4月30日 USPS救済法案 
Source :Senate Passes Plan to Give Postal Service Fiscal Relief (New York Times)
25日、連邦議会上院は、USPSのリストラと資金面での救済策を盛り込んだ法案(S. 1789)を可決した。これは、昨年公表されたリストラ策第1弾を法的に裏付けるものである(「Topics2011年12月6日 USPS リストラ第1弾」参照)。

上記sourceに基づいて、法案に盛り込まれている当websiteとしての関心項目をまとめておく。 現在、下院でも法案が議論されているが、その内容は大きく異なるという。労働組合も、上院法案についてはいい顔をしていないらしい。まだまだリストラ実現には時間がかかりそうである。

※ 参考テーマ「労働市場」、「解雇事情/失業対策

4月29日 保険ギャップの長期化 
Source :Gaps in Health Insurance: Why So Many Americans Experience Breaks in Coverage and How the Affordable Care Act Will Help (The Commonwealth Fund)
上記sourceは、高齢者を除く成人の無保険状態について調査したものである。これを読んでいて、関心を持った事項は次の2点。
  1. 無保険の期間があった人の割合が4分の1を超えていることに加え、無保険期間が長期化している。
  2. 転職や失業を切っ掛けに無保険となった人の割合が3分の2を占める。雇い主が保険提供を止めたという割合は1割に満たない。
    これについて、コメントを2点。
    • 失業が長期化している中で、無保険期間もそれに伴って長期化していると思われる。
    • このように、アメリカ人の医療保険が職場と強い連関を持っている中で、Romney氏の提案(「Topics2012年4月26日 Romney提案は保守回帰?」参照)は、相当現実離れしていると評価されるのではないか。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

4月28日 最高裁はAZ州法に好意的 
Source :Supreme Court skeptical of striking down Arizona immigration law (Los Angeles Times)
予定通り、25日、連邦最高裁において、AZ州移民法を巡る訴訟の最終弁論が行われた。ここで、最高裁判事達は、AZ州法にかなり好意的なコメント、質問を行ったようだ。

今回の訴訟の争点は、次の4点である(「Topics2012年4月23日 AZ州移民法の行方」参照)。
  1. Require state and local law enforcement to verify the citizenship status of anyone stopped, detained or arrested when there is “reasonable suspicion” that the person is in the United States unlawfully.

  2. Authorize law enforcement officials to make and arrest without a warrant when an officer has “probable cause to believe . . . [t]he person to be arrested has committed any public offense that makes the person removable from the United States.”

  3. Make it a state crime to be in the United States unlawfully and require non-citizens to carry documents to prove they are legally in the country.

  4. Make it a state crime for a person who is not lawfully in the country to work or seek work. Federal law puts the burden on employers to verify the legality of those seeking work.
このうち、1、2について支持が多く、3、4について懐疑的、というのが、概ねの構図のようだ。仮にこの通りの判決が下されたとすると、警察官が摘発するのはOKで、AZ州として処罰することはだめ、ということになる。そうなると、必然的に、不法滞在者の処分は連邦政府の責任、ということになる。

Obama政権は、苦境に追い込まれることになるかもしれない。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

4月27日 最低賃金を物価連動に:CA州 
Source :Lawmakers pushing to tie California minimum wage to consumer price index (Sacramento Bee)
CA州議会で、最低賃金を物価連動にしようという法案(AB 1439)が審議されている。法案に盛り込まれている提案は、 物価連動といっても、下方硬直的な仕組みである。

CA州の最低賃金は、連邦政府が規定する水準よりも高い。また、既に物価連動を採り入れている州は10州あるが、いずれも概して連邦最低賃金よりは高くなっている。CA州は、現時点でも高い水準にあるにもかかわらず、法案は、物価連動によりさらに高めていこうという主旨である。

当然、経営者達は猛反対している。企業がCA州に入ってこなくなるばかりか、出ていく企業も出てくるだろう、と。

ここで、上記sourceを読んでいて、おや、と思ったことがあった。上記sourceによれば、最低賃金が適用されている労働者は、全体の4.4%に過ぎないというのである。意外に少ないものである。もちろん、ここが上がれば全体が少しずつ上昇する、という理屈はわかるが、その効果もかなり低いレベルで消えてしまうものと思われる。

※ 参考テーマ「最低賃金

4月26日 Romney提案は保守回帰? 
Source :Romney's healthcare plan may be more revolutionary than Obama's (Los Angeles Times)
事実上、共和党の大統領候補者となったRomney氏だが、その具体的な政策提言まではあきらかになっていない。当websiteでは、キャンペーン開始当初、大筋のところは紹介した(「Topics2011年9月9日 Romney 4%成長宣言」「Topics2011年11月6日 Romneyの財政赤字削減策」参照)。

こうした中、上記sourceでは、Romney氏の医療保険改革提案について、このような方向になるのではないか、との見通しを示している。
現役世代の医療保険制度企業提供プランに関連する税制措置を廃止し、個人の医療保険購入に対する税制措置を講じる。
Medicare65歳以上の国民は、国から配布する"vouchers"により、医療保険プランを購入する。
Medicaid連邦政府からの拠出は、包括払いとする。
現役世代、Medicare加入者は、選択肢が広まり、市場メカニズムが働くことでコストも下げられる、という訳である。本当であれば、MA州の皆保険制度にサインした知事とはとても思えない豹変ぶりである。実際にどのような提案がなされるのか、しばらくは注視しておきたい。

※ 参考テーマ「大統領選(2012年)

4月25日 年金・Medicareの財政見通し 
Sources :Financial Outlook Dims for Social Security (New York Times)
The Social Security ReportThe Social Security Report (Social Security and Medicare Trustees)
23日、公的年金、Medicareに関する財政見通しが公表された。ポイントは、次の2つの図が示す通り。
つまり、公的年金の基金は2033年に、Medicareの基金は2024年に枯渇するというのである。昨年の推計と較べると、公的年金の枯渇年次が3年早まっている(「Topics2011年5月15日 基金の枯渇早まる」参照)。

アメリカは、こうした社会保障制度に関する推計はきちんと公表するが、それに基づく議論はちっとも進まない。何だか虚しさすら覚える。

※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare

4月24日 年金保険料引下げの出口戦略 
Source :Implications of the Payroll Tax Holiday for Social Security (National Academy of Social Insurance)
アメリカの公的年金保険料は、景気対策の一環で、引き下げられている(「Topics2012年2月18日 協議成立」参照)。上記sourceでは、公的年金の長期的な財政健全化のために、次のような提案を行っている。
  1. 現在、公的年金の毎年の収入源は次のようになっている。
  2. 保険料引き下げは、現行法では今年末で切れることになっている。その後どうするのかは、今年11月の選挙結果、景気情勢に左右されよう。

  3. 脆弱な経済への悪影響を回避し、長期的な年金財政の健全化を図るため、次のような引き上げ幅でゆっくりと引き上げていくことを提案する。
このような提案に対して、コメントを2つ。 ※ 参考テーマ「公的年金改革

4月23日 AZ州移民法の行方 
Source :Arizona immigration law: Supreme Court again examines federal power (Washington Post)
AZ州の移民法を巡る連邦最高裁での論争は、25日(水)に最終弁論が行われ、6月末までに最終判決が下される予定である。

争点は、AZ州法で『警官に職務質問の権限を与え、法的な身分証明が示されない場合には、逮捕、国外退去を命じることができる』としている規定が、連邦政府の権限を侵していないかどうか、である。より詳細には、次の4点が争点となっている。
  1. Require state and local law enforcement to verify the citizenship status of anyone stopped, detained or arrested when there is “reasonable suspicion” that the person is in the United States unlawfully.

  2. Authorize law enforcement officials to make and arrest without a warrant when an officer has “probable cause to believe . . . [t]he person to be arrested has committed any public offense that makes the person removable from the United States.”

  3. Make it a state crime to be in the United States unlawfully and require non-citizens to carry documents to prove they are legally in the country.

  4. Make it a state crime for a person who is not lawfully in the country to work or seek work. Federal law puts the burden on employers to verify the legality of those seeking work.
本件は連邦控訴裁判所までは連邦政府の勝訴となっていたが、連邦最高裁が取り上げることを決定したことから、俄然注目度が高まっている。しかも、上記sourceによれば、25日の最終弁論では、最高裁判事達から、連邦政府に対する厳しい質疑が行われるのではないか、とみられている。その理由は次の2点。 つまり、現在の連邦最高裁判事達は、州政府の権限については好意的な立場をとりがち、という訳である。しかも、今回の判決では、雇用規制の場合と同様、リベラル派のElena Kaganに投票権はない。よくて、4対4のイーブンである。仮にイーブンとなった場合、控訴裁判所のAZ州移民法執行差し止め命令が有効ということになり、その他の州の移民法を巡る初層で結論が出るまでその状態が続くことになる。

一方、連邦最高裁がAZ州法が適切である、との審判を下した場合、AL州をはじめとした厳しく不法移民を取り締まる州法が有効となり、各州で不法移民の摘発が急増する。さらには、Obama政権に対する風当たりも強くなることが予想され、医療保険改革法と並んで、11月の大統領選に大きな影響を及ぼすことが考えられる。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

4月22日 HSAの魅力 
Source :Making the most of that shiny new HSA (Reuters)
少し前にHSAが再び増え始めたことを紹介した(「Topics2012年2月20日 HSA復調」参照)。上記 sourceによれば、2011年の口座数は、1,140万口座に達したそうだ。

HSAが増加している理由として、次の3点が挙げられている。
  1. 企業が提供する医療保険プランで、高免責額とセットでHSAを利用するものが増えている。

  2. 税制上の優遇措置が大きい。
    • 拠出時非課税
    • 運用益非課税
    • 税制適格支出であれば非課税
    と、いずれの時点でも課税とならない。

  3. ポータブルである。
類似の医療貯蓄勘定に、FSAがあるが、こちらは年度を越えて繰り越しできない。また、HRAは、ポータブルではない(「Topics2004年1月7日(1) 医療貯蓄勘定」参照)。

2.の税制上の優遇措置についてさらに述べると、次のような特徴がある。
  1. HSAを併用できる高免責額保険プランの免責額は、個人プランの場合$1,200〜6,050(家族プラン$2,400〜12,100)

  2. HSAへの年間拠出限度額は、個人の場合$3,100(家族$6,250)

  3. 55歳を超えると、拠出限度額は毎年逓増となり、最大$1,000増額される。

  4. 非適格支出には、通常の所得税+20%の超過課税(ペナルティ課税)が行なわれる。ただし、65歳になると、超過課税はなくなる。
こうした特徴を捉え、若い世代で比較的健康な層にとって、HSAは極めて魅力的であると説明している。医療貯蓄勘定でありながら、もう一つの退職所得勘定として利用できるからである。

※ 参考テーマ「HSA