11月30日 長期失業者への差別? 
Source :Caught in Unemployment’s Revolving Door (New York Times)
上記sourceは、長期失業に陥ってしまった人のルポで、何ともやるせない気持ちになる。

その中で、特に気になったのが、次のフレーズである。
"Some of the long-term unemployed might never find work because businesses simply refuse to hire them."
長期失業者が特定の産業や特定の属性に固まっている訳ではないことから、こうした推測が出てきているのである。その他にも、こうした推測を裏付けるような事象も挙げられている。 このようなことがはっきりしてくると、求職活動をしている中で、『失業期間により差別されてるのではないか』、さらには『失業者に対する差別を禁止すべきではないか』という意見が出てくる(NOLO)。実際、Obama大統領は、失業者への差別禁止を法制化しようとしたものの、失敗に終わっている(「Topics2011年9月28日 失業者差別禁止」参照)。

一方、地方政府では法制化に成功したところが出てきている。これまでに失業差別禁止法を成立させた州は、New Jersey(2011)、Oregon, D.C.(2012)(NCSL)。それにNY市が加わる。

最後に、かの有名なPeter Cappelli教授の言葉を引用しておこう(Harvard Business Review)。
"What we do know about job candidates who are long-term unemployed, which is related to job success, is that they are persistent. Millions of other unemployed facing this job market gave up looking and dropped out of the labor force. We also know that they will likely be very grateful to have a job, and gratitude is associated with many aspects of good job performance. They are also likely to be cheaper and easier to hire because you don’t have to woo them away from their current employer."
※ 参考テーマ「労働市場」、「人事政策/労働法制」、「解雇事情/失業対策

11月29日 Online SHOPは1年先送り 
Source :Online Health Law Sign-Up Is Delayed for Small Business (New York Times)
11月27日、HHSは、 とする旨を発表した。

本来なら、今年10月1日からOnline SHOPを開始する予定であったが、準備不足のために1ヵ月遅れとする旨を公表していた(「Topics2013年9月29日 またまたSHOPで躓き」参照)。ところが、結局は、さらに1年遅れの開始としたのである。準備不足というよりも『準備していなかった』という方が正しいようだ。

可笑しいことに、当局であるHHSの発表文書では、冒頭から延々と、保険会社等を通じてSHOPに加入申請できることを説明していて、online申請が1年遅れになることは一番最後に付け足しのように記述しているのである。しかも、保険会社等を通じた加入のことを、"direct enrollment"と呼んでいるのだが、むしろこの加入方法は"indirect enrollment"と呼ぶべきであり、online加入申請の方を"direct enrollment"と呼ぶべきだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル

11月28日 PPACA:結婚すると損 
Source :The Health Exchange Marriage Penalty (National Center for Policy Analysis)
アメリカでは、所得税制上、"Marriage Penalty"という言葉がある。一人ひとりが単独で納税する場合と、夫婦二人で合算納税する場合を比較して、合算納税する方が合計納税額が高くなることをいう。こういう構造が生まれてしまう要因としては、
  1. 累進税率
  2. 所得控除方式の選択の有無
が挙げられている。

上記sourceは、PPACAに基づいてExchangeで保険プランを購入する場合にも、税と同様、結婚して夫婦で保険加入すると、それぞれ単独で加入する場合よりも実質的な保険料負担が高くなる、と説明している。ただし、その要因は、
  1. 所得が上がるにつれて保険料補助(tax credit)が漸減していく
  2. FPL家族構成人数に比例して上昇しない
というもので、所得税の場合とは構造が異なる。

上記sourceの試算によると、右図の赤の部分が各所得層における「結婚損」となる。

所得税でも、Exchange保険料でも、結婚する方が損、ということになれば、今の若者世代は、同居はしても結婚しなくなるだろう。

※ 参考テーマ「無保険者対策/連邦レベル」、「人口/結婚/家庭/生活

11月27日 PPACA下のSF市皆保険制度 
Source :Employer Services Advisory: State and Local Mandates After ACA (McKenna Long & Aldridge LLP)
PPACA施行以前から"Pay or Play"などの規定により皆保険制度を実施している州、自治体が存在する。ところが、PPACAには、それら自治体の制度をどうするか、という一般規定は存在しない。従って、PPACA本格実施に伴い、独自の皆保険制度をどのようにするかは、自治体の判断にかかっている。

San Francisco市でも皆保険制度が実施されているが、今のところ、市当局からPPACAに関連する具体的なガイドラインは示されていないそうだ。

以下、現行制度の概要と若干のPPACAとの関係をまとめておく(「Topics2007年8月17日 SF市の無保険者対策」参照)。 ※ 参考テーマ「無保険者対策/SF市」、「HSA

11月26日 FSA税制改正 
Source :Use It or Lose It: New IRS Guidance Permits Carryover for Health FSAs (Drinker Biddle)
10月31日、IRSの通知により、FSA(Flexible Spending Account)に関する税制改正が示された。主な改正点は次の点。 これまで繰り越しは認められておらず、使い切らなければ捨てるしかなかった訳だから、利用者にとっては便利になる。ただし、FSAは、HSAとは異なり、高免責額プランとの併用は認められていないことには注意しておく必要がある。

この税制改正を反映させた医療貯蓄勘定の比較表を作成しておいた。

※ 参考テーマ「HSA

11月25日 Exchangeの進化 
Source :Executive Guide to Health Insurance Exchanges (Towers Watson)
連邦立・州立のPublic Exchangesと、民間立Exchangesの概要を解説するとともに、選択のためのポイントを企業向けにまとめたものである。その中で、まあ、多少宣伝要素もあるのだろうが、2015年に導入を検討している企業が57%もあるという。
公私ともに注目度の高まっているExchangeだが、このTowers Watsonが提供する"OneExchange"という概念が面白い。公私ともに、一つのExchangeで保険プランを提供しようという試みである。
今年スタートした新たな枠組みであるExchangeは、どんどん進化している。

※ 参考テーマ「Private Exchange」、「無保険者対策/州レベル全般」、「Medicare

11月24日 若者が親と同居する訳 
Source :Millenials, money, Mom and Dad (Securian Financial Group)
本当は調査目的が少し違うのだが、面白い調査結果があったので、まとめておく。

調査対象は、18〜32歳の親と同居している若者(高卒以上)である。
  1. 調査対象の属性は、次の通り。
  2. 親と同居している理由は、出費を抑えるためというのが多いのだが、失業中(unemployed)、または稼ぎが少なく独立できない(underemployed)、というのもかなりの割合を占めている。
  3. 親が同居していいと言っている期限は、大学卒または就職して充分な稼ぎが得られるまで、というのが多い。ただし、期限を切っている親の割合は9%しかない。
アメリカ社会では、若者の自立が厳しくなっているのと同時に、そうした厳しい環境にいる子供に対して親が寛容になってきているのではないだろうか。

※ 参考テーマ「労働市場」、「人口/結婚/家庭/生活

11月23日 失業給付延長停止で失業増 
Source :Labor Market Will Lose 310,000 Jobs in 2014 if Unemployment Insurance Extensions Expire (Economic Policy Institute)
今のままいくと、来年初めには、失業給付の延長が停止されてしまう(「Topics2013年10月8日 失業保険の効力低下」参照)。連邦議会での議論も行なわれておらず、時間切れで給付延長停止の可能性が日に日に高まっている。

ところが、上記sourceは、失業給付の延長が停止されてしまうと、2014年に31万人の雇用が失われ、失業率も0.2%ポイント上昇すると主張している。

Impact of continuing federally funded unemployment insurance extensions through 2014 on GDP and jobs in 2014

Cost (billions) $25.2
Impact on GDP (billions) $37.8
Impact on GDP (as a share of GDP) 0.2%
Impact on employment  310,000

Source: Calculated using methodology described in Bivens (2011)

失業給付の延長で配布されることにより失業者の支出が増えているので、それがなくなるとGDPが低下する、というのが理屈である。

しかし、再分配せずに済んだ分が可処分所得を押し上げるという効果もあるのではないだろうか。

また、現在の失業率の水準の高さを理由に連邦政府の失業給付延長は継続すべき、との意見も根強い(Center on Budget and Policy Priorities)。
確かに、過去、給付延長を停止した時の失業率の水準と較べると、相当高い水準にある。しかし、今の連邦政府の財政状況では致し方ないのだろう。

※ 参考テーマ「解雇事情/失業対策

11月22日(1) MAP-21延長案 
Source :Possible extension of MAP 21 interest rate stabilization (October Three)
連邦債務上限問題の先送りと超党派による財政健全化議論が行なわれている中、MAP-21の延長も具体的な施策の一つとして検討されているらしい。
MAP-21による年金債務の縮減 ⇒ 企業拠出の減少 ⇒ 課税所得の増加 ⇒ 納税額の増額
ということで、増収策になるという理屈だ。

リーマンショック後の5年間、金融市場の混乱、失業率の高止まりなどから、超低金利政策の強化・継続が行なわれている中、最も大きな影響を受けるのが企業年金プラン(DB)である。その対策として、講じられたのが、MAP-21である(「Topics2012年7月5日 PBGC保険料大幅引上げ」参照)。

簡単に言えば、年金給付債務の計算をする際に利用する利子率に下限を設けて、年金債務が膨らまないようにする仕組みである。上記sourceは、PPAで定められた利子率の決定方法(「Topics2006年8月9日 Pension Protection Act of 2006 概要」参照)から、MAP-21による下限設定とその効果、また、現時点で議論されている延長案について、解説をしている。ポイントは次の通り。
  1. モデル年金を利用して、PPAの規定通りに計算した利子率と、MAP-21に基づく下限による利子率を比較すると、2012〜2014年の3年間、毎年1.5%程度MAP-21の方が高くなる。その結果、給付債務は約18%縮減される。
  2. 現時点で検討されているMAP-21延長案は、下限の下がり方を現在の規定よりも緩やかにしようというものである。
  3. この案に基づいてモデル年金を利用して計算すると、2014年の利子率はPPAに較べて221bp引き上げられ、給付債務は27%縮減される。
  4. また、MAP-21の下限設定の効果は、2018年までは有効となる。
さすがに超緩和策が10年間も続かないだろうから、2018年までのどこかの時点でMAP-21の効力はなくなるだろう。それまでの間、企業年金にとっても連邦政府財政にとってもプラスになるという提案である。

ただし、企業側がそこまでDBプランを持ちこたえることができるかどうかも、大きな課題となろう。

※ 参考テーマ「企業年金関連法制

11月22日(2) 弥縫策への対応状況 
Source :State Decisions on Administration’s Policy on Coverage Extensions (America's Health Insurance Plans)
「Topics2013年11月20日 弥縫策に乗ったFL州」の続報である。
上の図ではCA州が検討中となっているが、11月21日、California州の州立Exchangeである"Covered California"理事会は、全員一致で不適格プラン継続の期限を今年の12月31日とすることを決定した(Covered California Press Release)。つまり、Obama弥縫策を拒絶したのである。

従って、現時点でのまとめは次のようになる。

不適格プランの延長を認める 12州 うち共和党知事 8州 FL, OH, NC, ND, SC, TN, VA, WI
うち民主党知事 4州 HI, KY, MD, OR
不適格プランの延長を認める方向で検討 5州 うち共和党知事 4州 AL, GA, OK, TX
うち民主党知事 1州 NH
不適格プランの延長を認めない 9州 うち共和党知事 1州 ID
うち民主党知事 8州 AR, CA, MA, MN, NY, RI, VT, WA
ということで、Obama弥縫策は共和党知事のところで広がりを見せている。

※ 参考テーマ「無保険者対策/州レベル全般」、「無保険者対策/連邦レベル

11月21日 SB市の未拠出金 
Source :No ceasefire in CalPERS war with San Bernardino (Calpensions)
Chapter 9による再建中のSan Bernardino市(SB市)は、再建計画を作成している。その内部資料が漏れたらしく、上記sourceではその一部を紹介している。
  1. SB市は、今年6月までの1年間、CalPERSへの拠出を停止していた(「Topics2013年4月26日 SB市予算案承認」参照)。

  2. この間の未拠出金は総額$17Mに達する。

  3. このCalPERSに対する負債を30年間で償却する。

  4. 初年度の2014年は、$1.3Mを拠出する。
CalPERSは、当然のことながら、拠出金が未払いのままという状態はあり得ない、として猛烈に反発してくることが予想される。CalPERSに恭順の意を表したStockton市とは好対照となりそうである(「Topics2013年11月9日 Stockton市:市民投票で増税承認」参照)。

ところで、上記sourceでは、SB市の年金財政が構造的に破綻している原因を説明している。
  1. SB市の拠出率は、警官・消防士が報酬の31.5%、その他職員が18.2%となっている。これは、特別高い訳ではない。

  2. SB市の条例で、警官・消防士の報酬は、近隣の10市の報酬と自動的に連動することとしている。

  3. ところが、SB市民の家計所得の中位数は$35,111、他の10市は$62,118と、SB市の家計所得は著しく低い。

  4. その要因は、この30年間のSB市の人口激減と貧困化、大企業の撤退などである。
    San Bernardino change during three decades (George Mason graph)
要するに、今の市民の所得では、警官・消防士の報酬(含む年金拠出金)を支え切れないのである。こうしてみると、CalPERSの『年金至上主義』は少し無理筋に見えてくる。

※ 参考テーマ「地方政府年金