9月10日 Obama大統領の雇用拡大戦略 
Source :Obama Challenges Congress on Job Plan (New York Times)
8日夜、Obama大統領が"The American Jobs Act"を発表し、即刻議会で承認するよう求めた。ポイントは、次の2つの公表資料を参照いただきたい。 ちょっとビックリだったのは、財政規模が$447Bと予想よりも大きくなったことと、その財源を手当てするために、大統領自身が大胆な歳出削減案を近日中に公表するということである。そんな歳出削減提案ができるのであれば、債務上限引き上げの議論をしている時に提案すればよかったのに、と思ってしまう。

Obama大統領は、さる6日、労働組合の前で『議会なんて待ってられるか!』と啖呵を切った(Washington Post)手前、「大胆な」提案が必要だったのだろうが、大胆な提案になればなるほどその実現可能性に疑問符が付いてしまう。

そもそも、今回の両院総会での演説も、最初は7日でオファーしたのに、共和党から「大統領選候補者討論会があるから」と一日ずらされ、「NFLの開幕戦にかぶらないように」と演説時間のお尻を切られと、スケジュールさえ大統領の意向通りにならない状況であった。大統領演説も随分と軽く扱われるようになったものである。

※ 参考テーマ「労働市場

9月9日 Romney 4%成長宣言 
Source :Romney unveils sweeping plan for jobs, economy (Washington Post)
6日、共和党大統領候補選を戦うMitt Romney氏が、雇用・経済成長戦略を公表した。主なポイントは次の通り(印は、当websiteの関心事項)。 Romney氏は、これらの政策により、4年間で、 を実現できるとしている。

上記sourceによれば、Romney提案は、ビジネスフレンドリーで、共和党支持者の中庸をとらえており、中国、労働組合に対して厳しい態度を示している。

※ 参考テーマ「大統領選(2012年)」、「労働市場

9月8日 メンバー縮小:NLRB 
Source :The Members of the National Labor Relations Board (NLRB)
何かと最近話題の提供が多いNLRBだが、そのボード・メンバーが減ってきている。これまで議長を務めてきたWilma B. Liebman氏が任期を終えて、完全に引退してしまった。再指名はしないでもらいたい、との意向であったそうだ。

その結果、現在のメンバーは次のようになっている。
役 職氏 名政 党指名者任 期上院承認
ChairmanMark Gaston PearceDPresident Obama2010.4.7〜2013.8.27
memberCraig BeckerDPresident Obama2010.4.5〜2011.12.31×
memberBrian HayesRPresident Obama2010.6.29〜2012.12.16
指名のみTerence F. Flynn-President Obama2011.1.27〜×
(空 席) -   
事務局長Lafe Solomon-President Obama2011.1.27〜×

※ Becker氏は、大統領による"recess appointment"であり、今年中に上院の承認が得られなければ、空席扱いとなる。
5人のメンバー中、上院で承認されているのは二人しかいない。その二人についても、任期終了が2年以内にやってくる。来年11月の選挙で、大統領や上院の議員構成が大きく変わらなければ、やがて承認されたメンバーは一人もいなくなるという状況が出現する可能性がある。

逆に、共和党議員達や経済界からみれば、正当性が疑われるメンバーで次々とルールを決めようとしていることには納得がいかない、ということになる。人事の停滞は機能の低下につながる。

※ 参考テーマ「労働組合

9月7日 共和党候補者の移民政策 
Source :Illegal immigration is flash point for Republican White House hopefuls (Washington Post)
共和党の大統領候補選の大きな争点の一つに、移民政策、不法移民対策が挙げられている。主な候補者の主張は次の通り。
Mitt Romney
  • Former MA Governor
  • 連邦政府が国境警備を強化することが先決。その後、移民政策改革を議論すべき。
  • 不法移民を雇用する企業が不法移民を引き付ける。不法移民を摘発し、その雇用者を罰すべき。
Michele Bachmann
  • Representative (R-Minn.)
  • 不法移民の存在そのものに批判的。
  • 国境に、寸分の隙なくフェンスを設けるべき。
  • 不法移民に対する連邦政府の給付を廃止すべき。
  • 不法移民の多くはメキシコからやってくる。そこは悪の温床だ。
Rick Perry
  • TX Governor
  • 連邦政府が国境警備を強化することが先決。その後、移民政策改革を議論すべき。
  • 2,000マイルにのぼる国境全てにフェンスを張り巡らすことは非現実的。
  • 知事就任初年度に、『3年間以上TX州に在住し、TX州の高校を卒業した者は、州立大学で州民授業料を適用する。国籍は問わない。』との法案に署名。
  • AZ州の厳しい不法移民対策を批判。
共和党支持者の間では、不法移民に対する考えが、2004年を境に大きく右傾化した。当時のBush大統領が、『国境警備の強化を引き換えに、不法移民に対して何らかの法的地位を与える』との提案を行ったのだ(「Topics2004年1月11日 非合法入国者の地位確認(3)」参照)。

不法移民に寛大になることは、今の保守派には耐えられないようだ。SC州で開かれたBachmann氏のタウンミーティングでは、同氏の強烈な不法移民批判が好評を博した。

一方、保守色の強いTX州では、Bush、Perryの主張からわかるように、既に存在する不法移民には一定の社会的安定をもたらそうという考え方が根強い。また、こうした方針は経済界からの支持も得やすい。現実的な対応を求めているようだ。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者」、「大統領選(2012年)

9月6日 理性的な解決:MA州 
Source :Reasonable Reform Trumps In Massachusetts (Kaiser Health News)
州財政収支の悪化を背景に、各州では州政府・自治体職員の医療保険の見直しが進められている。そうした動きの一つとして、7月12日、MA州で公務員医療保険改革法が成立した。

そのポイントは、州内自治体公務員労組との交渉方法の変更である。
交渉期間は30日間、州政府職員向けプランとの比較を充分踏まえることとなっている。

上記sourceによれば、法改正以前の交渉手法に伴い、自治体職員向け保険プランの支出は、州政府職員向けの保険プランより37%も高い、との試算が出ていた。具体的な例としては、
 州政府職員自治体職員
外来診療窓口負担(1回あたり)$20$11
免責額$250(単身プラン)
$750(家族プラン)
$0
である。

こうした理詰めの議論を重ねた後、個別自治体労組にも発言権を残している形にまとめることで、大きな亀裂を作らず、コスト削減への道筋をつけることができたのであろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/MA州

9月5日 American DreamよりもCalifornia Dream 
Source :Legislature in California Set to Pass a Dream Act (New York Times)
CA州は、不法移民への教育は不可欠という考え方が貫かれているようだ。不法移民の子弟について、逸早く大学州内授業料を適用していることに加え、不法移民そのものにも奨学金を提供しようとしている。

7月には民間資金による奨学金を不法移民に提供することを認める法案を可決した。さらに、先週の8月31日、州政府が自らの財政負担により奨学金を提供するという内容の法案を、州議会上院が可決した。今週には下院も可決する見込みである。 当然のことながら、共和党議員達は『不法移民を呼び込むだけ』と猛反発しているが、CA経済界、農業経営者、大学関係者も支持に回っており、大きな流れができつつある。大学で勉強しようというような『真面目な』不法移民は、将来は市民権を獲得するだろうし、そうした人々は労働力として魅力ある人材というわけである。

州財政が厳しい中、将来への投資を敢行する勇気は賞賛に値する。

※ 参考テーマ「移民/外国人労働者

9月4日 CA州:保険料規制法案廃案 
Source :Health insurance regulation bill stalls for the year (Sacramento Bee)
CA州議会で審議されていた保険料監督権限を強化するための法案(AB 52)が廃案となった(「Topics2011年8月20日 CA州:保険料規制法案への反発」参照)。最終局面では、医療機関も反対に回り、州知事は拒否権発動を示唆していた(Los Angeles Times)。

法案スポンサー議員は来年の再提出を言明しているが、その実現可能性は不明である。民主党が州知事と州議会両院を押さえているCA州でさえ、医療保険改革法の具体策が実行できないという、極めて厳しい事例である。

※ 参考テーマ「無保険者対策/CA州」、「無保険者対策/連邦レベル

9月3日 労働組合の将来 
Source :New High of 55% of Americans Foresee Labor Unions Weakening (Gallup)
労働組合は今後弱体化すると考えている割合が55%に達している。これは、近年にない高い水準である。
こうした見方は、民主党支持層でも広がっているようだ。背景には、労働組合が組合員の利益ばかりを擁護しており、経済全体や非組合員の利益を害しているとの認識が広まっていることにある。

このような社会の空気は、来年の大統領選に向かうObama大統領、民主党にとって、決して好ましいものではないだろう。

※ 参考テーマ「労働組合

9月2日 雇用不安拡大 
Source :In U.S., Worries About Job Cutbacks Return to Record Highs (Gallup)
ギャラップ社の調査によると、レイオフを心配している労働者の割合が高まっている。
水準からみれば、リーマンショック後の景気後退期に匹敵するレベルである。また、報酬削減、就労時間調整などへの懸念も高まっている。こうしたところも最近の消費の弱さに影響しているのだろう。

※ 参考テーマ「労働市場

9月1日 変えるなら早く? 
Source :Healthcare redux (Financial Times)
個人の保険加入義務の合憲性については、連邦最高裁で争われる見込みである(「Topics2011年8月16日 PPACA:第11控訴裁判所は違憲判決」参照)。このまま自然体で行ってしまうと、来年秋の大統領選の直前に判決が出る可能性がある。仮に、そのタイミングで最高裁が違憲判決を示せば、Obama大統領ならびに民主党にとっての打撃は計り知れない。

こうした最悪のシナリオを回避するため、大統領スタッフ達は、司法テクニックを駆使して、大統領選挙後まで判決を延ばす作戦を検討しているという。

上記sourceでは、 としている。

しかし、無保険者の多くは低所得者であり、いったん課税で可処分所得が減らされてしまえば、保険加入のための負担が難しくなってしまう。無保険者を減らす効果は大幅に減殺されることになろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル