Source : | 5 ways to improve the U.S. retirement system (MarketWatch) |
先月、Mercer (@Melbourne)から、16ヵ国の年金制度について、比較評価するレポートが公表された(Melbourne Mercer Global Pension Index)。年金制度の国際比較は極めて難しい作業であるが、それを承知で、指標を作成して比較している。
まず、指標作成の概念図は次の通りとなっている。 その結果出てきたアメリカ年金制度の指標は、総合で58.1、グレードとしては、上から5番目の"C"ランクとされている。さらに、指標を改善するための処方箋も示されており、そのポイントは次の5点となっている。こうした指摘は、特に目新しいものではない。これまでにも、また現在でも、議論されている課題である。むしろ、それらを実現するために、上記sourceは、今の現実のアメリカ社会に照らして、アメリカの年金制度の改善のための課題をまとめている。
- raising the minimum pension for low-income pensioners
- adjusting the level of mandatory contributions to increase the net replacement ratio for median-income earners
- improving the vesting benefits for all plan members and maintaining the real value of retained benefits through to retirement
- reducing pre-retirement leakage by further limiting the access to funds before retirement
- introducing a requirement that part of the retirement benefit must be taken as an income stream
ところで、アメリカの年金制度は"C"ランクだが、わが国は、"D"ランク。16ヵ国中最下位のランクであり、インド、中国と同じレベルである。特に、持続可能性の評価が極端に低い。 ※ 参考テーマ「公的年金改革」、「DB/DCプラン」
- 公的年金の持続可能性。ただし、これは唯一、政治の意思で解決できる課題である。
- 働く場で利用できる貯蓄の手段が限られている。期間雇い、パートタイマー、中小企業、自営業者には貯蓄手段がほとんどない。
- DCプランでは、充分な退職後所得を確保できる保証がない。この点について、採用時の自動加入、拠出額の自動引き上げ、ターゲット・デート・ファンドの活用などは有効である。
- 連邦財政赤字がDCプランに悪影響をもたらす可能性がある。財政赤字削減のために、DCプラン優遇税制が廃止・縮小されれば、大きな影響をもたらす。
- アメリカ人の生活が改善しなければ、充分な拠出を継続することが難しくなっていく。
Source : | Domestic Partner Benefits? 45% Offer or Plan to Offer (HR Daily Advisor) |
上記sourceは、アメリカ企業で、従業員の家族に対してベネフィットを提供している状況を調査した結果である。気になったところを3点まとめておく。Domestic Partnerへのベネフィットを提供している場合には、異性カップルでも同性カップルでも受給できる企業が増えているが、同性婚配偶者へのベネフィットに関しては、まだまだ一般的にはなっていないようだ。
- Domestic Partnerにベネフィットを提供しているか
提供しているとする企業が38.1%ある一方、まったくその予定はないとする企業が53.3%にのぼっている。
- Domestic Partnerへのベネフィットで性別を規定しているか
性別にかかわりなく提供している企業が72.2%を占めている。その一方、異性だけというのが6.5%、同性だけがというのが19.0%もある。
- 配偶者に提供している医療保険プランの対象を性別で規定しているか
異性配偶者のみが56.1%、同性配偶者のみが5.1%となっている。異性でも同性でも提供している企業は34.2%となっている。
※ 参考テーマ「同性カップル」
Source : | Romney Presents Plan to Turn Around the Federal Government (Mitt Romney for President) |
4日、大統領選候補者のMitt Romney前MA州知事が、連邦政府の財政赤字削減策を公表した。連邦議会特別委員会とObama大統領がなかなか削減策の骨格を示せない中で、アピールを狙ったものと思われる。
とはいえ、企業経営者、州知事の経験を踏まえた候補者の政策提言であり、それなりの重みと現実性を備えているものと思われる。
当websiteとしての関心項目は次の通り。連邦政府の裁量的支出は大胆に削減し、社会保障支出はゆっくりと削減する、特に現在の受給者やもうすぐ受給者になる人々には影響が及ばないように配慮している。今の段階では、この程度の粗さのものしか出せないだろう。また、Romney氏自身が示す必要性もなかろう。
- 財政支出
- 連邦政府支出をGDPの20%程度に抑制する(現在は24.3%)。
- 経済成長率4%を続けられれば、2016年時点で$500Bの歳出削減を実行する必要がある。
- 非防衛裁量的支出を2008年の水準に戻す。
- 行政改革
- 医療保険改革法の廃止($95Bの歳出削減)
- 福利厚生まで含めると連邦政府職員の報酬は民間よりも30〜40%高い水準にある。これを是正することで$47Bを節約できる。
- 職員数を10%漸減させることで、$4Bを節約する。
- Medicaid
- 連邦政府負担を定額で州政府に拠出する。
- Medicaid支出伸び率を、CPI+1%以内に抑制する。
- Medicare
- 将来の加入者に、伝統的なMedicare制度とその他のプランとの間で選択肢を用意する。
- 加入者個人に対する支援は定額制とする。
- 寿命の長期化に伴って、ゆっくりと加入年齢を引き上げる。
- 公的年金
- 寿命の長期化に伴って、ゆっくりと支給開始年齢を引き上げる。
- 高額所得者の給付額の伸びを抑制する。
実際の論争は、年明けからである。それまでにObama政権、連邦議会民主党が財政赤字削減策をとりまとめなければならない。
※ 参考テーマ「公的年金改革」、「Medicare」、「無保険者対策/連邦レベル」、「無保険者対策/州レベル」、「大統領選(2012年)」、「社会保障全般」
Source : | In Kansas, Republicans Can't Agree On Insurance Exchanges (Kaiser Health News) |
昨日、医療保険改革法の肝は"Exchange"である、と紹介したものの、各州における"Exchange"創設の歩みは遅い(「Topics2011年8月25日 Exchangeの代替案」参照)。
上記sourceは、Kansas州の状況をレポートしている。そのポイントは次の通り。Kansas州は、知事、州議会両院とも共和党が握っており、医療保険改革法に対してネガティブにならざるを得ないことは理解できる。実際、同州では、"Exchange"創設法案すら州議会に提出されていない。
- Kansas州は、医療保険改革法の保険加入義務に対する訴訟に加わっている(「Topics2011年1月22日 医療保険加入義務反対訴訟 27州に」参照)。
- Brownback州知事は、医療保険改革法は必ず潰れるので、そこに盛り込まれた規程を推進すべきではない、と考えている。
- Praeger同州保険委員長は、そうした政治状況は理解しつつも、そうした州政府の動きは健全ではないと考えている。
- 保険会社は、州政府が運営する"Exchange"を望んでいるし、仮に連邦政府が運営することになったとしても、法律を順守するしかない。
- 連邦最高裁が保険加入義務に関する判決を下すのは、どんなに早くても来年6月である。そこまで待っていれば、州議会の2012年の議会日程は終わってしまう。
- 州が運営する"Exchange"を創設するためには、2013年1月までに準備が整っていることを示さなければならず、今の状況を続ければ、事実上、州が運営する"Exchange"は不可能になってしまう。
そうした環境の下、無保険者対策に有効と見られている"Exchange"の創設をどのように考えるのか。各州共和党知事・議員は思案のしどころである。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Without the Individual Mandate, The Affordable Care Act Still Cover 23 Million; Premiums Would Rise Less Than Predicted (Health Affairs) |
上記sourceでは、医療保険改革法の最大の柱の一つ、「保険加入義務」の政策効果について分析している。この分析を読む限り、無保険者対策としてクリティカルなのは、保険加入義務及びそれに伴うペナルティではなく、"Exchange"の創設のようである。
- 保険加入義務が外されても、医療保険改革法によって保険に加入できる人数は大幅に減ることはない。
- また、保険加入義務が外されても、加入する保険が大きく変化することもない。その結果、無保険者は、800万人程度の違いとなり、無保険者が大きく減ることは変わらない。
- ただし、保険加入義務がはずされ、ペナルティがなくなると、保険料の上昇率は再び大きくなっていく。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」
Source : | Children of immigrants hit an economic ceiling (Los Angeles Times) |
移民で成り立っているアメリカで、夢は実現しなくなっている。上記sourceで紹介されている数字を並べてみる。不法移民の場合には、この数字はもっと厳しいものとなっているだろう。元々、移民で成功するには3代必要と言われている(ベトナム人だけは2代で成功するそうだ)。しかし、高校教育も受けていなければ、展望を持つことは難しいだろう。
- 自分達よりも子供達の方がよい生活を送れると考えているアメリカ人は、2009年には62%あったが、今年は47%しかいない。
- 80%のアメリカ人が、政府は雇用の創出に効果のある政策を打っていないと考えている。
- メキシコ人の両親から生まれた若いアメリカ人のうち、24%が高校を中退している。アメリカ人を両親に持つ場合には11%、インド人の移民から生まれた場合には7%しかない。
移民が社会に活力をもたらす時代は終焉しつつあるのかもしれない。
※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」
Source : | Insurer profits at issue in Anthem Health Plans of Maine suit (Washington Post) |
Maine州政府は、保険会社の利益を抑制するために、州内で営業する保険会社(Anthem Health Plans of Maine)の保険料引き上げ幅(個人市場)を削減してきた。こうしたME州政府の行政に対し、保険会社は、訴訟を起こしており、今月10日に州最高裁で判決が下される予定になっている。
2009年 2010年 2011年 削減された利幅 3.0% 0.5% 1.0% 州政府が認可した引き上げ率 10.9% 14.1% 5.2%
保険会社側は、『州政府監督者には、保険会社に公正で合理的な利益率を認めない裁量権があるのか』と問いかけている。これに対し、州政府は、保険加入者の利益を守るために一定の利益を保険会社に認めているのであり、保険会社の利益を守るためではない、との立場を取っている。
ことはME州の話ではあるのだが、判決内容が全米に影響が及ぶ可能性があり、注目を集めているようだ。果たしてどのような結論が待っているのだろうか。
- 保険料に関する監督権限が明確になっており、保険料引き上げ申請を拒否できる権限を有しているのが、D.C.を含む26州ある。仮にME州で違法との判決が下されれば、これらの州政府の権限に対して、同様の問題提起が次々と行われることになる。それがひいては、Obama政権の医療保険改革法の基盤を揺るがすことにつながる(「Topics2010年8月18日(3) 州政府の権限強化が必要(2)」参照)。
- 保険会社の訴えが退けられれば、各州の保険料に対する監督は強化の方向で動くことが考えられ、医療保険改革法に基づく保険料規制は厳しさを増すことになる。
※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」