8月17日 SF市の無保険者対策 
Source : Over 1,000 Uninsured Residents Have Been Enrolled in Healthy San Francisco, Mayor Newsom's Universal Health Care Access Program (Press Release)

CA州San Francisco市の無保険者対策が予想以上の効果をあげているという。プログラムの名前は、"Healthy San Francisco"。 このプログラムの特徴は次の通り。
  1. 2007年7月2日から施行。順次、市内のプログラム対象地域を拡大していき、2008年1月には市内全域が対象となる。

  2. プログラムの対象者は、San Francisco市内に住む無保険者で、公的医療保障プログラムの加入資格がなく、FPL500%以下の者。現在は、約82,000人の無保険者がいる。

  3. このプログラムは保険ではない。無保険者は、かかりつけ医に登録することで、初期治療や予防医療、精神病治療等を受けられる。

  4. 予算規模は、約$200M。うち、$100M程度は、既存の公的医療保障に使われていた公費を回す。加入者の窓口負担も求められる。さらには、企業からの拠出金が$30Mほど予定されている(San Francisco Business Times)。

  5. 従業員20人以上の企業については、一定割合の医療関係支出を求められている。
    RATE

    自前の医療保険プランのない企業については、上述の拠出金として支払うことになる。
これは、"Pay or Play"の規定であり、ERISAに当然ひっかかってくる。事実、レストラン経営者協会(Golden Gate Restaurant Association)は、既にERISA違反であるとして法廷闘争に訴えており、今月31日から裁判が開始される予定となっている。

このHealthy San Franciscoは、保険ではなく、かかりつけ医を通じて医療サービスを現物給付しようという試みであり、野心的な試みと評価できる。しかし、ここでもERISAとの対立が生じる可能性が出ている。ERISAとは、アメリカ国民のベネフィットを確保する為の法律であったのに、医療に関しては、ベネフィット提供を阻止する法律となっている。やはり、ERISAの見直しは避けられないのではないだろうか。

8月11日 公正さが重要 Source : Playing Favorites -- Romantic or Otherwize -- Is a Messy Game in the Workplace (Knowledge@Wharton)

どんな職場であっても、人間社会であれば、えこ贔屓、身内贔屓、社内恋愛、派閥の形成などは存在する。しかし、人事や報酬において、そうした場合の公正さが失われれば、企業、つまりは組織にダメージをもたらす、というのが、上記sourceの主旨である。

全体を読んでいただくのが一番望ましいのだが、私が読んで印象に残った点をまとめておく。
  1. ある調査によれば、従業員から報酬や人事が不公正だと思われている企業では、窃盗、非難中傷などの発生率が高まる。

  2. 創業者がCEOの役割を子供に承継させると、平均して企業価値は低下する。

  3. かつては大統領が身内を要職に指名することがあった(Kennedy、Clinton)。また大学の卒業生の子息を優先的に入学させる慣習があった。しかし、現代では、公正さ、多様性といった観点から、そうした行為は疑問視されている。

  4. 他方、第2次大戦後の時代には、大企業では従業員の子息を採用することは悪いことだと思われていた。しかし、現代のような採用難の時代に入り、厳格な親族採用禁止規定はなくなりつつある。

  5. また、戦後、女性の社会進出が一般的になり、社内恋愛がセクハラと解される懸念が強まった。これに伴い、上司と部下の関係での恋愛禁止規定は、広く普及し、中には一般社員同士の恋愛を禁止した企業もあった。

    ところが、現代においては、広範な恋愛禁止規定は一般的ではなくなりつつある。これは、社内恋愛においては、上司が男性、部下が女性というケースが多く、一方的に女性を異動させることは性差別に繋がりかねないためである。

    さらに、職場に居る時間が長くなっているために、従業員の個人的な(男女)関係を規制するのは現実的ではなくなっている。

  6. 上司と部下の関係を規定で禁止するよりも、そのプロセスを会社側がしっかり把握して、利益相反が発生しないように備えておくことが一般的になりつつある。具体的には、その関係を会社側に開示するよう、規定を定めておく(「Topics2007年2月14日(2) Love Contract」参照)。

  7. その場合、情報管理の徹底が重要である。不徹底であれば、不倫関係や同性愛関係を開示することはなくなるだろう。

  8. また、開示が行われた場合、利益相反が生じないように、企業として対応しておく必要がある。異動させる場合が多いだろう。また、従業員が開示しなかった場合でも、そうした規定が備えられていることによりリーガル・リスクを低減させることができる。

    大事なことは、企業側がそうした関係をマイナス評価して罰しようとしているのではなく、利益相反となることを防止する意図で制度を導入しているということを、理解してもらうことである。要は信頼関係が築けているかどうかである。
企業は、突き詰めれば人間集団である。人間関係をルールでコントロールすることは難しい。