていきたい。

※ 参考テーマ「自治体退職者医療/GAS 45

8月23日(1) Fiscal cliffの影響 
Source :Fiscal Policy under Current Law in 2013 (CBO)
Fiscal Cliff("財政の壁")が政治的にも経済的にも注目されている。リーマンショック後の経済対策や税制優遇措置、歳出膨張政策の期限が一気にこの年末にやってくる。上記sourceは、その主なものである。

CBOは、今後の経済見通しとして、これらの政策が予定通り廃止される場合をベースラインとして、いずれも継続した場合との比較を公表した。その結果が、次のグラフ群である。
ベースラインの方は、成長率がマイナス、失業率が9%台に跳ね上がってしまう。もちろん、財政の健全化は進む。さて、新大統領、新連邦議会にとって、どちらにウェイトを置いた政策を採るのか。誰が勝っても最初の試練となる。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare

8月23日(2) PPACA:州の抵抗は続く
Source :State Legislation and Actions Challenging Certain Health Reforms, 2011-2012 (NCSL)
連邦最高裁の判決が下り、"Exchange"のblueprint最終版が公表されても、PPACAなど連邦政府主導の医療保険改革に対する州レベルの抵抗は続いている。上記sourceは、その状況を、8月央の時点でまとめたものである。

特徴的なのは、個人の保険加入義務、PPACAの施行に対して、法制面で反対を明らかにしている州は、かなりの広がりを見せている。


実務的にみれば、2013年初めには準備が整っていなければ、2014年1月1日からの本格施行には至らない。残された時間は限られていると思うのだが・・・。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月21日 6桁年金の実態 
Source :Some federal pensions pay handsome rewards (USA TODAY)
6桁年金受給者割合 - 比較表
6桁年金受給者割合平均受給額
連邦政府職員1.2%$32,824
NY州地方政府年金0.2%地方政府年金全体
$24,373
NJ州地方政府年金0.4%
退役軍人0.1%$22,492
ExxonMobil-$18,250

連邦政府6桁年金受給者分布
$100,000/Y以上21,000人以上
$125,000/Y以上2,000人近く
$150,000/Y以上151人
$200,000/Y以上6人
"Six-figure pensions"。6桁の年金を受給している、というのは、アメリカでは年金リッチの象徴のようである。上記sourceでは、その6桁年金の実態を紹介している。

確かに、連邦政府職員の中には恵まれた年金を受給している人たちの割合が比較的高い。

しかし、さらに実態を詳しく見てみると、高学歴、豊富な経験、高リスクの職種に就いていたと思われる人が多い。
Top pension professions
Most common jobs held by federal retirees receiving pensions of $100,000 or more annually.
Job
Number
Criminal investigator
1,635
Program manager
1,423
Program administrator
1,391
Air traffic controller
1,163
General engineer
966
Physician
949
Attorney
846
Management analyst
464
Electronics engineer
369
Physical scientist
348
Note: No occupation listed for 5,023 of the 21,089 retirees receiving pensions of $100,000 or more.
Source: USA TODAY analysis, Civil Service Retirement System database
最後の極め付けは、旧年金制度と新年金制度の違いである。1984年よりも前に採用された連邦政府職員には旧制度が適用されており、現存する連邦政府退職者の78%を占めている。また、上記の6桁年金受給者のうち、旧制度適用者は96%を占めている。

旧制度では、いわゆる公的年金(Social Security)の適用がなされていない(拙稿「Social Security Programs in the US」(P.7)参照)。つまり、旧制度の連邦政府職員年金は、公的年金込みの金額となっているのである。この点を十分考慮して比較表を眺めなければいけない。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「地方政府年金