5月10日 DBプランの苦境 
Source :New Rule Signals Kiss of Death for Pensions (CNBC)
『MAP-21は死の口づけ』。上記sourceのタイトルである。MAP-21はDBプランへの救済策として導入されたが、効果がすぐに剥落したばかりか、DBプランの持続可能性を危うくしている、と述べているのである(「Topics2013年3月7日 MAP-21は効果なし」参照)。

実際、Milliman 100 Pension Indexによると、大規模DBプランの積立比率は、1年前の82.6%から77.2%にまで下落している。金融緩和策により投資収益率が低くなっているうえに、MAP-21により拠出金額が抑制されているため、どうしても財政健全性は低下してしまう。

話は変わるが、PBGCは、最近の動きを受けて、DBプラン凍結の全体像を示す資料を公表した。当局としても深刻に受け止めるべき事態となってきた訳だ。

※ 参考テーマ「DB/DCプラン

5月9日 DE州:11番目の同性婚認可 
Source :Delaware, Continuing a Trend, Becomes the 11th State to Allow Same-Sex Unions (New York Times)
報道通り、7日、Delaware(DE)州議会上院が同性婚認可法案を可決、その数分後、州知事が署名し、法案は成立した。施行は7月1日である(「Topics2013年5月5日 RI州も同性婚認可」参照)。
同性カップルの法的ステータス
MarriageCivil UnionDomestic Partnership他州の法的ステータスの承認
施行日州 法州最高裁判決
Massachusetts2004.5.17A@Same-sex marriage
Connecticut2008.11.10A@Same-sex marriage
Iowa2009.4.24Same-sex marriage
Vermont2009.9.1Same-sex marriage
New Hampshire2010.1.1Same-sex marriage
Washington, D.C.2010.3.3○ (1992.6.11)Same-sex marriage
New York2011.7.24Same-sex marriage
Maine2012.12.29○→×→○**○ (2004.7.30)Same-sex marriage
Washington2013.6.12009.7.26〜2014.6.30:異性間は62歳以上のみ
2014.7.1〜:同性間、異性間とも62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
Maryland2013.1.1Same-sex marriage
Rhode Island2013.8.1Same-sex marriage
Delaware2013.7.1Same-sex marriage
California2008.6.17〜11.4○→×(→○)*○ (2005.1.1)
異性間は62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Domestic Partnershipとして認知
New Jersey○ (2007.2.19)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
○ (2004.7.10)
同性間、異性間とも62歳以上のみ
同性婚を含めて認知
Illinois○ (2011.6.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚を含めて認知
Hawaii○ (2012.1.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知
Oregon○ (2008.2.4)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
-
Wisconsin○ (2009.8.3)(同性間のみ)認知しない
Nevada○ (2009.10.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○
**ME州議会可決(2009.5)○ → 州民投票(2009.11)× → 州民投票(2012.11)○
さらに、次の2州で可決される可能性が高いそうだ。 来月は、いよいよ連邦最高裁の判決が示される。

※ 参考テーマ「同性カップル

5月8日 FL州議会は決断せず 
Source :Florida Legislative Session Ends Without Deal On Medicaid Expansion (Kaiser Health News)
今月3日、Florida州議会は、Medicaid拡充策について意思決定することなく、通常会を解散した。州議会上院は、拡充に伴う連邦政府負担金を利用して低所得層の民間保険プランへの加入を促進するという法案を可決した。これは、Arkansas州(AR)が進めようとしている制度案と同じ考え方である(「Topics2013年3月23日(1) Medicaid拡充へ妥協策」参照)。ところが、下院は上院案への合意に至らず、解散日を迎えてしまったのである。

理論上は、特別会を開催することも考えられるが、州知事、州議会とも合意の見通しが立たないため、そこまでの扱いになるのかどうかは不明である。

FL州議会は、上下両院とも共和党が圧倒的多数を占めている。しかし、上院共和党は、この際、民間保険プランを利用して低所得層の加入率を高めた方がよいと判断しているのに対し、下院共和党は、それでは連邦政府に頼り過ぎではないか、と懸念しているのである。どちらも共和党らしい考え方なのだが、ウェイトの置き方が違ってきている。

これでFL州がMedicaidを拡充しないことになれば、南部諸州は全滅ということになる。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル

5月7日 大卒の就職事情 
Source :College Graduates Fare Well in Jobs Market, Even Through Recession (New York Times)
当websiteでは、大卒の就職事情は厳しいことを紹介してきた。アメリカでもその認識は共有されている。しかし、それでも、大卒は就職できている。 また、次のグラフを見てわかる通り、2007年12月時点に較べ、大卒の雇用者数は9%増加している。

Education and Employment

DEC. 2007 - APRIL 2013

Some college

Less than high school

High school graduates

College graduates

0%

–14%

–9%

+9%

’13

’12

’11

’10

’09

’08

20

10

0

%

10

+

Change in employment since the start of the recession

Source: Bureau of Labor Statistics

その分、高卒以下の雇用者数は減少したままになっている。これは、大卒者が大卒のスキルを必要としない職場にまで出ていって、就職してしまうためである。

つまり、大卒者は不本意ながらも低技術の職場に就職し、これに追い出される形で高卒以下の者が就職できない状況に追い込まれている。生産性の高い職場の創出が求められている。

なお、Economist(April 27 - May 3, 2013)でも同様のテーマで特集("Generation Jobless")を組んでいる。

※ 参考テーマ「労働市場」、「教 育

5月6日 同性婚認可後のMD州政府 
Source :With same-sex marriage now available, state to end benefits for domestic partners (Baltimore Sun)
州民投票で同性婚認可が認められたMD州では、予定通り、今年1月1日から同性婚が成立している。これまで、MD州政府は、州政府職員の同性の"domestic partners"に対して医療保険などのベネフィットを提供していたが、同性婚が認可されたことを受けて、同性カップルに対するベネフィット提供を、来年1月から打ち切る方針を示した。影響を受けるのは、300人足らずという。

MD州政府のベネフィット提供方針の変遷は、次の通り。 異性間のdomestic partnerの場合は一貫してベネフィットを提供してきておらず、同性婚が認められた以上、異性婚と異なる待遇となれば訴訟リスクが高まる、という判断である。

この州政府提案について、同性婚推進派の間でも意見が異なっているという。州政府提案に賛成する人々は、異性婚と同じ権利を獲得したのだから、ベネフィットに関する対応も同じであるのは当然だ、という考えだ。

他方、反対派は次のようなことを考えている。

実際、同様の状況にあるWA州政府は、今のところ同性パートナーへのベネフィット給付を廃止する考えはないという。

※ 参考テーマ「同性カップル

5月5日 RI州も同性婚認可 
Source :Rhode Island becomes 10th state to allow gay marriage after Gov. Chafee signs bill into law (Washington Post)
5月2日、Rhode Island(RI)州議会下院は、同性婚を認める法案を可決、即日州知事が署名し、同州は10番目の同性婚認可州となった。州議会は上下両院とも圧倒的に民主党が多いものの、ローマ・カトリック教会の影響が強い土地柄のため、なかなか同性婚が認められてこなかったそうだ。

施行日は今年の8月1日。これまで同性カップルに認めてきた"civil union"というステータスは、7月1日をもって新たな賦与はできなくなるが、既に賦与されたステータスはそのまま承認する。また、これまで頑なに拒否してきた他州で認可された同性婚も承認されることになる。
同性カップルの法的ステータス
MarriageCivil UnionDomestic Partnership他州の法的ステータスの承認
施行日州 法州最高裁判決
Massachusetts2004.5.17A@Same-sex marriage
Connecticut2008.11.10A@Same-sex marriage
Iowa2009.4.24Same-sex marriage
Vermont2009.9.1Same-sex marriage
New Hampshire2010.1.1Same-sex marriage
Washington, D.C.2010.3.3○ (1992.6.11)Same-sex marriage
New York2011.7.24Same-sex marriage
Maine2012.12.29○→×→○**○ (2004.7.30)Same-sex marriage
Washington2013.6.12009.7.26〜2014.6.30:異性間は62歳以上のみ
2014.7.1〜:同性間、異性間とも62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Same-sex marriage
Maryland2013.1.1Same-sex marriage
Rhode Island2013.8.1Same-sex marriage
California2008.6.17〜11.4○→×(→○)*○ (2005.1.1)
異性間は62歳以上のみ
異性婚配偶者と同等権利賦与
Domestic Partnershipとして認知
New Jersey○ (2007.2.19)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
○ (2004.7.10)
同性間、異性間とも62歳以上のみ
同性婚を含めて認知
Illinois○ (2011.6.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚を含めて認知
Hawaii○ (2012.1.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知
Delaware○ (2012.1.1)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚を含めて認知
Oregon○ (2008.2.4)(同性間のみ)
異性婚配偶者と同等権利賦与
-
Wisconsin○ (2009.8.3)(同性間のみ)認知しない
Nevada○ (2009.10.1)
異性婚配偶者と同等権利賦与
同性婚以外は認知

* CA州最高裁判決○ → Proposition 8× → 連邦地方裁判所○ → 連邦第9控訴裁判所小法廷○
**ME州議会可決(2009.5)○ → 州民投票(2009.11)× → 州民投票(2012.11)○
次は、Delaware州のようだ。既に州議会下院で可決され、上院での投票を待っている状態だという。やはり、東海岸で風は続いている(「Topics2012年10月21日 同性婚:東海岸で風再び」参照)。

※ 参考テーマ「同性カップル

5月4日 Medicaid拡充は効果薄 
Source :Expanding Medicaid Didn’t Lead To Big Health Gains In Oregon, Study Finds (Kaiser Health News)
Oregon州で行われていたMedicaid拡充に関する比較調査の結果が公表された。

つまり、加入者の負担は軽減されたものの、医学的な効果はほとんどなかった、という結論である。医療界は大いにショックを受けているそうだ。そして、もう一つ、PPACAの本格施行にとっても打撃である。Medicaid拡充策は、PPACAの重要な柱の一つであるからだ。未だに州政府レベルで拡充か否かの議論が続けられている中で、今回の調査結果のもたらす影響は大きいだろう。

そこで、久し振りにMedicaid拡充への動きを確認しておく。
Exchange & Medicaid (2013.5.4.現在)

State Health Insurance Marketplaces (CMS)
Health Reform's Medicaid Expansion (Center on Budget and Policy Priorities)
PPACAに基づく保険加入申請が10月1日に迫っている中、Medicaid拡充策を打ち出しているのが20州のみというのは寂しい。連邦政府による各州への懐柔策も功を奏していないようだ(「Topics2013年3月23日(1) Medicaid拡充へ妥協策」参照)。しかも、これらの州で州法改正が間に合うかどうか、この1〜2ヵ月にすべてがかかっている。20州全てで拡充されるかどうか、未だ定かではない状況なのである。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル」、「無保険者対策/連邦レベル

5月3日 Exchange申込用紙の簡素化 
Source :HHS Unveils Simplified Insurance Form Amid Attacks on Obamacare (Government Executive)
4月30日、HHSは、Exchangeを通じた保険加入のための申込用紙を公表した。個人用の申込用紙は、実際に記入するのは3ページのみとなっている。

同日、記者会見を開いたObama大統領は、『元々の原案では21ページもあったものを、皆の努力でスリム化した』とその成果を強調した。

ところが、この申込用紙を見て、本当にこれで簡素化されたと言えるのか、との疑問の声が上がっている(Kaiser Healgh News)。

では、実際の申込用紙を見てみよう。4月30日に公表された申込用紙は、次の3種類である。
Marketplace Consumer Application
そのうち、最初の個人申込用紙を読んでみる。確かに記入枚数は3ページである。しかし、第1ページの「この申込用紙を使える人」というところを見ると、様々な要件がついている。 また、次のような要件に該当する者は、別の用紙にも記入しなければならない。 本当に3枚だけ記入する人は、かなり限定されるようである。なお、不法移民はしっかりと排除されている。

さらに、家族向け保険プランの申込用紙を読んでみる。そうすると、本人に関する情報が3ページ、配偶者等に関する情報が2ページある。さらに、保険加入となる家族が増えるごとに、2ページずつ増えていく。さらに2ページの記入を求められたうえに、家族のうちの誰かが勤め先から保険プランの提供がある場合は、その情報も記入しなければならない。

家族が親二人子二人であれば、最低9ページは記入しなければならない。

やはり『3枚だけ』と云い募るのは苦しいようだ。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

5月2日 保険料対策は"self-insurance" 
Source :Employers see self-insurance as hedge against ACA health costs (American Medical News)
PPACAの施行に伴い、医療保険料が上昇するとの見通しは、ほぼ常識になりつつあるようだ(「Topics2013年5月1日 本当に"Affordable"か?」参照)。企業経営者を対象としたある調査によると、80%以上の経営者が『PPACAが施行になると保険料が10%以上上昇する』と答えている。
PPACAの制度施行そのままにしておけば、これだけの保険料アップになり、企業にとってもコストが急増することに直結する。その防衛策として考えられているのが、"self-insurance"だという。

企業が提供する医療保険プランには、2つのタイプがある(「Topics2010年1月21日(2) 2つの企業提供保険プラン」参照)。
 Fully-Insured PlanSelf-Insured Plan
概 要企業が保険会社から保険プランを購入する。
(保険購入型)
企業自らが直接従業員に保険給付を行う。
(直接給付型)
リスク負担企業は従業員一人当たり保険料を保険会社に支払う。保険給付は保険会社が行い、保険給付に伴うリスクは保険会社が負う。企業自らが保険給付を行う。通常、保険会社等が給付を代行するが、保険給付に伴うリスクは企業が負う。想定以上の給付に備え、再保険を購入する。
特 徴従業員数、年齢構成、給付実績等を基に、一人当たり保険料を算定。保険料は毎年見直す。大企業では、役職毎に給付内容を変えて複数のプランを提供する。
企業規模中小企業に多い。従業員3〜199人規模の企業の従業員の88%が加入(2008年)。大企業に多い。従業員5,000人以上規模の企業の従業員の89%が加入(2008年)。
市場シェア保険プラン提供を受けている従業員の45%が加入。保険プラン提供を受けている従業員の55%が加入。
法規制州法。差別禁止対象は、年齢、性別、人種、障害。連邦法(ERISA)。高額報酬者に偏った給付を差別禁止の対象としている。

参考資料:"Health Plan Differences : Fully-Insured vs. Self-Insured"(EBRI)"Is Self-Funding or Fully Insured Right For Your Company?"(PhysiciansCare)
企業自らが保険者となるため、健康増進プログラムや予防医療などと関連させやすく、また州法に縛られないため、制度設計も柔軟にできる。従来は、大企業の保険プランの典型と考えられてきたが、PPACAで保険料が上昇することへの対応として、中小企業でも関心が高まっているという。

中小企業にとって、保険プランを管理するためのコストは大変重荷になるはずだ。それでも関心を高めているということは、保険料増加の方が将来的に重荷になると感じられているからであろう。

中小企業は"Exchange"へ、と単純に考えていたが、どうもそうした思考は許されない状況が生まれつつあるようである。

※ 参考テーマ「医療保険プラン」、「無保険者対策/連邦レベル

5月1日 本当に"Affordable"か? 
Source :Physician says Affordable Care Act an 'experiment' that will fail (Physicians for a National Health Program)
例の単一保険プランの導入を推奨する医師達(「Topics2011年5月27日 医者が単一プランを勧める訳」参照)が、今回のPPACAは『実験であり、その結果は失敗に終わる』と評している。
  1. 国民に加入義務を負わせて保険市場に参加させる試みは壮大な実験である。

  2. しかし、近年、保険市場が正常に機能したことはないし、今後変化するという確証は得られない。

  3. 医療保険プランが購入可能となるとは思えないし、仮に購入可能なものは十分な給付を提供していない。

  4. 本来は、Medicareを拡大して全国民に提供することが望ましい。
保険料が大幅に上昇するのではないか、との懸念は、連邦議会民主党議員の間にも広まっているそうだ(New York Times)。おそらく、地元の準備状況からそうした情報が耳に入ってきているのだろう。

保険加入シーズンまで、あと5ヵ月である。夏場には相場が見えてくることだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル