8月20日 CA州年金を巡る路線闘争
Source :State-Sponsored Pension System-California’s Titanic (Fox&Hounds)
上記Sourceは、CA州政府職員年金プランをタイタニック号に例えて、警鐘を鳴らしている。ポイントは次の3点。
  1. 様々な制度改革案が提唱されているが、その中で最も危険なのが、"Golden State Retirement Savings Trust"である(「Topics2012年3月2日 加州版国民年金基金?」参照)。結局は中小企業が事業主負担を拠出しきれなくなり、州税として州民に負担が付け回されるだけである。これは、タイタニック号の船長に、もう一隻客船を任せて沈ませるようなものである。

  2. 州政府年金について、州議会は何も改善措置を採ろうとしない。San Jose市の年金プラン改革くらいのことはすべきだ(「Topics2012年5月31日 年金改革市民投票:San Jose市」「Topics2012年6月8日 年金改革案を承認:San Jose市」参照)。

  3. 州政府年金は、民間で言うDCプランにすべきだ。DCにすれば、州政府の支出は確定し、際限なく拠出し続ける必要はなくなる。さらには、政治家による年金基金の濫用も防げる。
上記の3.の最後の指摘について、まったく逆の動きが出ているようだ(Pension & Investment)。CalPERSのプロパースタッフは、パフォーマンスが低水準に留まっていることを理由に、州内の企業を対象としたプライベート・エクイティー・ファンドを縮小するよう提案しているが、CalPERSの投資委員会や州財務筆頭副長官らは、経済的に厳しい状況にある今こそ、州内の雇用と開発のためにこのファンドを活用すべきだとして、スタッフ提案を否定している。

この路線闘争は、年金プランの根幹を問う課題である。誰が受益者なのか、fiduciaryは誰の利益を優先するのか、さらには年金プランの基金は何のために存在しているのか。

こうした制度の根幹に関わる議論を置き去りにして運用方針を議論すること自体、無益であるどころか有害である。

※ 参考テーマ「地方政府年金

8月19日 Exchangeの設計図 
Source :Implementing Health Reform: A Final Exchange Blueprint And Other News (Health Affairs)
14日、HHSは、州政府が運営する"Exchange"、"Partnership Exchange"に関するBlueprint最終版を公表した(「Topics2012年5月19日 Exchange申請期日」参照)。

上記sourceによれば、5月のドラフト版との違いはほとんどなく、州政府の裁量部分が広がるとともに、連邦政府への委託が可能となる部分も広がっている。また、具体的な手続きやチェックリストも備えられており、いよいよ創設に向けた準備が整いつつあるようだ。

しかし、いくら連邦政府が準備を進めようとしても、肝心の州政府・議会の準備が始まらなければ、なかなか実現には辿りつかない。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月18日 Community College閉鎖の危機:CA州 
Source :Community colleges across California face accreditation sanctions (Sacramento Bee)
CA州のCommunity Collegeは、Western Association of Schools and Collegesの委員会であるAccrediting Commission for Community and Junior Collegesから監査を受け、その教育の質について、認証を得なければいけないそうだ。

監査で指摘されている事項として、 などが例示されている。

しかし、より深刻なのは、教育の質が問われている点である。上記sourceによれば、大学監査のポイントは、次のように評されている。
"The sticking point for some is a federal requirement that accredited schools demonstrate "learning outcomes." In other words: It's not enough for a college to show what it teaches. It must also show what students learn."
このように厳しい監査基準が連邦政府により設けられたのは2007年のことで、まさに、高等教育の質を上げて成長に寄与することを目的としていた。しかし、その直後から金融危機とそれに伴う景気後退が起こり、CA州政府のCommunity Collegeに対する支出は、2010〜2012年度の3年間で12%も削減され、11月の州民投票で増税が認められなければ、2013年度はさらに7%削減されることになっている。

Community College関係者は、州政府の予算が削られたために職員数も約10%削減しているため、質の確保ができなくなっていると説明している。予算と人さえいれば、監査基準はクリアできるというのだ。

もし、このまま監査基準がクリアできなければ、3校については閉鎖するよう要請されている。その他にも10校が執行猶予、14校が警告措置を受けている。州政府の財政状況が改善しなければ、これらの学校も次々と閉鎖に追い込まれかねない。

就職、転職、スキルアップの手段をCommunity Collegeに委ねてきたシステムが、本当に壊れそうになっている(「Topics2010年11月29日 スキルアップは何処で?」参照)。

※ 参考テーマ「教 育

8月17日 医療過誤訴訟は続く 
Source :Malpractice News Heats Up in States; Mega Payouts Persist (Medscape)
久し振りの医療過誤の話題である。上記sourceでは、州レベルで起きている医療過誤訴訟に関する話題をまとめている。気になったポイントは次の3点。 最後の項目はちょっと驚きである。医療過誤訴訟に充分備えていない病院が医療過誤を起こしてしまった場合、間違いなく経営破綻に陥る。そんなリスクを見逃してしまっていいのだろうか。

※ 参考テーマ「医療過誤

8月16日 国外退去延期手続き開始 
Source :Young Immigrants, in America Illegally, Line Up for Reprieve (New York Times)
若い世代の不法移民について、Obama政権は2年間の国外退去延期措置を講じた。内容は以前に紹介済み(「Topics2012年6月17日 若い不法移民を保護」参照)。

その延期措置申請手続きが、15日から受付開始となった。この申請が認められれば、Social Security Numberが手に入る、合法的に就職できる、運転免許が取得できる、大学で奨学金が得られる、など様々なメリットが生じることは確かだ。しかし、この措置は2年間しか有効ではなく、2年後には改めて申請し直さなければいけない。もしもこの行政措置が廃止されていればそれまでである。極めて不安定な生活を続けなければいけないことに変わりはない。

それでも、不法移民が多数居住する地域では、若者の問い合わせや説明会が盛んに行われているそうだ。多ければ170万人が延期措置を受けられる。

移民で支えられてきた社会が不法移民の問題を抱えて苦しんでいる。アメリカ社会も転換期を迎えているのかもしれない。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

8月15日 Medicareが主要争点? 
Source :Medicare Rises as Prime Election Issue (New York Times)
Paul Ryan氏Romney氏のRunning Mateに指名されたことで、秋の大統領選・連邦議会選挙で、Medicareを巡る政策論議が主要争点に浮上してきた、と上記sourceは伝えている。これはマスコミの一時的な反応としては充分あり得ると思うが、やはりメインテーマは経済・雇用であるし、医療の世界では医療保険改革法(PPACA)であろう。

それでも、Medicareを巡る政策論議が活発になることはいいことだと思う。 このように、大きな課題を抱えていることをわかっていながら、両党とも本格的な改革に取り組む姿勢を示していない。大いに国民的な議論を行なうべき課題である。

※ 参考テーマ「Medicare」、「大統領選(2012年)

8月14日 年金に潰される:IL州 
Source :Quinn Administration Releases Study: Without Pension Reform, Illinois Will Spend More on Pensions than Education by 2016 (Press Release)
IL州知事が、州政府年金、自治体年金の大改革を実行しなければ、教育予算がどんどん減ってしまう、と警告している。
  • 地方政府年金への拠出金は、毎年$1.8Bずつ増えている。

  • 公立学校に対する州政府の補助金は、毎年$314Mずつ、平均すると年3.5%ずつ減額している。

  • こうした事態を放置すれば、2016年度(3年後)には年金拠出金が教育への支出を上回ってしまう。
教育という州民が最も関心を持っている支出分野を例に出して、年金拠出金の膨張を食い止めなければならないという方針に理解を得ようとしているのである。

以前にも紹介したが、IL州は、全米中、積立比率が最低となっている(「Topics2011年4月27日 2009年度の積立不足」参照)。それでも改革が進まないことに、知事は相当の危機感を抱いているのだと思う。ちなみに、IL州は、州知事・両院州議会ともに民主党が握っている。

そう言えば、IL州は、州憲法で将来給付も保護しているのであった(「Topics2012年8月10日 地方政府年金の法的規制」参照)。

※ 参考テーマ「地方政府年金

8月13日 "Exchange"を改名? 
Source :Puzzling Over What to Call State Insurance Exchanges (Wall Street Journal)
いずれも"Exchange"に対する悪印象を述べたものである。"Exchange"という言葉から、PPACAで規定されている役割を連想できないことを問題視しているのである。上記sourceによれば、具体的に改名を検討している州も出てきているようだ。 いずれも業務の実態を伝える工夫をしていると思われる。

一方、州政府ばかりでなく、連邦政府の方も、改名を検討しているようだ(Kaiser Health News)。最有力候補は"marketplace"だが、その他の候補もあがっているようだ。

全米各州に新しく登場する機関である。しかも、PPACAの最も重要な部分を執行する機関である。名称は大事だ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

8月12日 Running MateはP.Ryan 
Source :Romney Chooses Ryan, Pushing Fiscal Issues to the Forefront (New York Times)
11日、共和党大統領選候補者のRomney氏は、Running Mateに共和党下院議員・予算委員長のPaul Ryan氏を指名した。

当websiteでは、何度も登場してきているお馴染みの実力政治家で、Romney氏が保守層を確実に取り込んでおくにはもってこいの人選だろう。逆に、民主党支持者はかなりの警戒感を抱くに違いない。Ryan氏が登場した最近の主なTopicsを列記しておく。 共和党の主張を強く展開するだけでなく、民主党議員とのパイプもちゃんとあって、現実的な話し合いもできる政治家、という印象である。

もう一つ、本筋ではないのだが、今回の指名の舞台となった場所が思い出深い。Ryan氏の出身地、選挙区はWI州である。これにちなんで、指名発表の場所となったのが、VA州Norforkの戦艦"Wisconsin"であった。

実は、アメリカ留学時代、VA州北部にある有名な病院"Sentara"を訪問した際、この戦艦"Wisconsin"も見学させてもらったのであった。右のキャップは、その時に艦長からいただいたお土産である。

※ 参考テーマ「大統領選(2012年)

8月11日 伸び続ける求人 
Source :US job openings hit four-year high (Financial Times)
雇用関係のグラフを並べてみる(いずれもBLSより)。

Job openings rate
Job openings lebel
Separations rate
Separations lebel
Unemployment rate
Employees

求人は順調に増加しているのに、離職は進まず、失業率に至っては足許で悪化している。これにより、"Beveridge Curve"は、さらに右方にシフトしていることになる(「Topics2012年4月1日 総需要が不足」参照)。
アメリカの雇用市場の方向性がなかなか定まらない。

※ 参考テーマ「労働市場